カタログ型補助金とは|製品の選び方と一般型の違い
業務効率化支援を行う「Ai-Raku(アイラク)」代表。国立大学でAIの研究を行い、ITコンサル・ウェブコンサルを経て独立。官公庁向けの業務効率化や上場企業の支援等を経て、中小企業の現場に定着するAI活用を企画から運用まで一気通貫で支援している。

「カタログ型の補助金があると聞いたけれど、普通の補助金と何が違うのか」「うちが欲しい機械は、そのカタログに載っているのか」。省力化投資を検討し始めた中小企業の経営者から、この2つの質問を本当によく受けます。
カタログ型補助金とは、正式には中小企業省力化投資補助金の「カタログ注文型」のことです。最大の違いは1点だけで、あらかじめ国に登録された製品リスト(カタログ)の中からしか選べないという点にあります。事業計画の出来を競う従来型の補助金とは、判断の順番がまるで違います。
この記事では、公募要領と製品カテゴリ一覧の原文にあたって、カタログ注文型の仕組み、対象製品の探し方、販売事業者の選び方、一般型との使い分けまでを整理します。とくに「何から順に決めるか」という判断の順番を示すことに重点を置きました。制度全体の解説は中小企業省力化投資補助金の解説記事に譲り、本記事はカタログ注文型そのものに絞ります。
本記事は2026年8月時点で公開されている公募要領・公式サイトの記載にもとづく一般的な情報提供です。補助金の制度は改定が頻繁で、実際に2026年3月19日にも補助上限額と申請要件が変更されています。申請を検討する際は、必ず中小機構「資料ダウンロード(カタログ注文型)」で最新の公募要領をご確認ください。個別の可否判断は事務局および販売事業者にご確認をお願いします。
- カタログ型補助金で最初に決めるのは「製品」ではなく「業務」だという理由
- 2026年3月19日の改定後の補助上限額と補助率、製品ごとに別の上限がある仕組み
- 対象製品カテゴリを実際に数えた結果(194分類・登録製品2,758件・うち0件が40分類)
- 自社の欲しい機器がカタログにあるかを最短で確かめる手順
- AIやソフトウェアがカタログ型の対象になるかどうかの線引き
- 販売事業者を選ぶときの5つの基準と、初回の連絡で聞くべき質問
- 一般型と迷ったときの分かれ目3つと、モデルケースでの試算
結論|先に決めるのは製品ではない
先に結論を書きます。カタログ型補助金で失敗する会社の多くは、製品カタログを最初に開いてしまいます。正しい順番は逆で、業務から入って製品にたどり着きます。
判断は5つの順番で決まる
カタログ注文型の検討は、次の5つを上から順に潰していく作業です。どれか1つでも成立しなければ、その先を検討する意味がありません。
- どの業務の、どの工数を削るのかを1つに決める
- その業務に効く製品カテゴリがカタログに存在するかを確認する
- そのカテゴリに実際に登録されている製品があるかを確認する
- その製品を扱う販売事業者と組めるかを確認する
- 自社が人手不足要件と賃金要件を満たすかを確認する
この順番が重要なのは、カタログ注文型が販売事業者との共同申請を前提にした制度だからです。公募要領には「中小企業等と販売事業者は共同で事業計画の策定を行う」と明記されており、申請の入口も事務局サイトではなく販売事業者側にあります(出典:中小機構「中小企業省力化投資補助事業(カタログ注文型)公募要領」)。つまり、パートナーが決まらない限り申請そのものが始まりません。
カタログにない時点で終わる
ここが一般的な補助金との最大の違いです。ものづくり補助金や事業再構築補助金のように「良い事業計画を書けば通る」制度ではありません。導入したい設備がカタログに登録されていなければ、事業計画の巧拙に関係なく対象外です。
公募要領には「本事業の対象となるためには、導入する製品があらかじめ補助対象としてカタログに登録されている必要がある」とあり、さらに購入先となる販売店についても、あらかじめ当該製品を取り扱う事業者として登録されている必要があると書かれています。付き合いの長い商社があっても、その会社が登録販売事業者でなければ、その商社経由では申請できません。
この一点を先に確認するだけで、検討にかける時間が大きく変わります。逆に言えば、カタログに載っていると分かった瞬間に、この補助金は一気に現実的な選択肢になります。
カタログ型と一般型の違い
中小企業省力化投資補助金には、カタログ注文型と一般型の2つがあります。名前が同じ補助金なので混同されがちですが、性格はかなり違います。
投資の性格と補助上限の差
公式サイトの整理では、カタログ注文型は「簡易で即効性がある省力化投資」、一般型は「オーダーメイド性のある多様な省力化投資」と位置づけられています。補助上限額もカタログ注文型が最大1,500万円、一般型が最大1億円と大きく異なります(出典:中小機構「中小企業省力化投資補助金」トップページ)。
| 比較項目 | カタログ注文型 | 一般型 |
|---|---|---|
| 投資の対象 | 登録済みの汎用製品 | 個別現場に合わせた設備・システム |
| 補助上限額 | 500万〜1,000万円(賃上げ特例で750万〜1,500万円) | 750万〜8,000万円(賃上げ特例で1,000万〜1億円) |
| 補助率 | 1/2以下 | 中小企業1/2、小規模・再生事業者2/3 |
| 申請の受付 | 随時受付 | 公募回制 |
| 共同申請 | 販売事業者との共同申請が必須 | 単独で申請 |
| 補助事業期間 | 交付決定日から原則12か月以内 | 交付決定日から18か月以内 |
| 労働生産性の目標 | 年平均成長率3.0%以上 | 年平均成長率4.0%以上 |
出典:中小機構「カタログ注文型とは」および中小機構「一般型とは」(いずれも2026年8月時点)
対象になる経費の範囲
見落とされやすいのが、対象経費の広さの差です。カタログ注文型の補助対象経費は「製品本体価格」と「導入経費」の2つだけです。導入経費は設置作業、運搬費、動作確認、マスタ設定などに限られ、委託・外注費や申請代行費は明確に対象外とされています。
一方、一般型の対象経費は機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費と幅広く設定されています。クラウドサービス利用費や外注費が入っている点が決定的な違いで、ソフトウェア中心の省力化を考えるなら一般型を見るべき、という判断はここから導かれます。
公募の受け方と期間の差
カタログ注文型は2024年8月9日から随時受付に変更されており、締切に追われずに準備できます。採択・交付決定は申請から概ね1〜2か月程度、補助事業期間は交付決定日から原則12か月以内です(出典:中小機構「スケジュール(カタログ注文型)」)。
また公募要領には、本事業は令和9年3月末頃までの間に申請を受け付けること、登録された省力化製品・製造事業者・販売事業者の登録有効期間は令和9年9月末までであることが記載されています。随時受付とはいえ期限は存在します。
対して一般型は公募回制で、2026年7月31日17時に第7回の応募申請が締め切られ、第8回は8月中旬の公募開始が予定されています(出典:中小機構「中小企業省力化投資補助金(一般型)」)。締切に間に合わなければ次回を待つことになります。
カタログ型の補助額と補助率
金額の話に入ります。ここは2026年3月19日に改定されたばかりで、古い情報が検索結果に大量に残っている領域です。数字を拾うときは必ず日付を確認してください。
従業員数で上限が変わる
2026年3月19日以降の補助上限額は、従業員数によって次のように決まります。補助率は一律で1/2以下です。
| 従業員数 | 補助上限額 | 賃上げ特例を適用した場合 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 500万円 | 750万円 |
| 6〜20人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 21人以上 | 1,000万円 | 1,500万円 |
出典:中小機構「2026年3月19日制度改定(カタログ注文型)」。改定前は5人以下が200万円(300万円)、6〜20人が500万円(750万円)でしたので、小規模な会社ほど改定で上限が大きく上がりました。従業員5人以下の会社では、上限が200万円から500万円へと2.5倍になっています。
補助上限額の設定は交付申請時点での従業員数で決まります。ここでいう従業員数は中小企業基本法上の「常時使用する従業員」で、日々雇い入れられる者や2か月以内の期間を定めて使用される者などは含まれません。パート比率の高い会社では、思っていたより人数が少なく判定されることがあります。
賃上げ特例で上限が上がる
括弧内の金額を狙う場合、(a)事業場内最低賃金を3.0%以上増加させること、(b)給与支給総額を6%以上増加させることの両方を、補助事業実施期間の終了時点で達成する見込みの事業計画が必要です。さらに申請時点で、賃金引き上げ計画を従業員に表明していることが求められます。
ここは慎重に判断してください。公募要領には「自己の責によらない正当な理由なく、賃上げの目標を達成できなかったときは、補助額の減額を行う」と明記されています。上限額が上がるから取りあえず付けておく、という選択は取れません。改定前は「45円以上増加」という定額基準でしたが、改定後は率での基準に変わっています。
製品ごとの補助上限もある
ここが最も見落とされる論点です。従業員数による補助上限額とは別に、製品ごとに事前登録された補助上限額があります。
公募要領には「製品本体に対する補助額は製品毎に事前登録されている額を上限として申請することができる」とあり、さらに補助率の注記として「省力化製品の購入価格が製品毎に設定された補助上限額の2倍を上回る場合、補助率は1/2未満となる」と書かれています。つまり高額な製品を選ぶほど、実質の補助率は1/2から下がっていきます。
導入経費についても2段構えの上限があります。交付申請における製品本体価格の2割が上限であり、かつ導入経費に対する補助額は製品本体に対する補助額の2割が上限です。次の表で違いを整理します。
| ケース | 本体価格 | 製品登録上限(仮定) | 本体への補助額 | 実質の補助率 |
|---|---|---|---|---|
| 上限に収まる | 400万円 | 240万円 | 200万円 | 50% |
| ちょうど上限 | 480万円 | 240万円 | 240万円 | 50% |
| 上限を超える | 700万円 | 240万円 | 240万円 | 約34% |
※製品登録上限は説明のための仮定値です。実際の額は製品ごとに異なりますので、必ず中小機構「製品カタログ検索」で該当製品のページと販売事業者にご確認ください。
この構造を知らずに「本体1,000万円だから500万円もらえる」と見積もると、資金計画が大きく崩れます。製品を絞り込んだ時点で、その製品の登録上限額を必ず確認してください。
補助額25万円未満は不可
下限も存在します。公募要領には「補助額が25万円未満となる申請を行うことはできない」と記載されています(賃貸借契約に要する経費を補助対象とする場合を除く)。補助率1/2で計算すると、補助対象経費の総額でおおむね50万円以上が必要になります。
あわせて、購入に係る製品本体価格は単価50万円以上でなければならないという条件もあります。小型の機器を数台まとめて、という使い方は想定されていません。
対象製品カテゴリの全体像
「カタログに何が載っているのか」を、公式資料を実際に数えて整理しました。中小機構が公開している製品カテゴリ一覧(令和8年8月6日版)は全405ページのPDFで、目次部分に全カテゴリと製品登録数が一覧化されています。
194分類を数えて分けた
この一覧を集計したところ、製品カテゴリは194分類、登録されている製品の合計は2,758件でした(2026年8月6日版を当社で集計)。大分類は3つで、内訳は次のとおりです。
| 大分類 | カテゴリ数 | 代表的なカテゴリ |
|---|---|---|
| 主に非製造業を対象 | 37 | 清掃ロボット、配膳ロボット、券売機、自動精算機、自動チェックイン機、業務用自動食器類洗浄機、美容トリートメント機器 |
| 非製造業・製造業の両方を対象 | 79 | 無人搬送車(AGV・AMR)、自動倉庫、パレタイズロボット、測量機、マシンガイダンス機能付ショベル、パワーアシストスーツ、食品スライサ・カッタ |
| 主に製造業を対象 | 78 | 複合加工機、CNC三次元測定機、アーク溶接ロボット、コイルライン、3Dプリンタ、自動裁断機、AI外観検査用画像処理システム |
出典:中小機構「製品カテゴリ」(令和8年8月6日)の目次を当社で集計
注目すべきは、非製造業だけを対象にしたカテゴリが37分類あることです。カタログ注文型は工場向けの制度だと思われがちですが、飲食店、宿泊業、小売業、生活関連サービス業、介護業を対象にしたカテゴリが独立して用意されています。券売機や自動精算機、業務用食器洗浄機は非製造業向けの代表例です。
登録0件のカテゴリが40
もう1つ、検討の順番に直結する事実があります。194分類のうち40分類は、製品登録数が0件でした。カテゴリとしては開設されているものの、まだ登録製品が出ていない状態です。
たとえば「物流用ドローン」「設備点検用小型ドローン」「写真測量用ドローン/LiDAR測量用ドローン」「都市ガスガバナの遠隔監視システム」などは、2026年8月6日時点でカテゴリのみ存在し登録製品は0件です。カテゴリ名を見て「うちの業務が対象だ」と判断しても、製品が0件なら申請できません。
逆に、登録数が多いカテゴリもはっきりしています。スチームコンベクションオーブンが193件、産業用枚葉デジタル印刷機が103件、券売機が96件、産業用小ロット印刷対応デジタル印刷機が92件、後工程自動化機能付成形品取出しロボットが86件と続きます。登録数が多いカテゴリは製品比較の余地が大きく、販売事業者の選択肢も広がります。
カテゴリの追加は継続的に行われています。2026年8月6日には「リネン類外観検査装置」、7月16日には「レーザ加工機用PSA式窒素ガス供給システム」など3カテゴリが追加されました(出典:中小機構「製品カタログ(カタログ注文型)」)。今日なかったカテゴリが半年後にある可能性は十分にあります。
業務領域から逆に探す
製品カテゴリ一覧には、カテゴリごとに「対象業種」と「対象業務領域」が併記されています。この対象業務領域から逆引きするのが、実務上いちばん早い探し方です。
対象業務領域として設定されているのは、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫、運送・運搬、梱包・加工、調理、清掃業務、配膳業務、注文受付、請求・支払、顧客対応、施工、調査・測量、点検・監視、文書・帳票管理などです。まず自社で最も工数を食っている業務領域を1つ決め、その領域を対象にしているカテゴリだけを見ると、194分類が一気に十数分類まで絞れます。
うちの機器は載っているのか
読者から最も多い質問がこれです。最短で確かめる手順を書きます。
カテゴリ名で当たりを付ける
製品カタログのページには「製品カテゴリ検索」と「製品カタログ検索」の2つの入口があります。使い分けは単純で、まずカテゴリ検索で分類があるかを見て、あってから製品検索で実物を見るのが正しい順番です。
注意点として、カテゴリ名は一般的な商品名と一致しないことがあります。たとえば現場で「バリ取り機」と呼んでいる装置は「鍛圧・板金加工用バリ取り装置」、「タブレット注文」で探しても出てこない券売機系は「券売機」「自動精算機」に分かれています。製品名ではなく、機能と業務で当たりを付けてください。
販売事業者から確認する
自力で探して見つからないときは、中小機構「販売事業者検索」から地域と取扱製品で販売事業者を探し、直接問い合わせるのが早いです。販売事業者は制度に習熟しているため、「この業務を軽くしたい」と伝えれば該当カテゴリを教えてくれます。
ただし、販売事業者は自社の取扱製品を勧める立場でもあります。最低2社に当たって、提案されたカテゴリが違うかどうかを見ることをお勧めします。同じ業務課題に対して別のカテゴリを提案されたら、自社の課題設定がまだ曖昧だというサインです。
載っていないときの3案
カテゴリが存在しない、または登録製品が0件だった場合の選択肢は3つです。
- 一般型で申請する。オーダーメイドの設備導入・システム構築が対象なので、カタログにない設備はこちらが本線です。ただし公募回制で、審査は事業計画の中身で判断されます
- カテゴリ追加を待つ。カテゴリは工業会等の申請にもとづき随時追加されています。取引先のメーカーに登録予定を聞くと、時期の見当がつくことがあります
- 別の制度に切り替える。ソフトウェア中心ならIT導入補助金2026の解説を確認してください。設備ではなく業務プロセスの見直しで足りる場合もあります
3案のどれを選ぶかは、「削りたい工数が今どれだけ痛いか」で決まります。半年待てるならカテゴリ追加を待つ判断もありますが、毎月100時間の残業が出ているなら待つべきではありません。
AI・ソフトは対象になるか
当社への相談で最も多いのがこの質問です。結論から書きます。単体のAIツールやクラウドサービスは、カタログ注文型の対象になりません。
単体のAIやSaaSは対象外
公募要領の補助対象経費には「専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具及び前述の機械設備又は工具・器具と一体として用いられる専用ソフトウェア・情報システム等の購入又は借用に要する経費」と書かれています。機械装置と一体であることが条件です。
したがって、生成AIの法人プラン、チャットボット、クラウド会計、SFA、RPAといった単体のソフトウェアは、カタログ注文型では対象になりません。一般型の対象経費には「クラウドサービス利用費」が明示的に含まれているのと対照的です。
もう1つ重要な制限があります。公募要領の重複規定に「補助対象経費は重複していないが、テーマや事業内容が中小機構のIT導入補助金と同一又は類似内容の事業(同じ業務プロセスに省力化製品を導入するもの)」は対象外とあります。同じ業務プロセスに対して2つの補助金を使うことはできません。
機器と一体のソフトは対象
一方で、機器と一体で動くソフトウェアや情報システムは対象になり得ます。実際、カテゴリ一覧には「AI外観検査用画像処理システム」「映像解析AIによる交通誘導システム」「RFIDによる一括読み取りシステム」「電子棚札システム」「デジタルピッキングシステム」といった、ソフトウェアの比重が高いカテゴリが登録されています。
判断の分かれ目は「現場に据える物があるかどうか」です。カメラや棚札やタグリーダーといった物理的な設備とセットで、その設備を動かすためのソフトウェアなら対象になります。ブラウザだけで完結するサービスは対象になりません。
AI活用はどの制度で通すか
AI導入と省力化投資は、そもそも狙う場所が違います。カタログ注文型が削るのは体を動かす時間、AI活用が削るのは頭と手を動かす時間です。書類作成、問い合わせ対応、議事録、見積作成といった事務側の工数は、機械装置では減りません。
この使い分けについてはAI導入に使える補助金の記事で整理しています。事務側の工数を先に洗い出したい方は業務効率化のアイデア集もあわせてご覧ください。
販売事業者の選び方5つの軸
カタログ注文型で結果が分かれる最大の要因は、製品よりも販売事業者です。同じ製品でも、組む相手によって申請の通りやすさも導入後の定着も変わります。
共同申請という仕組み
カタログ注文型では、中小企業と販売事業者が共同事業実施者として申請します。販売事業者は事業計画の策定に加わり、「省力化効果判定シート」という指定様式を添付する役割も担います(出典:中小機構「申請・手続きの流れ(カタログ注文型)」)。
この仕組みには、販売事業者側にも責任が課されています。公募要領には「同一の販売事業者が共同申請を行った補助事業者について、その多くで事業計画における労働生産性の向上目標が著しく未達の場合、販売事業者の登録取消を行う場合がある」と書かれています。無理な計画を書きたがらない販売事業者は、むしろ信頼できる相手です。
見るべき5つの基準
初回の面談で確認すべき5点を表にしました。当社が支援先の設備検討に同席するときに、実際に使っている観点です。
| 基準 | 確認すること | 危ないサイン |
|---|---|---|
| 1. 業務の理解 | 現場を見て、どの工程が何時間かかっているかを聞くか | 現場を見ずに型番を提案してくる |
| 2. 効果の説明 | 省力化効果を、時間と人数の単位で説明できるか | 「生産性が上がります」で終わる |
| 3. 上限額の開示 | その製品の登録補助上限額と自己負担額を先に示すか | 補助率1/2だけを強調する |
| 4. 導入後の体制 | 設置後の設定・教育・保守を誰がやるか明示するか | 納品までしか話さない |
| 5. 報告への関与 | 実績報告と3年間の効果報告に協力する意思があるか | 「申請が通ればあとは御社で」 |
とくに5番目が重要です。カタログ注文型は補助事業終了後3年間の効果報告が義務づけられており、この期間の付き合いが前提の制度です。売って終わりの相手を選ぶと、3年後に社内で困ります。
初回の連絡で聞く質問
販売事業者に最初に連絡するとき、次の4つを聞いてください。回答の具体性で相手の力量がほぼ分かります。
- 「この製品の登録補助上限額はいくらですか。導入経費込みで自己負担はいくらになりますか」
- 「同じカテゴリの他社製品と比べたとき、御社の製品が向いているのはどんな現場ですか」
- 「交付決定から納品・設置まで、どのくらいの期間を見ておけばいいですか」
- 「効果報告のときに必要な数字は、何をどう記録しておけばいいですか」
4つ目に即答できる販売事業者は、過去に補助事業を最後まで伴走した経験がある可能性が高いです。
「どの業務にいくら時間がかかっているか」が分からないまま製品を選ぶと、補助金は通っても効果報告で数字が出ません。当社では、AI導入支援の前段として業務時間の棚卸しからお手伝いしています。設備の検討と並行して社内の事務工数を見直したい方は、無料相談からお気軽にご相談ください。
申請から交付までの8手順
公式サイトでは申請の流れが8ステップで整理されています。ここでは各ステップで実際に詰まりやすい点を添えて説明します。
交付決定までの4手順
ステップ1はGビズIDプライムアカウントの取得です。電子申請のため必須で、公式サイトにも「取得には時間がかかる場合がございますので、お時間に余裕を持ってご準備ください」と注意書きがあります(出典:デジタル庁「GビズID」)。ここで数週間止まる会社が実際にあります。製品を探し始めるのと同時に着手してください。
ステップ2はカタログからの製品選定、ステップ3は販売事業者の選定です。製品ごとに販売事業者一覧が掲載されており、そこに載っているサポート窓口へ連絡します。
ステップ4は販売事業者との共同申請です。中小企業側は販売事業者からの招待を受けて、専用フォームから申請します。公式サイトには「本サイトには申請の入口やフォームはありません」と明記されています。自社だけで申請画面にたどり着くことはできません。
交付決定後の4手順
ステップ5は補助事業の実施です。ここで最も重大な注意点があります。公募要領には「いかなる理由であっても事前着手は認められません」と2か所に明記されています。交付決定前に発注・契約・支払いをした製品は対象外になります。
ステップ6は実績報告で、支払いに係る証憑、導入実績に係る証憑、事業計画の達成状況を提出します。支払いは銀行振込のみで、現金払いは認められません。実績報告時の写真撮影には専用の「報告用写真撮影アプリ」が使え、条件を満たせば実地検査を完了したものとみなされます。
ステップ7は補助金の交付です。実績報告を踏まえて補助額が確定した後、支払請求を行って初めて入金されます。公式サイトにも「必ずしも交付決定を受けた補助額の全額が支払われるわけではありません」と書かれています。後払いなので、購入資金は先に手当てが必要です。
ステップ8は事業実施効果報告で、3年間にわたり省力化製品の稼働状況と事業計画の達成状況を毎年度報告します。
先に集める提出書類
提出書類は全事業者共通のものだけで、従業員名簿(指定様式)、貸借対照表(前期・前々期)、損益計算書(前期・前々期)が必要です。法人はさらに履歴事項全部証明書(発行から3か月以内)、法人税の納税証明書(その2)直近3期分、役員名簿、株主・出資者名簿が加わります。
実務上いちばん時間がかかるのは納税証明書と履歴事項全部証明書です。履歴事項全部証明書には3か月以内という有効期限があるため、取り寄せの順番を間違えると取り直しになります。販売事業者との面談が始まった段階で、納税証明書の取得を先に動かしておくと安全です。
人手不足要件の4つの選択肢
カタログ注文型は「人手不足の状態にある中小企業等」が対象です。この人手不足をどう示すかは、4つの選択肢から1つを選ぶ形式になっています。
残業・離職・求人の3択
公募要領に記載された4つの選択肢は次のとおりです。
- 限られた人手で業務を遂行するため、直近の従業員の平均残業時間が30時間を超えている
- 整理解雇に依らない離職・退職によって従業員が前年度比で5%以上減少している
- 採用活動を行い求人掲載したものの、充足には至らなかった
- その他、省力化を推し進める必要に迫られている
それぞれ提出書類が異なり、1は指定様式の時間外労働時間、2は指定様式の従業員減少の確認用、3は申請日から1年以内の求人情報のキャプチャ等となります。3番目が最も証明しやすいため、採用活動をしている会社であれば求人サイトの画面を保存しておくだけで足ります。
その他を選ぶと遅れる
4番目の「その他」には明確な注意書きが付いています。公募要領には「④を選択している場合は例外的な扱いとなり、省力化投資の必要性をより厳格(場合によっては追加書類の提示を求める等)に審査するために採択結果の通知が大幅に遅れる可能性がある」と書かれています。
1から3のいずれかに当てはまるなら、迷わずそちらを選んでください。当てはまるものがないのに「その他」で押し切ろうとすると、時間を失います。
カタログ型でつまずく6原因
制度の設計上、事故が起きやすい箇所ははっきりしています。公募要領の禁止規定から、実際に起こりうる順に並べました。
交付決定前に発注した
最も多く、最も取り返しがつかないのがこれです。「補助金が通りそうだから先に発注しておこう」は完全にアウトです。公募要領には「いかなる理由であっても事前着手は認められません」とあり、例外規定はありません。交付決定通知を受け取ってから発注する、これだけは絶対に守ってください。
1申請1製品を知らない
公募要領には「1回の交付申請で複数種類の製品を申請することはできない」と明記されています。券売機と食器洗浄機を同時に、という申請はできません。同一製品を複数台導入することは可能ですが、種類をまたぐことはできません。
複数の設備を入れたい場合は、2回目以降の交付申請を使います。2026年3月19日の改定で、2回目以降は各申請時点の補助上限額を2倍にした額が累計上限となり、前回までの累計交付額を差し引いた額まで申請できるようになりました。ただし追加要件があり、前回の補助事業で省力化効果が得られていること、前回申請時と比較して事業場内最低賃金を3.5%以上(2年以上経過なら7.0%以上、3年以上なら10.5%以上)上昇させていることが必要です。
導入経費を2割超で見た
設置工事や搬入に費用がかかる大型機械では、導入経費が本体価格の2割を超えることがあります。しかし補助対象になるのは製品本体価格の2割までです。超えた分は全額自己負担になります。見積を取る段階で、本体と導入経費の内訳を分けて出してもらってください。
また、委託・外注費、移動交通費・宿泊費、補助金申請に係る申請代行費は導入経費として認められません。申請サポート料を導入経費に含めた見積は、その時点で組み替えが必要です。
他の補助金と重複した
重複規定は細かく設定されています。過去にものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の交付決定を受けてから10か月を経過していない事業者、過去3年間に2回以上同補助金の交付決定を受けた事業者は対象外です。事業再構築補助金や中小企業新事業進出補助金に採択された事業者が、その補助対象事業に用いる機器を本事業で導入する場合も対象外となります。
さらに、IT導入補助金と同一または類似内容(同じ業務プロセスへの導入)も不可です。過去3年の補助金受給歴を先に洗い出してから検討を始めてください。
保険と効果報告の見落とし
補助額が500万円以上になる場合、事業計画期間終了までの間、補助額以上の保険金額の保険または共済への加入が必須です。しかもこの保険料は補助対象外です。実績報告時に加入を示す書類の提出が求められます。500万円未満でも加入が強く推奨されています。
効果報告も見落とされがちです。期限までに効果報告が提出されなかった場合、交付決定の取消しを行うことがあると公募要領に書かれています。3年間、毎年度の報告を続ける前提で担当者を決めておいてください。
加えて、報告された省力化指数にもとづく効果が正当な理由なく製品カテゴリの省力化基準を下回っている場合、販売事業者の登録取消しおよび当該販売事業者と共同で行われている交付決定の取消しを行う可能性がある、とも記載されています。効果が出るかどうかは、自社だけの問題ではありません。
一般型とどちらで出すか
ここまでの内容を踏まえて、使い分けの判断軸を示します。
分かれ目は3つだけ
実務上、判断は次の3つで決まります。
| 判断軸 | カタログ注文型が向く | 一般型が向く |
|---|---|---|
| 導入したい設備 | カタログに登録された汎用製品で足りる | 自社の現場に合わせた改造・組み合わせが必要 |
| 必要な金額 | 補助対象経費が2,000万円程度まで | それを超える大型投資 |
| いつ動くか | 今すぐ動きたい(随時受付) | 公募回を待てる、準備期間が取れる |
一般型は基本要件が重く、労働生産性の年平均成長率4.0%以上に加えて、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、事業所内最低賃金が地域別最低賃金プラス30円以上の水準、従業員21名以上なら次世代育成支援対策推進法にもとづく一般事業主行動計画の公表まで求められます。しかも基本要件が未達の場合は補助金の返還規定があります。
また一般型では事業計画上の投資回収期間を根拠資料とともに提出することが求められます。カタログ注文型にはこの提出義務がありません。書類の重さは明確に違います。
両方を使い分ける順番
両方が使える会社では、カタログ注文型を先に、一般型を後にという順番をお勧めします。理由は3つあります。
第一に、カタログ注文型は随時受付なので時間を無駄にしません。第二に、補助事業期間が12か月と短く、効果報告の1年目が早く来るため、社内に補助事業の運用ノウハウが早く溜まります。第三に、一般型の審査ではカタログ注文型の製品カタログに登録されているカテゴリに該当する製品を一般型で導入する場合は審査の際に考慮するとされており、汎用製品はカタログ注文型で出すのが制度の想定に沿っています。
なお、一般型には「イノベーション応援プログラム」があり、中小の製造事業者の優れた省力化技術を持つ製品を導入する場合は審査で考慮され、相見積もりも不要とされています。制度全体の見取り図は省力化投資補助金の親記事で解説しています。
モデルケース(試算)|A社
ここまでの内容を、1社の具体例に落とします。以下は実在企業の実績ではなく、公表されている制度条件をもとにした試算モデルです。金額と時間はすべて仮定値であり、実際の補助額は製品ごとの登録上限額と審査によって変わります。
想定する会社と課題
A社は従業員18名の金属加工業(板金・プレス加工)です。売上は年間2億8,000万円、加工品の仕上げ工程でバリ取りを手作業で行っています。パートを含む4名がこの工程に入っており、繁忙期には残業が常態化しています。求人を出しても半年間充足していません。
人手不足要件としては、選択肢3(採用活動を行い求人掲載したものの充足には至らなかった)を選び、求人サイトのキャプチャを提出する想定です。従業員18名なので、補助上限額は750万円(賃上げ特例なら1,000万円)の区分に入ります。
製品を決めるまでの3週間
A社が実際に踏む手順を週単位で示します。
| 時期 | やること | 詰まりやすい点 |
|---|---|---|
| 1週目 | GビズIDプライムの申請、業務時間の棚卸し | IDの発行に時間がかかる |
| 1週目 | 製品カテゴリ検索で該当分類を確認 | 現場の呼び名とカテゴリ名が違う |
| 2週目 | 販売事業者2社に連絡、現場を見てもらう | 現場を見ない提案が混じる |
| 2週目 | 製品の登録補助上限額と自己負担額を確認 | 補助率1/2だけで概算してしまう |
| 3週目 | 決算書・納税証明書・登記簿の準備 | 登記簿の3か月以内という期限 |
| 3週目 | 販売事業者と事業計画を策定、共同申請 | 省力化効果の数字が作れない |
費用と補助額の試算表
A社が選んだのは、製品登録数41件の「鍛圧・板金加工用バリ取り装置」カテゴリの製品という想定です。本体価格480万円、設置・搬入・動作確認の導入経費60万円とします。
| 項目 | 金額 | 根拠・制約 |
|---|---|---|
| 製品本体価格 | 4,800,000円 | 単価50万円以上の条件を満たす |
| 導入経費 | 600,000円 | 本体価格の2割(96万円)以内 |
| 補助対象経費 合計 | 5,400,000円 | 消費税は対象外 |
| 本体への補助額 | 2,400,000円 | 本体価格の1/2。製品登録上限240万円と同額と仮定 |
| 導入経費への補助額 | 300,000円 | 導入経費の1/2。本体補助額の2割(48万円)以内 |
| 補助額 合計 | 2,700,000円 | 従業員18名の上限750万円の範囲内 |
| 自己負担(税抜) | 2,700,000円 | 交付は後払い。全額を先に支払う |
この試算で確認してほしいのは、補助上限750万円という数字は一度も効いていないことです。効いているのは補助率1/2と、製品ごとの登録上限額です。「従業員18名だから750万円もらえる」という理解は実務では成立しません。
工数と人の使い道の試算
省力化の効果を、時間と金額で試算します。時給2,500円(社会保険料等を含む人件費ベース)、月20営業日という前提です。
| 業務 | 導入前(月) | 導入後(月) | 削減時間 | 月間の人件費換算 |
|---|---|---|---|---|
| バリ取り作業 | 160時間 | 48時間 | 112時間 | 280,000円 |
| 仕上げ後の検品 | 40時間 | 24時間 | 16時間 | 40,000円 |
| 手直し・再加工 | 24時間 | 12時間 | 12時間 | 30,000円 |
| 合計 | 224時間 | 84時間 | 140時間 | 350,000円 |
ここで重要なのは、浮いた140時間を何に使うかを申請時に説明する必要があることです。公募要領の事業計画では「省力化により既存業務から抽出できると期待される時間・人員の使途」の説明が求められます。さらに審査の着眼点として「既存業務の省力化により新しい取組を行う、高付加価値業務へのシフトを行うなど、単なる工数削減以上の付加価値の増加が期待できるか」が挙げられています。
A社の場合は、浮いた時間を短納期案件の受注枠に充て、これまで断っていた小ロット案件を受けられるようにする、という組み立てになります。「残業が減ります」だけでは、審査の着眼点に応えたことになりません。
うまくいかなかった点
試算モデルであっても、想定される躓きを書いておきます。
1つ目は、導入直後に工数が増えることです。段取りの見直し、治具の作り直し、作業者の習熟に1〜2か月かかり、その間はむしろ時間が増えます。効果報告の1年目に間に合わせるには、導入から3か月以内に定着させる必要があります。
2つ目は、削減時間の記録が残っていないことです。導入前の工数を測っていないと、効果報告で「どれだけ減ったか」を示せません。A社の場合、申請の3週間前から作業日報に工程別の時間を書く運用を始めています。
3つ目は、1申請1製品の制約です。A社はバリ取り装置と同時に検査装置も入れたかったのですが、種類が違うため同時申請ができず、2回目の申請に回す判断をしています。
効果報告3年から逆算する
カタログ注文型は、申請よりも申請後のほうが長い制度です。3年間の効果報告を前提に設計しておくと、申請時の事業計画の書き方も変わります。
労働生産性3.0%の意味
基本要件は「補助事業終了後3年間で毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率3.0%以上向上させる事業計画」です。公募要領では労働生産性を次のように定義しています。
- 付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
- 労働生産性=付加価値額÷従業員数
注意すべきは、分子に人件費と減価償却費が含まれる点です。設備を導入すれば減価償却費が増えるため、その分は付加価値額を押し上げます。一方、従業員数が増えれば分母が増えて労働生産性は下がります。省力化投資をして人を増やす計画は、この式の上では不利に働きます。
中小企業庁の2026年版中小企業白書でも、労働生産性の向上に有効な取組として「省力化投資」と「AI活用・デジタル化」による労働投入量の最適化が挙げられており、労働投入量の最適化を実現した企業はこれらに取り組んでいる傾向がある、と整理されています(出典:中小企業庁「2026年版中小企業白書・小規模企業白書の概要」)。
記録は導入前に取る
効果報告で必要になるのは、省力化製品の稼働状況と、事業計画の達成状況(省力化の効果、賃上げの実績)です。ここで多くの会社が困るのが、導入前の数字を残していないことです。
記録すべきは3項目だけで十分です。対象業務の月間工数、その業務に関わる人数、対象業務の処理件数。この3つを申請前の1か月分でも取っておくと、3年間の報告が一気に楽になります。記録の考え方は経費削減のアイデア記事でも扱っています。
もう1つ、実地検査があることも覚えておいてください。効果報告期間が終了するまでの間に1回以上、省力化製品が事業所に導入されていることの実地検査が行われます。設備を転売・転用すると、補助金適正化法にもとづく財産処分の制限に抵触します。
省力化投資とAI活用の順番
最後に、当社の立場から補足します。設備の省力化とAI活用は、混ぜて考えると失敗します。
機械化とAIは別の話
カタログ注文型で削れるのは、現場で体を動かす時間です。バリ取り、洗浄、搬送、盛り付け、レジ対応。一方、事務所側で消えている時間は別種です。見積作成、日報の転記、問い合わせメールの返信、議事録、報告書。この2つは、別の道具で、別の順番で削ります。
実際に多くの中小企業では、現場の設備投資が進んでも、事務側の工数はそのまま残ります。むしろ設備が増えると、報告書と管理表が増えて事務が重くなることさえあります。設備投資の検討と同時に、事務側の工数を数えておくことをお勧めするのはこのためです。
DX全体の進め方については中小企業のDX推進の記事で整理しています。
当社の支援の進め方
当社(Ai-Raku)は、中小企業のAI導入支援を行っています。補助金の申請代行は行っていませんが、「どの業務を、どの道具で削るか」の整理から、AIツールの選定・社内定着までを伴走しています。
費用は初期費用0円、月額5万円です。設備の補助金を検討している段階でも、事務側の工数の棚卸しから始めることで、設備で削るべき部分とAIで削るべき部分の線引きがはっきりします。
なお、補助金の申請そのものについては、カタログ注文型は販売事業者との共同申請が制度上の前提です。製品と販売事業者が決まれば、申請の実務は販売事業者と進めるのが最短です。当社が関与する意味があるのは、その手前の「どの業務を削るか」と、その後の「浮いた時間をどう使うか」の部分です。
よくある質問(FAQ)
Q. カタログ型はいつまで申請できますか
公募要領には、本事業は令和9年(2027年)3月末頃までの間に補助事業の申請を受け付ける、と記載されています。2024年8月9日から随時受付に変更されており、公募回ごとの締切はありません。ただし登録された省力化製品・販売事業者の登録有効期間は令和9年9月末までとされています。最新の受付状況は公式のスケジュールページでご確認ください。
Q. 補助金はいつ振り込まれますか
後払いです。交付決定を受けてから製品を購入・支払いし、実績報告を提出して補助額が確定した後、支払請求を行って初めて振り込まれます。補助事業期間は交付決定日から原則12か月以内なので、購入代金は自社で先に用意する必要があります。公式サイトにも「必ずしも交付決定を受けた補助額の全額が支払われるわけではありません」と記載されています。
Q. 欲しい製品がカタログにない場合は
カテゴリ自体がなければ、一般型か他の制度を検討することになります。カテゴリはあるが登録製品が0件という場合もあります。2026年8月6日版の製品カテゴリ一覧を集計すると、194分類のうち40分類が登録0件でした。カテゴリの追加は随時行われているため、取引先メーカーに登録予定を確認してみる価値はあります。
Q. 中古品やリースは対象になりますか
中古品は明確に補助対象外です。リースについては、ファイナンス・リース取引に限り、対象リース会社との共同申請という形で利用できます。この場合、補助金は対象リース会社に交付され、中小企業はリース料の減額という形で還元を受けます。「リース料軽減計算書」と「リース取引に係る宣誓書」の提出が必要です。セール&リースバック取引、転リース取引、割賦契約は対象外です。
Q. 生成AIの導入は対象になりますか
単体の生成AIサービスは対象になりません。カタログ注文型の補助対象は、機械装置・工具・器具と、それらと一体として用いられる専用ソフトウェア・情報システムに限られます。ブラウザだけで完結するクラウドサービスは対象外です。ソフトウェア中心の投資は、一般型(クラウドサービス利用費が対象経費に含まれる)かIT導入補助金を検討してください。
Q. 販売事業者は自由に選べますか
カタログに登録されている販売事業者の中から選ぶ必要があります。製品ごとに販売事業者一覧が掲載されており、そこに載っていない事業者からの購入は補助対象になりません。付き合いのある商社が登録されていない場合は、その商社に登録の意向を確認するか、登録済みの事業者を選ぶことになります。
Q. 申請は自社だけでできますか
できません。カタログ注文型は中小企業と販売事業者の共同申請が制度上の要件です。公式サイトにも「本サイトには申請の入口やフォームはありません」と明記されており、販売事業者からの招待を受けて専用フォームから申請する流れになります。ただし公募要領には「交付申請は、中小企業等自らが主体となって行うこと」ともあり、丸投げは想定されていません。
Q. 複数の製品をまとめて申請できますか
できません。公募要領に「1回の交付申請で複数種類の製品を申請することはできない」と明記されています。同じ製品を複数台導入することは可能ですが、種類の異なる製品を1回の申請にまとめることはできません。複数の設備を入れたい場合は、2回目以降の交付申請を使います。
Q. 2回目の申請はいつからできますか
2026年3月19日の改定後、2回目以降は各申請時点の補助上限額を2倍にした額が1事業者あたりの累計補助上限額となり、前回までの累計交付額を差し引いた額を上限に申請できます。ただし追加要件があり、前回の補助事業で省力化効果が得られていること、前回の交付申請時と比較して事業場内最低賃金を3.5%以上(2年以上経過なら7.0%以上、3年以上経過なら10.5%以上)上昇させていることが求められます。
Q. 個人事業主でも申請できますか
対象になります。ただし提出書類が法人と異なり、確定申告書の控え(第一表)直近1期分と、所得税の納税証明書(その2)直近1期分が必要です。また常勤従業員がいない事業者は、事業実態の詳細が確認できる書類の提出を求められ、追加の審査が行われます。なお2回目以降の申請では、常勤従業員がいない事業者は最低賃金の賃上げ要件を満たせないため申請できません。
Q. 採択率はどのくらいですか
本記事の執筆時点で、事務局サイトに採択率としてまとめられた数値は見当たりませんでした。カタログ注文型は随時受付で、採択と同時に交付決定が行われる仕組みです。審査は公募要領記載の要件を満たしているかに加え、省力化の効果が合理的に説明されているか、賃上げに積極的に取り組んでいるかという2つの着眼点で総合的に判断されるとされています。採択率を前提に考えるより、要件と着眼点に正面から応えるほうが確実です。
Q. IT導入補助金と併用できますか
同じ業務プロセスへの導入は不可です。公募要領の重複規定に「補助対象経費は重複していないが、テーマや事業内容が中小機構のIT導入補助金と同一又は類似内容の事業(同じ業務プロセスに省力化製品を導入するもの)」は対象外と明記されています。業務プロセスが明確に異なる場合の可否は、事務局にご確認ください。
Q. 賃上げ特例は使うべきですか
補助上限額に届く規模の投資でなければ、使う意味は小さいです。モデルケースの試算のとおり、補助額は多くの場合、製品ごとの登録上限額と補助率1/2で決まり、従業員数区分の上限には届きません。上限に張り付く規模の投資でなければ、賃上げ未達時の減額リスクだけを負うことになります。
Q. 効果報告を出さないとどうなりますか
公募要領には「期限までに効果報告が提出されなかった場合、交付決定の取消しを行うことがある」と記載されています。効果報告は補助事業完了後3年間、毎年度必要です。あわせて、効果報告期間が終了するまでの間に1回以上、省力化製品が事業所に導入されていることの実地検査が行われます。
まとめ|順番を間違えない
要点を整理します。
- カタログ型補助金とは中小企業省力化投資補助金の「カタログ注文型」。登録済みの汎用製品からしか選べない代わりに、随時受付で手続きが軽い
- 2026年3月19日の改定で補助上限が引き上げられ、5人以下500万円、6〜20人750万円、21人以上1,000万円(賃上げ特例で750万〜1,500万円)。補助率は1/2以下
- 従業員数の上限とは別に、製品ごとの登録補助上限額がある。購入価格が製品ごとの上限額の2倍を超えると、実質の補助率は1/2未満に下がる
- 製品カテゴリは194分類、登録製品2,758件。ただし40分類は登録0件(2026年8月6日版を集計)
- 単体のAIやクラウドサービスは対象外。機械装置と一体のソフトウェアのみ対象
- 販売事業者との共同申請が必須。売って終わりではなく、3年間の効果報告に付き合える相手を選ぶ
- 事前着手は一切不可。1回の申請で複数種類の製品は申請できない。補助金は後払い
- 判断の順番は、業務を決める、カテゴリを探す、登録製品を確認する、販売事業者を選ぶ、要件を確認する
カタログ型補助金は、事業計画の巧拙で勝負する制度ではありません。自社の業務のどこが重いかを言葉にできているかどうかで、使えるかどうかが決まります。製品カタログを開く前に、削りたい業務を1つに絞ってください。
本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづく一般的な情報提供であり、特定の企業への助言ではありません。補助金の制度は改定されます。申請の可否や金額の判断は、必ず中小機構の公式ページと最新の公募要領、および販売事業者・事務局にご確認ください。
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