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GPTsの作り方5ステップ|業務用の指示文の例つき

📅 公開日 2026.08.09 ⏱ 読了 約47分
前田 大輔
監修者
前田 大輔Ai-Raku(アイラク) 代表

業務効率化支援を行う「Ai-Raku(アイラク)」代表。国立大学でAIの研究を行い、ITコンサル・ウェブコンサルを経て独立。官公庁向けの業務効率化や上場企業の支援等を経て、中小企業の現場に定着するAI活用を企画から運用まで一気通貫で支援している。

「GPTsを作ってみたけれど、思ったとおりに答えてくれない」。この記事にたどり着いた方の多くは、まだ何も作っていない人ではなく、一度作って、期待外れだった人ではないでしょうか。名前を決めて、説明文を書いて、なんとなく「丁寧に対応してください」と書いた。それで動かなかった。原因が分からないまま放置している。

結論から書きます。うまく動かない原因のほとんどは、ツールの選び方でもモデルの性能でもなく、指示文(Instructions)の書き方にあります。そしてこれは、才能やプログラミング知識ではなく、型を知っているかどうかの差です。

この記事では、ChatGPTのGPTs(GPT Builder)で社内業務用のAIを作る手順を、非エンジニアの中小企業担当者がそのまま実行できるところまで具体化します。OpenAIの公式ドキュメントで確認できる事実だけを土台にしつつ、そのままコピーして使える指示文の完成例を4つ載せました。ここが、この記事のいちばんの中身です。

この記事でわかること

  • GPTsを作成・編集できるプランの条件(2026年8月時点の公式表記)
  • 作る前に決めておく3つのこと(これを飛ばすと必ずやり直しになります)
  • 作り方の5ステップと、各ステップでつまずく箇所
  • 指示文を6つのブロックに分けて書く型
  • そのままコピーして使える指示文の完成例4つ(議事録・返信下書き・社内規程・見積チェック)
  • 期待どおり答えない5つの原因と、公式ドキュメントが示す直し方
  • 社内資料を読ませるときの線引きと、作ったGPTsを社員に配る方法
  • GPTsで足りるのか、別の仕組みが必要かの判断基準
  1. 結論|GPTsは指示文が9割
  2. GPTsとは|ChatGPTの分身
    1. 通常のChatGPTとの違い
    2. GPTsに設定できる要素
    3. できないことも先に知る
  3. 使えるプランと作成の条件
    1. 作成には有料プランが必要
    2. 作れるのはWeb版だけ
    3. 解約したらどうなるか
  4. 作る前に決める3つのこと
    1. どの業務を1つ選ぶか
    2. 誰が使うかを1人決める
    3. 出力の合格ラインを決める
  5. GPTsの作り方|5ステップ
    1. ステップ1|業務を決めて例を集める
    2. ステップ2|指示文を書く
    3. ステップ3|資料を読ませる
    4. ステップ4|プレビューで直す
    5. ステップ5|共有して配る
  6. 指示文の型|6つのブロック
    1. ブロック1|役割と対象
    2. ブロック2|受け取るものと足りないとき
    3. ブロック3|手順を条件つきで書く
    4. ブロック4|出力の型を固定する
    5. ブロック5|やらないことを3つだけ
    6. ブロック6|良い例と悪い例
  7. 完成例1|議事録を整えるGPT
  8. 完成例2|問い合わせ返信の下書き
  9. 完成例3|社内規程に答えるGPT
  10. 完成例4|見積書のチェック係
  11. 期待どおり答えない5つの原因
    1. 原因1|指示が多すぎて矛盾
    2. 原因2|資料に答えが無い
    3. 原因3|出力の型が無い
    4. 原因4|前提を毎回伝えていない
    5. 原因5|1つに詰め込みすぎ
  12. 社内資料を読ませる線引き
    1. 学習に使われるかはプラン次第
    2. 入れてよい資料・だめな資料
    3. 個人情報を入れる前の確認
  13. 作ったGPTsを社員に配る方法
    1. 共有レベルと権限レベル
    2. 個人アカウントの共有範囲
    3. 法人ワークスペースでの配り方
    4. 配ったあとに必ずやること
  14. GPTsで足りるかの判断基準
    1. GPTsが向いている業務
    2. 別の仕組みが要る場合
  15. モデルケース(試算)|30名の商社
    1. 導入前の月間工数
    2. 4本のGPTs導入後の試算
    3. 作る側の手間と費用
  16. 運用と更新|月30分の型
  17. 失敗しやすい3つのパターン
  18. よくある質問(FAQ)
    1. Q. 無料プランでGPTsは作れますか
    2. Q. プログラミングの知識は必要ですか
    3. Q. スマートフォンから作れますか
    4. Q. 指示文は何文字書けばよいですか
    5. Q. 社内資料は学習に使われますか
    6. Q. 社員だけに配ることはできますか
    7. Q. 知識ファイルは何件まで可能ですか
    8. Q. 前回の会話を覚えていますか
    9. Q. 作成者は会話内容を見られますか
    10. Q. 答えないときは何から直しますか
    11. Q. 知識ファイルを使ってくれません
    12. Q. 自社サイトに設置できますか
    13. Q. 何本まで作ってよいですか
    14. Q. GPTストアに公開すべきですか
  19. まとめ|まず1つ作って配る

結論|GPTsは指示文が9割

GPTsで成果が出るかどうかは、指示文にどれだけ具体的な業務の作法を書き込めたかでほぼ決まります。逆に言えば、機能をどれだけ有効にしても、資料を何十件読ませても、指示文が曖昧なままなら結果は変わりません。

これは感覚論ではありません。OpenAIの公式ヘルプは、GPTがうまく動かないときの最初の対処として「指示文に矛盾や広すぎる記述がないか見直す」「指示文を短くする」「重複や矛盾するルールを削除する」「『Xが起きたらYをする』のように多段の動きを明示的な構造で書く」「動きを安定させたいなら例を1つか2つ加える」を挙げています。機能を足すより先に指示文を締めるほうが早く直る、という趣旨が明記されています(出典:OpenAI「Troubleshooting GPTs」)。

もうひとつ、作る前に知っておくと納得できる仕様があります。GPTsは、保存されたメモリ・カスタム指示・過去の会話を使いません。会話は毎回まっさらな状態から始まります(出典:OpenAI「GPTs in ChatGPT」)。普段のChatGPTで「前に話した前提」を覚えてくれていた感覚のまま作ると、GPTsは冷たく感じます。前提はすべて指示文に書き切る必要がある、という設計なのです。

だからこの記事は、指示文の書き方に紙幅の大半を割きます。手順そのものは、慣れれば30分で終わります。

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GPTsとは|ChatGPTの分身

GPTs(カスタムGPT)は、特定の目的に合わせて設定したChatGPTのバージョンです。指示・知識・使う機能を組み合わせて、その用途に特化した使い心地を作れます(出典:OpenAI「GPTs in ChatGPT」)。

通常のChatGPTとの違い

いちばん大きな違いは、毎回同じ前提を打ち直さなくてよくなることです。普段のChatGPTでは、議事録を整えてもらうたびに「うちの会社は建材の卸で、会議の参加者は営業と工務で、決定事項と宿題を分けて出してほしい」と説明し直すことになります。この説明を一度だけ指示文に書いて固定したものが、GPTsです。

もうひとつの違いは、人に渡せることです。上手なプロンプトを書ける人が1人いても、その人が休んだら止まります。GPTsにしておけば、プロンプトを書けない社員でも、質問を投げるだけで同じ品質の出力が得られます。中小企業でAIの効果が頭打ちになる原因の多くは「一部の人しか使えない」ことなので、この差は小さくありません。

なお、プロンプトそのものの基礎を先に押さえたい方はプロンプトエンジニアリングとは、実際の書き方の型はプロンプトの書き方で解説しています。GPTsの指示文は、この延長線上にあります。

GPTsに設定できる要素

GPTsに設定できるのは、公式ヘルプによると次の要素です。

要素 役割 作るときの重要度
名前・説明 利用者に何のGPTか伝える
指示(Instructions) ふるまい・口調・手順・境界を決める 最重要
会話の開始例 開いた人が最初に押せる例文 中(定着に効く)
知識(Knowledge) 参照させる資料ファイル 業務による
機能(Capabilities) ウェブ検索・画像生成・キャンバス・データ分析など 低(絞るほど安定)
アプリ/アクション 外部サービスやAPIとの接続 低(最初は不要)

アプリとアクションは、1つのGPTで同時には使えません(出典:OpenAI「Creating and editing GPTs」)。最初に作る社内業務用のGPTsでは、どちらも使わないほうが安定します。

できないことも先に知る

期待外れを防ぐために、公式に「できない」と書かれていることを先に共有します。

  • 自社サイトへの埋め込みはできません。GPTsはChatGPTの中で使う前提の機能で、外部サイトやアプリにChatGPTを埋め込む手段ではありません。製品にアシスタントを組み込みたい場合はAPIを使う、と明記されています
  • メモリ・カスタム指示・過去の会話は使いません。会話は毎回新規です
  • 作成者は、利用者の個別の会話を見ることができません。誰がどう使ったかを覗く用途には使えません
  • 作成・編集はWeb版のみです。モバイルアプリはGPTsの利用はできますが、作成はできません

(出典:OpenAI「GPTs in ChatGPT」およびOpenAI「Creating and editing GPTs」

使えるプランと作成の条件

「無料で作れますか」は、この分野でいちばん情報が古くなりやすい質問です。2026年8月時点の公式表記を確認しました。

作成には有料プランが必要

公式ヘルプには、GPTsはすべてのChatGPT利用者が使えるが、作成または編集には有料のサブスクリプションが必要と明記されています。管理されたワークスペースでは、加えてワークスペースの設定と役割の権限にも左右されます(出典:OpenAI「GPTs in ChatGPT」)。

個人向けプランはFree・Go・Plus・Proの4段階です。料金ページの機能一覧では、「Projects, scheduled tasks, and custom GPTs(プロジェクト・予約タスク・カスタムGPT)」がPlusの項目として記載されており、Proはその拡張版として記載されています(出典:OpenAI「ChatGPT Pricing」)。Goについては料金ページのカスタムGPTに関する明示がないため、個人でGoを検討している場合は、契約前に料金ページの最新の記載を必ず確認してください。

法人向けはBusinessとEnterpriseです。ChatGPT Businessの標準シートには、ChatGPT本体に加えてGPTs・プロジェクト・アプリ・ChatGPTエージェント・ディープリサーチなどが含まれると明記されています。価格は多くの国のUSD表記で月払いなら1ユーザーあたり月25米ドル、年払いなら月20米ドル標準シートは最低2シートからです(出典:OpenAI「What is ChatGPT Business?」)。なお、ChatGPT Teamは2025年8月29日にChatGPT Businessへ名称変更されています。

プラン GPTsを使う GPTsを作る 会社で使うときの注目点
Free 可(要サインイン) 不可 作成不可。既存GPTsの利用のみ
Go 料金ページに明示なし 契約前に最新の記載を確認
Plus 個人契約。会社としての管理機能はない
Pro 利用量が多い個人向け
Business 既定で学習に使われない。管理者機能あり
Enterprise 可(権限による) 役割ごとの権限制御・監査に対応

作れるのはWeb版だけ

公式ヘルプは「GPTの作成と編集はWeb体験に限定される。モバイルアプリはGPTsの利用はできるが作成はできない」と明記しています(出典:OpenAI「Creating and editing GPTs」)。スマートフォンで作り方を調べていて「作成ボタンが見つからない」という場合、これが原因であることがほとんどです。パソコンのブラウザで作業してください。

解約したらどうなるか

作成できるプランからダウングレードまたは解約した場合、作成済みのGPTsは引き続き使えますが、編集や新規作成はできなくなります(出典:OpenAI「GPTs in ChatGPT」)。試用期間中に作ったものが消えるわけではない、という点は安心材料です。

作る前に決める3つのこと

ここを飛ばして作り始めた人が、だいたい「期待どおり答えない」に行き着きます。所要時間は15分です。

どの業務を1つ選ぶか

最初のGPTsは、業務を1つに絞ってください。「なんでも相談できるアシスタント」を作ると、必ず失敗します。指示文が総花的になり、どの業務でも中途半端な出力になるからです。

選ぶ基準は3つです。第一に、毎週発生すること。月1回の業務は、使い方を忘れます。第二に、出力の形が決まっていること。議事録、返信文、報告書のように「こういう形で出てくれば合格」と言える業務が向いています。第三に、間違っても致命傷にならないこと。最初から契約条件の判断や請求金額の確定を任せないでください。

総務省の「令和7年版 情報通信白書」によると、生成AIを業務で使っていると回答した割合は日本で55.2パーセント、そのうち「メールや議事録、資料作成等の補助」に使っていると回答した割合は47.3パーセントでした。つまり実際に定着しているのは、文書を整える系の業務だということです(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」)。最初の1本は、この線を素直に狙うのが現実的です。

誰が使うかを1人決める

「全社員が使えるように」と考えると、指示文の前提が書けなくなります。最初は実在の1人を思い浮かべて作ってください。営業事務の誰か、総務の誰か。その人が普段どんな言葉で聞いてくるか、どこまで説明しなくても分かるかを想定できると、指示文が一気に具体的になります。

そして、その1人に先に「作るから使ってみて」と伝えておきます。作ってから配ると、たいてい使われません。

出力の合格ラインを決める

作る前に、合格の見本を1つ手で作ってください。議事録GPTなら「理想の議事録」をWordで1枚作る。返信下書きGPTなら「これが出てきたら合格」というメール文面を1本書く。

この見本があると、指示文に書くべき項目(見出しの並び、文字数、口調)がそのまま抜き出せます。さらに、プレビューで試したときに「良い・悪い」を感覚ではなく比較で判断できます。合格の見本を作らずに始めると、いつまでも「なんか違う」から抜け出せません。

GPTsの作り方|5ステップ

ここから実際の手順です。パソコンのブラウザで作業してください。

ステップ1|業務を決めて例を集める

前章で決めた業務について、過去の実物を3件用意します。議事録GPTなら、過去の会議メモ3件と、そこから作られた完成版の議事録3件。返信下書きGPTなら、実際に来た問い合わせ3件と、担当者が返した文面3件です。

この「入力と出力のペア」が、指示文の材料になります。3件並べると、自分でも気づいていなかった社内の作法が見えてきます。「金額は必ず税抜で書いている」「相手が個人客のときだけ冒頭に一言添えている」といった暗黙のルールです。これを言語化することが、実質的に指示文を書く作業そのものです。

ステップ2|指示文を書く

ChatGPTのサイドバーで「GPTを探す(Explore GPTs)」を開き、「作成(Create)」を選ぶと、GPTビルダーが起動します。作り方は2通りあり、対話形式で作る方法と、設定画面で直接項目を編集する方法があります(出典:OpenAI「Creating and editing GPTs」)。

おすすめは設定画面で直接書く方法です。対話形式は最初の骨組みを作るには便利ですが、対話の途中でChatGPTが良かれと思って余計な指示を足すことがあり、後から「なぜこう答えるのか」が追いにくくなります。指示文は自分で書き、自分で読める状態にしておくほうが、直すときに圧倒的に早いです。

何を書くかは、次章の「6つのブロック」に従ってください。文字数の目安は600字から1,500字程度です。長すぎると矛盾が生まれます。

ステップ3|資料を読ませる

社内規程や商品資料を参照させたい場合は、知識(Knowledge)にファイルを添付します。1つのGPTに最大20ファイル、1ファイルあたり最大512MBまで添付できます(出典:OpenAI「Creating and editing GPTs」)。

公式が示す使い分けは明確です。知識には参照資料を入れ、ルール・口調・手順は指示文に書く。そして、レイアウトが複雑なファイルは中身を使いにくくなるため、できるだけテキスト中心のファイルにする。画像だけに頼らず、重要な図には説明のテキストを添える、とされています。

実務的には、PDFのままではなく、テキストに整えて入れるのが効果的です。就業規則のPDFをそのまま入れるより、条文ごとに見出しを付けたテキストにするほうが、答えの精度が上がります。手間はかかりますが、ここが一番効きます。マニュアルそのものをAIで整える方法はマニュアル作成をAIで行う方法で扱っています。

ステップ4|プレビューで直す

共有や公開の前に、編集画面のプレビューで実際のプロンプトを試し、口調と正確さを確認して設定を詰める、というのが公式の推奨手順です(出典:OpenAI「Creating and editing GPTs」)。

ここで使うのが、ステップ1で集めた過去の実物3件です。同じ入力を入れて、ステップ3で作った「合格の見本」とどれだけ近いかを比べます。ズレていたら、指示文を1か所だけ直して、また同じ入力で試す。公式ヘルプも「小さな変更をプレビューで試すほうが、何が効いたか特定しやすい」としています。一度に何か所も直すと、原因が分からなくなります。

この往復を5回から10回やると、だいたい実用レベルになります。ここを1回で終わらせようとする人が、最も多く挫折します。

ステップ5|共有して配る

納得できたら「作成(Create)」を押し、共有設定を開きます。編集中の変更は自動的に下書きに保存され、既存のGPTを編集している場合は「更新(Update)」で反映されます。また、バージョン履歴から過去のバージョンを確認して復元できます(出典:OpenAI「Creating and editing GPTs」)。指示文をいじって悪化させても戻せる、というのは安心材料です。

共有の具体的なやり方は、プランによって選択肢が変わります。後半の「作ったGPTsを社員に配る方法」で詳しく説明します。

指示文の型|6つのブロック

ここがこの記事の中心です。指示文は、次の6つのブロックを上から順に書くと、破綻しません。

ブロック1|役割と対象

最初の2行で「あなたは誰の、何を助ける係か」を書きます。「優秀なアシスタント」と書かないでください。情報量がゼロです。「建材卸売会社の営業事務が書く、社内会議の議事録を整える係」と書きます。業種と相手の職種が入るだけで、出力の語彙が変わります。

ブロック2|受け取るものと足りないとき

利用者が何を貼り付けるのかを書き、足りないときにどうするかまで書きます。ここを書かないGPTsは、情報が欠けていても勝手に埋めて答えます。これが「それっぽいけど間違っている」出力の主因です。

「会議のメモが渡されます。日付・参加者・議題のいずれかが不明な場合は、推測せずに『不明』と書き、最後に不足項目を箇条書きで質問してください」と書いておくと、挙動が安定します。

ブロック3|手順を条件つきで書く

公式ヘルプは、多段の作業では「Xが起きたら、Yをする」という明示的なステップ構造を使い、セクションを明確な区切りで分けることを推奨しています。また、禁止事項を長く並べるより、肯定形で具体的に「これをする」と書くほうがよいとされています(出典:OpenAI「Creating and editing GPTs」)。

実務では、番号付きの手順にして、分岐だけ条件文で書くのが読みやすいです。「1. まず決定事項を抜き出す」「2. 次に宿題を抜き出す」「3. 金額に関する発言があれば、税抜か税込かが分かる場合のみ記載し、分からなければ『要確認』と書く」といった具合です。

ブロック4|出力の型を固定する

出力の見出しと並び順を、指示文の中に実物で書いてください。「見やすくまとめて」では毎回形が変わります。「以下の見出しをこの順で必ず使う。1.会議概要 2.決定事項 3.宿題(担当・期限つき) 4.保留事項 5.次回の議題」と書けば、形は固定されます。

細かいですが効果が大きいのが、リンクの書式です。公式ヘルプは、リンクがクリックできる形にならない場合、指示文でリンクの書式を指定するよう案内しています。これは共有やアクセスの問題ではなく、指示文の書式の問題である、と明記されています(出典:OpenAI「Troubleshooting GPTs」)。

ブロック5|やらないことを3つだけ

禁止事項は3つまでに絞ります。多いほど守られなくなり、矛盾も生まれます。社内業務用なら、次の3つで足ります。

  1. 資料や入力に書かれていないことは推測して書かない。分からない場合は「資料に記載なし」と書く
  2. 金額・日付・氏名・型番は、入力にあるとおりに写す。整形も丸めもしない
  3. 最終判断はしない。判断が必要な箇所は「要確認」と印を付けて人に返す

3つ目は特に重要です。どこまでAIに任せ、どこから人が決めるかを、指示文の中で線引きしておくということです。社内ルールとしての線引きの作り方は社内AIルールの作り方にまとめています。

ブロック6|良い例と悪い例

公式ヘルプは、GPTに特定の定義や分類を適用させる場合、許容できる出力と許容できない出力の短い例を含めることを推奨しています(出典:OpenAI「Creating and editing GPTs」)。

実際、例を1組入れるだけで出力の安定度がはっきり変わります。長い例は不要です。1行ずつで十分です。「良い例:宿題/見積の再提出(担当:田中/期限:3月14日)」「悪い例:宿題/見積を直す」。この2行があるだけで、担当と期限を書き落とす頻度が下がります。

指示文セルフチェック(6項目)

  • 業種と、使う人の職種が書いてあるか
  • 情報が足りないときの動き(質問する・不明と書く)が書いてあるか
  • 手順が番号付きで、分岐が条件文になっているか
  • 出力の見出しと並び順が実物で書いてあるか
  • 禁止事項が3つ以内に絞れているか
  • 良い例と悪い例が1組入っているか

完成例1|議事録を整えるGPT

ここからは、実際にコピーして使える指示文の完成例です。自社の言葉に置き換えてお使いください。角括弧の部分だけを自社の情報に書き換えれば動きます。

1つ目は、会議中に取った雑なメモから、そのまま配れる議事録を作るGPTです。使う機能は何も有効にしなくて構いません。知識ファイルも不要です。

あなたは、[建材卸売業・従業員30名]の会社で、社内会議の議事録を整える係です。
利用者は営業事務の担当者で、会議中に取った箇条書きの走り書きを貼り付けてきます。

【受け取るもの】
会議中の走り書きメモ。整っていない前提で読んでください。
日付・参加者・議題のいずれかが読み取れない場合は、推測で埋めず「不明」と書き、
回答の最後に「確認したい項目」として箇条書きで質問してください。

【手順】
1. メモ全体を読み、決定したこと・やることに分けます。
2. 「〜する」「〜で進める」と読める発言は決定事項に入れます。
3. 担当者名が読み取れる作業は宿題に入れ、担当と期限を必ず併記します。
   期限が読み取れない場合は「期限未定」と書きます。
4. 結論が出ていない話題は保留事項に入れます。
5. 金額の話が出た場合、税抜か税込かが読み取れるときだけ記載し、
   読み取れないときは金額の後ろに「要確認」と付けます。
6. 次回の議題が読み取れる場合のみ最後に記載します。

【出力の型】
次の見出しをこの順で必ず使い、見出しは省略しません。
1. 会議概要(日付/参加者/議題)
2. 決定事項(箇条書き・1行1件)
3. 宿題(1行1件・「内容(担当:氏名/期限:日付)」の形)
4. 保留事項(箇条書き・なければ「なし」と書く)
5. 次回の議題(なければ省略可)
6. 確認したい項目(不明点がある場合のみ)
文体は「です・ます」ではなく、体言止めを含む簡潔な書き言葉にします。
1件あたり40字以内にまとめます。

【やらないこと】
1. メモに書かれていないことを推測して書かない。
2. 氏名・日付・金額・型番は、メモにある表記のまま写す。整形も丸めもしない。
3. 良し悪しの評価や、次に取るべき施策の提案はしない。

【良い例と悪い例】
良い例:宿題/A社向け見積の再提出(担当:田中/期限:3月14日)
悪い例:宿題/見積の件、田中さんが対応

このGPTのポイントは、「不明」と書かせる指示を最初に置いていることです。議事録で最も困るのは、後から「これ誰が言ったんだっけ」となる箇所を、AIがそれらしく埋めてしまうことだからです。

完成例2|問い合わせ返信の下書き

2つ目は、顧客からのメールに対する返信の下書きを作るGPTです。送信はしません。下書きまでです。この線引きを指示文に明記してあります。

あなたは、[住宅設備の販売・施工]を行う会社で、
お客様からのメールに対する返信文の「下書き」を作る係です。
利用者は営業担当者です。作った文章は担当者が必ず読んで直してから送ります。
あなたが送信することはありません。

【受け取るもの】
お客様から届いたメール本文と、担当者からの短いメモ(回答方針)。
回答方針が書かれていない場合は、返信文を書く前に、
「先方に伝えたい結論を一言で教えてください」と質問してください。
方針が不明なまま返信文を書き始めないでください。

【手順】
1. お客様のメールから、質問・要望・苦情を分けて読み取ります。
2. 質問が複数ある場合は、すべてに漏れなく触れます。
3. 苦情が含まれる場合は、冒頭で事実に対するお詫びを1文だけ入れます。
   原因や責任の所在には触れません。
4. 日程・金額・数量は、担当者のメモにある内容のみ書きます。
   メモにない場合は「[要記入]」と書いて空欄にします。
5. 次のアクション(誰がいつ何をするか)を必ず最後に1文入れます。

【出力の型】
件名:(30字以内)
本文:
 1行目 宛名([会社名] [担当者名]様 の形)
 2行目 空行
 3行目以降 本文(1段落3文以内、全体で400字以内)
 末尾 次のアクション1文
本文の後に「担当者への確認事項」を箇条書きで付けます。
文体は「です・ます」、一文は60字以内にします。

【やらないこと】
1. 金額・納期・在庫・保証の可否を、メモにない内容で断定しない。
2. 「必ず」「絶対に」「確実に」という言葉を使わない。
3. 責任の所在や原因の推測を書かない。判断が必要な箇所は「[要確認]」と書く。

【良い例と悪い例】
良い例:納期については[要記入]を予定しております。確定次第、改めてご連絡いたします。
悪い例:納期はおそらく来週中には間に合うかと思います。

このGPTの肝は、「[要記入]」という空欄を作らせることです。AIに数字を埋めさせないことで、誤情報の送信という最も重い事故を構造的に防げます。担当者は空欄を埋めるだけなので、作業も速くなります。

自社の業務に合う指示文が書けないときは

「型は分かったが、自社の業務に落とすところで手が止まる」というご相談をよくいただきます。当社では、実際の業務資料を拝見しながら、最初の1本の指示文を一緒に書くところから支援しています。無料相談はこちらから、現在の困りごとをお聞かせください。

完成例3|社内規程に答えるGPT

3つ目は、知識(Knowledge)を使う例です。就業規則・経費規程・稟議のルールなど、総務に毎回同じ質問が来る領域を対象にします。この形は、社内問い合わせの負荷を下げる効果がいちばん分かりやすく出ます。

知識には、規程本文をテキストに整えたファイルを入れてください。条文ごとに見出しを付け、改定日を各ファイルの先頭に書いておくのがコツです。

あなたは、[従業員30名の建材卸売業]の総務担当者の代わりに、
社内規程についての質問に答える係です。
利用者は全社員で、規程を読んだことがない人も含まれます。

【答えの根拠】
回答は、添付された規程ファイルに書かれている内容のみを根拠にします。
一般的な労働法の知識や、他社の慣行を根拠にしてはいけません。
規程ファイルに該当する記載が見つからない場合は、次の1文だけを返します。
「この件は規程に記載がありません。総務(内線[XX])にご確認ください。」

【手順】
1. 質問がどの規程のどの条文に関わるかを特定します。
2. 該当条文の内容を、社員が読んで分かる言葉に言い換えて説明します。
3. 条文の名称と条番号、そのファイルの改定日を必ず併記します。
4. 例外や条件がある場合は、条件を先に書き、その後に結論を書きます。
5. 金額・日数・締切が条文にある場合は、数字をそのまま引用します。
6. 質問が2つ以上の規程にまたがる場合は、規程ごとに分けて答えます。

【出力の型】
1. 結論(2文以内)
2. 根拠(規程名・第◯条・改定日)
3. 条件や例外(該当する場合のみ・箇条書き)
4. 手続きが必要な場合の手順(箇条書き)
5. 補足(総務に確認したほうがよい点がある場合のみ)
文体は「です・ます」、専門用語は初出時にかっこ書きで補足します。

【やらないこと】
1. 規程に書かれていない運用や慣行を答えない。
2. 個別の事情に対する可否の判断をしない。「該当しそうな条文」を示すまでにとどめる。
3. 過去の判断事例や、他の社員の申請内容には触れない。

【良い例と悪い例】
良い例:結論/出張の日当は支給されます。根拠/旅費規程 第5条(改定日:2026年4月1日)
悪い例:結論/一般的には出張日当は支給されることが多いです。

このGPTは、「規程に無ければ答えない」と明示しているのが最大の特徴です。ここを書かないと、AIは一般的な労働法の知識で答えてしまい、自社の規程と食い違います。これが社内向けAIで最も起きやすい事故です。

なお、扱う文書が数百件を超える、頻繁に改定される、部署ごとに見せてよい範囲が違う、といった条件が付く場合は、GPTsの知識では手に負えなくなります。その場合はRAG(検索拡張生成)とはで解説している仕組みの検討に移ってください。

完成例4|見積書のチェック係

4つ目は、書類の抜け漏れを見つける使い方です。判断はさせず、指摘だけさせます。チェックリストを人が持つ代わりに、AIに一次確認をさせる形です。

あなたは、[建材卸売業]の営業事務が作成した見積書を、
提出前にチェックする係です。合否の判断はせず、指摘だけを返します。
最終的な提出可否は、必ず人が判断します。

【受け取るもの】
見積書の内容(テキストまたは表の貼り付け)。
読み取れない項目がある場合は、推測せずに「読み取れませんでした」と書きます。

【チェック項目】
次の順に確認し、1項目ずつ結果を返します。
1. 宛名(会社名・部署・敬称)の記載があるか。株式会社の位置が正しいか。
2. 発行日と見積有効期限の両方があるか。有効期限が発行日より前になっていないか。
3. 各明細に、品名・数量・単位・単価・金額があるか。
4. 数量×単価と金額が一致しているか。一致しない行を指摘します。
5. 小計・消費税・合計の3行があるか。合計が小計と消費税の和と一致するか。
6. 税抜か税込かの表記があるか。
7. 納期・納品場所・支払条件の記載があるか。
8. 前回の見積がある場合、単価が変わっている行を指摘します。

【出力の型】
1. 指摘あり(項目番号・該当箇所・何が問題か。1件1行)
2. 確認できた項目(項目番号のみを列挙)
3. 読み取れなかった項目(あれば)
指摘は事実のみを書き、「〜すべきです」という助言は書きません。

【やらないこと】
1. 金額や数量を自分で計算し直して、正しい値を提示しない。
   一致しないという事実だけを指摘する。
2. 値引きの妥当性、単価の高い安いなど、商売上の評価をしない。
3. 見積書を書き換えた完成版を出力しない。

【良い例と悪い例】
良い例:項目4/3行目「アルミ枠 10本 単価2,400円 金額26,400円」/数量×単価と金額が一致しません。
悪い例:3行目の金額が違うので24,000円に直してください。

この4つ目は、AIに計算をさせないという指示が入っているのがポイントです。生成AIは計算を間違えることがあり、間違えたまま「正しい値」を提示されると、かえって事故につながります。「ズレている」とだけ言わせ、直すのは人がやる。この分担が、業務で使えるかどうかの分かれ目です。

ChatGPTを業務で使う場面ごとの向き不向きはChatGPTの業務活用、他のAIとの使い分けはClaudeとChatGPTの違いでまとめています。

期待どおり答えない5つの原因

ここが、この記事を探している方の本題だと思います。作ったけれど動かない、というときに見る順番で並べます。

原因1|指示が多すぎて矛盾

いちばん多い原因です。うまくいかないたびに指示文へ1行ずつ追加していくと、「簡潔に」と「詳しく」、「敬語で」と「体言止めで」のような矛盾が同居します。

公式ヘルプの対処も、まさにこれを指しています。矛盾した指示や広すぎる指示がないか見直し、可能なところは短くし、重複や矛盾するルールを削除する、とされています(出典:OpenAI「Troubleshooting GPTs」)。直し方は「足す」ではなく「引く」です。一度、指示文を上から音読して、逆のことを言っている2行を探してください。

原因2|資料に答えが無い

知識ファイルを入れたのに使ってくれない、という相談も多いです。公式の確認手順は次のとおりです。まずその答えが本当にファイルに依存すべき内容かを確認する。次に、より読みやすくテキスト中心のファイルにする。より具体的に資料を指すプロンプトで試す。必要な情報が実際にファイルの中にあるかを確かめる。複雑なPDFやスライドは、きれいなテキスト形式に整理する(出典:OpenAI「Troubleshooting GPTs」)。

実務では、4番目が原因の大半です。「規程に書いてあるはず」と思っていた内容が、実は口伝えの運用だった、というケースが本当に多いのです。この場合、直すべきはGPTsではなく規程のほうです。

原因3|出力の型が無い

「毎回形が違う」「たまに長すぎる」という症状は、出力の型を書いていないことが原因です。見出しの名前と並び順を、指示文に実物で書くだけで解決します。文字数も「400字以内」のように数字で指定してください。「簡潔に」は人によって解釈が違うので、AIにとっても曖昧です。

原因4|前提を毎回伝えていない

前述のとおり、GPTsはメモリ・カスタム指示・過去の会話を使いません。会話は毎回まっさらから始まります(出典:OpenAI「GPTs in ChatGPT」)。

つまり、普段のChatGPTで「うちの会社は〜」と説明していた内容は、すべて指示文に移す必要があります。会社の業種、扱う商材、顧客の種類、社内で使っている呼び方。これらを指示文の冒頭に書いてください。ここを書き足すだけで急に賢くなった、と感じるケースが少なくありません。

原因5|1つに詰め込みすぎ

議事録も作れて、メール返信も書けて、規程にも答える。こういうGPTsは、どれも中途半端になります。指示文の中で手順が競合するからです。

解決策は分割です。業務ごとに別のGPTsを作ってください。作成本数に上限はなく、1本あたりの作成時間も慣れれば30分程度です。なお、ChatGPTのWeb版では、通常の会話の中で「@」を入力してGPTを呼び出すことができ、会話の文脈を保ったまま次のメッセージをそのGPTに渡せます。この呼び出し方はiOSとAndroidのアプリでは使えず、モバイルではGPTsのメニューから開く形になります(出典:OpenAI「GPTs in ChatGPT」)。分割しても、使うときの手間はほとんど増えません。

社内資料を読ませる線引き

「社内資料を読ませたいが漏れないか不安」という悩みは、当然の感覚です。ここは仕様を正確に押さえて判断してください。

学習に使われるかはプラン次第

公式ヘルプは、GPTとの会話がOpenAIのモデル改善に使われるかどうかは利用しているプランによると明記しています。Business・Enterprise・Eduのプランでは既定でデータは学習に使われません。Free・Plus・Go・Proといった個人向けプランでは、オプトアウトしているかどうかによって、学習に使われる場合があります(出典:OpenAI「GPTs in ChatGPT」)。

個人向けプランでのオプトアウト手順も公開されています。Web版では、プロフィールアイコンから設定を開き、データコントロールで「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにします。この設定はアカウント全体に適用され、いつでも変更できます(出典:OpenAI「Data Controls FAQ」)。

法人向けプランについては、OpenAIは「既定では顧客のビジネスデータをモデルの学習に使わない」「入力と出力の権利は顧客に帰属する」と明記しています(出典:OpenAI「Enterprise privacy」)。社内資料を継続的に読ませるなら、法人プランを契約するのが順当です。

入れてよい資料・だめな資料

当社が支援する際に使っている線引きを、そのまま載せます。

資料の種類 知識に入れてよいか 理由
就業規則・経費規程 入れてよい 社内で全員に公開されている文書
商品カタログ・仕様書 入れてよい 社外にも出している情報
業務マニュアル・手順書 入れてよい 個人情報を含まないものに限る
顧客名簿・取引先リスト 入れない 個人情報・取引先の秘密情報
従業員名簿・人事評価 入れない 個人情報。共有範囲の事故が致命的
取引先との契約書 入れない 秘密保持義務に抵触する可能性
見積・受注の個別データ 入れない 都度貼り付けで足りる。蓄積しない

判断に迷ったときの基準は1つです。「そのファイルを、共有相手全員にメールで送ってよいか」。送ってよいなら知識に入れてよく、ためらうなら入れないでください。GPTsを共有すると、共有相手はその知識を参照した回答を受け取ります。実質的に、ファイルを配ったのと近い状態になります。

個人情報を入れる前の確認

個人情報を含むデータを扱う場合は、法令上の確認事項があります。個人情報保護委員会は令和5年6月2日の注意喚起で、個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する際は、特定された利用目的の達成に必要な範囲内であることを確認する必要があるとしています。また、あらかじめ本人の同意を得ることなく個人データを含むプロンプトを入力し、当該個人データが応答結果の生成以外の目的で取り扱われる場合、個人情報保護法の規定に違反する可能性があるとしています(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。

実務的な結論はシンプルです。最初のGPTsに個人情報を入れないでください。入れなくても、業務時間は十分に減ります。

なお、会社が把握していないAI利用(シャドーAI)は、公的にもリスクとして扱われています。IPAが公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織編では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が2026年に初選出で3位に入りました(出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」)。社内で正規のGPTsを用意することは、実は把握できない利用を減らす方向に働きます。基本的な対策全体の整理はIPAのIPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」を参照し、AI利用で増える論点は中小企業のセキュリティ対策で解説しています。

作ったGPTsを社員に配る方法

ここは、プランによって選択肢がはっきり変わる部分です。「作れたのに配れない」という詰まり方が多いので、先に確認しておいてください。

共有レベルと権限レベル

公式ヘルプによると、共有レベルは次のとおりです。招待した人のみ(Invite-only)、ワークスペース内でリンクを知っている人、ワークスペース全体、リンクを知っている全員、GPTストアでの公開。あわせて権限レベルがあり、会話のみ(Can chat)設定の閲覧まで(Can view settings)編集可(Can edit)から選びます(出典:OpenAI「Sharing and publishing GPTs」)。

実務上の注意点は「設定の閲覧まで」を安易に選ばないことです。この権限では、利用者はGPTを複製し、設定内容を見ることができます。指示文と知識ファイルの構成が見える状態になるため、社内配布では「会話のみ」を既定にしてください。

個人アカウントの共有範囲

ここが最も誤解の多い点です。特定のユーザーやグループを指定した直接共有は、管理されたワークスペースでのみ利用できます。個人のChatGPTアカウントでは、「リンクを知っている全員」で共有するか、GPTストアに公開するかのいずれかになります(出典:OpenAI「Sharing and publishing GPTs」)。

つまり、個人のPlusプランで作ったGPTsを「社員だけに」限定配布することはできません。リンクを知っていれば社外の誰でも開けます。社内規程を知識に入れたGPTsをこの形で配るのは、避けるべきです。ここを理解せずに配ってしまう事故が、実際に起きています。

法人ワークスペースでの配り方

会社として配るなら、BusinessまたはEnterpriseのワークスペースが前提になります。直接共有は個人とグループを合わせて最大100宛先まで指定でき、グループは何人所属していても1宛先として数えます。この上限は直接共有にのみ適用され、ワークスペース全体への共有には適用されません(出典:OpenAI「Sharing and publishing GPTs」)。

EnterpriseとEduでは、さらに管理者側の制御が可能です。誰がGPTを作成・編集できるか、共有をどのレベルまで許すか、第三者製のGPTを使わせるかを、ワークスペース設定と役割の権限で構成できます。また、GPTの所有者がワークスペースから削除された場合、所有権はワークスペースのオーナーへ移り、未割り当てとして確認できる状態になります(出典:OpenAI「Managing GPT access in Enterprise and Edu workspaces」)。担当者が辞めたらGPTsが行方不明になる、という事態を避けられるのは、法人プランの実務的な利点です。

配ったあとに必ずやること

共有しただけでは使われません。当社が支援する場合、必ず次の3つをセットにしています。

  1. 会話の開始例を3つ入れる。開いた瞬間に押せるボタンがあるかどうかで、初回の利用率が大きく変わります
  2. 15分の説明会を1回開く。資料は不要です。目の前で1件、実物を処理して見せてください
  3. 質問の受け皿を決める。「うまく動かない」と言える相手が社内に1人いないと、黙って使われなくなります

GPTsで足りるかの判断基準

「そもそもGPTsで足りるのか、別の仕組みが要るのか」。ここを最初に見誤ると、作っては消しを繰り返すことになります。

GPTsが向いている業務

次の条件に当てはまるなら、GPTsで十分です。

  • 入力を人が貼り付けて、出力を人が受け取る(自動で動く必要がない)
  • 参照する資料が20ファイル以内で、更新が月1回程度まで
  • 使う人が全員ChatGPTにログインできる
  • 間違いがあっても、人が気づいて直せる工程に置かれている
  • 社外の顧客に直接触れさせない

別の仕組みが要る場合

逆に、次のいずれかに当てはまるなら、GPTsでは無理をすることになります。

条件 GPTsでの限界 検討する方向
自社サイトに設置したい 埋め込みは想定されていない APIを使った実装
参照文書が数百件以上 知識は最大20ファイル RAGの仕組み
部署ごとに見せる範囲が違う 知識に権限の概念がない 権限管理のある社内システム
夜間に自動で処理したい 人が開いて話しかける前提 自動化ツール・API
社外の顧客が使う 利用者にログインが必要 チャットボット製品
基幹システムと連携したい アクションの設定に技術知識が必要 個別開発

3番目までに当てはまる場合の受け皿はRAGとは、社外向けを含むチャットボット全般の設計はAIチャットボットの作り方で扱っています。本記事はあくまで「GPTsという特定機能で何がどこまでできるか」に絞っています。

なお、外部システムとの接続を担うのがアクション(Actions)です。認証方式は「なし」「APIキー」「OAuth」から選び、APIの仕様はOpenAPI形式のスキーマをJSONまたはYAMLで登録します。アクションはProモードでは利用できません(出典:OpenAI「Configuring actions in GPTs」)。この時点で、非エンジニアが最初に触る領域ではないことが分かると思います。まずはアクションなしで作ってください。

モデルケース(試算)|30名の商社

ここまでの手順を実行した場合に、業務時間がどう変わるかを試算で示します。

試算の前提

  • 以下は実在の企業ではなく、当社が想定する典型的な状況にもとづく試算です。
  • 従業員30名、営業6名・営業事務2名・総務1名の建材卸売業を想定しています。
  • 金額換算は時給2,500円・月20営業日を前提としています。
  • 削減率は実績値ではなく仮に置いた数字です。実際の値は各社で必ず異なります。この表は「自社で同じ計算をするための型」として使ってください。

導入前の月間工数

まず、この記事で作った4本のGPTsが対象とする業務の、現状の工数を洗い出します。

業務 頻度 1回あたり 月間工数 金額換算
議事録の作成 週3回 40分 8時間 20,000円
問い合わせ返信の作成 1日8件 12分 32時間 80,000円
社内規程の問い合わせ対応 1日3件 10分 10時間 25,000円
見積書の提出前チェック 1日5件 8分 13.3時間 33,250円
合計 63.3時間 158,250円

4本のGPTs導入後の試算

次に、削減率を仮に置いた場合の月間工数です。削減率は業務によって大きく変わります。文章を一から書く作業は減りやすく、判断が伴う作業は減りにくい、という傾向を反映させています。

業務 削減率(仮定) 導入後 削減時間 金額換算
議事録の作成 60% 3.2時間 4.8時間 12,000円
問い合わせ返信の作成 40% 19.2時間 12.8時間 32,000円
社内規程の問い合わせ対応 50% 5時間 5時間 12,500円
見積書の提出前チェック 30% 9.3時間 4時間 10,000円
合計 36.7時間 26.6時間 66,500円

月26.6時間、金額換算で月66,500円相当です。営業事務1人の月間労働時間の約6分の1に相当します。ただし、この数字は「浮いた時間で何をするか」が決まっていなければ、実感としては現れません。試算の目的は、投資判断ではなく「この業務に手をつける価値があるか」の順位づけです。

作る側の手間と費用

作る側にも時間がかかります。ここを隠すと判断を誤ります。

作業 時間 金額換算
過去の実物集め(4業務×3件) 約2時間 5,000円
合格の見本作り(4本) 約2時間 5,000円
指示文の作成(4本×40分) 約2.7時間 6,750円
規程のテキスト整形 約4時間 10,000円
プレビューでの調整(4本) 約4時間 10,000円
説明会と初期サポート 約2時間 5,000円
初期の合計 約16.7時間 41,750円
運用(月30分) 月0.5時間 月1,250円

ツールの費用は別途かかります。ChatGPT Businessの標準シートは、多くの国のUSD表記で月払い1ユーザーあたり月25米ドル、年払いで月20米ドル、最低2シートからです(出典:OpenAI「What is ChatGPT Business?」)。日本円での請求額は為替と課税により変動するため、契約前に管理画面で必ずご確認ください。

当社に導入支援を依頼される場合の費用は、初期費用0円・月額5万円です。上の表の「指示文の作成」「規程のテキスト整形」「プレビューでの調整」「説明会」の部分を、当社が業務を伺いながら一緒に進める形になります。自社で作れる体制を作ることが目的なので、作って納品して終わりにはしません。

運用と更新|月30分の型

GPTsは作って終わりではありません。ただし、毎日面倒を見る必要もありません。月30分で回ります。

やることは3つです。第一に、使っている人に「直したいところはあるか」を1回聞く。これだけで改善点の8割が出ます。第二に、指示文を1か所だけ直す。複数直すと、どれが効いたか分からなくなります。第三に、知識ファイルの改定日を確認する。規程が改定されたのにファイルが古いままだと、GPTsは古い答えを自信満々に返します。

バージョン履歴があるので、直して悪化した場合は前のバージョンに戻せます。ただし、アクションを使っているGPTを古いバージョンに戻した場合、認証の再設定が必要になることがあると案内されています(出典:OpenAI「Creating and editing GPTs」)。

もうひとつ、知っておくとよい仕様があります。モデルは時期によって更新・提供終了があり、使えなくなったモデルが指定されていた場合、GPTsは自動的に近い現行モデルへ切り替わります(出典:OpenAI「GPTs in ChatGPT」)。実際、2026年2月13日にGPT-4o、GPT-4.1、GPT-4.1 mini、o4-mini、GPT-5(InstantとThinking)がChatGPTから提供終了となっています(出典:OpenAI「Creating and editing GPTs」)。モデルが切り替わると出力の癖が変わることがあるので、切り替わったタイミングで一度、過去の実物で試し直してください。

失敗しやすい3つのパターン

当社が相談を受ける中で、繰り返し見るつまずき方を3つ挙げます。

1つ目は、作った人しか使っていないパターンです。指示文が作った本人の頭の中を前提にしているため、他の人が使うと的外れな出力になります。防ぐには、作る段階で別の人に触ってもらい、その人が困った箇所を指示文に反映してください。作った本人がテストしても、無意識に「通じる聞き方」をしてしまいます。

2つ目は、いつの間にか誰も直さなくなるパターンです。担当者が異動し、GPTsだけが残る。規程が改定されても知識ファイルは古いまま。誰も気づかないまま古い答えが流通します。防ぐには、GPTsの説明文の末尾に「最終更新日と担当部署」を書いてください。文字数は取りますが、古さが目に見えるようになります。

3つ目は、機能を足しすぎて不安定になるパターンです。ウェブ検索を有効にしたら、社内規程ではなくウェブ上の一般論を答え始めた、というのが典型例です。社内資料に基づいて答えさせたいGPTsでは、ウェブ検索を有効にしないほうが安定します。機能は「必要だと確認できたものだけ」を有効にしてください。

なお、総務省の調査では、生成AI導入に際しての懸念事項として日本で最も多いのは「効果的な活用方法がわからない」であり、次いで「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」が挙げられています。また、日本の中小企業では「方針を明確に定めていない」との回答が約半数を占めています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」)。方針が決まらない理由が「使い方が分からない」なのだとしたら、順番としては、小さく1本作って社内に見せるほうが早いと当社は考えています。

よくある質問(FAQ)

Q. 無料プランでGPTsは作れますか

作れません。公式ヘルプには、GPTsはすべてのChatGPT利用者が使えるが、作成または編集には有料のサブスクリプションが必要と明記されています。無料プランでできるのは、公開されているGPTsや共有されたGPTsを使うことまでです。作成できるプランの詳細は本記事の「使えるプランと作成の条件」をご覧ください。

Q. プログラミングの知識は必要ですか

指示文を書いて資料を添付するだけの使い方なら、必要ありません。必要になるのは、外部のAPIと接続するアクションを設定する場合です。アクションではOpenAPI形式のスキーマをJSONまたはYAMLで登録し、認証方式を選ぶ必要があるため、この部分は技術者の領域です。最初の1本はアクションなしで作ってください。

Q. スマートフォンから作れますか

作れません。公式ヘルプは、GPTの作成と編集はWeb体験に限定され、モバイルアプリは利用はできるが作成はできないとしています。パソコンのブラウザで作業してください。なお、作ったGPTsをスマートフォンから使うことはできます。

Q. 指示文は何文字書けばよいですか

目安は600字から1,500字程度です。短すぎると前提が伝わらず、長すぎると矛盾が生まれます。公式ヘルプも、指示に従わない場合の対処として「可能なところは短くする」「重複や矛盾するルールを削除する」を挙げています。増やす方向ではなく、必要なことを漏れなく、かつ矛盾なく書くことを目指してください。

Q. 社内資料は学習に使われますか

プランによります。Business・Enterprise・Eduでは既定で学習に使われません。Free・Plus・Go・Proといった個人向けプランでは、オプトアウトの設定によって扱いが変わります。継続的に社内資料を扱うなら、法人プランの契約が順当です。設定の変更手順はOpenAIのデータコントロールに関するヘルプに公開されています。

Q. 社員だけに配ることはできますか

個人アカウントではできません。特定のユーザーやグループを指定した直接共有は、管理されたワークスペース(BusinessやEnterprise)でのみ利用できます。個人アカウントの選択肢は「リンクを知っている全員」への共有か、GPTストアへの公開のみです。社内情報を含むGPTsを個人アカウントで配布するのは避けてください。

Q. 知識ファイルは何件まで可能ですか

1つのGPTに最大20ファイル、1ファイルあたり最大512MBまでです。ただし、件数の上限より先に「複雑なレイアウトのファイルは使われにくい」という制約に当たります。PDFのまま入れるより、見出しを付けたテキストに整えるほうが精度が上がります。20ファイルで足りない規模なら、GPTsではなくRAGの仕組みを検討する段階です。

Q. 前回の会話を覚えていますか

覚えていません。公式ヘルプは、GPTsは保存されたメモリ・カスタム指示・過去の会話を使わず、会話は毎回まっさらな状態から始まると明記しています。したがって、会社の業種や社内用語といった前提は、すべて指示文に書いておく必要があります。「前に言ったのに」と感じる症状の多くは、これが原因です。

Q. 作成者は会話内容を見られますか

見られません。公式ヘルプは、GPTの作成者は利用者がそのGPTと行った個別の会話を閲覧できないと明記しています。ただしEnterpriseやEduのワークスペースでは、コンプライアンス機能を通じてGPTsとの会話を扱える仕組みが用意されています。監査が必要な業務では、この点を含めてプランを選んでください。

Q. 答えないときは何から直しますか

まず指示文の矛盾を探してください。公式ヘルプの推奨順は、矛盾や広すぎる指示の見直し、指示の短縮、重複や矛盾するルールの削除、「Xが起きたらYをする」形での明示、例を1つか2つ追加、です。機能を足すより先に指示文を締めるほうが早く直る、とされています。1回に1か所だけ直して、プレビューで比べてください。

Q. 知識ファイルを使ってくれません

公式の確認手順は、その答えが本当にファイルに依存すべき内容か確認する、テキスト中心のファイルにする、資料をより直接指すプロンプトで試す、必要な情報が実際にファイルに存在するか確認する、複雑なPDFやスライドを整理する、です。実務では最後から2番目、つまり「そもそも書いていなかった」が最も多い原因です。

Q. 自社サイトに設置できますか

できません。公式ヘルプは、GPTsはChatGPTの中で動くよう設計されており、外部サイトやアプリにChatGPTを埋め込む手段ではないと明記しています。製品やサイトにアシスタントを組み込みたい場合はAPIを使う、とされています。社外向けの設置を検討している場合は、別の仕組みの検討に移ってください。

Q. 何本まで作ってよいですか

業務ごとに分けて作ることをお勧めします。1つのGPTsに複数業務を詰め込むと、指示文の手順が競合して精度が落ちます。ChatGPTのWeb版では通常の会話中に「@」でGPTを呼び出せるため、分けても使い勝手はほとんど落ちません。ただし、管理できる本数には現実的な限界があるので、使われていないものは定期的に整理してください。

Q. GPTストアに公開すべきですか

社内利用が目的なら不要です。公開すると誰でも使えるようになり、公開にはビルダープロフィールの整備が必要になる場合があります。また、アクションを使う公開GPTには有効なプライバシーポリシーのURLが必要です。社内向けであれば、ワークスペース内での共有にとどめてください。

まとめ|まず1つ作って配る

最後に、要点を整理します。

  • GPTsの成否は指示文でほぼ決まる。機能を足すより、指示文の矛盾を減らすほうが早く直る
  • GPTsはメモリ・カスタム指示・過去の会話を使わない。前提はすべて指示文に書き切る
  • 作成・編集には有料プランが必要で、作れるのはWeb版のみ
  • 指示文は6ブロック(役割/受け取るもの/手順/出力の型/やらないこと/良い例と悪い例)で書く
  • 知識は最大20ファイル・1ファイル512MB。ルールは指示文、資料は知識に分ける
  • 個人アカウントでは社員限定の配布ができない。会社で配るなら法人ワークスペースが前提
  • 参照文書が数百件、権限分け、サイト設置、自動実行が必要ならGPTsの守備範囲外
  • 最初の1本は、毎週発生し、出力の形が決まっていて、間違っても致命傷にならない業務から

GPTsの良いところは、失敗しても失うものが時間だけという点です。1本作るのに、慣れれば30分。合わなければ消せば終わりです。中小企業がAI活用で最初につまずくのは、検討に時間をかけすぎて何も動かないことなので、この軽さは大きな利点になります。

この記事の指示文の完成例は、そのまま貼り付けて動く形にしてあります。まずは1本、角括弧の部分を自社の情報に書き換えて作ってみてください。

作りたい業務は決まったが、指示文で手が止まっている方へ

当社は中小企業向けのAI導入支援を行っています。GPTsについては、対象業務の選定から、指示文の作成、社内資料の整え方、社員への配り方までを一緒に進めます。費用は初期費用0円・月額5万円です。「作ってみたが期待どおり動かない」という段階からのご相談でも構いません。お問い合わせはこちらから、現在の状況をお聞かせください。

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