バックオフィス効率化の進め方|少人数で回すための優先順位
業務効率化支援を行う「Ai-Raku(アイラク)」代表。国立大学でAIの研究を行い、ITコンサル・ウェブコンサルを経て独立。官公庁向けの業務効率化や上場企業の支援等を経て、中小企業の現場に定着するAI活用を企画から運用まで一気通貫で支援している。

- どこから手を付ければよいですか?
- 頻度が高く、1回30分以上かかり、手順が決まっている業務です。まず2時間で業務を30個書き出し、頻度×時間で月間時間を出してください。体感の負担と実際の時間は一致しないことが多くあります。
- 改善する時間そのものがありません
- 棚卸しは2時間で終わります。そこで見つかる「やめられる業務」だけで、月に数時間浮くことが多くあります。完璧を目指さず、頻度の高いもの30個から始めてください。
- AIで経理の集計はできますか?
- 集計そのものは任せないでください。大量の数字を集計させると誤りが混ざり、しかも自信のある口調で答えるため気づきにくいためです。計算はExcelか会計ソフトにやらせ、AIには手順や説明文を作らせてください。
- 属人化を解消したいが手順書を書く時間がありません
- 手順を箇条書きでメモし、AIに手順書の形に整えてもらう方法があります。「書く」から「思い出して並べる」に変わるため負担が減ります。月に1業務のペースで十分です。
- システムを導入する予算がありません
- やめる・減らす・頻度を落とす・承認を減らす。これらはすべて0円で、効果も小さくありません。モデルケースでも削減の一部は費用0円の改善から生まれています。順番として、これらを先に検討してください。
- 効果をどう説明すればよいですか?
- 削減時間を金額に換算してください。「月10時間削減、時給2,500円換算で月25,000円」と示せれば判断材料になります。そのために、導入前の時間を棚卸しの段階で記録しておいてください。
- 電子帳簿保存法への対応はAIでできますか?
- 別の話として扱ってください。AIは読み取りや転記の負担を下げますが、保存要件を満たすかどうかは法令上の判断です。国税庁が電子帳簿等保存制度の特設サイトで概要・パンフレット・一問一答を公開しているため、自社の対応状況はそちらか顧問税理士にご確認ください。
- 担当が1人で、休むと業務が止まります
- 月1業務のペースで手順書を作ってください。手順を箇条書きでメモし、AIに手順書の形へ整えてもらう方法なら負担が抑えられます。作った手順書をAIに読ませ「分からない点を挙げて」と聞くと、書いた本人には自明でも他人には分からない箇所が見つかります。
- 例外処理が多くて自動化できません
- 自動化の前に、例外そのものを減らせないか検討してください。「昔からこの取引先だけ別扱い」といった理由の薄い例外が残っていることがあります。整理せずに自動化すると、例外対応がかえって複雑になります。
- AIを使うことに上司が反対しています
- 費用0円でできる改善(やめる・減らす・頻度を落とす・承認を減らす)から始めてください。ここで実績が出れば、次の話が通ります。総務省の白書でも導入の懸念1位は「効果的な活用方法がわからない」であり、まず具体的な成果を見せるのが最短です。
- 給与や評価の資料にも使えますか?
- 給与額、人事評価、健康情報、マイナンバー、口座情報は入力しないと決めてください。ここは例外を作らないことが重要です。案内文や手順書の作成なら、具体的な金額や氏名を伏せても成立します。
経理も総務も労務も、実質1〜2名で回している。月末月初は残業が続き、休むと業務が止まる。改善したい気持ちはあるが、改善を考える時間がない。
これが中小企業のバックオフィスの実情です。そして、この状態で最も避けたいのが手当たり次第に手を付けることです。効果の小さい業務から着手すると、労力の割に何も変わらず、「やっぱり無理だ」という結論になります。
本記事では、限られた時間で成果を出すための優先順位の付け方を扱います。システム導入の前にやるべきことがあり、その多くは費用がかかりません。順番を整理します。
- バックオフィスが重くなる4つの構造的な理由
- 業務の棚卸しを2時間で終わらせる方法
- 優先順位を決める3つの軸
- AIで減らせる作業・減らせない作業
- 属人化を解消する具体的な手順
- 失敗する4つのパターン
結論|頻度×時間×難易度で決める
最初に判断の枠組みをお伝えします。
着手順を決める3つの軸
どの業務から手を付けるかは、次の3つで決めます。
| 軸 | 見るところ | 優先すべき状態 |
|---|---|---|
| 頻度 | 月に何回発生するか | 毎日・毎週のもの |
| 時間 | 1回あたり何分か | 1回30分以上 |
| 難易度 | 判断が必要か、手順が決まっているか | 手順が決まっているもの |
この3つが揃った業務が最優先です。逆に、年1回しか発生しない業務や、毎回判断が必要な業務は後回しにしてください。効率化の効果が出にくい領域です。
最初の1つで成果を出す
複数を同時に進めないでください。少人数の組織では、1つを完了させてから次に移るほうが確実です。
1つ目で明確な成果が出ると、社内の理解が得られます。逆に、複数を中途半端に進めると、どれも完了せずに終わります。
システムは最後
順番として、やめる → 減らす → 任せる → 仕組み化するの順に検討してください。いきなりシステム導入から入ると、不要な業務を自動化することになります。
バックオフィスが重くなる理由
構造を理解すると、対処が変わります。
種類が多く、量が少ない
バックオフィスの特徴は、1種類あたりの量は少ないのに、種類が非常に多いことです。経理、給与、社会保険、備品、契約書、来客、電話、庶務。
この構造だと、1つを自動化しても全体の負担はあまり変わりません。だからこそ、頻度と時間で優先順位を付ける必要があります。
締切が集中する
月末月初、給与計算日、決算期。負担が特定の時期に集中するため、平均すると余裕があるように見えても、実際には常に追われています。
改善の効果を測るなら、平均ではなく繁忙期の負担がどう変わったかを見てください。
属人化しやすい
担当が1人だと、手順が頭の中にしかない状態になります。本人は困っていないが、休めない・辞められないという組織的なリスクになります。
効率化と属人化の解消は、実は同じ作業です。手順を書き出す工程が、両方に効きます。
改善が評価されにくい
バックオフィスの改善は、売上に直結しません。そのため時間を使う承認が得にくいという問題があります。
対策は、削減時間を金額に換算して示すことです。「月10時間削減、時給2,500円換算で月25,000円」と言えれば、判断の材料になります。
データで見る優先順位の付け方
社内で承認を得る場面のために、公表資料を確認しておきます。
期待の1位は人手不足の解消
総務省が2025年7月に公表した「令和7年版 情報通信白書」によると、生成AIの活用推進による自社への影響について、日本では「業務効率化や人員不足の解消につながる」が最も多く挙げられています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」企業におけるAI利用の現状)。
バックオフィスは、この期待が最も直接的に当てはまる領域です。売上に直結しないため増員されにくく、結果として少人数の兼任体制になる。構造的に人手不足が固定されやすい部門です。
障壁は費用より活用方法
同白書では、導入に際しての懸念事項として、日本では「効果的な活用方法がわからない」が最も多く、次いで「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」、そのあとに「ランニングコストがかかる」「初期コストがかかる」と続くと報告されています。
この順位は、本記事の進め方と一致します。予算を確保する前に、何をやめられて何を任せられるかを決める。棚卸しを最初に置いているのはこの理由です。
中小企業は方針が未策定
企業規模別では、中小企業では「方針を明確に定めていない」との回答が約半数を占め、大企業と比較して活用方針の決定が立ち遅れていると指摘されています。
バックオフィスがAIを使い始めると社内の前例になります。方針が未整備のまま始めると、後から全社ルールを作り直すことになるため、この点は本記事の後半で扱います。
業務の棚卸しを2時間で
改善の前提です。ただし、時間をかけすぎないでください。
完璧を目指さない
すべての業務を洗い出そうとすると終わりません。頻度の高いものから30個書き出せば十分です。
抜けは後から足せます。まず着手できる状態にすることを優先してください。
書き出す4項目
1業務あたり、次の4つだけを書きます。表計算ソフトで十分です。
- 業務名
- 頻度:毎日/毎週/毎月/年数回
- 1回あたりの時間:おおよそで可
- 判断の有無:手順が決まっている/毎回考える
月間時間を計算する
頻度×時間で、月あたりの時間を出します。ここで意外な業務が上位に来ることがよくあります。
1回5分でも毎日発生すれば月100分。1回3時間でも年2回なら月30分。体感の負担と、実際の時間は一致しません。
上位5つに絞る
月間時間の多い順に並べ、そのうち「手順が決まっている」ものを上位5つ選びます。ここが着手対象です。
この作業は2時間で終わります。1日を潰す必要はありません。
やめる・減らすを先に
効率化の前に、そもそも必要かを問い直してください。ここが最も効果が大きい工程です。
誰も見ていない資料を探す
定期的に作成している資料のうち、誰も見ていないものがないかを確認します。「念のため」で続いている集計、配布しているが読まれていない報告書。
確認方法は単純で、受け取る側に「これ使っていますか」と聞くだけです。使っていないという答えが返ってくることは珍しくありません。
二重入力を見つける
同じ情報を複数の場所に入力していないかを確認してください。会計ソフトと管理表、勤怠システムと日報といった重複はよくあります。
片方をやめられないか、あるいは片方から自動で反映できないかを検討します。
頻度を落とす
月次でやっている作業を四半期に、週次を隔週に。頻度を落として困るかどうかを試す価値があります。
とくに、変化の少ない項目の集計は頻度を落としても実害がないことが多くあります。
承認の段階を減らす
3人の承認が必要な手続きで、実質的に確認しているのが1人だけということがあります。形式的な承認を減らすと、待ち時間そのものが消えます。
これは効率化の中でも効果が大きく、費用がかからない改善です。
AIで減らせる作業・減らせない作業
ここからAIの話です。線引きを明確にします。
減らせる作業
| 作業 | 任せる範囲 | 効果 |
|---|---|---|
| 報告書・議事録の清書 | 箇条書きから文章化 | 大 |
| 集計結果の説明文 | 数字は渡し、説明だけ作らせる | 大 |
| メール・案内文の下書き | 方針を渡して文面化 | 大 |
| 規程・手順書の草案 | たたき台を作らせ人が確定 | 中 |
| Excelの手順・関数 | 手順を作らせ計算はExcel | 中 |
| 書類の読み取り | OCRで転記の下準備 | 中 |
減らせない作業
次の作業は、AIでは減りません。期待しないでください。
- 数字の正確な集計:計算はシステムかExcelにやらせる
- 承認と判断:責任を伴う判断は人が行う
- 法令に基づく届出の内容確定:草案は作れるが確定は人
- 個別事情への対応:例外処理は経緯を知る人にしか判断できない
とくに1つ目は重要です。AIに大量の数字を集計させると、誤りが混ざることがあります。しかも自信のある口調で答えるため気づきにくく、後から数字が合わない事態になります。
OCRで転記を減らす
紙の請求書や領収書を手入力しているなら、読み取りの仕組みで減らせます。ただし読み取り結果の確認工程は残ります。
「入力がゼロになる」のではなく「入力が確認に変わる」と考えてください。それでも大幅に短縮されます。詳しくはAI-OCRで書類入力をなくす|請求書・領収書の自動化ガイドをご覧ください。
電子帳簿保存法との関係
経理の効率化を進める際、避けて通れないのが保存要件です。ここは効率化の話とは別に、法令上の要件として確認が必要な領域になります。
国税庁は電子帳簿保存法について特設サイトを設け、制度の概要、パンフレット、一問一答(Q&A)、届出等の様式を公開しています(国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」)。
とくに電子取引でやり取りしたデータの保存については、保存義務や保存方法が定められています。メールやウェブでやり取りした請求書・領収書が該当するため、多くの会社に関係します。
効率化と保存要件を混ぜない
ここで重要なのは、AIによる効率化と、法令上の保存要件を別の話として扱うことです。
AIは読み取りや転記の負担を下げますが、保存要件を満たすかどうかは別の判断になります。自社の対応状況は、国税庁の公表資料か顧問税理士にご確認ください。本記事では効率化の観点のみを扱っています。
説明文の作成に効く
見落とされがちですが効果の大きい使い方です。集計は自分でやり、その結果に対する説明文だけAIに作らせる。
数字を作らせないので安全であり、しかも毎回悩んでいた「何を書けばよいか」が解決します。集計とレポートの進め方はレポート作成をAIで|毎月のExcel集計を減らす手順で詳しく扱っています。
属人化を解消する手順
効率化と同時に進められる、重要なテーマです。
手順書を書く時間がない問題
属人化の解消には手順書が必要ですが、それを書く時間がないから属人化しているという循環があります。
ここを崩す方法が、AIの活用です。
話しながら作る
手順を思い出しながら箇条書きでメモし、それをAIに渡して手順書の形に整えてもらいます。「書く」から「思い出して並べる」に変わるため、負担が大きく減ります。
ここでも「メモにない手順を追加しないでください」という指定を必ず入れてください。それらしい手順が補われると、実務と合わない文書になります。
穴を見つけさせる
もう1つ効く使い方があります。作った手順書をAIに読ませ、「この手順書で分からない点を挙げて」と聞くことです。
書いた本人には自明でも、初めて読む人には分からない箇所が見つかります。これが属人化の正体です。
1業務ずつ進める
全業務の手順書を一度に作ろうとしないでください。月に1業務のペースで十分です。1年で12業務が文書化されます。
優先すべきは、担当者が休むと止まる業務です。マニュアル作成の進め方はマニュアル作成をAIで|属人化を解消する手順と使えるプロンプトで詳しく扱っています。
モデルケース|経理総務2名体制(試算)
効果のイメージを示します。以下は実在の企業ではなく、当社が想定する典型的な状況にもとづく試算です。効果は業務内容や体制によって変わります。
棚卸しの結果
従業員40名の製造業。経理・総務・労務を2名で担当しています。棚卸しの結果、月間時間の上位は次のとおりでした。
| 業務 | 頻度 | 1回 | 月間 | 判断 |
|---|---|---|---|---|
| 請求書の入力 | 毎日 | 40分 | 13時間 | 手順が決まっている |
| 月次レポート作成 | 毎月 | 4時間 | 4時間 | 手順が決まっている |
| 問い合わせ対応 | 毎日 | 25分 | 8時間 | 一部は判断が必要 |
| 各種案内文の作成 | 週2回 | 30分 | 4時間 | 手順が決まっている |
| 備品管理 | 毎週 | 40分 | 3時間 | 手順が決まっている |
着手した順番
第1段階|やめる・減らす。月次レポートの配布先に確認したところ、5枚のうち2枚が見られていませんでした。この2枚を廃止。備品管理は週次から隔週に変更。
第2段階|AIに任せる。案内文の下書き、レポートの説明文作成をAIに移行。
第3段階|仕組み化。請求書の入力を読み取りの仕組みに移行(確認工程は残す)。
削減時間の試算
時給換算2,500円・月20営業日を前提とした試算です。
| 業務 | 導入前(月) | 実施後(試算) |
|---|---|---|
| 請求書の入力 | 13時間 | 5時間 |
| 月次レポート作成 | 4時間 | 1.5時間 |
| 各種案内文の作成 | 4時間 | 1.5時間 |
| 備品管理 | 3時間 | 1.5時間 |
| 合計 | 24時間 | 9.5時間 |
| 削減見込み(月) | — | 約14.5時間 |
| 金額換算(月) | — | 約36,250円 |
この会社で重要だったのは、削減の一部が「やめたこと」から生まれている点です。レポート2枚の廃止と備品管理の頻度変更だけで、月3時間が浮いています。費用は0円です。
さらに、空いた時間で月1業務ずつ手順書を作る運用を始めました。担当者が休みを取れるようになったことが、時間削減以上に評価されています。
「自社のバックオフィスでどこから手を付けるか」を整理したい方へ。棚卸しの段階からご一緒します。初回のご相談は無料です。無料相談はこちら。
失敗する4つのパターン
避けるべき進め方を挙げます。
複数を同時に進める
少人数の組織で最も多い失敗です。3つ同時に始めて、どれも完了しない。1つずつ完了させてください。
不要な業務を自動化する
やめられる業務を自動化するのは、最も無駄な労力です。「やめる」の検討を飛ばさないでください。
効果を測らない
導入前の時間を記録していないと、効果が説明できません。次の投資の承認が得られなくなります。棚卸しの数字を残しておいてください。
担当者だけで進める
バックオフィスの業務は、他部署とつながっています。承認の段階を減らす、資料の配布をやめるといった改善は、相手のある話です。
担当者だけで完結する改善には限りがあります。上長を巻き込んでください。
情報の扱いで決めること
バックオフィスは、社内で最も機微な情報を扱う部署です。
絶対に入力しない情報
給与額、人事評価、健康情報、マイナンバー、口座情報。これらは生成AIに入力しないと決めてください。例外を作らないことが重要です。
抽象化して使う
案内文や手順書の作成では、具体的な金額や氏名を伏せても成立します。「賞与に関する案内文」で十分な文面が出ます。
ルールを先に決める
バックオフィスがAIを使い始めると、社内の前例になります。先にルールを決めてから使い始めてください。後から整備するより手間がかかりません。
ルールの作り方は社内AIルールの作り方|情報漏洩を防ぐ生成AIガイドライン8項目で解説しています。
業種別の重い業務
棚卸しの結果、どこが上位に来るかは業種で傾向があります。目安として挙げます。
建設・設備工事
上位に来やすいのは工事別の原価集計と、協力会社への支払処理です。案件ごとに集計するため、件数が多いと膨大な作業になります。
効くのは、案件コードを起点に集計する形に統一することです。入力の段階でコードが揺れていると、どれだけ後工程を効率化しても集計が通りません。まず入力側を直してください。
製造業
上位に来やすいのは在庫の棚卸し関連と、原価計算です。ここは数字の正確さが求められるため、AIに集計させてはいけない領域の典型です。
任せられるのは、集計結果に対する説明文の作成と、手順の文書化です。計算はシステム、説明はAIという分担を徹底してください。
小売・飲食
上位に来やすいのは日々の売上入力と、シフト作成です。とくにシフトは条件が複雑で、担当者の頭の中にしかないことが多い業務です。
ここは属人化の解消が効きます。シフトを組むときの条件(誰と誰は同じ日に必要、この人は土日不可)を書き出すだけで、他の人が代われるようになります。書き出す工程をAIに手伝わせてください。
士業・コンサルティング
上位に来やすいのは請求書発行と、顧問先ごとの稼働管理です。件数が多く、条件が顧問先ごとに違うため定型化しにくい業務です。
この業種では、例外処理の多さが効率化を妨げます。まず例外を洗い出し、本当に必要な例外だけ残す。ここを整理せずに自動化すると、例外対応がかえって複雑になります。
医療・介護
上位に来やすいのは請求業務と、各種の記録作成です。制度に基づく要件が多く、勝手に簡略化できない領域です。
任せられるのは、院内の案内文・掲示物・手順書の作成です。患者や利用者の情報を含まない範囲に限定すれば、安全に効果が出ます。
よくある質問(FAQ)
Q. どこから手を付ければよいですか?
A. 頻度が高く、1回30分以上かかり、手順が決まっている業務です。まず2時間で業務を30個書き出し、頻度×時間で月間時間を出してください。体感の負担と実際の時間は一致しないことが多くあります。
Q. 改善する時間そのものがありません
A. 棚卸しは2時間で終わります。そこで見つかる「やめられる業務」だけで、月に数時間浮くことが多くあります。完璧を目指さず、頻度の高いもの30個から始めてください。
Q. AIで経理の集計はできますか?
A. 集計そのものは任せないでください。大量の数字を集計させると誤りが混ざり、しかも自信のある口調で答えるため気づきにくいためです。計算はExcelか会計ソフトにやらせ、AIには手順や説明文を作らせてください。
Q. 属人化を解消したいが手順書を書く時間がありません
A. 手順を箇条書きでメモし、AIに手順書の形に整えてもらう方法があります。「書く」から「思い出して並べる」に変わるため負担が減ります。月に1業務のペースで十分です。
Q. システムを導入する予算がありません
A. やめる・減らす・頻度を落とす・承認を減らす。これらはすべて0円で、効果も小さくありません。モデルケースでも削減の一部は費用0円の改善から生まれています。順番として、これらを先に検討してください。
Q. 効果をどう説明すればよいですか?
A. 削減時間を金額に換算してください。「月10時間削減、時給2,500円換算で月25,000円」と示せれば判断材料になります。そのために、導入前の時間を棚卸しの段階で記録しておいてください。
Q. 電子帳簿保存法への対応はAIでできますか?
A. 別の話として扱ってください。AIは読み取りや転記の負担を下げますが、保存要件を満たすかどうかは法令上の判断です。国税庁が電子帳簿等保存制度の特設サイトで概要・パンフレット・一問一答を公開しているため、自社の対応状況はそちらか顧問税理士にご確認ください。
Q. 担当が1人で、休むと業務が止まります
A. 月1業務のペースで手順書を作ってください。手順を箇条書きでメモし、AIに手順書の形へ整えてもらう方法なら負担が抑えられます。作った手順書をAIに読ませ「分からない点を挙げて」と聞くと、書いた本人には自明でも他人には分からない箇所が見つかります。
Q. 例外処理が多くて自動化できません
A. 自動化の前に、例外そのものを減らせないか検討してください。「昔からこの取引先だけ別扱い」といった理由の薄い例外が残っていることがあります。整理せずに自動化すると、例外対応がかえって複雑になります。
Q. AIを使うことに上司が反対しています
A. 費用0円でできる改善(やめる・減らす・頻度を落とす・承認を減らす)から始めてください。ここで実績が出れば、次の話が通ります。総務省の白書でも導入の懸念1位は「効果的な活用方法がわからない」であり、まず具体的な成果を見せるのが最短です。
Q. 給与や評価の資料にも使えますか?
A. 給与額、人事評価、健康情報、マイナンバー、口座情報は入力しないと決めてください。ここは例外を作らないことが重要です。案内文や手順書の作成なら、具体的な金額や氏名を伏せても成立します。
まとめ
- 着手順は頻度×時間×難易度で決める。手順が決まっている業務から
- 複数を同時に進めない。1つ完了させてから次へ
- 棚卸しは2時間で。頻度の高いもの30個で十分
- やめる → 減らす → 任せる → 仕組み化の順。システムは最後
- 誰も見ていない資料、二重入力、形式的な承認を先に消す。費用0円で効果が出る
- AIに数字の集計をさせない。計算はExcel、説明文をAIに
- 手順書はAIで作れる。「書く」から「思い出して並べる」に変わる
- 給与額・評価・健康情報・マイナンバー・口座情報は入力しないと決める
バックオフィスの効率化は、派手な成果が出にくい領域です。しかし担当者が休めるようになることは、時間削減以上に組織にとって価値があります。まず2時間の棚卸しから始めてみてください。
経理・記帳まわりの進め方は経理・記帳業務のAI活用、他の業務も含めた全体像は業務効率化のアイデア20選にまとめています。


