契約書のAIチェックは違法?弁護士法72条と安全な進め方4手順
業務効率化支援を行う「Ai-Raku(アイラク)」代表。国立大学でAIの研究を行い、ITコンサル・ウェブコンサルを経て独立。官公庁向けの業務効率化や上場企業の支援等を経て、中小企業の現場に定着するAI活用を企画から運用まで一気通貫で支援している。

- 自社の契約書をAIに貼るのは違法?
- 弁護士法72条の観点では、違法にはなりません。72条は「報酬を得る目的で」「業として」「他人の」法律事務を扱うことを禁じており、自社の契約書を自社の判断のために読ませる行為はこれに当たらないためです。ただし、秘密保持契約や個人情報の扱いは別の論点として確認が必要です。
- AIのチェックだけで締結してよい?
- お勧めしません。AIは読む負担を減らす道具であって、締結の可否を判断するものではありません。金額が大きい契約、初めての取引先との契約、争いの兆しがある案件は、これまでどおり弁護士など専門家の確認を受けてください。AIの役割は「どこを相談すべきか」を絞り込むことです。
- 非弁行為かどうかの確認方法は?
- 「報酬を得る目的があるか」「他人のために行っているか」「業として繰り返しているか」の3点で切り分けます。社内で自社の契約書を確認するだけなら、いずれも当てはまりません。反対に、他社の契約書を有償で確認するサービスを始めようとしているなら、法務省のガイドラインを確認し、専門家に相談してください。
- 取引先に無断で使って問題ない?
- 契約書そのものを確認する行為に、相手の承諾は必要ありません。ただし、相手から開示された秘密情報が含まれる場合は、秘密保持契約の定めを先に確認してください。第三者への開示が制限されている情報について、クラウドサービスへの入力が開示に当たるかは契約の書きぶりによります。迷う場合は、その部分を伏せて入力してください。
- 法務担当がいなくても運用できますか?
- できます。むしろ法務担当がいない会社ほど効果があります。確認すべき項目をプロンプトの型として持たせておけば、担当者が法律の専門家でなくても、毎回同じ観点で漏れなく確認できるようになります。重要なのは、判断が必要な部分を切り分けて残しておくことです。
- どのツールを使えばよいですか?
- 特定のツールを推奨することはしていません。選ぶ基準は「入力内容が学習に使われない設定があるか」「長い文書を扱えるか」「社内で既に使っているか」の3点です。既に社内で使っているツールがあるなら、まずそれで試すのが最も定着しやすい進め方です。
- 導入にどのくらいかかりますか?
- 要点の抜き出しや差分の確認は、着手から数週間で回り始めることが多いです。社内規程との整合チェックのように、対象の文書を整理する工程が必要なものは、数か月かけて広げていきます。当社の支援は初期費用0円・月額5万円〜で、まず1つの業務から始められます。
取引先から届いた契約書を、生成AIに読ませて要点だけ確認したい。そう思って検索したら「非弁行為」「弁護士法72条」という言葉が出てきて、手が止まった。そういう方は少なくありません。
結論から言うと、自社の契約書を、自社の判断のために自分で読ませることは、弁護士法72条が禁じている行為には当たりません。72条が規制しているのは「他人の」法律事務を「報酬を得る目的で」「業として」取り扱うことだからです。ただし、これは「何をしても大丈夫」という意味ではありません。
本記事では、条文と法務省のガイドラインという一次情報にあたったうえで、任せてよい作業とだめな作業の線引き、入力前に決めておくべきこと、実際のチェック手順とプロンプト例までを整理します。読み終えるころには「自社の場合はここまで任せて、ここから先は人が見る」という線が、自分の言葉で説明できる状態になります。
- 弁護士法72条が本当に禁じていること(条文の原文つき)
- 「自社で使う」と「サービスとして提供する」の決定的な違い
- AIに任せてよい作業・任せてはいけない作業の線引き
- 契約書を入力する前に決めるべき社内ルール3項目
- 実際のチェック手順4ステップとプロンプト例
- 見落としが多い5つの条項と、AIチェックの失敗パターン
結論|自社の契約書を自分で読ませるのは対象外
最初に全体像をお伝えします。多くの記事が「AI契約書レビューサービスは違法か」という論点を扱っていますが、中小企業の担当者が知りたいのは、たいてい別の問いです。「うちが、うちの契約書を、ChatGPTやClaudeに貼り付けて確認するのは大丈夫か」という問いです。この2つは、法律上まったく別の話になります。
72条が禁じているのは「他人の」法律事務
弁護士法72条の条文は次のとおりです(e-Gov法令検索・弁護士法(昭和24年法律第205号))。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
ここで押さえるべき言葉は3つです。「報酬を得る目的で」「その他一般の法律事件に関して」「業とする」。つまり72条は、報酬をもらって、他人のために、繰り返し法律事務を扱うことを規制しています。
自社が締結する契約書を、自社の担当者が、自社の判断のために読む。この行為には報酬も、他人のためという要素も、業として行うという要素もありません。紙の契約書を担当者が自分で読むのが違法でないのと同じように、その読む作業をAIに手伝わせることも、72条の問題にはなりません。
自社利用とサービス提供は別の話
検索で出てくる「AI契約書レビューは違法か」という議論の多くは、そうしたサービスを事業として提供する事業者の側の話です。事業者は、他社の契約書を、対価をもらって、繰り返し扱います。ここではじめて72条の3要件が問題になります。
この点について法務省は、令和5年8月に「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」というガイドラインを公表しています(法務省・弁護士法(その他)/概要版・本編のPDFが同ページに掲載)。事業者向けの予測可能性を高めるために作られたもので、判断の枠組みが示されています。
言い換えると、この論争はツールを売る側の問題であって、ツールを使う側の問題ではありません。ここを混同すると、本来なんの問題もない「自社の契約書を自分で確認する」という行為まで止めてしまうことになります。
それでも注意すべき2つの点
ただし、自社利用なら何をしてもよいわけではありません。実務では次の2点が問題になります。
1つ目は情報の扱いです。契約書には取引条件、単価、担当者名といった、外に出せない情報が入っています。どのツールに何を入れてよいかを決めずに使い始めると、秘密保持義務に触れる恐れがあります。これは72条ではなく、契約上の義務や個人情報保護法の問題です。
2つ目は判断をAIに委ねてしまうことです。AIの出力は間違うことがあります。「AIが大丈夫と言ったから押印した」という運用は、法律違反ではなくても、単純に危険です。責任を負うのは、あくまで押印した人です。
この記事の残りは、この2点をどう設計するかの話だと考えてください。
契約書のAIチェックは違法になるのか
もう少し丁寧に、法的な位置づけを見ていきます。「うちは大丈夫」と社内で説明するとき、根拠を持って話せるようにするためです。
弁護士法72条の条文を読む
72条に違反すると、弁護士法77条3号により罰則の対象になります。重い規定です。だからこそ「非弁行為」という言葉には強い響きがあり、検索した人を不安にさせます。
しかし条文を分解すると、成立には次の要素がすべて必要だと分かります。
- 主体:弁護士または弁護士法人でない者
- 目的:報酬を得る目的があること
- 対象:訴訟事件その他「一般の法律事件」に関すること
- 行為:鑑定、代理、仲裁、和解その他の法律事務を取り扱うこと
- 態様:それを「業とする」こと
自社の契約書を自社で確認する行為は、「報酬を得る目的」と「業とする」の2つを満たしません。この2つが欠ける以上、72条の構成要件には当たらない、というのが条文の素直な読み方です。
法務省ガイドラインの判断枠組み
前述の法務省ガイドライン(令和5年8月・法務省大臣官房司法法制部)は、事業者がサービスを提供する場面について、問題となり得る点を4つ挙げ、それぞれの考え方を整理しています。
| 問題となり得る点 | 判断の考え方(ガイドラインより) |
|---|---|
| ① 報酬を得る目的 | サービスの運営形態、支払われる金銭の性質や支払目的等を考慮し、利益とサービス提供との間に対価関係が認められるか否かを判断 |
| ② 対象とする案件 | 個別の事案ごとに、契約の目的、当事者の関係、経緯や背景事情等を考慮し、法律上の権利関係に関し争いがあり、あるいは疑義を有するか否かを判断 |
| ③ サービスの機能・表示 | サービスの機能と表示内容によって判断(作成業務支援/審査業務支援/管理業務支援に分けて整理) |
| ④ サービスの利用者 | ①〜③にかかわらず、弁護士が自ら精査し、必要に応じ修正する方法で使用する場合は違反しない |
出典:法務省「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」(令和5年8月)概要版より要約。原文は法務省のページからご確認ください。
注目したいのは②です。法律上の権利関係に争いや疑義があるかどうかが、判断の分かれ目とされています。日常的な取引の契約書を、締結前に読んで確認するという場面は、そもそも争いが生じていない段階です。この点も、通常の契約確認が72条の想定する場面とは異なることを示しています。
なお、この議論は令和4年11月にも規制改革推進会議のワーキンググループで扱われており、法務省が資料を提出しています(内閣府・AI契約書審査サービスと弁護士法72条/令和4年11月11日)。ガイドラインは、こうした議論を経て公表されたものです。
「非弁行為」と言われる理由
それでも「非弁行為」という言葉が飛び交うのは、AIの出力が「鑑定」に見えるからです。契約書を読んで「この条項は不利です」と言うのは、法的な評価に見えます。
ここで重要なのは、誰が誰に対してそれを言っているかです。事業者が顧客に対して法的評価を提供すれば、72条の検討対象になります。一方、自社の担当者が自分の判断材料としてAIに整理させるのは、社内の下ごしらえにすぎません。
社内で説明を求められたときは、「AIに判断させているのではなく、読む時間を短くしているだけです。判断は私がします」と言えるかどうかを基準にしてください。これが言えない使い方をしているなら、法律の問題より先に、運用の問題として見直すべきです。
法務部門がない会社の現実的な線
従業員数十名の会社に法務部門はまずありません。契約書は社長か、総務の兼任担当者が読んでいます。顧問弁護士がいても、毎月の細かい取引契約まで全部見てもらう予算はない、というのが実情です。
その結果どうなるかというと、読み切れないまま押印するという運用になります。これは法的にはセーフですが、実務的には最も危険な状態です。
AIを使う目的は、この状態を改善することです。全部を弁護士に見てもらえないなら、せめて「どこを弁護士に相談すべきか」を絞り込む。その絞り込みをAIに手伝わせる。これが法務部門を持たない会社にとって、最も現実的で効果の大きい使い方です。
この考え方を業務の形にしたのが、当社の契約書・文書チェックのAI活用です。読む負担を減らし、確認の観点を揃えるところまでを設計します。
AIに任せられる作業・任せられない作業
ここからは実務です。線引きを最初に決めておくと、現場が迷わなくなります。
任せてよい:要点の抜き出しと差分
最も効果が大きく、リスクが小さいのがこの2つです。
要点の抜き出しとは、契約期間、自動更新の有無、解約予告の期間、支払条件、損害賠償の範囲といった、必ず確認する項目を先に一覧で出させることです。20ページの契約書でも、判断に必要な情報は数行にまとまります。全文を読む前に全体像が掴めるので、読む順番を決められます。
差分の洗い出しとは、取引先から届いた修正版と前回版を並べ、変わった箇所を出させることです。手作業で並べて比べるのは骨が折れますし、条番号がずれていると追えません。AIは内容で突き合わせるので、番号がずれていても変更点を拾えます。
どちらも「書いてあることを整理する」作業であり、法的な評価を含みません。だから安全で、しかも時間の削減幅が最も大きい領域です。
任せてよい:条項の平易な言い換え
「善良な管理者の注意をもって」「本契約の定めるところにより」といった言い回しは、慣れていないと意味が掴めません。これを日常の言葉で説明させるのも、任せてよい作業です。
ここでのコツは、言い換えを鵜呑みにせず、原文と並べて読むことです。言い換えはあくまで理解の補助であって、契約の内容そのものは原文で決まります。「意味が分かったので原文を読む」という順番にしてください。
任せない:締結の可否と交渉
逆に、AIに委ねてはいけないのが次の判断です。
- この契約を結ぶべきかどうか
- この条件を飲むべきかどうか
- この条項が法的に有効か無効か
- 紛争になったときにどちらが勝つか
これらは事実の整理ではなく、評価と判断です。AIは説得力のある文章でそれらしい結論を出しますが、根拠が正しいとは限りません。とくに「この条項は無効です」といった断定は要注意で、条文の解釈や判例の理解を誤っていることがあります。
重要な契約や、金額が大きい契約、初めての取引先との契約は、これまでどおり弁護士の確認を受けてください。AIの役割は、その相談を的確にすることです。
迷ったときの判断基準
現場で迷ったときは、次の1問で切り分けてください。
「その出力を、そのまま取引先に見せられるか?」
見せられる(=事実の整理)なら任せてよい。見せられない(=評価や判断が入っている)なら、人が確認してから使う。
要点の一覧や差分の表は、そのまま社内共有しても問題ありません。一方「この条項は不利なので拒否すべき」という出力は、そのまま取引先に見せるものではありません。この違いが、そのまま線引きになります。
契約書をAIに読ませる前の準備
ここが実務で最も抜けやすい部分です。ツールの使い方より先に決めてください。
入力してよい情報の切り分け
契約書には、次のような情報が混ざっています。
| 情報の種類 | 例 | 扱いの目安 |
|---|---|---|
| 定型の条項 | 秘密保持、準拠法、管轄、反社条項 | 入力しやすい。ひな形と大差なく、機密性が低い |
| 取引条件 | 単価、数量、支払サイト、値引き | 要注意。伏せ字にして構造だけ確認する運用も可能 |
| 当事者情報 | 取引先名、担当者名、住所 | 原則として伏せる。判断に不要なことが多い |
| 相手方の秘密情報 | 相手から開示された技術情報など | 秘密保持契約の内容を確認。入力しない判断も |
実務上のコツは、取引先名と単価を伏せても、契約書の確認はほとんど成立するということです。「甲」「乙」「単価A」のまま読ませても、条項の構造や差分は問題なく確認できます。まずはこの形から始めると、心理的なハードルも下がります。
秘密保持契約を結んでいる相手の情報については、その契約に「第三者への開示」がどう定められているかを先に確認してください。クラウドサービスへの入力が開示に当たるかは、契約の書きぶりによります。
学習に使われない設定の確認
生成AIサービスの多くは、法人向けプランや設定で、入力内容を学習に使わない形を選べます。無料版と有料版、個人向けと法人向けで扱いが異なることがあるため、使うプランごとに確認してください。
確認する場所は、各サービスの利用規約とプライバシーポリシー、そして管理画面の設定です。「学習に使われない」と書かれた画面のスクリーンショットを残しておくと、社内説明のときに使えます。
この点は契約書に限った話ではないので、社内全体のルールとして整理するのが効率的です。詳しくは社内AIルールの作り方|情報漏洩を防ぐ生成AIガイドライン8項目で解説しています。
社内ルールに書くべき3項目
長い規程は読まれません。契約書チェックについては、次の3項目だけ決めれば運用が回ります。
- 入力してよい情報の範囲:取引先名と単価は伏せる、など具体的に
- 使ってよいツールとプラン:学習に使われない設定であることを確認済みのものだけ
- 人が必ず確認する項目:締結の可否、金額に関わる条項、初めての取引先との契約
この3行をA4半分に書いて共有するだけで、「勝手に使われて情報が漏れる」という状態はかなり防げます。完璧な規程を作ろうとして何も決まらないより、はるかに実効性があります。
実際のチェック手順(4ステップ)
ここからは具体的な進め方です。1通あたり15分程度で回せる形にしています。
STEP1 要点を一覧で出させる
まず全文を読ませて、確認項目を一覧で出させます。全文を人が読む前に、判断に必要な情報を先に集めるのが狙いです。
この段階で「契約期間が3年で自動更新、解約予告は6か月前」といった要点が見えます。ここだけで「これは慎重に見る必要がある」と分かることも多く、読む優先順位が決まります。
STEP2 前回版との差分を洗う
更新契約や、修正版が返ってきた場合は、前回版と並べて差分を出させます。ここで「変わった箇所」だけでなく「削除された箇所」も必ず聞くのがポイントです。追加された条項は目に付きますが、削除は気づきにくく、しかも影響が大きいことがあります。
STEP3 気になる条項を掘る
STEP1・2で浮かんだ箇所について、条項の意味を平易に説明させます。同時に「この条項でこちらが負う義務は何か」「相手が負う義務は何か」を分けて整理させると、非対称な条件に気づきやすくなります。
ここで出てきた疑問のうち、判断が必要なものはリストにしておきます。これが弁護士への相談リストになります。
STEP4 人が判断して記録する
最後は人の作業です。AIが出した要点と疑問点を見ながら、原文の該当箇所を自分の目で確認し、締結するかどうかを判断します。
このとき「何を確認したか」を短く記録に残してください。次回の更新時に前回どこを見たかが分かりますし、担当者が代わっても引き継げます。記録は3行で構いません。確認日、確認した項目、人が判断した点、これだけです。
記録の例を挙げます。「2026年8月7日確認。自動更新あり・解約予告3か月前(2027年3月末までに判断)。賠償上限は当方のみ設定なし=相手に確認済み、先方の様式のため受け入れ。支払サイトは月末締め翌々月10日払い、資金繰り上は問題なし」。これで3行です。
この記録があると、次回の更新時にゼロから読み直す必要がなくなります。2回目以降の確認時間は、1回目の半分以下になります。契約書の確認は毎年繰り返し発生する業務なので、記録の積み上げが効いてきます。
なお、この4ステップは1通あたり15分程度を想定しています。内訳は、STEP1が2分(貼り付けて待つ)、STEP2が3分、STEP3が5分、STEP4が5分です。従来40分かかっていた確認が、この形なら15分前後に収まります。
そのまま使えるプロンプト例
実際に使っている指示文の型を載せます。そのままコピーして、社内の言い回しに合わせて調整してください。
要点を抜き出す指示文
あなたは契約書の確認を補助する役割です。法的な評価や結論は書かず、契約書に書いてある事実だけを整理してください。
以下の契約書から、次の項目を表にまとめてください。書かれていない項目は「記載なし」と書いてください。推測で補わないでください。
・契約期間/自動更新の有無/更新の条件
・解約の方法と予告期間
・支払条件(時期・方法・遅延時の扱い)
・損害賠償の範囲と上限の有無
・秘密保持の対象と期間
・準拠法と管轄裁判所
・その他、当方に義務が生じる条項
【契約書】
(ここに本文を貼る)
ポイントは「推測で補わないでください」の一文です。これがないと、AIは一般的な契約書によくある内容で空欄を埋めてしまうことがあります。
差分を比べる指示文
2つの契約書案を比較してください。条番号がずれている可能性があるため、番号ではなく条項の内容で対応づけてください。
次の3つに分けて出力してください。
1. 追加された条項
2. 削除された条項
3. 文言が変更された条項(変更前と変更後を並べて)
それぞれについて、当方の義務・権利がどう変わるかを事実ベースで説明してください。有利・不利の評価は書かないでください。
【前回版】(貼る)
【今回版】(貼る)
修正依頼文を作る指示文
取引先へ送る、契約条項の修正依頼メールの下書きを作成してください。
・相手との関係を損なわない、丁寧だが回りくどくない文面で
・修正したい条項と、修正後の希望文言を明示
・なぜその修正が必要かを一文添える
・こちらが譲歩できる代替案も併記
【修正したい条項】(貼る)
【こちらの希望】(書く)
この3つを社内の共有フォルダに置いておくだけで、誰が担当しても同じ観点で確認できるようになります。プロンプトの作り方全般についてはプロンプトの書き方・コツ|すぐ使えるテンプレート集もあわせてご覧ください。
「自社の契約書だと、どこまで任せていいか判断がつかない」という場合は、実際の契約書を拝見しながら線引きをご提案します。初回のご相談は無料です。無料相談はこちら。
見落としが多い5つの条項
実務で「後から効いてくる」条項を挙げます。AIに要点を出させるときは、この5つを必ず含めてください。
自動更新と解約予告
「期間満了の6か月前までに申し出がない場合は自動的に1年更新される」という条項は珍しくありません。解約したいと思ったときには、すでに予告期限を過ぎているという事態が起きます。
対策は単純で、契約書を確認した時点で解約予告の期限をカレンダーに入れることです。AIに要点を出させたら、その場で日付を計算させて登録してください。
損害賠償の上限
賠償額に上限があるか、あるとしていくらか。上限がない契約は、想定外の損失を負う可能性があります。逆に、相手方の賠償だけ上限が設定されている非対称な書きぶりもあります。
AIには「当方の賠償責任」と「相手方の賠償責任」を分けて出させてください。並べると非対称性がすぐ分かります。
支払サイトと遅延利息
締め日と支払日、そして支払が遅れた場合の利率。資金繰りに直結する部分です。とくに取引先ごとに支払サイトがばらばらになっている会社では、契約書を横並びで確認すると改善余地が見つかります。
秘密保持の範囲と期間
何が秘密情報にあたるか、契約終了後も義務が続くか、続くなら何年か。AIツールに情報を入力してよいかの判断は、この条項の書きぶりに左右されます。AIを使うなら、まず秘密保持条項を読む。この順番を習慣にしてください。
準拠法と管轄
紛争になったときにどこの裁判所で争うか。遠方の裁判所が指定されていると、それだけで実質的に争えなくなることがあります。金額の小さい取引ほど影響が大きい項目です。
たとえば取引金額が50万円の案件で、管轄が片道数時間かかる地域の裁判所に指定されていたとします。移動と時間の負担を考えると、多少の損失は泣き寝入りしたほうが安い、という判断になりがちです。相手にとってはそれが狙いである場合もあります。
この5項目について、AIに出させるときの型を用意しておくと確実です。以下の表を、そのまま確認の観点としてお使いください。
| 項目 | AIに出させる内容 | 人が判断すること |
|---|---|---|
| 自動更新と解約予告 | 更新の条件、予告期限、起算日 | 予告期限をカレンダーに入れるか |
| 損害賠償の上限 | 当方の責任範囲と相手方の責任範囲 | 非対称なら受け入れるか交渉するか |
| 支払サイトと遅延利息 | 締め日、支払日、遅延時の利率 | 資金繰り上で問題ないか |
| 秘密保持の範囲と期間 | 秘密情報の定義、存続期間、開示可能な範囲 | AIツールへの入力可否 |
| 準拠法と管轄 | 準拠法、管轄裁判所、専属か否か | 実際に争える場所か |
この表の右列が空欄のまま押印されている契約は、確認したことになっていません。AIが左の2列を埋め、人が右の列を埋める。これが役割分担のイメージです。
契約書の種類別|見るべき点の違い
「契約書の確認」とひとくくりにされがちですが、種類によって注意すべき場所は変わります。AIに要点を出させるときも、種類ごとに項目を変えたほうが精度が上がります。よく扱う4種類について整理します。
業務委託契約で見る点
最も揉めやすいのが業務委託契約です。理由は「どこまでやれば完了か」が曖昧なまま結ばれることが多いためです。
AIに出させたい項目は、委託業務の範囲、成果物の定義、検収の基準と期間、修正対応の回数と範囲、再委託の可否、そして知的財産権の帰属です。とくに検収の基準が「甲が満足する水準」のように主観的な書き方になっていないかは、必ず確認してください。
また、下請法の対象になる取引かどうかも判断が必要です。資本金の区分と取引の内容で決まりますが、対象になる場合は書面の交付義務や支払期日の制限があります。この判断はAIに任せず、公正取引委員会の資料を確認するか、専門家に相談してください。
売買・取引基本契約で見る点
継続的な取引の土台になる契約です。個別の発注書とセットで運用されるため、基本契約と個別契約が矛盾したときにどちらが優先されるかという条項が重要になります。
そのほか、危険負担(引き渡し前に商品が損傷した場合の負担)、瑕疵担保・契約不適合責任の期間、所有権移転の時期、そして最低発注量の縛りがないかを確認します。
実務でよく問題になるのが価格改定の条項です。原材料費が上がったときに価格を見直せる余地があるか。「甲乙協議のうえ」としか書かれていないと、実質的に据え置きになりがちです。
秘密保持契約(NDA)で見る点
NDAは短いので軽く見られがちですが、AIを業務で使う会社にとっては最も重要な契約です。相手から受け取った情報をAIツールに入力してよいかは、この契約の書きぶりで決まるからです。
確認すべきは、秘密情報の定義(口頭で伝えられたものを含むか)、第三者への開示が認められる範囲、クラウドサービスの利用に関する定めの有無、義務の存続期間、そして契約終了時の情報の扱い(返還か破棄か)です。
「第三者に開示してはならない」とだけ書かれている場合、クラウドサービスへの入力が開示に当たるかは解釈の余地があります。迷ったら、その情報はAIに入力しない。これが安全な運用です。
賃貸借契約で見る点
事務所や倉庫、車両などの賃貸借です。金額そのものより、やめるときの条件で差が出ます。
解約予告の期間、中途解約の可否と違約金、原状回復の範囲と負担、更新料の有無と金額、そして賃料改定の条項。とくに原状回復は、契約書の書きぶりによって退去時の負担が大きく変わります。
これらの項目をあらかじめプロンプトに列挙しておけば、契約の種類を選ぶだけで適切な確認ができるようになります。社内の共有フォルダに、種類ごとのプロンプトを置いておくのが実務的です。
AIツールの選び方3つの基準
「どのツールを使えばいいか」は必ず聞かれる質問です。当社は特定のツールを推奨していませんが、選ぶ基準ははっきりしています。
学習に使われない設定があるか
最優先の基準です。入力した内容がAIの学習に使われる設定のままだと、契約書の中身が外部に残る可能性を否定できません。法人向けプランや、設定でオフにできるサービスを選んでください。
確認する場所は、利用規約、プライバシーポリシー、そして管理画面の設定です。「たぶん大丈夫」で進めず、書かれている文言を確認して記録に残す。社内で説明を求められたときに、この記録が効きます。
長い文書を扱えるか
契約書は長いものだと数万字になります。一度に読み込める量が少ないツールだと、分割して入力することになり、全体を通した確認ができません。分割すると、前半と後半で矛盾している箇所を見つけられなくなります。
目安として、20〜30ページ程度の契約書を一度に読み込めるかを試してください。試し方は簡単で、実際の契約書(機密性の低いひな形でも構いません)を貼り付けて、最後の条項について質問するだけです。答えられなければ、そのツールでは全文を読めていません。
すでに社内にあるか
見落とされがちですが、実は定着を左右する基準です。すでに社内で使っているツールがあるなら、まずそれで試すのが最も続きます。新しいツールを増やすと、アカウント管理、費用の承認、使い方の教育がすべて追加で発生します。
Microsoft 365やGoogle Workspaceを使っている会社なら、付属のAI機能から試すという選択肢もあります。まず手元にあるもので効果を確かめ、足りなければ専用のものを検討する。この順番が失敗しにくい進め方です。
ツール選びの考え方全般はAI業務効率化ツールの選び方|中小企業が失敗しない比較ポイントで詳しく扱っています。
専用サービスと汎用AIの使い分け
契約書レビュー専用のサービスと、ChatGPTやClaudeのような汎用の生成AI。どちらを使うべきかという相談もよくいただきます。結論は「目的による」ですが、判断基準を示します。
専用サービスが向く場面
専用サービスは、契約書の類型ごとにチェック項目があらかじめ組まれており、自社のひな形と比較する機能を持つものが多くあります。月に数十通以上を扱い、契約書の種類が決まっている会社では、専用サービスのほうが効率的です。
また、確認の履歴が残る、複数人で分担できる、といった管理面の機能も専用サービスの強みです。法務担当を置いている規模なら、投資に見合うことが多いでしょう。
汎用AIが向く場面
一方、月に十数通程度で、契約書の種類がばらばらという中小企業では、汎用AIのほうが現実的です。理由は3つあります。
1つ目は費用です。すでに契約しているプランの範囲で始められます。2つ目は柔軟性で、契約書以外の文書(社内規程、稟議書、議事録)にも同じツールを使えます。3つ目は、専用サービスが想定していない独自の様式にも対応できることです。
本記事で紹介したプロンプトは、汎用AIを前提にしています。専用サービスがなくても、指示文を型として持てば十分に実用的です。
併用という選択肢
実際には、併用している会社もあります。重要な契約は専用サービス、日常の確認は汎用AIという分け方です。
ただし、最初から併用を目指す必要はありません。まず汎用AIで運用の型を作り、通数が増えて手に負えなくなった段階で専用サービスを検討する。この順番なら、無駄な投資を避けられます。
モデルケース|30名の設備工事会社(試算)
具体的なイメージを持っていただくため、モデルケースを示します。以下は実在の企業ではなく、当社が想定する典型的な状況にもとづく試算です。金額や時間は、業務内容や体制によって変わります。
導入前の状況
従業員30名の設備工事会社。法務担当はおらず、契約書は社長と総務担当の2名で確認しています。月に扱う契約書は、元請との請負契約、下請への発注書、資材の取引基本契約などを合わせて15通程度。
1通あたりの確認に平均40分。うち30分は読む時間で、判断している時間は10分程度。月に合計10時間が契約書の確認に使われている計算です。急ぎの案件が重なると、読み切れないまま押印することもありました。
任せる範囲の設計
次のように線を引きました。
| 作業 | 担当 | 備考 |
|---|---|---|
| 要点の一覧化 | AI | 取引先名と単価は伏せて入力 |
| 前回版との差分抽出 | AI | 更新契約のみ |
| 条項の平易な言い換え | AI | 理解の補助。原文と並べて読む |
| 原文の該当箇所の確認 | 人 | AIが挙げた箇所を中心に |
| 締結の可否の判断 | 人 | 社長が最終判断 |
| 金額の大きい契約の確認 | 顧問弁護士 | AIが作った疑問リストを添えて相談 |
削減時間の試算
読む時間の部分にAIを入れた場合の試算です。時給換算2,500円・月20営業日を前提としています。
| 項目 | 導入前 | 導入後(試算) |
|---|---|---|
| 1通あたりの読む時間 | 30分 | 10〜15分 |
| 1通あたりの判断時間 | 10分 | 10分(変わらない) |
| 月15通の合計 | 10時間 | 5〜6.3時間 |
| 削減見込み | — | 月3.7〜5時間 |
| 金額換算(月) | — | 約9,250〜12,500円 |
数字だけを見ると、月1万円前後です。ここだけなら大きくありません。この取り組みの本当の価値は、時間より「読み切れないまま押印する」状態がなくなることにあります。自動更新の見落としが1件防げれば、削減時間の何倍もの効果になります。
また、契約書チェックだけを単体で導入するケースは実際には少なく、総務のAI活用で扱う文書管理や社内規程の整備とあわせて進めることで、全体の削減幅が大きくなります。
社内に定着させる進め方
ツールを入れても使われない。これは契約書チェックに限らず、AI導入で最もよくある失敗です。定着のために押さえるべき点を、時系列で整理します。
最初の1か月でやること
いきなり全種類の契約書を対象にしないでください。最初の1か月は、1種類・1担当者に絞ります。
選ぶのは、通数が多く、様式が決まっているものです。多くの会社では取引基本契約や発注書がこれに当たります。この1種類で、プロンプトを実際の契約書に合わせて調整し、確認の手順を固めます。
この期間の目標は「時間削減」ではなく「型を作ること」です。3〜5通も回せば、どこを直すべきかが見えてきます。焦って対象を広げると、型が定まらないまま使われなくなります。
抵抗が出たときの対応
「AIに契約書を見せるなんて」という反応は必ず出ます。多くの場合、反対しているのは情報が漏れることへの不安で、AIそのものへの拒否感ではありません。
有効なのは、決めたルールを紙で見せることです。「取引先名と単価は伏せます」「このプランは学習に使われない設定です」と具体的に示すと、議論が前に進みます。逆に「大丈夫です」だけでは納得は得られません。
もう1つ有効なのが、「判断は人がします」を明文化することです。AIに決めさせるのではなく読む時間を減らすだけ、と伝われば、反対の理由の多くは消えます。
続かない原因と対策
1か月続いたのに、3か月後には誰も使っていない。この状態になる原因はだいたい3つです。
| 原因 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| プロンプトが手元にない | 毎回ゼロから指示を書き、面倒になってやめる | 共有フォルダに種類別の指示文を置く |
| 出力の質がばらつく | 使うたびに結果が違い、信用できなくなる | 確認項目を必ず指定する型にする |
| 効果が見えない | やる意味を感じなくなる | 月ごとに確認した通数と所要時間を記録する |
とくに3つ目が重要です。導入前の所要時間を測っておかないと、改善したかどうかが分かりません。難しい計測は不要で、「今月は15通・合計6時間」とメモしておくだけで十分です。
AI導入がうまくいかない典型的なパターンは、AI導入で失敗する5つの理由|成功させるチェックリスト付きでも整理しています。
AIチェックで起きた失敗と防ぎ方
実際に起きうる失敗を、防ぎ方とセットで挙げます。
条文を創作された
最も危険なのがこれです。AIは、契約書に書かれていない条項を、あたかも書いてあるかのように出力することがあります。一般的な契約書によくある内容で埋めてしまうためです。
防ぎ方は2つ。プロンプトに「書かれていない項目は『記載なし』と書き、推測で補わないでください」と明記すること。そして、要点として出てきた項目は必ず原文で該当箇所を確認することです。この2つで大半は防げます。
生成AIが事実でないことを出力する現象については、AIハルシネーション対策|原因と防ぐ7つの実務で詳しく扱っています。
古い法令で判断された
AIの知識には時点があります。法改正の前後で扱いが変わる論点について、古い前提で説明されることがあります。
防ぎ方は、そもそも法令の解釈をAIに聞かないことです。この記事で示した線引きのとおり、AIに任せるのは「書いてあることの整理」まで。法令の適用や解釈が必要な場面は、人が調べるか専門家に聞く領域です。
大事な条項を飛ばされた
長い契約書を一度に読ませると、途中の条項が要約から抜けることがあります。とくに別紙や覚書が分かれている場合、本文だけ読ませて別紙を忘れる、というのはよくある失敗です。
防ぎ方は、確認項目をこちらから指定することです。「必ずこの7項目について書いてください」と型を渡せば、抜けは大きく減ります。この記事のプロンプト例が項目を列挙しているのは、そのためです。
導入前によくある誤解3つ
ご相談をいただく中で、繰り返し出てくる誤解があります。ここを外しておくと、判断が速くなります。
誤解1 AIが法的な判断をする
最も多い誤解です。「AIに契約書を見せる=AIに判断させる」と受け取られがちですが、本記事で示した使い方は読む作業の下ごしらえであって、判断ではありません。
紙の契約書に蛍光ペンを引く作業を誰かに手伝ってもらうのと、構造としては同じです。どこに線を引くべきかの候補を出してもらい、線が引かれた箇所を自分で読む。判断しているのは最初から最後まで人です。
誤解2 高額なツールが必要
「契約書レビューには専用のシステムが要る」と考えて、見積もりを取った段階で止まってしまうケースがあります。
前述のとおり、月に十数通の規模であれば汎用の生成AIで十分に運用できます。必要なのはツールより、確認項目を型にした指示文と、入力してよい情報の線引きです。これらは費用をかけずに作れます。
誤解3 IT担当がいないと無理
設定作業が必要だと思われがちですが、実際にやることは「プランの設定を1か所確認する」「指示文をファイルに保存する」の2つだけです。プログラミングもシステム連携も要りません。
むしろ難しいのは、何を任せて何を任せないかを決める部分です。ここは技術ではなく業務の話なので、実際に契約書を読んでいる人が決めるのが最も確実です。
契約書以外に広げられる文書業務
契約書チェックで型ができると、同じ考え方が他の文書にも使えます。実際、契約書だけで終わる会社はほとんどありません。
社内規程・就業規則
就業規則を改定したとき、他の規程と矛盾していないかを洗い出す作業に使えます。育児介護休業規程、賃金規程、慶弔見舞金規程など、関連する文書が複数あると、手作業での突き合わせは現実的ではありません。
ただし法令適合性の判断はAIに任せないでください。労働基準法をはじめとする法令の要件を満たしているかは、社会保険労務士など専門家の領域です。AIに任せるのは「文書どうしの矛盾を探す」ところまでです。
議事録・稟議書
会議の記録から決定事項と担当・期日を抜き出す、稟議書の下書きを作る、といった使い方です。契約書チェックで使った「項目を指定して出させる」型が、そのまま応用できます。
詳しくは議事録作成のAI活用で扱っています。
過去契約の棚卸し
意外に効果が大きいのがこれです。フォルダに散らばっている過去の契約書から、取引先・期間・条件を抜き出して一覧にします。
一覧にすると、同じ取引先なのに条件がばらばら、更新期限が近い契約が複数ある、すでに終了しているのに解約手続きをしていないといった状態が見えてきます。日々の確認より、この棚卸しのほうが先に効くこともあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 自社の契約書をAIに貼るのは違法?
A. 弁護士法72条の観点では、違法にはなりません。72条は「報酬を得る目的で」「業として」「他人の」法律事務を扱うことを禁じており、自社の契約書を自社の判断のために読ませる行為はこれに当たらないためです。ただし、秘密保持契約や個人情報の扱いは別の論点として確認が必要です。
Q. AIのチェックだけで締結してよい?
A. お勧めしません。AIは読む負担を減らす道具であって、締結の可否を判断するものではありません。金額が大きい契約、初めての取引先との契約、争いの兆しがある案件は、これまでどおり弁護士など専門家の確認を受けてください。AIの役割は「どこを相談すべきか」を絞り込むことです。
Q. 非弁行為かどうかの確認方法は?
A. 「報酬を得る目的があるか」「他人のために行っているか」「業として繰り返しているか」の3点で切り分けます。社内で自社の契約書を確認するだけなら、いずれも当てはまりません。反対に、他社の契約書を有償で確認するサービスを始めようとしているなら、法務省のガイドラインを確認し、専門家に相談してください。
Q. 取引先に無断で使って問題ない?
A. 契約書そのものを確認する行為に、相手の承諾は必要ありません。ただし、相手から開示された秘密情報が含まれる場合は、秘密保持契約の定めを先に確認してください。第三者への開示が制限されている情報について、クラウドサービスへの入力が開示に当たるかは契約の書きぶりによります。迷う場合は、その部分を伏せて入力してください。
Q. 法務担当がいなくても運用できますか?
A. できます。むしろ法務担当がいない会社ほど効果があります。確認すべき項目をプロンプトの型として持たせておけば、担当者が法律の専門家でなくても、毎回同じ観点で漏れなく確認できるようになります。重要なのは、判断が必要な部分を切り分けて残しておくことです。
Q. どのツールを使えばよいですか?
A. 特定のツールを推奨することはしていません。選ぶ基準は「入力内容が学習に使われない設定があるか」「長い文書を扱えるか」「社内で既に使っているか」の3点です。既に社内で使っているツールがあるなら、まずそれで試すのが最も定着しやすい進め方です。
Q. 導入にどのくらいかかりますか?
A. 要点の抜き出しや差分の確認は、着手から数週間で回り始めることが多いです。社内規程との整合チェックのように、対象の文書を整理する工程が必要なものは、数か月かけて広げていきます。当社の支援は初期費用0円・月額5万円〜で、まず1つの業務から始められます。
まとめ
- 弁護士法72条が禁じるのは「報酬を得る目的で」「業として」「他人の」法律事務を扱うこと。自社の契約書を自社で確認する行為は対象外
- 「AI契約書レビューは違法か」の議論は、サービスを提供する事業者側の話。使う側の問題と混同しない
- 任せてよいのは要点の抜き出し・差分の洗い出し・平易な言い換え。締結の可否と法的評価は人が判断する
- 入力前に「情報の範囲」「使うツール」「人が必ず見る項目」の3つを決める
- プロンプトには「推測で補わないでください」を必ず入れる。条文の創作を防ぐ最も有効な一文
- 見落としが多いのは、自動更新・賠償上限・支払サイト・秘密保持・管轄の5つ
契約書の確認は、時間がかかるうえに見落とすと後で効いてくる仕事です。AIに全部任せることはできませんが、読む負担を減らして、判断に使う時間を増やすことはできます。それだけでも、読み切れないまま押印する状態からは抜け出せます。
「自社の契約書だと、どこまで任せてよいか判断がつかない」「社内ルールをどう書けばよいか分からない」という場合は、実際にお使いの契約書を拝見しながらご提案します。売り込みは行いません。
契約書チェックを含めた文書業務の進め方は、契約書・文書チェックのAI活用のページでも詳しくご紹介しています。業種ごとの使われ方は士業のAI活用、不動産の物件調査・契約書類AIもあわせてご覧ください。


