シフト作成をAIで|条件の渡し方と任せない判断の線引き
業務効率化支援を行う「Ai-Raku(アイラク)」代表。国立大学でAIの研究を行い、ITコンサル・ウェブコンサルを経て独立。官公庁向けの業務効率化や上場企業の支援等を経て、中小企業の現場に定着するAI活用を企画から運用まで一気通貫で支援している。

- AIが作ったシフトをそのまま公開してよい?
- 公開しないでください。AIが作るのはたたき台です。各人の勤務日数の合計、連続勤務の日数、必要人数を満たしているかを人が確認し、負担が偏った人には事前に声をかけてから公開してください。
- 何名くらいまで対応できますか?
- 汎用の生成AIで扱う場合、10〜20名程度までが実用的な目安です。それ以上になると条件の組み合わせが増え、出力が不安定になります。人数が多い場合は専用ツールを検討するか、部門ごとに分けて作成してください。
- 従業員の名前を入力しても大丈夫?
- 記号に置き換えることをお勧めします。「A」「B」で条件は十分に機能し、出力後に自分で名前に戻せます。希望休の理由も入力不要です。この運用なら、従業員に説明を求められたときにも明確に答えられます。
- 法令違反にならないか心配です
- 法令にかかわる数値は、AIに聞かずに厚生労働省の情報などで確認し、条件として渡してください。AIには「渡した条件を満たしているか」のチェックだけをさせます。変形労働時間制や業種特例がある場合は、社会保険労務士など専門家にご相談ください。
- 専用ツールとどちらがよいですか?
- 10〜20名規模で、勤怠管理との連動が不要なら生成AIで十分です。人数が多い、拠点が複数ある、給与計算まで連動させたい場合は専用ツールが向きます。まず生成AIで条件を書き出しておくと、専用ツールを導入する際の設定もスムーズになります。
- 導入にどのくらいかかりますか?
- 条件の書き出しに2〜3時間、過去の月での検証に2〜3回分の試行が必要です。全体では1か月程度を見ておくと無理がありません。当社の支援は初期費用0円・月額5万円〜です。
月末が近づくと憂鬱になる。希望休を集めて、人数を合わせて、資格の組み合わせを見て、また希望とぶつかって組み直す。半日以上かけて作ったのに、公開した直後に「この日は無理です」と言われる。
シフト作成は、時間がかかるうえに、誰にも感謝されにくい業務の代表格です。しかも作れる人が1人しかいない会社が多く、その人が休むと止まります。
生成AIを使うと、この作業の大部分は軽くなります。ただし丸ごと任せると必ず失敗します。労働時間の制約や、人と人の相性といった、機械が判断してはいけない領域があるためです。本記事では、条件の渡し方と、任せてはいけない判断の線引きを具体的に整理します。
- シフト作成に時間がかかる本当の理由
- AIでシフトを組む3つの方法と選び方
- 条件の書き方(必須条件と希望条件の分け方)
- 法令にかかわる制約の伝え方(厚労省の一次情報つき)
- AIに任せてはいけない4つの判断
- そのまま使えるプロンプト例
結論|たたき台を作らせて人が調整する
最初に結論をお伝えします。AIでシフト作成がうまくいくのは、完成品を作らせようとしないときです。
8割の配置を自動で埋める
シフト作成の作業を分解すると、大半は条件を満たす組み合わせを探すという機械的な作業です。人数を満たし、希望休を避け、連勤を防ぐ。ここは計算に近い仕事なので、AIが得意とします。
この部分を任せると、白紙から埋めていく作業がなくなります。担当者の仕事は「出てきた表を見て、おかしい箇所を直す」に変わります。
残りの2割は人が決める
一方、埋まらない部分が必ず残ります。特定の日に人が足りない、資格者の配置が組めない、といった箇所です。
ここは誰かに無理をお願いするか、営業時間を調整するか、という経営判断になります。AIには決められません。むしろ「ここが埋まらない」と明示させることに価値があります。問題が早く見えるからです。
丸投げが失敗する理由
「今月のシフトを作って」とだけ頼むと、それらしい表は出てきます。しかし、その表は使えません。社内の暗黙のルールが反映されていないためです。
「Aさんは早番が苦手」「BさんとCさんは同じ日に入れない」「土曜は必ずベテランを1人」。こうした条件は、渡さなければAIは知りません。作業の実体は「条件を書き出すこと」であり、そこを飛ばすと成立しません。
シフト作成に時間がかかる理由
どこに時間がかかっているのかを分解します。
希望と人数の両立
希望休を集めると、特定の日に集中します。土日、連休、月末。全員の希望を通すと店が回らず、断ると不満が出ます。
この調整に最も時間がかかります。1か所直すと別の場所が崩れるためで、パズルのように何度もやり直すことになります。人間が手で解くには組み合わせが多すぎるのです。
資格・経験の組み合わせ
介護なら有資格者の配置、飲食なら調理ができる人、小売ならレジ締めができる人。単に人数が揃えばいいわけではありません。
新人だけの時間帯を作らない、という配慮も必要です。この条件が加わると、組み合わせの難易度が一段上がります。
直前の変更対応
公開後の欠勤や交代希望。1件の変更が複数箇所に波及するため、そのたびに全体を見直すことになります。
ここが精神的に最も重い部分です。作り終わったはずの仕事が、何度も戻ってくる感覚があります。
作れる人が限られる
これらの条件がすべて頭の中にあるため、他の人には作れません。結果として担当者が固定され、その人が休めなくなります。属人化の典型です。
AIでシフトを組む3つの方法
状況によって適した方法が変わります。
生成AIに条件を渡す
ChatGPTやClaudeのような汎用の生成AIに、条件を文章で渡して組ませる方法です。
向いているのは10〜20名規模まで。費用がかからず、今日から始められるのが最大の利点です。条件を文章で書けばよいので、専門知識も要りません。
本記事で主に扱うのはこの方法です。
表計算と組み合わせる
Excelでシフト表の枠を作り、条件のチェック(連勤していないか、時間数が超えていないか)を関数で行う方法です。
AIには関数の作り方を教えてもらいます。「連続勤務が5日を超えたら色を変える条件付き書式を作りたい」と依頼すれば、設定手順が返ってきます。
組み合わせの探索は人がやりますが、チェックが自動化されるだけでミスは大きく減ります。
専用ツールを使う
シフト管理の専用サービスを使う方法です。人数が多い、拠点が複数ある、勤怠管理と連動させたい、という場合はこちらが向きます。
ただし導入には条件の設定作業が必要で、その作業自体が数日かかることもあります。まず生成AIで条件を洗い出しておくと、専用ツールの設定もスムーズになります。
条件の書き方が9割
ここが本記事の核心です。AIに渡す条件の質が、結果の質をそのまま決めます。
必ず守る条件と希望の条件を分ける
最も重要なのがこの分類です。混ぜて書くと、AIはどれを優先すべきか判断できません。
| 区分 | 内容の例 | 破ったときの影響 |
|---|---|---|
| 絶対条件 | 法定の労働時間、休憩、有資格者の必要人数 | 法令違反・営業不可 |
| 必須条件 | 各時間帯の最低人数、希望休 | 店が回らない・信頼を失う |
| 優先条件 | 連勤を4日までにする、早番と遅番を連続させない | 負担が偏る |
| 希望条件 | できれば土日は交代で休む | 満足度が下がる |
この4段階で書き出し、「上から順に優先してください」と指示します。これだけで出力の質が大きく変わります。
法令にかかわる制約
労働時間には法律上の制約があります。シフトを組むうえで最低限押さえるべき点を、厚生労働省の情報にもとづいて整理します。
法定労働時間は、原則として1日8時間・1週40時間です。これを超えて働かせるには、労使協定(36協定)の締結と届出が必要になります(厚生労働省・労働時間、休日)。
休憩は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上を与えなければなりません(同上)。シフト表を作るときは、休憩時間まで含めて組む必要があります。
36協定を締結した場合でも、時間外労働には上限があります。詳細は厚生労働省・時間外労働の上限についてをご確認ください。
これらの数値は、AIに聞かずに一次情報を確認して、条件として渡してください。AIが古い情報や誤った理解で答える可能性があるためです。また、業種による猶予措置や、変形労働時間制を採用している場合は扱いが変わります。自社の制度に不安がある場合は、社会保険労務士など専門家に確認してください。
例外ルールの伝え方
「Aさんは子どもの迎えがあるので18時まで」「BさんとCさんは相性が悪いので同じ時間帯を避ける」といった個別事情。これらは理由を書かずに条件だけ伝えるのがコツです。
個人的な事情や人間関係の詳細を書くと、その情報がAIサービスに渡ります。「Aさんは18時まで」だけで条件としては十分に機能します。必要以上の情報を入れないことが、運用面でも情報管理の面でも正解です。
名前は記号に置き換える
さらに安全にするなら、名前をA・B・Cといった記号に置き換えてください。出力された表を、後から自分で名前に戻します。
ひと手間かかりますが、従業員の勤務情報を外部サービスに出さずに済みます。従業員に説明を求められたときにも、この運用なら説明できます。
そのまま使えるプロンプト例
実際に使う指示文の型を載せます。
シフトのたたき台を作らせる
以下の条件で、1か月分のシフト表のたたき台を作成してください。
【出力の形式】
・行を日付、列をメンバー(記号)とした表
・記号は 早=早番、遅=遅番、休=休み
・表の下に、各メンバーの勤務日数と休日数の合計を記載
【条件(上から優先)】
1. 絶対条件:1日の勤務は8時間以内。連続勤務は5日まで
2. 必須条件:早番は各日2名、遅番は各日2名。指定の希望休は必ず反映
3. 優先条件:遅番の翌日を早番にしない
4. 希望条件:土日の休みが特定の人に偏らないようにする
【メンバーと制約】
A:早番のみ可/B:制限なし/C:遅番のみ可/D:制限なし/E:週3日まで
【希望休】
A:5日、12日/B:20日/C:なし/D:8日、9日/E:毎週水曜
【厳守事項】
・条件を満たせない日がある場合は、無理に埋めず「未定」と書き、理由を最後にまとめてください
・条件にない前提を勝手に追加しないでください
最も重要なのが最後の2行です。「無理に埋めず未定と書く」を入れないと、AIは条件を破ってでも表を完成させようとします。埋まった表が返ってくるので、一見うまくいったように見えて、実は連勤が6日になっている、といった事故が起きます。
作ったシフトを検証させる
以下のシフト表が、次の条件に違反していないか確認してください。
・連続勤務が5日を超えている箇所
・1週間の勤務時間が40時間を超えている人
・各時間帯の人数が不足している日
・希望休が反映されていない箇所
違反がある場合は、日付と該当者を具体的に挙げてください。違反がなければ「該当なし」と書いてください。
【シフト表】
(貼る)
これは人が作ったシフトのチェックにも使えます。AIに作らせない場合でも、この検証だけ使う価値があります。目視では見落とす連勤や時間超過が拾えます。
変更の影響を調べさせる
以下のシフト表について、Aさんが15日を欠勤することになりました。
1. その日の人数を満たすための代替案を3つ挙げてください
2. 各案について、他の日への影響(連勤の増加、時間数の変化)を示してください
3. 条件に違反する案があれば、その旨を明記してください
【現在のシフト表】
(貼る)
【各メンバーの制約】
(貼る)
直前の変更対応は最も負担が大きい部分です。代替案を複数出させて人が選ぶ形にすると、考える時間が大きく減ります。
AIに任せてはいけない判断
ここを外すと、法的にも人間関係の面でも問題になります。
法令適合の最終判断
AIが「この表は法令上問題ありません」と言っても、それを根拠にしてはいけません。法令の適用は自社の制度(変形労働時間制の有無、業種の特例)によって変わります。
AIに任せるのは「決めた条件を満たしているかの機械的なチェック」までです。その条件自体が正しいかは、一次情報で確認するか専門家に相談してください。
人間関係にかかわる配置
「あの2人は組ませないほうがいい」といった判断は、条件として渡すことはできても、その判断自体をAIにさせてはいけません。事情を知っているのは現場の人だけです。
誰に無理を頼むか
人が足りない日に、誰にお願いするか。この判断には、その人の事情、過去の頻度、関係性が関わります。AIが「Aさんが最も余裕があります」と示しても、実際に頼めるかは別の話です。
AIは選択肢を出すところまで、選ぶのは人。この線を守ってください。
評価につながる配置
希望が通る回数、良い時間帯に入れるかどうかは、従業員から見ると処遇の一部です。ここを機械が決めていると受け取られると、不信につながります。
導入時には、「AIはたたき台を作るだけで、最終決定は人がしている」と明示的に伝えてください。この一言があるかないかで、受け止められ方が変わります。
希望休の集め方も見直す
シフト作成の負担は、作る工程だけではありません。その前の「希望を集める」工程にも改善の余地があります。
集約の手間をなくす
紙のノート、チャット、口頭。バラバラの経路で集まった希望を、担当者が転記している会社は多いはずです。この転記だけで30分かかることもあります。
解決策は提出先を1か所に決めることです。チャットの専用スレッドでも、共有のスプレッドシートでも構いません。重要なのは「ここに出す」と決めて全員に守ってもらうことです。
集まった内容の形式がばらついている場合は、AIに整形させられます。「以下の希望休の連絡を、氏名と日付の表にまとめてください」と依頼すれば、転記作業がなくなります。
締切を守らせる工夫
締切後に出てくる希望が、作り直しの原因になります。ここは仕組みで対処するのが現実的です。
効果があるのは「締切後の希望は次月に回す」というルールの明文化と、締切3日前のリマインドです。リマインドの文面もAIに作らせておけば、毎月コピーして送るだけになります。
希望の優先順位を決める
全員の希望が通らないとき、誰を優先するか。ここに明確な基準がないと、担当者の裁量に見えてしまい、不満の原因になります。
「前月に希望が通らなかった人を優先」「連続で同じ人が我慢しないようにする」といった基準を決め、条件としてAIに渡してください。基準が明示されていれば、結果への納得感が変わります。
作ったシフトの確認手順
AIの出力をそのまま公開してはいけません。確認の手順を型にしておきます。
件数を先に数える
最初に確認するのは、各メンバーの勤務日数と時間数の合計です。ここが想定と大きくずれていれば、条件の伝え方に問題があります。
プロンプトで「表の下に合計を記載」と指定しているのは、この確認のためです。合計が出ていれば、目視で数える必要がありません。
連勤と間隔を見る
次に、連続勤務の日数と、遅番から早番への切り替わりを確認します。ここはAIが最も間違えやすい箇所です。カレンダー上の連続性を扱うのが苦手なためです。
前述の検証プロンプトを使うと機械的に拾えますが、重要な部分なので目視でも確認してください。
公開前に本人へ確認する
特に負担が偏った人には、公開前に一声かけてください。決まってから伝えるのと、決める前に相談するのとでは、受け止め方がまったく違います。
この工程は削減できませんし、削減すべきでもありません。AIで浮いた時間を、ここに使ってください。
モデルケース|12名の飲食店(試算)
具体的なイメージのため、モデルケースを示します。以下は実在の企業ではなく、当社が想定する典型的な状況にもとづく試算です。効果は業務内容や体制によって変わります。
導入前の状況
従業員12名(社員3名・アルバイト9名)の飲食店。月次のシフト作成は店長が1人で担当しています。
作業の内訳は次のとおりでした。
| 工程 | 所要時間 | 内容 |
|---|---|---|
| 希望休の集約 | 30分 | 紙とチャットで集まった希望をExcelに転記 |
| たたき台の作成 | 150分 | 条件を見ながら手作業で配置 |
| 調整と組み直し | 90分 | 人数不足の解消、偏りの調整 |
| 個別の相談 | 40分 | 負担が偏った人への声かけ |
| 合計 | 約5.2時間 | — |
加えて、公開後の変更対応が月に3〜4件発生し、1件あたり20分程度かかっていました。
条件の書き出し
最初にやったのは、頭の中にある条件をすべて書き出すことです。これに約2時間かかりました。初回だけの作業ですが、ここが実質的な導入作業のすべてです。
書き出してみると、店長本人も意識していなかった条件が出てきました。「金曜の遅番は必ず社員を1人」「新人だけの時間帯を作らない」といったものです。これを文書にできたこと自体が、属人化の解消につながりました。
削減時間の試算
時給換算2,500円・月20営業日を前提とした試算です。
| 工程 | 導入前 | 導入後(試算) |
|---|---|---|
| 希望休の集約 | 30分 | 30分(変わらない) |
| たたき台の作成 | 150分 | 20分(条件を貼って実行) |
| 調整と組み直し | 90分 | 50分(埋まらない箇所のみ) |
| 検証(新設) | — | 15分 |
| 個別の相談 | 40分 | 40分(変わらない) |
| 月次の合計 | 約5.2時間 | 約2.6時間 |
| 変更対応(月3.5件) | 約1.2時間 | 約0.6時間 |
| 削減見込み(月) | — | 約3.2時間 |
| 金額換算(月) | — | 約8,000円 |
金額としては月8,000円程度ですが、この店舗では別の効果が大きく評価されました。条件が文書になったことで、副店長もシフトを作れるようになったことです。店長が休みを取れるようになり、これは金額では測れない変化でした。
「自社の条件をどう書き出せばよいか分からない」という場合は、いまの作り方を伺いながら整理をお手伝いします。初回のご相談は無料です。無料相談はこちら。
業種別の使いどころ
シフト作成の難所は業種によって違います。
飲食店
アルバイトの人数が多く、入れ替わりも頻繁です。条件が人ごとにばらばらなのが特徴で、書き出す作業に時間がかかります。
一方、一度書き出せば効果は大きい業種です。人数が多いほど、手作業での組み合わせ探索は困難になるためです。飲食店のAI活用|シフト作成・在庫発注・口コミ対応を効率化する方法もあわせてご覧ください。
医療・介護
有資格者の配置が絶対条件になるため、制約が最も厳しい業種です。夜勤の間隔、資格者の必要人数、利用者との相性まで考慮が必要になります。
この業種では、AIに作らせるより「作ったシフトの検証」に使うほうが実用的な場合があります。人が組んだ表を、条件違反がないかチェックさせる使い方です。医療・介護のAI活用で関連する論点を扱っています。
小売・サービス
時間帯によって必要人数が大きく変わるのが特徴です。開店準備、ピーク、閉店作業でそれぞれ必要な人数と技能が違います。
時間帯ごとの必要人数を先に決めておくと、条件として渡しやすくなります。
物流・運送
この業種では時間外労働の上限規制に関する扱いが特に重要です。自動車運転業務には特有の規制があるため、必ず最新の一次情報を確認してください。AIの回答を根拠にしないことを強くお勧めします。物流・運送業のAI活用もご覧ください。
導入の手順
実際の進め方を4段階で整理します。
STEP1 条件をすべて書き出す
実質的にこれが作業のすべてです。2〜3時間かけて、頭の中にあるルールを書き出してください。前述の4段階(絶対・必須・優先・希望)に分類しながら書くと整理しやすくなります。
コツは、過去3か月のシフト表を見ながら書くことです。「なぜこの配置にしたか」を思い出すと、無意識のルールが言葉になります。
STEP2 過去の月で試す
いきなり来月分を作らないでください。先月のシフトを、条件だけ渡して再現できるかを試します。
実際に組んだものと大きく違うなら、条件が足りていません。差分を見て条件を追加します。この作業を2〜3回繰り返すと、実用的な条件セットができあがります。
STEP3 検証の手順を決める
公開前に何を確認するかを決めます。前述の「合計を見る」「連勤を見る」「本人に声をかける」の3点を最低限の型にしてください。
STEP4 別の人にも作れるようにする
最後の工程が、実は最も価値があります。条件が文書になっていれば、他の人でも作れます。
1人に依存した状態を解消することが、シフト作成にAIを使う最大の効果かもしれません。手順書として残す方法は社内マニュアル・ナレッジ共有のAI活用もご覧ください。
情報の扱いで決めておくこと
シフトには従業員の勤務情報が含まれます。始める前に整理してください。
個人が特定されない形にする
前述のとおり、名前は記号に置き換えるのが基本です。「A」「B」だけなら、外部に出ても個人は特定されません。
また、希望休の理由(通院、家庭の事情など)は入力しないでください。日付だけあれば条件としては足ります。
従業員への説明
導入前に、従業員へ説明することをお勧めします。伝えるべきは3点です。
- AIが作るのはたたき台で、最終的な決定は人がすること
- 個人名や個別の事情は入力しないこと
- 希望の出し方はこれまでと変わらないこと
説明せずに始めて後から知られると、不信につながります。先に伝えておくほうが、はるかに摩擦が少なくて済みます。社内ルールの作り方は社内AIルールの作り方|情報漏洩を防ぐ生成AIガイドライン8項目で解説しています。
よくある失敗と防ぎ方
実際に起きうる失敗を挙げます。
条件を破った表が出てくる
最も多い失敗です。AIは表を完成させようとするため、条件を満たせないときに無理やり埋めてしまいます。連勤が6日になっていたり、必要人数を割っていたりします。
防ぎ方は、プロンプトに「条件を満たせない日は無理に埋めず、未定と書いて理由を挙げてください」を入れることです。そのうえで、検証プロンプトで機械的にチェックします。
存在しない人を配置される
メンバー表にない名前が出てくることがあります。AIが一般的な例で補ってしまうためです。
防ぎ方は、メンバーを記号で渡し、「指定した記号以外を使わないでください」と明記することです。記号にしておくと、この種の混入がすぐ分かります。
生成AIが事実でない内容を出す現象については、AIハルシネーション対策|原因と防ぐ7つの実務で詳しく扱っています。
法令の判断を任せてしまう
「これで法令上問題ないか」とAIに聞き、その回答を根拠にしてしまう失敗です。前述のとおり、法令の適用は自社の制度によって変わります。
防ぎ方は、法令にかかわる数値を一次情報で確認し、それを条件として渡すことです。AIには「渡した条件を満たしているか」だけをチェックさせます。
よくある質問(FAQ)
Q. AIが作ったシフトをそのまま公開してよい?
A. 公開しないでください。AIが作るのはたたき台です。各人の勤務日数の合計、連続勤務の日数、必要人数を満たしているかを人が確認し、負担が偏った人には事前に声をかけてから公開してください。
Q. 何名くらいまで対応できますか?
A. 汎用の生成AIで扱う場合、10〜20名程度までが実用的な目安です。それ以上になると条件の組み合わせが増え、出力が不安定になります。人数が多い場合は専用ツールを検討するか、部門ごとに分けて作成してください。
Q. 従業員の名前を入力しても大丈夫?
A. 記号に置き換えることをお勧めします。「A」「B」で条件は十分に機能し、出力後に自分で名前に戻せます。希望休の理由も入力不要です。この運用なら、従業員に説明を求められたときにも明確に答えられます。
Q. 法令違反にならないか心配です
A. 法令にかかわる数値は、AIに聞かずに厚生労働省の情報などで確認し、条件として渡してください。AIには「渡した条件を満たしているか」のチェックだけをさせます。変形労働時間制や業種特例がある場合は、社会保険労務士など専門家にご相談ください。
Q. 専用ツールとどちらがよいですか?
A. 10〜20名規模で、勤怠管理との連動が不要なら生成AIで十分です。人数が多い、拠点が複数ある、給与計算まで連動させたい場合は専用ツールが向きます。まず生成AIで条件を書き出しておくと、専用ツールを導入する際の設定もスムーズになります。
Q. 導入にどのくらいかかりますか?
A. 条件の書き出しに2〜3時間、過去の月での検証に2〜3回分の試行が必要です。全体では1か月程度を見ておくと無理がありません。当社の支援は初期費用0円・月額5万円〜です。
まとめ
- AIには完成品ではなくたたき台を作らせる。埋まらない箇所は「未定」と出させる
- 作業の実体は条件を書き出すこと。ここに2〜3時間かければ、以降は毎月20分で済む
- 条件は絶対・必須・優先・希望の4段階に分け、優先順位を明示する
- 法令にかかわる数値はAIに聞かず、厚生労働省の情報で確認して条件として渡す
- 名前は記号に置き換える。希望休の理由は入力しない
- AIに任せてはいけないのは、法令適合の最終判断・人間関係・誰に無理を頼むか・評価にかかわる配置
- 最大の効果は時間削減より「作れる人が1人」の状態を解消すること
シフト作成は、時間がかかるうえに感謝されにくく、しかも担当者を縛り続ける仕事です。条件を文書にして、組み合わせを探す部分を機械に任せる。それだけで、担当者が休める体制に一歩近づきます。
「自社の条件をどう整理すればよいか」「どこまで任せてよいか」でお困りの場合は、いまの作り方を伺いながらご提案します。売り込みは行いません。
業務ごとのAI活用は業務別ソリューション一覧にまとめています。プロンプトの書き方はプロンプトの書き方・コツ|すぐ使えるテンプレート集もあわせてご覧ください。


