グラフ作成をAIで|Excelのまま見やすい図にする手順
業務効率化支援を行う「Ai-Raku(アイラク)」代表。国立大学でAIの研究を行い、ITコンサル・ウェブコンサルを経て独立。官公庁向けの業務効率化や上場企業の支援等を経て、中小企業の現場に定着するAI活用を企画から運用まで一気通貫で支援している。著書に『中小企業のAI定着の教科書 — 入れた後に、何をするか』(2026年)。

- AIが作ったグラフをそのまま使える?
- AIに直接グラフ画像を作らせるのではなく、Excelで作ることをお勧めします。理由は数字の正確さです。AIには「どの種類が適切か」と「作る手順」を聞き、実際の作成と計算はExcelにやらせてください。
- データを渡さずに手順だけ聞けますか?
- できます。列の名前と作りたい表の形を伝えるだけで、実行できる手順が返ってきます。実際の数値は不要です。情報の扱いの面でも、この方法が最も安全です。
- どのグラフを選べばよいか毎回迷います
- 本記事の早見表を手元に置いてください。迷ったら「棒か折れ線で足りないか」をまず考えます。円グラフは項目が5つを超えたら横棒に変えてください。凝った種類は、作る手間の割に伝わりません。
- Excelが苦手でも使えますか?
- むしろ苦手な方ほど効果があります。関数名を知らなくても、やりたいことを日本語で伝えれば式が返ってきます。ただし出てきた式の意味は説明させて理解しておいてください。中身が分からない式が残ると後で困ります。
- 検算はどこまでやればよいですか?
- 最低限、合計が元データの総計と一致するかだけ確認してください。30秒で終わります。前月比のような比率を出す場合は、1件だけ手で計算して合っているかを見れば十分です。
- 無料のAIでもできますか?
- できます。本記事の使い方は、列の名前と作りたい形を伝えるだけなので、入力も出力も短く、無料版の制約にかかりません。データを丸ごとアップロードする使い方をしなければ、無料のままで実用になります。
- ピボットテーブルが作成できません
- 元データの形が原因であることがほとんどです。Microsoftの公式ドキュメントでは、データは1つのヘッダー行を持つ列に編成する必要があるとされています。見出しが2段になっている、途中に小計行がある、セルが結合されている、空白の行列が混ざっている。この4つを直せば大半は解決します。
- 毎月同じ集計を作り直しています
- ピボットテーブルは一度作れば、元データを差し替えて更新するだけで使えます。初回に「どこを更新すれば翌月も使えるか」を手順書に1行残してください。これがないと、翌月また最初から作ることになります。
- グラフを見せても議論になりません
- 3行の説明文を添えてください。「何が起きたか」「なぜ起きたと考えられるか」「次に確認すべきこと」の3行です。グラフだけを配ると読み解く負担が読み手に残るため、そこで止まります。この3行はAIに作らせられます。
- 前年比が正しいか不安です
- 1件だけ手で計算して突き合わせてください。前月比・前年比は、分母と分子の取り違えが起きやすい計算です。1件合っていれば式は正しいので、全件を検算する必要はありません。
- 数字を渡さずに説明文だけ作れますか?
- 説明文を作る工程では数字が必要です。ただし取引先名をコードに置き換えるだけで、分析の目的はほぼ達成できます。手順や関数を聞く工程なら、数字そのものは一切不要です。
数字は出た。あとはグラフにするだけ。そう思って作り始めたのに、種類を選び直し、色を変え、軸を調整して、気づけば1時間が過ぎている。しかも出来上がったグラフを見た上司から「これで何が言いたいの」と聞かれる。
グラフ作成が重い理由は、操作の難しさではありません。「何を見せたいか」が決まらないまま作り始めていることにあります。目的が定まっていないので、種類も色も決まらず、作り直しが続きます。
ここは生成AIが役に立つ場面です。ただしAIに数字を計算させてはいけません。任せるのは「どのグラフが適切か」の判断と「作る手順」であって、計算そのものはExcelにやらせます。本記事では、その線引きと具体的な手順を整理します。
- グラフ作成で時間が溶けている本当の場所
- AIに任せる範囲と、任せてはいけない範囲
- 目的別のグラフの選び方(早見表つき)
- Excelの操作手順をAIに作らせる方法
- そのまま使えるプロンプト4種
- 伝わるグラフの5原則と、検算の型
結論|選定と手順はAI、計算はExcel
最初に線引きをお伝えします。ここを外すと、後から数字が合わない事故になります。
数字を直接計算させない
最も重要な原則です。大量の数字を貼り付けて「合計を出してグラフにして」と頼むと、集計の途中で誤りが混ざることがあります。しかも間違っていても、AIは自信のある口調で答えます。
この性質を知らずに報告資料へ使うと、後から「数字が合わない」という事態になります。実際、これがAI集計で最も多い失敗です。
手順と関数を作らせる
正しい使い方は、AIにExcelの操作手順や関数を作らせ、計算はExcelにやらせることです。
「この表から商品カテゴリ別の月次推移を出したい」と伝えれば、ピボットテーブルの設定手順や必要な関数が返ってきます。実際に計算するのはExcelなので、数字は正確です。
選ぶ判断を相談する
もう1つ効くのが、グラフの種類選びです。「時系列の推移を見せたい」「構成比を比べたい」と伝えると、適切な種類と、その理由が返ってきます。
ここは知識の問題なので、AIが得意です。毎回悩んでいた「棒か折れ線か円か」が数秒で決まります。
時間が溶けている場所
どこに時間がかかっているのかを分解します。
目的が決まっていない
最大の原因です。「売上のグラフを作って」と言われて作り始めると、何を見せるかが決まっていないため、作っては直すを繰り返します。
本来、先に決めるべきは「このグラフを見た人に、何を分かってほしいか」です。伸びていることを見せたいのか、構成が変わったことを見せたいのか、目標との差を見せたいのか。これが決まれば、種類は自動的に決まります。
データの形が合っていない
次に多いのがこれです。手元の表がグラフ向きの形になっておらず、並べ替えや集計から始める必要があります。
この工程はAIに手順を作らせると大きく短縮できます。「この列構成から、この形の表を作るには」と聞けば、具体的な操作が返ってきます。
見た目の調整
色、凡例、軸の目盛り、データラベル。ここは細かい調整の連続です。ただし本当に必要な調整は多くありません。後述の5原則を守れば、調整の回数自体が減ります。
目的別のグラフの選び方
迷わないための早見表です。これを手元に置くだけで、選ぶ時間がなくなります。
| 見せたいこと | 適したグラフ | 注意点 |
|---|---|---|
| 時間による変化 | 折れ線グラフ | 項目が多いと線が絡む。5本までに絞る |
| 項目どうしの大小比較 | 横棒グラフ | 大きい順に並べる。項目名が長いなら横棒 |
| 期間ごとの量の比較 | 縦棒グラフ | 0から始める。途中から始めると誤解を招く |
| 全体に占める割合 | 円グラフ・帯グラフ | 項目は5つまで。それ以上は「その他」でまとめる |
| 割合の推移 | 100%積み上げ棒 | 円グラフを並べるより比べやすい |
| 2つの数字の関係 | 散布図 | 相関があっても因果とは限らない |
| 目標との差 | 棒グラフ+目標線 | 差そのものを別の棒にする方法もある |
迷ったときの原則は「棒か折れ線で足りないか、まず考える」です。凝った種類のグラフは、作る手間の割に伝わらないことが多くあります。
円グラフを使いすぎない
最もよく使われ、最も誤用されるのが円グラフです。人間は角度の比較が苦手なため、似た大きさの項目が並ぶと差が読み取れません。
項目が5つを超えるなら、横棒グラフに変えてください。それだけで読みやすさが変わります。
3D表示は使わない
立体的なグラフは、奥行きによって面積の見え方が歪みます。手前の項目が実際より大きく見えるため、正確な比較ができません。見栄えのために使う理由もありません。
Excelの手順をAIに作らせる
実務で最も効く使い方です。具体的な進め方を説明します。
渡す情報3つ
次の3つを渡せば、実行できる手順が返ってきます。
- 元データの列構成:どんな列があるか。実データは不要
- 作りたい表の形:行と列に何を置きたいか
- 使っているバージョン:機能名が違うことがあるため
ここで実際の数字を渡す必要はありません。列の名前だけで手順は作れます。この点が、情報の扱いの面でも大きな利点になります。
ピボットテーブルの設定
集計の定番はピボットテーブルですが、設定を覚えていないという方は多いはずです。「行に商品カテゴリ、列に月、値に売上合計を置きたい」と伝えれば、操作手順が順番に返ってきます。
一度作れば以降は更新するだけなので、最初の1回をAIに手伝ってもらう価値は大きい領域です。
先に整えるのは元データの形
ここで最も多い躓きが、元データの形です。Microsoftの公式ドキュメントでは、データは1つのヘッダー行を持つ列の形に編成する必要があると示されています(出典:Microsoft サポート「ピボットテーブルを作成してワークシート データを分析する」)。
つまり、次の状態だと集計できません。
| 元データの状態 | 問題 | 直し方 |
|---|---|---|
| 見出しが2段になっている | ヘッダー行が1行でない | 1行に統合する |
| 途中に小計行がある | 集計が二重になる | 小計行を削除する |
| 空白の列や行が混ざる | 範囲が途中で切れる | 空白を詰める |
| セルが結合されている | 値が正しく読まれない | 結合を解除して値を埋める |
| 1つの列に単位と数値が混在 | 数値として集計できない | 単位を列名に移す |
この5つを直すだけで、集計が通らない問題の大半は解決します。AIに手順を聞く前に、まずこの形になっているかを確認してください。
実際の作成手順
形が整っていれば、作成そのものは短時間で終わります。
- データ範囲内のセルを1つだけ選択する(範囲全体を選ぶ必要はありません)
- [挿入]タブ →[ピボットテーブル]
- データ範囲が正しく認識されているかを確認する
- 配置先(新規ワークシートか既存ワークシート)を選んでOK
- 右側のフィールドリストから、行・列・値に項目をドラッグする
5番目で迷ったら、AIに「行・列・値のどこに何を置けばよいか」だけ聞いてください。ここは判断なので、手順より相談のほうが速く解決します。
2回目からは更新だけ
一度作れば、翌月は元データを差し替えて更新するだけです。設定を毎回思い出す必要がなくなります。
そのため、初回に「どこを更新すれば翌月も使えるか」を手順書に1行残すことをお勧めします。これがないと、翌月また作り直すことになります。
関数を作らせる
「前月比を出したい」「上位5件だけ抽出したい」といった処理は、関数で解決できます。関数名を知らなくても、やりたいことを日本語で伝えれば式が返ってきます。
重要なのは、出てきた式が何をしているかを説明させることです。「この式の意味を教えて」と続けて聞けば、後から自分で直せるようになります。中身が分からない式が残ると、担当が代わったときに触れなくなります。
グラフの作成手順
表ができたら、グラフ化の手順も聞けます。「この表から、月次推移が分かる折れ線グラフを作る手順」と伝えれば、範囲選択から挿入までの操作が返ってきます。
Excel全般の効率化はAIでExcel作業を自動化する方法|中小企業向け完全ガイドで詳しく扱っています。
そのまま使えるプロンプト例
実際に使っている指示文を載せます。
グラフの種類を選ばせる
以下の条件に適したグラフの種類を提案してください。
【見せたいこと】
(例:3商品カテゴリの売上が、この1年でどう変化したか)
【読む相手】
(例:役員。数字に慣れているが時間がない)
【手元のデータ】
(列構成だけ。例:日付/商品カテゴリ/売上金額)
【出力】
・第一候補と、その理由
・第二候補と、使い分けの基準
・避けたほうがよい種類と、その理由
・それぞれ3行以内で
Excelの操作手順を出させる
Excelでの操作手順を、番号付きで書き出してください。
【元データの列】
(例:A列=日付/B列=商品コード/C列=商品カテゴリ/D列=数量/E列=売上金額)
【作りたい表】
(例:行に商品カテゴリ、列に月、値に売上金額の合計)
【使用バージョン】(例:Microsoft 365)
【条件】
・1手順1操作で書く
・メニューの名称を正確に書く
・途中で確認すべき数字(件数・合計)があれば明示
・実際の数値は不要です。手順だけ書いてください
関数を作らせて説明させる
Excelの関数を作成してください。
【やりたいこと】
(例:C列のカテゴリが「食品」の行だけ、E列の売上を合計したい)
【データの範囲】(例:2行目から500行目まで)
【出力】
1. 使用する関数の式
2. その式が何をしているかの説明(日本語で3行程度)
3. 想定される間違いやすい点
古いバージョンでも動く式があれば、あわせて提示してください。
グラフに添える説明文を作らせる
以下の集計結果について、グラフの下に添える説明文を作成してください。
【構成】
1. 何が起きたか(1行)
2. なぜ起きたと考えられるか(1〜2行)
3. 次に確認すべきこと(1行)
【厳守事項】
・渡した数値だけを使い、新しい数値を作らないでください
・比率を書く場合は、計算前の元の数値も併記してください
・断定できないことは「〜と考えられます」と書いてください
【社内の事情】(例:今月は連休が7日/A商品を値上げ)
【集計結果】(貼る)
この4つ目が、実は最も価値のある使い方です。グラフだけを配ると読まれませんが、3行の説明が付くだけで読まれ方が変わります。プロンプトの作り方はプロンプトの書き方・コツ|すぐ使えるテンプレート集もご覧ください。
伝わるグラフの5原則
作る速さと同じくらい、伝わるかどうかが重要です。
1グラフ1メッセージ
1枚のグラフに複数の主張を載せると、どれも伝わりません。「このグラフで言いたいこと」を1行で書けるかを基準にしてください。書けないなら、グラフを分けます。
タイトルに結論を書く
最も効く工夫です。「月別売上推移」ではなく「A商品の売上が3か月連続で減少」とタイトルに書きます。
グラフを読み解く負担が消えるため、受け取る側の理解が速くなります。この一手間だけで、資料の質が明確に変わります。
縦軸は0から始める
棒グラフの縦軸を途中から始めると、わずかな差が大きく見えます。意図せず誤解を招くため、棒グラフでは0から始めるのが原則です。
折れ線グラフで変化を強調したい場合は例外がありますが、その場合も軸の範囲を明示してください。
色は2〜3色まで
項目ごとに色を変えると、かえって読みにくくなります。強調したい1項目だけ色を付け、残りはグレー。これが最も伝わる配色です。
凡例より直接ラベル
凡例と線を目で往復させるのは、読む側の負担です。可能なら線の端に直接ラベルを置くほうが読みやすくなります。
数字を間違えないための検算
AIを使う以上、この工程は省略できません。
合計を別の方法で確かめる
最も確実な検算です。カテゴリ別の合計が、元データの総計と一致するかを確認します。この確認は30秒で終わります。
ExcelのSUM関数で出した総計と、ピボットで出した合計。この2つが合っていれば、少なくとも漏れや重複はありません。
桁と単位を目視する
千円単位と円単位が混ざる、パーセントと小数が入れ替わる。こうした誤りは、集計後の数字を見ても気づきにくいものです。
最大値と最小値を見て、常識的な範囲に収まっているかを確認してください。桁違いに大きい値があれば、単位の混在を疑います。
グラフの見た目でも確かめる
意外に有効なのがこれです。グラフにすると、数字の羅列では気づかない異常が視覚的に見えます。急に跳ね上がっている点、途切れている期間、明らかに他と違う項目。
これらを見つけたら、元データに戻って確認してください。グラフは結果を見せる道具であると同時に、誤りを見つける道具でもあります。
AIが苦手な計算を知る
| 計算の型 | 起きやすい誤り | 対策 |
|---|---|---|
| 多数の行の合計 | 数え漏れ・重複 | Excelで計算し、AIには手順だけ作らせる |
| 前月比・前年比 | 分母と分子の取り違え | 元の数字を併記させ、1件だけ手で検算 |
| 構成比 | 合計が100%にならない | 合計欄を必ず出させて確認 |
| 期間をまたぐ集計 | 期間の境界を誤る | 対象期間と件数を明示させる |
生成AIが事実でない内容を出す性質はAIハルシネーション対策|原因と防ぐ7つの実務で詳しく扱っています。
モデルケース|月次の売上グラフ(試算)
効果のイメージを示します。以下は実在の企業ではなく、当社が想定する典型的な状況にもとづく試算です。効果は業務内容や体制によって変わります。
導入前の状況
従業員18名の小売業。毎月初めに、前月の売上を商品カテゴリ別・店舗別にまとめてグラフ化しています。担当は経理と兼任の1名です。
| 工程 | 所要時間 | 内容 |
|---|---|---|
| データの整形 | 40分 | POSの出力を並べ替え、不要な列を削除 |
| 集計 | 50分 | ピボットの設定を毎回思い出しながら作業 |
| グラフ作成 | 45分 | 種類を選び直し、色と軸を調整 |
| 説明文の作成 | 35分 | 何を書けばよいか毎回悩む |
| 合計 | 約2.8時間 | — |
着手した順番
効果が大きく着手しやすい順に進めました。
- 説明文の作成から:最も手軽で、しかも「読まれない」問題も同時に解決
- グラフの種類を固定:AIに相談して型を決め、以降は迷わない
- ピボットの手順を文書化:AIに手順を書き出させ、手元に置く
- 整形を関数化:毎回の並べ替えを関数に置き換え
削減時間の試算
時給換算2,500円・月20営業日を前提とした試算です。
| 工程 | 導入前 | 導入後(試算) |
|---|---|---|
| データの整形 | 40分 | 15分 |
| 集計 | 50分 | 20分(手順書を見ながら) |
| グラフ作成 | 45分 | 20分(種類が固定されたため) |
| 説明文の作成 | 35分 | 15分 |
| 検算(新設) | — | 10分 |
| 合計 | 約2.8時間 | 約1.3時間 |
| 削減見込み(月) | — | 約1.5時間 |
| 金額換算(月) | — | 約3,750円 |
金額としては小さく見えます。しかしこの会社で評価されたのは別の点でした。説明文が付いたことで、店長会議でグラフが実際に使われるようになったことです。それまでは配られるだけだった資料が、議論の材料になりました。
また、検算の工程を新しく足している点にご注目ください。AIを使う以上この10分は削れませんが、それでも全体は半分以下になります。
「自社の集計のどこから任せられるか」を知りたい方へ。実際にお使いのファイルを拝見しながらご提案します。初回のご相談は無料です。無料相談はこちら。
やってはいけない使い方
失敗を防ぐために、避けるべき使い方を挙げます。
検算せずに報告する
繰り返しになりますが、これが最大のリスクです。AIが出した数字をそのまま会議資料にしないでください。
とくに危険なのは、数字が「もっともらしい」場合です。明らかに変な数字なら気づきますが、微妙にずれている数字は見逃されます。
グラフで印象を操作する
軸を途中から始める、3D表示にする、都合の悪い期間を除く。これらは技術的には可能ですが、やってはいけないことです。
社内資料であっても、印象操作されたグラフは判断を誤らせます。結果として、その判断のツケは自社に返ってきます。
元データを整備せずに使う
入力の段階でばらついているデータは、どれだけAIを使っても綺麗になりません。同じ商品が3通りの名前で登録されているなら、集計する前にマスタを直すべきです。
毎月同じ修正を繰り返しているなら、入力側を直すほうが早い場合があります。
情報の扱いで決めること
売上データには取引先の情報が含まれます。始める前に整理してください。
数字を渡さずに済ませる
本記事で紹介した使い方の多くは、実際の数字を渡さずに実行できます。列の名前と、作りたい表の形だけで手順は作れるためです。
これが最も安全な運用です。手順を受け取り、計算は自社のExcelで行う。この形なら、データが外に出ることがありません。
渡す場合は伏せる
説明文の作成など、数字を渡す必要がある場面もあります。その場合は取引先名をコードに置き換えるだけで、分析の目的はほぼ達成できます。
設定を確認する
入力内容が学習に使われない設定を確認してください。とくにファイルをアップロードする使い方では、扱いを必ず確認します。社内ルールの作り方は社内AIルールの作り方|情報漏洩を防ぐ生成AIガイドライン8項目で解説しています。
Excelが苦手でも使える
「関数が分からない」という方ほど、効果を実感しやすい領域です。
日本語で伝えればよい
関数名を知らなくても構いません。「C列が食品の行だけ、E列を合計したい」と日本語で書けば、式が返ってきます。
これまで「詳しい人に聞く」しかなかった場面が、自分で解決できるようになります。聞かれる側の時間も減ります。
意味を説明させて覚える
ただし、式をコピーするだけで終わらせないでください。「この式の意味を教えて」と続けて聞くことで、次から応用が利きます。
これを繰り返すと、AIが教材になります。分からないことをその場で聞ける相手がいる状態は、独学より効率的です。
操作は手順書に残す
一度うまくいった手順は、テキストファイルに残してください。来月また同じことを思い出す必要がなくなります。
この積み重ねが、属人化の解消につながります。担当が代わっても、手順書があれば回せます。
業種別・見せるべき数字
どの数字をどう見せるかは業種で変わります。よく使う型を挙げます。
建設・設備工事
中心になるのは工事別の原価と進捗です。予算に対する実績の差を見せる場面が多く、目標線を引いた棒グラフが適します。
注意点は、工期をまたぐ案件の期間の切り方です。月次で切ると進行中の工事が正しく見えません。集計の対象期間と、進行中案件の扱いをAIへの指示に必ず明記してください。
製造業
中心は不良率と生産数の推移です。折れ線グラフが基本ですが、母数が小さい期間の比率は誤解を招きます。
対策は、比率と実数を併記することです。「不良率5%」だけだと大きく見えますが、「生産20個中1個」と併記すれば実態が伝わります。プロンプトに「比率を書く場合は元の数値も併記」と指定してください。
小売・卸売
中心は商品カテゴリ別の売上構成と、店舗別の比較です。ここは円グラフが使われがちですが、項目が5つを超えるなら横棒グラフに変えてください。
もう1つ、前年同月比を見る場面が多いのがこの業種です。連休や天候の影響が大きいため、グラフに添える説明文で「今月は連休が7日」といった前提を必ず補ってください。数字だけでは判断を誤ります。
飲食・サービス
中心は時間帯別・曜日別の来客数です。ここは表よりグラフの効果が大きい領域で、人員配置の判断に直結します。
効くのは、曜日を横軸・時間帯を系列にした形です。どの曜日のどの時間が薄いかが一目で分かります。
士業・コンサルティング
中心は顧問先別の稼働時間と、業務種別の内訳です。稼働が特定の顧問先に偏っていないかを見る用途になります。
この集計は、顧問先名をコードに置き換えても目的を達成できます。説明文をAIに作らせる場合は、置き換えた状態で渡してください。
よくある質問(FAQ)
Q. AIが作ったグラフをそのまま使える?
A. AIに直接グラフ画像を作らせるのではなく、Excelで作ることをお勧めします。理由は数字の正確さです。AIには「どの種類が適切か」と「作る手順」を聞き、実際の作成と計算はExcelにやらせてください。
Q. データを渡さずに手順だけ聞けますか?
A. できます。列の名前と作りたい表の形を伝えるだけで、実行できる手順が返ってきます。実際の数値は不要です。情報の扱いの面でも、この方法が最も安全です。
Q. どのグラフを選べばよいか毎回迷います
A. 本記事の早見表を手元に置いてください。迷ったら「棒か折れ線で足りないか」をまず考えます。円グラフは項目が5つを超えたら横棒に変えてください。凝った種類は、作る手間の割に伝わりません。
Q. Excelが苦手でも使えますか?
A. むしろ苦手な方ほど効果があります。関数名を知らなくても、やりたいことを日本語で伝えれば式が返ってきます。ただし出てきた式の意味は説明させて理解しておいてください。中身が分からない式が残ると後で困ります。
Q. 検算はどこまでやればよいですか?
A. 最低限、合計が元データの総計と一致するかだけ確認してください。30秒で終わります。前月比のような比率を出す場合は、1件だけ手で計算して合っているかを見れば十分です。
Q. 無料のAIでもできますか?
A. できます。本記事の使い方は、列の名前と作りたい形を伝えるだけなので、入力も出力も短く、無料版の制約にかかりません。データを丸ごとアップロードする使い方をしなければ、無料のままで実用になります。
Q. ピボットテーブルが作成できません
A. 元データの形が原因であることがほとんどです。Microsoftの公式ドキュメントでは、データは1つのヘッダー行を持つ列に編成する必要があるとされています。見出しが2段になっている、途中に小計行がある、セルが結合されている、空白の行列が混ざっている。この4つを直せば大半は解決します。
Q. 毎月同じ集計を作り直しています
A. ピボットテーブルは一度作れば、元データを差し替えて更新するだけで使えます。初回に「どこを更新すれば翌月も使えるか」を手順書に1行残してください。これがないと、翌月また最初から作ることになります。
Q. グラフを見せても議論になりません
A. 3行の説明文を添えてください。「何が起きたか」「なぜ起きたと考えられるか」「次に確認すべきこと」の3行です。グラフだけを配ると読み解く負担が読み手に残るため、そこで止まります。この3行はAIに作らせられます。
Q. 前年比が正しいか不安です
A. 1件だけ手で計算して突き合わせてください。前月比・前年比は、分母と分子の取り違えが起きやすい計算です。1件合っていれば式は正しいので、全件を検算する必要はありません。
Q. 数字を渡さずに説明文だけ作れますか?
A. 説明文を作る工程では数字が必要です。ただし取引先名をコードに置き換えるだけで、分析の目的はほぼ達成できます。手順や関数を聞く工程なら、数字そのものは一切不要です。
まとめ
- AIに数字を計算させない。手順や関数を作らせ、計算はExcelにやらせる
- 時間が溶けているのは操作ではなく「何を見せたいか」が決まっていないこと
- グラフの種類は目的で決まる。迷ったら棒か折れ線、円グラフは5項目まで
- 列の名前と作りたい形だけで手順は作れる。実データを渡す必要がない
- タイトルに結論を書く。「月別売上推移」ではなく「A商品が3か月連続で減少」
- 色は2〜3色。強調したい1項目以外はグレー
- 検算は合計の突き合わせだけでよい。30秒で事故を防げる
- グラフに3行の説明を添えると、配られるだけの資料が議論の材料になる
グラフ作成は、慣れれば速くなる作業ではありません。目的を先に決め、型を固定することでしか短くならない種類の仕事です。まず1つ、種類を固定するところから始めてみてください。
集計とレポート全体の進め方はレポート作成をAIで|毎月のExcel集計を減らす手順、業務としての整理はデータ集計・分析レポートのAI活用、他の業務も含めた全体像は業務効率化のアイデア20選にまとめています。
自社の業界での活用を、相談してみませんか?
記事だけでは分からない「自社の場合」を、無料でご提案します。12問の診断で、いまのAI活用が5段階のどこにいるかをメールでお送りします。
無料で相談する → 無料でAI導入必要性診断(12問)


