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Claude Code

Claudeのプロジェクト機能|業務別の作り方と設計例4つ

📅 公開日 2026.08.09 ⏱ 読了 約45分
前田 大輔
監修者
前田 大輔Ai-Raku(アイラク) 代表

業務効率化支援を行う「Ai-Raku(アイラク)」代表。国立大学でAIの研究を行い、ITコンサル・ウェブコンサルを経て独立。官公庁向けの業務効率化や上場企業の支援等を経て、中小企業の現場に定着するAI活用を企画から運用まで一気通貫で支援している。

Claudeのプロジェクト機能|業務別の作り方と設計例4つ

「Claudeにプロジェクトという機能があるのは知っている。でも、いつものチャット欄と何が違うのか分からない」。この記事にたどり着いた方の多くは、機能名だけを聞いた段階か、一度作ってみて放置している段階ではないでしょうか。

結論から書きます。プロジェクト機能とは、業務ごとに「作業場」を作る機能です。その業務で毎回使う資料と、毎回書いていた指示を1か所に置いておくと、その中で始めた会話はすべて、その前提を読んだ状態から始まります。毎回の説明が消える。これが本質です。

この記事では、非エンジニアの中小企業担当者が明日から作れるところまで手順を具体化します。Anthropicの公式ドキュメントで2026年8月時点に確認できる事実だけを土台にしつつ、そのままコピーして使えるカスタム指示の全文つきの設計例を4つ載せました。加えて、多くの記事が書かない「何を入れて何を入れないか」「誰まで共有していいか」「作ったのに使われない原因」まで踏み込みます。

この記事でわかること

  • プロジェクトと普通のチャットの違い(公式が明記している3つの注意点つき)
  • プラン別の利用可否(無料は5個まで、共有はTeam以上)と料金の条件
  • ナレッジの容量制限と、読まれるファイル形式の限界
  • 作り方6ステップと、カスタム指示に書く6ブロックの型
  • ナレッジに入れるもの、入れてはいけないもの
  • そのまま使える業務別の設計例4つ(プロジェクト名・ナレッジ・指示文の全文)
  • 社内の共有範囲の決め方と、入力データが学習に使われるかの公式回答
  • 作ったのに使われない5つの原因と、その直し方
  1. 結論:業務ごとに作業場を分ける
  2. プロジェクトとチャットの違い
    1. 毎回の説明がまるごと消える
    2. チャット同士は情報を共有しない
    3. 名前と説明はClaudeに渡らない
  3. 使えるプランと料金の条件
    1. 無料プランは5個まで
    2. 共有ができるのはTeam以上
    3. プラン別の条件と価格
  4. ナレッジの容量と対応ファイル
    1. 1ファイル30MBまで
    2. 容量を超えると自動でRAGに切り替わる
    3. ファイル名で精度が変わる
  5. プロジェクトの作り方6ステップ
    1. 作る前に決める3つのこと
    2. 画面上の6ステップ
    3. 最初の1週間ですること
  6. カスタム指示に書く6ブロック
    1. 6つのブロックの中身
    2. 短く保つのが公式の推奨
    3. よくある書き方の失敗
  7. ナレッジに入れるもの入れないもの
    1. 入れるべき5種類
    2. 入れてはいけない3種類
    3. 条件つきで入れてよいもの
  8. 業務ごとの分け方の判断基準
    1. 分ける基準は3つ
    2. 最初は3つまで
    3. 分けすぎたときの直し方
  9. 設計例1|見積と提案の作業場
  10. 設計例2|問い合わせ返信の作業場
  11. 設計例3|採用と求人原稿の作業場
  12. 設計例4|月次報告と社内文書
  13. 社内の誰まで共有していいか
    1. 公開と限定の2択
    2. 閲覧と編集の権限差
    3. 共有してもチャットは見られない
    4. 管理者は全社公開を止められる
  14. 入れた資料は学習に使われるか
    1. 法人向けは既定で学習に使わない
    2. 個人向けは設定次第
    3. 日本の公的資料が求めていること
  15. 【モデルケース】月60時間を削減するまで
    1. 想定する会社
    2. 業務別の試算表
    3. 3か月の進め方
    4. つまずいた点
    5. 費用の考え方
  16. 作ったが使われない5つの原因
  17. GPTsとの違いは3点だけ
  18. 運用を続けるための見直し方
    1. 月1回の棚卸し
    2. アーカイブと削除の使い分け
    3. 記録に残すこと
  19. よくある質問(FAQ)
    1. Q. 無料プランでも使えますか?
    2. Q. ナレッジは何件まで入る?
    3. Q. 資料は学習に使われますか?
    4. Q. 説明欄に書けば伝わりますか?
    5. Q. 前の会話を覚えていますか?
    6. Q. 紙をスキャンした資料は読める?
    7. Q. 共有すると会話も見られる?
    8. Q. 編集権限は何人までが適正?
    9. Q. 勝手に全社公開されると心配です
    10. Q. 削除できないのはなぜ?
    11. Q. 作ったのに誰も使ってくれません
    12. Q. GPTsとどちらを使うべきですか?
    13. Q. 何個くらい作るのが適正ですか?
    14. Q. 支援を頼むと何をしてもらえますか?
  20. まとめ:作業場を3つ作る

結論:業務ごとに作業場を分ける

プロジェクト機能の使いどころは、ひとことで言えば「毎週くり返す業務を、業務単位の作業場に切り出すこと」です。単発の調べものや文章の相談は、これまでどおり普通のチャットで構いません。

Anthropicの公式ヘルプは、プロジェクトを「独自のチャット履歴とナレッジベースを持つ、自己完結した作業空間」と定義しています。その中で、資料をアップロードし、前提を与え、焦点の定まった会話ができる、という説明です(出典:Anthropic「What are projects?」)。

この定義から、プロジェクトが持つ要素は3つに整理できます。

  1. プロジェクトナレッジ:その業務で毎回参照する資料の置き場
  2. カスタム指示(プロジェクト指示):その業務での役割・手順・出力の型を書いた指示文
  3. チャット履歴:その業務の会話だけが並ぶ一覧

逆に言えば、この3つが必要ない業務にプロジェクトは要りません。「毎回同じ資料を貼り直している」「毎回同じ前置きを書いている」「あのときの会話をまた探している」。この3つのどれかに心当たりがあるなら、その業務がプロジェクト化の第一候補です。

なお、プロジェクト機能自体は2024年6月25日に提供が始まった機能で、当初はPro利用者とTeam利用者向けでした(出典:Anthropic「Collaborate with Claude on Projects」)。現在は無料プランを含む全プランで作成できるようになっており、当時の記事とは条件が変わっています。古い解説記事の情報をそのまま信じないでください。

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プロジェクトとチャットの違い

違いは「前提が保存されるかどうか」の一点に集約されます。ただし、多くの人が誤解している落とし穴が3つあるので、先に潰しておきます。

毎回の説明がまるごと消える

普通のチャットでは、依頼のたびに「当社は従業員28名の産業機械の販売と保守をしています。相手は工場の設備担当者です」といった前提を書き直す必要があります。この前置きは、1回あたり200字から400字程度になることが多く、書く時間より「毎回書くのが面倒で使わなくなる」ことのほうが害になります。

プロジェクトでは、この前提をカスタム指示に一度書けば、そのプロジェクト内のすべてのチャットに適用されます。公式ヘルプも「Claudeはこの指示をプロジェクト内のすべてのチャットで使う」と明記しています(出典:Anthropic「How can I create and manage projects?」)。

チャット同士は情報を共有しない

ここが最大の誤解ポイントです。同じプロジェクトの中にあっても、チャットAで話した内容は、チャットBには引き継がれません。公式ヘルプは注記として「プロジェクト内のチャット間で文脈は共有されない。ただしその情報をプロジェクトナレッジに追加した場合は別」と書いています(出典:同上)。

つまり、昨日のチャットで決めた社内の呼び方や、修正してもらった言い回しを、今日のチャットにも効かせたいなら、それをナレッジかカスタム指示に書き戻す作業が必要です。この一手間を省くと「プロジェクトにしたのに学習してくれない」という不満になります。学習しないのではなく、そういう設計です。

名前と説明はClaudeに渡らない

プロジェクト作成時に入力する「名前」と「説明」は、人間が一覧で見分けるためのものであり、Claudeはその内容を読めません。公式ヘルプに「Claudeはこれらの詳細にアクセスできない点に注意」と明記されています(出典:同上)。

説明欄に「相手は工場の設備担当者です」と書いても、回答には一切反映されません。Claudeに効かせたい情報は、必ずカスタム指示かナレッジに書いてください。この1点を知らないまま説明欄を作り込んでいる会社を、当社は何度も見ています。

観点 普通のチャット プロジェクト
前提の入力 毎回書き直す カスタム指示に1回書く
資料の添付 会話ごとに添付し直す ナレッジに置けば常に参照
会話の探しやすさ 全履歴から探す その業務の会話だけ並ぶ
チャット間の引き継ぎ なし なし(ナレッジ経由でのみ可能)
他人への共有 個別のリンク共有 作業場ごと共有(Team以上)
向く用途 単発の相談・調べもの 毎週くり返す定型業務

Claudeそのものの基本や、初めて触るときの操作はClaudeとはClaudeの使い方で扱っています。本記事はプロジェクト機能に絞ります。

使えるプランと料金の条件

「有料じゃないと使えないのでは」と思われがちですが、プロジェクトの作成自体は無料プランでもできます。ただし個数と共有に条件があります。

無料プランは5個まで

公式ヘルプは冒頭で「プロジェクトは無料アカウントを含むすべてのユーザーが利用できる。無料ユーザーは最大5個まで作成できる」と明記しています(出典:Anthropic「What are projects?」)。Proプランでは、料金ページの機能一覧に「チャットと文書を整理するための無制限のプロジェクトへのアクセス」と記載されています(出典:Anthropic「Plans & Pricing」)。

まず試すだけなら無料プランで足ります。「3つの業務で作業場を作る」という本記事の進め方は、5個の枠に収まります。

共有ができるのはTeam以上

ここが業務利用での分かれ目です。作った作業場を他のメンバーに配れるのは、TeamプランとEnterpriseプランだけです。公式ヘルプは「TeamとEnterpriseのユーザーは、プロジェクトを組織の他のメンバーと共有できる」と限定して書いています(出典:同上)。可視性と共有の設定を扱う別ページでも「プロジェクトの可視性と共有の機能はTeamまたはEnterpriseプランのユーザーが利用できる」と繰り返されています(出典:Anthropic「Project visibility and sharing」)。

したがってProプランで作った作業場は、原則として自分専用です。同僚に渡したいなら、カスタム指示の文面とナレッジのファイルを手渡しして、相手側で同じものを作ってもらうことになります。ここが面倒だと感じた時点が、Teamプランへの切り替えを検討するタイミングです。

プラン別の条件と価格

プラン プロジェクト作成 個数 作業場の共有 価格(米国表示・税別)
Free できる 最大5個 できない 0ドル
Pro できる 無制限 できない 月20ドル(年払いは月17ドル相当・200ドル一括)
Max できる 無制限 できない 月100ドルから
Team できる 無制限 できる 標準シート 年払い月20ドル、月払い月25ドル(1人あたり・最低2名)
Enterprise できる 無制限 できる(グループ共有はベータ) 1シート20ドル+利用量に応じた費用

Teamプランは最低2名から、上限150シートまでです。標準シートに加えて、利用量が5倍のプレミアムシート(年払い月100ドル、月払い月125ドル)を混在させられます(出典:Anthropic「What is the Team plan?」)。Proプランは米国で月20ドル、年払いで割引があります(出典:Anthropic「What is the Pro plan?」)。

表示価格は米国のもので、税は別、地域により通貨も税の扱いも変わるとAnthropicが明記しています。日本円での実額は、契約時にclaude.ai/upgradeの表示でご確認ください。当社が円換算の相場を勝手に作ることはしません。プラン選定の考え方はClaudeの料金で扱っています。

ナレッジの容量と対応ファイル

「社内資料をどれだけ入れられるのか」は、設計の前に必ず押さえてください。制限を知らずに設計すると、途中で作り直しになります。

1ファイル30MBまで

公式ヘルプのファイル制限は、チャットへの添付とプロジェクトのファイルで別の値になっています。プロジェクトのファイルは1ファイル30MBまで、ファイル数は無制限、ただし合計の内容がコンテキストウィンドウに収まる必要があるとされています。加えてテキスト抽出のみ(マルチモーダルPDFを除く)という重要な注記があります(出典:Anthropic「Upload files to Claude」)。

一方、チャットへの直接添付は1ファイル500MB、1つのチャットにつき20ファイルまで、PDFは1000ページまでです。100ページ以下のPDFは図表などの視覚的要素も解析されますが、101ページから1000ページのPDFはテキストのみの処理になります(出典:同上)。

この差が意味するのは、「スキャンした紙の書類をナレッジに入れても読まれない可能性が高い」ということです。画像として保存された図面や、写真で撮った手書きメモをナレッジに置いても、テキストが抽出できなければ材料になりません。ナレッジに入れる資料は、テキストが選択できる状態のものに限る、と決めておくのが安全です。

容量を超えると自動でRAGに切り替わる

ナレッジが増えてコンテキストの上限に近づくと、Claudeは自動的にRAG(検索して必要な部分だけ取り出す仕組み)に切り替わります。公式ヘルプは「プロジェクトナレッジがコンテキストウィンドウの上限に近づくと、ClaudeがRAGモードを自動的に有効にし、容量を最大10倍まで拡張する」と説明しています。設定は不要で、ナレッジが上限を下回れば自動的に元の方式に戻ります(出典:Anthropic「Retrieval augmented generation (RAG) for projects」)。

ここで1点、公式ページ間で記載が食い違っています。RAGの解説ページは「RAG for projectsは全プラン(無料、Pro、Max、Team、Enterprise)で利用できる」と書いていますが、プロジェクトの概要ページは「RAGによる拡張ナレッジは有料プランのユーザーのみ」と書いています。2026年8月時点では両方の表記が公開されているため、無料プランでの大容量ナレッジを前提にした設計は避けてください。業務で使うなら有料プランを前提に考えるのが安全です。

コンテキストウィンドウの大きさ自体も押さえておきます。既定は20万トークン(テキストで500ページ以上に相当)で、Opus 5とSonnet 5では有料プランで100万トークンに対応します(出典:Anthropic「How large is the context window on paid Claude plans?」)。RAGそのものの考え方はRAGとはで解説しています。

ファイル名で精度が変わる

RAGが効いている状態では、Claudeは「プロジェクトナレッジ検索」という道具でファイルを探しに行きます。そのためファイル名が検索の手がかりになります。公式ヘルプはRAGプロジェクトの推奨事項として、明確で説明的なファイル名を使うこと、関連する文書を同じプロジェクトにまとめること、質問の際に特定の文書名を挙げること、を挙げています(出典:Anthropic「RAG for projects」)。

実務では、これが効きます。「資料1.pdf」「最新版_修正済.docx」といった名前を、「2026年度_保守契約_標準料金表.pdf」「見積書_書式_2026年4月改定.docx」に直すだけで、狙った資料が引かれる確率が上がります。ナレッジを整える作業の半分は、実はファイル名を直す作業です。

プロジェクトの作り方6ステップ

ここから実際の手順です。画面操作そのものは5分で終わります。時間がかかるのは、その前に決めることのほうです。

作る前に決める3つのこと

手を動かす前に、紙に3行だけ書いてください。ここを飛ばすと、必ず作り直しになります。

  1. 誰が使うか:自分だけか、営業3名か、全社か。共有範囲が決まらないと、ナレッジに入れてよい情報の範囲も決まりません。
  2. 何を出す場所か:見積の下書きか、メール返信の下書きか、報告書の要約か。1つに絞ります。
  3. 成果物の型は何か:既存の書式が1枚あるか。なければ、良い例を1つ用意します。

画面上の6ステップ

公式ヘルプの手順にもとづく操作は次のとおりです(出典:Anthropic「How can I create and manage projects?」)。

  1. 画面左側の「Projects」を開く(claude.ai/projectsに直接移動しても構いません)
  2. 右上の「New Project」を押す
  3. 名前と説明を入力する(この2つはClaudeには渡りません。人間が見分けるためのものです)
  4. TeamまたはEnterpriseの場合は可視性を選ぶ(限定公開か、組織全体への公開か)
  5. 右側のプロジェクトナレッジで「+」を押し、資料を入れる
  6. 「Set project instructions」からカスタム指示を書き、保存する

あとは、そのプロジェクトの中でチャットを始めるだけです。既存の会話をプロジェクトに移すこともできます。チャット名の横のドロップダウンから「Add to project」を選ぶ方式で、履歴ページからまとめて移すこともできます(出典:同上)。

最初の1週間ですること

作った直後の1週間は、指示文を直す期間だと考えてください。当社が支援に入るときも、初週は次の進め方をお願いしています。

  • 実際の業務で5回使う。うまくいかなかった回のやりとりを残しておく
  • うまくいかなかった原因を「指示が足りない」「資料が足りない」のどちらかに仕分ける
  • 指示が足りないなら、カスタム指示に1行足す。資料が足りないなら、ナレッジに1ファイル足す
  • 直したら、同じ依頼をもう一度投げて、直ったかを確認する

この「5回試して2回直す」を1週間やると、そのあとは月1回の見直しで回るようになります。逆に、作りっぱなしで放置した作業場は、まず使われません。理由は後半の「作ったが使われない5つの原因」で詳しく扱います。

カスタム指示に書く6ブロック

プロジェクトの品質は、ほぼカスタム指示で決まります。何を書けばよいか分からないという相談が最も多いので、埋めるだけで形になる6ブロックの型を示します。

6つのブロックの中身

ブロック 書く内容 目安
1. 役割と前提 会社の業種・規模、相手は誰か、Claudeの役割 3行
2. 受け取るもの 利用者が貼り付けてくる材料と、足りないときの動き 3行
3. 手順 読む順番と判断の順番を番号で 4行から6行
4. 出力の型 見出しの順番、1件あたりの字数、文体 5行前後
5. やらないこと 禁止事項。多くても3つまで 3行
6. 迷ったときの動き 推測で埋めるのか、質問し返すのか 2行

6番の「迷ったときの動き」を書いておくかどうかで、実務での使い物になり方が変わります。書かないと、Claudeは足りない情報をそれらしく埋めてしまいます。金額・日付・氏名・型番など、間違えると事故になる項目については「読み取れないときは推測せず、不明と書いて最後に質問する」と明記してください。

短く保つのが公式の推奨

指示文は長ければよいものではありません。Anthropicの公式ヘルプは、コンテキストの使い方を最適化する項目として「プロジェクト指示は簡潔に保つ」を挙げ、プロジェクトの一般的な文脈、主要な指針、Claudeの役割に使うのが最も性能が出る、としています(出典:Anthropic「How large is the context window on paid Claude plans?」)。

目安として、カスタム指示は40行以内に収めてください。それを超えるなら、細かい規定は指示文ではなくナレッジのファイル(社内表記ルール、書式の見本)に移すべきです。指示は「どう振る舞うか」、ナレッジは「何を参照するか」。この住み分けを守ると、指示文が肥大しません。

よくある書き方の失敗

  • 「丁寧に対応してください」だけ書く:判断の基準がないので、出力が毎回ぶれます
  • 禁止事項を10個並べる:優先順位が不明になり、守られなくなります。3つまでに絞ってください
  • 出力の型を言葉で説明する:見出し名と順番を実物で書いてください。「見やすくまとめて」は指示になりません
  • 会社の説明を説明欄に書く:前述のとおりClaudeには渡りません。カスタム指示に書きます

指示文そのものの書き方をもっと基礎から知りたい場合は、プロンプトの書き方プロンプトエンジニアリングとはを合わせてご覧ください。

ナレッジに入れるもの入れないもの

ここが本記事の核心です。ナレッジは「社内の全資料を放り込む場所」ではありません。入れる基準は「その業務の出力の品質に、毎回効くかどうか」の一点です。

入れるべき5種類

種類 具体例 効く理由
書式の見本 過去の良い見積書、良い議事録、良い提案書 出力の型が一発で揃う
用語と表記のルール 製品の正式名称、敬称、単位、社内の言い回し 表記ゆれの手直しが消える
変わらない事実 標準料金表、保証条件、営業日、対応エリア 毎回の説明が不要になる
判断の基準 値引きの上限、断るべき条件、優先順位の決め方 迷いのある回答が減る
過去の質疑集 よくある問い合わせと回答の対 一次回答の精度が上がる

入れてはいけない3種類

  1. 個人データ:顧客名簿、応募者の履歴書、従業員の評価記録など。個人情報保護委員会は令和5年6月2日の注意喚起で、個人データを含むプロンプトを入力する場合、その事業者が当該データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。確認できていないなら入れない、が原則です。
  2. 認証情報:パスワード、APIキー、社内システムのログイン情報。Anthropic自身も、機密性の高い情報として金融情報・健康情報・パスワード等の共有には慎重であるよう推奨しています(出典:Anthropic「I would like to input sensitive data into my chats with Claude」)。
  3. 頻繁に変わる生データ:日次の在庫表、当月の受注一覧など。ナレッジは自動更新されないため、古いまま参照され続けます。古い数字を根拠にした回答は、間違いに気づきにくく、最も危険です。

条件つきで入れてよいもの

「社外秘だが個人データではない」資料は、共有範囲と学習利用の設定を確認したうえで判断します。原価表・仕入先の条件・未公開の商品情報などが該当します。判断の手順は次の3つです。

  • その作業場は限定公開か。全社公開なら、全社に見せてよい資料だけを入れる
  • 契約しているプランで、入力データが学習に使われない設定になっているか(次章で扱います)
  • 社内のAI利用ルールで、その分類の資料の外部入力が認められているか

3つ目のルールがまだない会社は、先に1枚だけ作ってください。作り方は社内AIルールの作り方で扱っています。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、AIの利用をめぐるサイバーリスクが初めて3位に選出されており、資料の入力範囲を決めないまま使い始めるのは、いまや無視できない論点です(出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」)。

業務ごとの分け方の判断基準

「どの単位で作業場を分けるか」に、正解のテンプレートはありません。ただし、迷ったときに使える基準は3つあります。

分ける基準は3つ

  1. 読者が違うなら分ける:社外の顧客に出す文章と、社内向けの報告では、文体も禁止事項も違います。同じ作業場に混ぜると、指示文が両方の条件を抱えて肥大します。
  2. 参照する資料が違うなら分ける:見積業務で見るのは料金表、採用業務で見るのは求人票の雛形です。関係ない資料が同居すると、RAGの検索でも余計な候補が増えます。
  3. 更新頻度が違うなら分ける:年1回しか変わらない書式と、毎月変わる商品情報を同じ場所に置くと、更新のたびに全体を見直す羽目になります。

逆に、この3つがすべて同じなら、無理に分けないでください。「メール返信」と「電話メモの清書」は、読者も資料も更新頻度も近いので、1つの作業場で足ります。分けすぎると、どこで作業するか迷って使われなくなります。

最初は3つまで

当社が中小企業の支援に入るときは、最初に作る作業場を3つまでに制限します。理由は、4つ以上を同時に立ち上げると、どれも中途半端に終わるからです。総務省の「令和7年版 情報通信白書」でも、日本企業が生成AI導入で挙げる懸念の1位は「効果的な活用方法がわからない」で、中小企業では活用方針を明確に定めていないという回答が約半数を占めています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」)。方針がない状態で数を増やしても、活用方法の答えは出ません。

選び方の順番は、「頻度が高い」かつ「型が決まっている」かつ「間違えても致命傷にならない」業務からです。見積の下書き、問い合わせ返信の下書き、議事録の整形。この3つはほとんどの会社で当てはまります。

分けすぎたときの直し方

作りすぎた作業場は、消す前にアーカイブしてください。アーカイブしても共有設定やメンバーは保持され、解除すればそのまま元に戻ります。なおアーカイブしたプロジェクトは、いったんアーカイブを解除しないと削除できません(出典:Anthropic「How can I create and manage projects?」)。

よく使う作業場には星を付けておくと、左側の一覧からすぐ開けます。開くまでの手数が1つ減るだけで、定着率は目に見えて変わります。

設計例1|見積と提案の作業場

ここからは、そのままコピーして使える設計例です。角括弧の部分だけを自社の情報に書き換えれば動きます。

プロジェクト名:見積・提案の下書き
共有範囲:営業部のみ(限定公開)
入れるナレッジ:標準料金表(テキストPDF)、過去の良い提案書2件、値引きの判断基準を書いたメモ、製品の正式名称一覧、保証とアフターの条件
入れないもの:顧客名簿、個別案件の原価詳細、進行中の商談メモ

あなたは、[産業機械の販売と保守・従業員28名]の会社で、
見積書と提案書の「下書き」を作る係です。
利用者は営業担当者で、読み手は取引先の設備担当者と、その上長です。
作った文章は営業担当者が必ず確認し、修正してから提出します。

【受け取るもの】
案件の概要メモ(客先名、要望、想定台数、希望納期、予算感)。
このうち読み取れない項目がある場合は、推測で埋めず「未確認」と書き、
回答の最後に「確認したい項目」として箇条書きで質問してください。

【手順】
1. ナレッジの標準料金表を参照し、該当する型式と単価を特定します。
2. 料金表にない型式が出てきた場合は、金額を書かずに「要見積」と記載します。
3. 値引きは、ナレッジの判断基準の範囲内でのみ提案します。
   範囲を超える要望があった場合は、金額を書かず「要決裁」と記載します。
4. 納期は、ナレッジに記載がある場合のみ書きます。ない場合は「別途回答」とします。
5. 提案書の本文は、相手の困りごとを1文で言い換えてから解決策を書きます。

【出力の型】
次の見出しをこの順で必ず使います。
1. 案件概要(客先/要望/台数/希望納期)
2. ご提案(相手の困りごとの言い換え1文+解決策3点以内)
3. 見積内訳(品名/型式/数量/単価/金額の表形式)
4. 前提条件(保証・アフター・支払条件はナレッジの表記をそのまま使う)
5. 確認したい項目(未確認がある場合のみ)
文体は「です・ます」。1文は60字以内にします。

【やらないこと】
1. 料金表にない金額を推測して書かない。
2. 製品名は正式名称一覧の表記をそのまま使う。略称に変えない。
3. 納期の約束、値引きの確約、他社比較の断定はしない。

【迷ったときの動き】
金額・日付・型式のいずれかが読み取れないときは、
下書きを作る前に「不足している項目」を先に質問してください。

この設計の要点は、金額に関する判断をすべて「書かない側」に倒していることです。見積の下書きで最も怖いのは、それらしい金額が入ったまま提出されることです。「要見積」「要決裁」という言葉が出てきたら人間が見る、という運用にすれば、事故の起点をつぶせます。

設計例2|問い合わせ返信の作業場

プロジェクト名:問い合わせ返信の下書き
共有範囲:営業事務と営業(限定公開)
入れるナレッジ:よくある質問と回答の対(30件程度)、営業日と受付時間、返品と修理の条件、社内の敬称と署名の書式
入れないもの:顧客の連絡先一覧、過去のクレーム対応記録(個人が特定できるもの)

あなたは、[産業機械の販売と保守]を行う会社で、
お客様からの問い合わせメールに対する返信文の「下書き」を作る係です。
利用者は営業事務の担当者です。あなたが送信することはありません。
作った文章は担当者が読んで直してから送ります。

【受け取るもの】
お客様から届いたメール本文と、担当者からの短いメモ(回答方針)。
回答方針が書かれていない場合は、返信文を書く前に
「先方に伝えたい結論を一言で教えてください」と質問してください。
方針が不明なまま返信文を書き始めないでください。

【手順】
1. お客様のメールから、質問・要望・苦情を分けて読み取ります。
2. 質問が複数ある場合は、すべてに漏れなく触れます。
3. ナレッジの質疑集に同じ趣旨の質問があれば、その回答の表現を優先して使います。
4. 苦情が含まれる場合は、冒頭で事実に対するお詫びを1文だけ入れます。
   原因や責任の所在には触れません。
5. 日程・金額・数量は、担当者のメモかナレッジにある内容のみ書きます。

【出力の型】
1. 件名(Re: を付けた元の件名)
2. 宛名(ナレッジの敬称ルールに従う)
3. 本文(お礼1文+回答+次のご案内の順。全体で400字以内)
4. 署名(ナレッジの署名書式をそのまま使う)
5. 担当者への申し送り(本文の外。確認が必要な点を箇条書き)

【やらないこと】
1. 納期・金額・在庫の有無を、根拠なく断定しない。
2. 謝罪の範囲を広げない。原因の推測を書かない。
3. 他社製品との比較や、社内事情の説明はしない。

【迷ったときの動き】
判断が分かれる内容は本文に書かず、
「担当者への申し送り」に回して人間の判断を待ってください。

この設計の要点は、「担当者への申し送り」という欄を出力の型に組み込んでいることです。AIに任せる範囲と人が決める範囲の境界を、出力の中に固定してしまうやり方です。これがないと、判断が必要な内容まで本文に紛れ込みます。

ここまでで手が止まったら

設計例を自社の言葉に置き換える段階で、「うちの業務だとどこを直せばいいか分からない」となる会社は少なくありません。当社は、実際の業務を1つ選んで、ナレッジの選定からカスタム指示の作成、現場での定着までを一緒に進めています。費用は初期0円、月額5万円です。お問い合わせはこちらから、まずは無料でご相談ください。

設計例3|採用と求人原稿の作業場

プロジェクト名:採用の文章作成
共有範囲:総務と経営者(限定公開)
入れるナレッジ:求人票の雛形、過去に反応が良かった求人原稿2本、労働条件の確定情報(就業時間、休日、手当の種類)、自社の強みを書いたメモ
入れないもの:応募者の履歴書と職務経歴書、面接評価シート、在籍者の個人情報

あなたは、[産業機械の販売と保守・従業員28名・地方都市に本社]の会社で、
採用に関する文章の下書きを作る係です。
利用者は総務担当者で、読み手は求職者と、その家族です。

【受け取るもの】
募集する職種名と、担当者からの短いメモ(求める人物像、急ぎ度、掲載先)。
労働条件はナレッジの確定情報だけを使います。
メモにもナレッジにもない条件は、推測せず「未定」と書いてください。

【手順】
1. 職種名から、ナレッジの雛形と過去原稿のうち近いものを1つ選びます。
2. 仕事内容は、1日の流れが想像できる粒度で書きます。抽象語だけにしません。
3. 求める経験は「必須」と「歓迎」に分けます。必須は3つ以内にします。
4. 自社の強みは、ナレッジのメモにある事実のみを使います。
5. 給与・休日・手当は、ナレッジの確定情報の表記をそのまま写します。

【出力の型】
1. 職種名(20字以内)
2. 仕事内容(1日の流れを3行+担当範囲を3行)
3. 求める経験(必須3つ以内/歓迎3つ以内)
4. 労働条件(就業時間/休日/給与/手当。未確定は「未定」と明記)
5. この仕事の正直なところ(大変な点を1つだけ書く)
6. 確認したい項目(未定がある場合のみ)
文体は「です・ます」。誇張表現と最上級の表現は使いません。

【やらないこと】
1. 「アットホームな職場」「風通しが良い」など、根拠のない形容は使わない。
2. 年齢・性別・国籍を条件として書かない。
3. 数値の実績を、ナレッジにない形で作らない。

【迷ったときの動き】
労働条件に不明点がある場合は、原稿を書く前に不明点を一覧で質問してください。

この設計の要点は、出力の型に「この仕事の正直なところ」を入れていることです。良いことだけを並べた求人原稿は、入社後の早期離職につながります。大変な点を1つだけ書かせる欄を用意しておくと、原稿の質が安定します。応募者の個人データをナレッジに入れないことも、この設計では必須条件です。

設計例4|月次報告と社内文書

プロジェクト名:月次報告の作成
共有範囲:管理部門と経営者(限定公開)
入れるナレッジ:報告書の書式(見出しの順番)、報告の粒度を示す過去の良い例2本、部門名と役職名の正式表記、社内の数値の定義(売上の計上基準など)
入れないもの:当月の生の売上明細、給与データ、個人の評価に関する記述

あなたは、[産業機械の販売と保守・従業員28名]の会社で、
月次の社内報告書の下書きを作る係です。
利用者は管理部門の担当者で、読み手は経営者と各部門の責任者です。

【受け取るもの】
利用者が貼り付ける当月の数値と、出来事のメモ。
数値の定義が不明な場合は、ナレッジの定義を優先します。
ナレッジにも定義がない数値は、加工せずそのまま転記し、
末尾に「定義未確認」と付けてください。

【手順】
1. 数値を、前月比と前年同月比が読み取れる形に整理します。
   比較対象の数値がない場合は、比較を書かずに実績のみ書きます。
2. 増減が大きい項目を3つまで選び、メモにある事実だけで理由を書きます。
   メモに理由がない場合は「理由は未確認」と書きます。
3. 出来事のメモから、来月に影響が残るものだけを拾います。
4. 最後に、判断が必要な事項を「経営判断が必要な項目」として並べます。

【出力の型】
1. 今月の要点(3行以内)
2. 数値の実績(項目/当月/前月比/前年同月比の表形式)
3. 増減の理由(3項目まで。1項目60字以内)
4. 来月に影響する事項(箇条書き)
5. 経営判断が必要な項目(箇条書き。なければ「なし」)
6. 定義未確認の項目(ある場合のみ)
体言止めを含む簡潔な書き言葉にします。感想と評価は書きません。

【やらないこと】
1. メモにない理由を推測して書かない。
2. 数値を丸めない。四捨五入の指示がない限り、受け取った桁のまま書く。
3. 特定の個人の責任に触れる書き方をしない。

【迷ったときの動き】
数値の定義が食い違う場合は、報告書を作る前に
「どの定義を使うか」を質問してください。

この設計の要点は、「定義未確認」という逃げ道を用意していることです。社内報告で最も揉めるのは、数値そのものではなく「その数値が何を指しているか」です。定義が曖昧なまま報告書が出ると、後から全部作り直しになります。

社内の誰まで共有していいか

共有範囲の判断は、機能の仕様を知らないと決められません。まず仕様を正確に押さえます。

公開と限定の2択

TeamプランとEnterpriseプランでプロジェクトを作るとき、可視性は2択です。Public(組織全員が閲覧して利用できる)Private(招待された人だけが利用できる)で、作成後にいつでも切り替えられます(出典:Anthropic「Project visibility and sharing」)。

判断の目安は単純です。ナレッジに入れた資料を、全社員が見てよいかどうか。見てよいなら公開、見せたくない資料が1つでもあるなら限定にします。人ではなく資料を基準に決めるのが、迷わないコツです。

閲覧と編集の権限差

共有する相手ごとに、2段階の権限を設定できます。

権限 できること できないこと 向く相手
Can view(閲覧) ナレッジと指示の閲覧、その中でのチャット 指示とナレッジの編集 使うだけの現場メンバー
Can edit(編集) 指示とナレッジの変更、メンバー設定の更新 作成者固有の一部操作 その業務の責任者1名から2名

運用上の推奨は、編集権限を2名までに絞ることです。全員が編集できる状態にすると、指示文が少しずつ書き換わり、誰がいつ何を直したのか分からなくなります。編集は「その業務の責任者と、その代理」の2名。残りは閲覧。これで十分回ります。

共有してもチャットは見られない

ここは安心材料として知っておいてください。プロジェクトを組織全体に公開しても、その中であなたが行ったチャットは他のメンバーからは見えません。公式ヘルプは「プロジェクトが公開であっても、そのプロジェクト内でのあなたのチャットは非公開であり、手動で共有しない限り組織の他のメンバーはアクセスできない」と明記しています(出典:同上)。

共有されるのは、あくまで作業場(ナレッジとカスタム指示)です。会話の中身まで筒抜けになるわけではありません。この点を説明しないまま共有を進めると、現場から「見られているようで使いにくい」という抵抗が出ます。最初の説明会で必ず伝えてください。

管理者は全社公開を止められる

会社としてのガードも用意されています。TeamとEnterpriseのPrimary OwnerとOwnerは、組織設定のData and privacyから「Public projects」をオフにできます。オフにすると既存の公開プロジェクトはすべて限定公開に変換され、以後は新規の公開プロジェクトを作れなくなります。ただし、個別のメンバーへの共有は引き続き可能です(出典:Anthropic「Disable public projects for your organization」)。

Enterpriseプランでは、グループ単位での共有もベータ提供されています。グループに入れば自動で権限が付き、抜ければ失われる方式です。適用には最大5分ほどかかるとされています(出典:Anthropic「Project visibility and sharing」)。人の出入りが多い部署では、この方式のほうが管理が楽になります。

入れた資料は学習に使われるか

最も多い不安に、公式の記載で正面から答えます。結論は「契約しているプランによって扱いが違う」です。

法人向けは既定で学習に使わない

TeamプランとEnterpriseプラン(Claude for Work)およびAPIは、Anthropicのプライバシーセンターで「既定では、当社の商用製品からの入力または出力をモデルの訓練に使用しません」と明記されています。ただし、親指の上下ボタンでフィードバックを明示的に送った場合や、利用者自身がデータの使用を許可した場合は例外とされています(出典:Anthropic Privacy Center「Is my data used for model training?(商用製品)」)。料金ページのTeamプランの説明にも「既定であなたのコンテンツをモデル訓練に使用しない」と記載されています(出典:Anthropic「Plans & Pricing」)。

フィードバックボタンについては、TeamとEnterpriseの管理者が組織設定から一括で無効にできます。社外秘の資料を扱う作業場を運用するなら、この設定を先に確認しておくと、担当者が気軽に押してしまう経路を塞げます。

個人向けは設定次第

Free、Pro、Maxの各プランは扱いが異なります。プライバシーセンターは、チャットとコーディングセッションを利用する条件として、利用者がClaudeの改善に使うことを選択した場合、安全性レビューのために会話がフラグされた場合、明示的に訓練に同意した場合、を挙げています(出典:Anthropic Privacy Center「Is my data used for model training?(消費者向け製品)」)。

つまり個人プランでは、プライバシー設定の内容によって扱いが変わります。社員が個人アカウントで業務資料をナレッジに入れている状態は、会社として設定を確認できないため、最もリスクが高い形です。業務で継続的に使うなら、法人プランに一本化するのが素直な解決策です。

日本の公的資料が求めていること

日本側の要請も確認しておきます。個人情報保護委員会は令和5年6月2日の注意喚起で、個人データを含むプロンプトを入力する場合には、その事業者が当該データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。

ここで重要なのは、「確認する」ことが求められている点です。安全そうだから大丈夫、ではなく、公式の記載を読んで確認した記録を残す。それが会社としてやるべきことです。本記事で示した公式ページのURLは、その確認の出発点として使ってください。中小企業のセキュリティ全体の考え方は中小企業のセキュリティ対策で整理しています。

【モデルケース】月60時間を削減するまで

以下は実在の企業の事例ではなく、当社が想定する典型的な状況にもとづく試算です。実際の効果は、業務内容、資料の整備状況、社内の体制によって変わります。時給2,500円、月20営業日を前提に計算しています。

想定する会社

従業員28名、地方都市に本社を置く産業機械の販売と保守の会社。営業4名、営業事務2名、総務1名、管理部門2名。見積と提案は営業と営業事務が分担し、問い合わせのメール返信は営業事務が一次対応。議事録は持ち回り。求人は年に2回、総務が原稿を作成。月次報告は管理部門が作成。

導入前の状態は、社員の何人かが個人のアカウントで生成AIを使っており、会社としての方針はない、というものでした。総務省の白書が示す「中小企業では活用方針を明確に定めていないとの回答が約半数」という状況と一致します。

業務別の試算表

業務 導入前(月) 導入後(月) 削減時間 月間削減額
見積・提案書の作成 32時間 12時間 20時間 50,000円
問い合わせの一次返信 26時間 10時間 16時間 40,000円
議事録と社内共有 18時間 6時間 12時間 30,000円
月次報告資料の作成 12時間 6時間 6時間 15,000円
求人原稿と面接記録 10時間 4時間 6時間 15,000円
合計 98時間 38時間 60時間 150,000円

3か月の進め方

時期 やること 担当
1か月目 作業場を3つだけ作る(見積・問い合わせ返信・議事録)。ナレッジは各3ファイルから5ファイルに絞る 各業務の責任者
1か月目 個人アカウントでの業務利用をやめ、法人プランに一本化。入力してよい情報の線引きをA4で1枚配布 経営者が決裁
2か月目 週1回、うまくいかなかった例を持ち寄り、カスタム指示を直す。編集権限は各作業場2名まで 各業務の責任者
2か月目 使われている作業場と使われていない作業場を判別。使われていないものは原因を1つに特定 総務
3か月目 作業場を2つ追加(月次報告・採用)。既存の3つはナレッジの棚卸しを1回実施 各業務の責任者
3か月目 ナレッジに入れてよい資料の分類を、社内AIルールに追記 経営者と総務

つまずいた点

この進め方でも、必ず引っかかる箇所が3つあります。

  • 1か月目:ナレッジに入れる資料が見つからない。「良い見積書の見本」が社内のどこにもなく、探すのに2週間かかりました。実際には、資料を探す時間が導入作業の大半を占めます。
  • 2か月目:出力の型が現場の書式と合わない。カスタム指示の見出し名を、実際に使っている書式の見出し名にそろえるまで、手直しが減りませんでした。
  • 3か月目:更新した資料が反映されない。料金表を改定したのに、ナレッジのファイルが古いままでした。ナレッジは自動更新されないため、改定時に差し替える担当を決める必要があります。

費用の考え方

費用は2つに分かれます。1つはツールの利用料、もう1つは設計と定着の支援です。

ツールの利用料は、Teamプランの標準シートを6名分契約する想定です。表示価格は年払いで1人あたり月20ドル、月払いで月25ドルです(出典:Anthropic「What is the Team plan?」)。日本円での実額は、契約時の表示と為替、税の扱いで変わるため、ここでは断定しません。

当社の支援を利用する場合、初期費用0円、月額5万円が標準です。この中で、対象業務の選定、ナレッジの選定と整備、カスタム指示の作成、共有範囲の設計、現場での定着までを行います。3か月で一区切りとし、その後は運用の相談と見直しに使っていただく形が一般的です。

試算では月60時間、金額換算で月15万円分の時間が空きます。ただしこれは「その時間がそのまま利益になる」という意味ではありません。空いた時間を訪問や保守の対応に回して初めて意味が出ます。時間を空けたあと、そこに何を入れるかを先に決めておいてください。

作ったが使われない5つの原因

プロジェクト機能で最も多い失敗は、作った直後に使われなくなることです。当社が見てきた原因は、ほぼ次の5つに収まります。

原因 症状 直し方
1. 業務が広すぎる 「営業全般」という作業場を作り、何を頼めるか分からない 出す成果物を1つに絞って作り直す
2. 出力が現場の書式と違う 毎回、体裁を直してから使っている カスタム指示の見出し名を実際の書式に合わせる
3. ナレッジが多すぎる 関係ない資料が引かれ、回答がぼやける 1作業場あたり5ファイル前後まで絞る
4. 入口が遠い どこにあるか分からず、普通のチャットで済ませてしまう 星を付けて左側の一覧に固定する
5. 直す人がいない 最初の指示文のまま、誰も手を入れていない 編集権限を持つ責任者を1名決める

このうち最も多いのは1番です。「営業で使う作業場」ではなく「見積の下書きを作る作業場」。この粒度の違いが、使われるかどうかを分けます。作業場の名前を見て、そこで何を頼むかが即答できないなら、業務が広すぎます。

もう1つ、見落とされがちなのが「チャット間で文脈が共有されない」仕様への対処です。良い出力が得られた回のやりとりは、そのまま放置せず、良い例としてナレッジに1ファイル追加してください。この積み重ねが、作業場の精度を上げる唯一の方法です。

GPTsとの違いは3点だけ

「ChatGPTのGPTsと何が違うのか」という質問をよく受けます。実務の判断に関わる違いは3点です。

観点 Claudeのプロジェクト ChatGPTのGPTs
作れるプラン 無料プランでも作成可(最大5個) 作成と編集は有料プランが必要
共有の単位 作業場を組織内で共有(Team以上) 作ったGPTをリンクや組織内で共有
設計の発想 業務ごとの作業場。会話履歴も内側に貯まる 用途ごとのアシスタント。会話は外側に残る

GPTsは有料プランで作成と編集ができ、共有の範囲は公開設定によって変わります(出典:OpenAI Help Center「Creating and editing GPTs」OpenAI Help Center「Sharing and publishing GPTs」)。

使い分けの結論はこうです。社外にも配りたい、あるいは不特定多数に使わせたいならGPTs。社内の特定業務を、資料ごと囲って回したいならプロジェクト。両方を使っている会社もあり、どちらかを選ばなければならないものではありません。GPTsの作り方はGPTsの作り方で手順まで解説しています。

運用を続けるための見直し方

作業場は、作った日が最高品質で、そこから劣化していきます。劣化の主因は、資料の陳腐化です。

月1回の棚卸し

月1回、15分で終わる棚卸しを決めてください。見るのは3点だけです。

  1. ナレッジの資料が最新か:料金表、条件、書式が改定されていないか。改定していたら差し替える
  2. 今月その作業場が使われたか:チャットが1件もなければ、原因を上の5つから特定する
  3. 手直しが増えている箇所はどこか:同じ直しを3回したら、カスタム指示に1行足す

アーカイブと削除の使い分け

使わなくなった作業場は、まずアーカイブします。アーカイブしても共有設定・権限・ナレッジはそのまま保持され、解除すれば元どおりになります。アクセスを本当に切りたい場合は、アーカイブではなく共有設定からメンバーを削除する必要があります(出典:Anthropic「How can I create and manage projects?」)。

この点は運用上の落とし穴です。アーカイブは「片付ける」機能であって「権限を切る」機能ではありません。退職者や異動者が出たときは、アーカイブではなくメンバー削除で対応してください。

記録に残すこと

作業場を作ったら、次の4項目だけを社内の管理表に残してください。Excelでも紙でも構いません。

  • 作業場の名前と、対象の業務
  • 共有範囲(限定か全社公開か)と、編集権限を持つ人
  • ナレッジに入れた資料の一覧と、その更新担当
  • 最後に見直した日付

この管理表があるだけで、取引先から情報管理の体制を聞かれたときに答えられます。IPAが公開している中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインのような網羅的な体制づくりまでは難しくても、AI利用に限った管理表なら中小企業でも維持できます。

よくある質問(FAQ)

Q. 無料プランでも使えますか?

使えます。公式ヘルプは「プロジェクトは無料アカウントを含むすべてのユーザーが利用でき、無料ユーザーは最大5個まで作成できる」と明記しています。ただし作業場を他のメンバーと共有する機能は、TeamプランとEnterpriseプランに限られます。まず試すだけなら無料プランで足ります。

Q. ナレッジは何件まで入る?

プロジェクトのファイルは1ファイル30MBまで、ファイル数は無制限とされていますが、合計の内容がコンテキストウィンドウに収まる必要があります。上限に近づくと自動的にRAGモードに切り替わり、容量が最大10倍まで拡張されます。実務上は、精度の観点から1作業場あたり5ファイル前後に絞ることをお勧めします。

Q. 資料は学習に使われますか?

プランによります。TeamプランとEnterpriseプラン(商用製品)については、Anthropicのプライバシーセンターが「既定では商用製品からの入力または出力をモデルの訓練に使用しない」と明記しています。Free、Pro、Maxの個人向けプランは、プライバシー設定でモデル改善を許可しているかどうかで扱いが変わります。業務利用なら法人プランへの一本化をお勧めします。

Q. 説明欄に書けば伝わりますか?

伝わりません。公式ヘルプに「Claudeは名前と説明の詳細にアクセスできない」と明記されています。説明欄は人間が一覧で見分けるためのものです。Claudeに伝えたい前提は、必ずカスタム指示かプロジェクトナレッジに書いてください。ここを誤解している方が非常に多いポイントです。

Q. 前の会話を覚えていますか?

いいえ。公式ヘルプは「プロジェクト内のチャット間で文脈は共有されない。ただしその情報をプロジェクトナレッジに追加した場合は別」と注記しています。前の会話で決めた内容を効かせたい場合は、その内容をカスタム指示かナレッジに書き戻す必要があります。仕様であって不具合ではありません。

Q. 紙をスキャンした資料は読める?

読まれない可能性が高いです。プロジェクトのファイルは、マルチモーダルPDFを除き「テキスト抽出のみ」とされています。画像として保存された図面や写真は、テキストが抽出できなければ材料になりません。ナレッジに入れる資料は、テキストが選択できる状態のものに限る、と社内で決めておくのが安全です。

Q. 共有すると会話も見られる?

見られません。公式ヘルプは「プロジェクトが公開であっても、そのプロジェクト内でのチャットは非公開であり、手動で共有しない限り組織の他のメンバーはアクセスできない」と明記しています。共有されるのはナレッジとカスタム指示、つまり作業場そのものです。この点は導入時の説明会で必ず伝えてください。

Q. 編集権限は何人までが適正?

公式に上限はありませんが、運用上は2名までをお勧めします。全員が編集できると、カスタム指示が少しずつ書き換わり、いつ誰が何を直したのか分からなくなるためです。その業務の責任者と代理の2名に編集を、残りは閲覧に設定するのが、中小企業では最も回りやすい形です。

Q. 勝手に全社公開されると心配です

TeamとEnterpriseのPrimary OwnerとOwnerは、組織設定のData and privacyから公開プロジェクトの作成そのものを無効にできます。無効にすると既存の公開プロジェクトはすべて限定公開に変換されます。個別メンバーへの共有は引き続き可能なので、社内の共同作業を止めずに全社公開だけを止められます。

Q. 削除できないのはなぜ?

アーカイブ済みのプロジェクトは、そのままでは削除できません。いったんアーカイブを解除してから削除してください。また、アーカイブしても共有設定とメンバーは保持されるため、アクセスを切る目的でアーカイブを使うのは誤りです。権限を切りたい場合は共有設定からメンバーを削除してください。

Q. 作ったのに誰も使ってくれません

原因はほぼ5つに絞れます。業務の範囲が広すぎる、出力が現場の書式と違う、ナレッジが多すぎる、入口が遠い、直す人がいない、のいずれかです。最も多いのは1つ目で、「営業で使う場所」ではなく「見積の下書きを作る場所」まで絞ると使われ始めます。作業場の名前を見て、何を頼むか即答できるかを確認してください。

Q. GPTsとどちらを使うべきですか?

社外にも配りたい、不特定多数に使わせたいならGPTsが向きます。社内の特定業務を、資料ごと囲って少人数で回したいならプロジェクトが向きます。GPTsは作成と編集に有料プランが必要ですが、プロジェクトは無料プランでも作成できるため、試すハードルはプロジェクトのほうが低いと言えます。両方を併用している会社もあります。

Q. 何個くらい作るのが適正ですか?

最初は3つまでにしてください。4つ以上を同時に立ち上げると、どれも中途半端に終わります。頻度が高く、型が決まっていて、間違えても致命傷にならない業務から選ぶのが定石で、見積の下書き、問い合わせ返信の下書き、議事録の整形の3つはほとんどの会社で当てはまります。定着してから追加してください。

Q. 支援を頼むと何をしてもらえますか?

当社の場合、対象業務の選定、ナレッジに入れる資料の選定と整備、カスタム指示の作成、共有範囲と権限の設計、現場での定着支援までを行います。費用は初期0円、月額5万円です。3か月で一区切りとし、その後は運用の相談と見直しにお使いいただく形が一般的です。ツールの利用料は別途必要です。

まとめ:作業場を3つ作る

最後に、要点を整理します。

  • プロジェクト機能は、業務ごとに「ナレッジ・カスタム指示・チャット履歴」をまとめた作業場を作る機能
  • 作成は無料プランでも可能(最大5個)。作業場の共有ができるのはTeamプランとEnterpriseプランのみ
  • プロジェクトの名前と説明はClaudeに渡らない。前提はカスタム指示かナレッジに書く
  • 同じプロジェクトでもチャット間で文脈は共有されない。効かせたい内容はナレッジに書き戻す
  • ナレッジは1ファイル30MBまで、テキスト抽出のみ。上限に近づくと自動でRAGに切り替わる
  • 入れるのは書式の見本・用語ルール・変わらない事実・判断基準・質疑集。個人データと認証情報は入れない
  • 法人プランは既定で入力データを学習に使わない。個人プランは設定次第
  • 共有は「資料を全社に見せてよいか」で判断し、編集権限は2名までに絞る
  • 最初に作るのは3つまで。頻度が高く型が決まっている業務から選ぶ

プロジェクト機能の価値は、新しい技術を使うことではありません。毎週くり返している業務から、毎回の説明と資料探しを取り除くことです。だからこそ、機能の説明を読んだだけでは効果が出ず、自社の業務に合わせた設計が必要になります。本記事の設計例4つを、自社の言葉に置き換えるところから始めてください。

本記事の情報について

本記事に記載したプランの条件、容量制限、共有範囲、学習利用の扱いは、2026年8月時点でAnthropicの公式ページに掲載されている内容を確認して記載しています。これらの仕様は変更される可能性があるため、実際の契約や設計にあたっては、必ずAnthropic公式ヘルプセンターおよび料金ページの最新の記載をご確認ください。

当社は、Claudeのプロジェクト機能を「作って終わり」にせず、現場で使われる形まで落とし込む支援を行っています。どの業務を作業場にすべきか、ナレッジに何を入れてよいか、社内の誰まで共有すべきか。判断に迷う段階でも構いません。費用は初期0円、月額5万円です。お問い合わせはこちらから、まずは無料でご相談ください。

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