営業AIツール比較|商談前後で分ける4タイプの選び方
業務効率化支援を行う「Ai-Raku(アイラク)」代表。国立大学でAIの研究を行い、ITコンサル・ウェブコンサルを経て独立。官公庁向けの業務効率化や上場企業の支援等を経て、中小企業の現場に定着するAI活用を企画から運用まで一気通貫で支援している。著書に『中小企業のAI定着の教科書 — 入れた後に、何をするか』(2026年)。

- 営業AIは商談の前・中・後のどこに効くかで分けると比較できる
- いちばん成果が出やすいのは商談後の記録。手間が減り、記録率も上がる
- 使われなくなる原因は機能不足ではなく、営業の手が増えること
- 顧客の会話をAIに渡す前に、同意と利用目的の確認が要る
結論:営業のどこを任せるか
営業向けAIツールを比較しようとすると、リスト作成、メール文面、商談の文字起こし、提案書の下書き、確度の予測と、まったく違う機能が同じ「営業AI」として並びます。機能表を横に並べても比較になりません。
整理の仕方は単純です。商談の前・中・後のどこに効くかで分けます。
| 時点 | AIが担うこと | 効果の出やすさ | 導入の重さ |
|---|---|---|---|
| 商談前 | 候補リストの作成・下調べ・メール文面 | 中 | 軽い |
| 商談中 | 会話の記録・その場での資料参照 | 中 | 中(同意が要る) |
| 商談後 | 記録の作成・次アクションの整理 | 高い | 軽い |
| 全体 | 確度の予測・案件の優先順位付け | 低い(データ量が要る) | 重い |
営業5名から10名の規模でいちばん成果が出るのは商談後です。理由は後述しますが、時間が減るだけでなくそもそも記録されていなかった商談が記録に残るようになるためです。
逆に4行目の確度予測は、過去の案件データが十分にある会社でないと当たりません。数十件のデータでは、営業担当の勘のほうが正確です。
営業で使えるAIの4タイプ
| タイプ | できること | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| A 汎用の生成AI | メール文面・提案の下書き・下調べ | まず試したい | 顧客名を入れる際の判断が要る |
| B 商談記録の自動化 | 録音から要約・次アクション抽出 | 記録が溜まっていない | 録音の同意が必要 |
| C SFA・CRM内蔵型 | 既存の営業システムの中で完結 | すでにSFAが動いている | 上位プラン限定のことが多い |
| D 営業特化の専用ツール | リスト作成から一気通貫 | 新規開拓が主戦場 | 既存システムとの二重管理 |
Bの商談記録は、汎用の議事録ツールでも代替できます。会議用と営業用で分けるべきかは、録音した音声をどこに保存するかで判断してください。顧客との会話は社内会議より扱いが慎重になります。議事録ツール全般の比較はAI議事録ツールおすすめ比較で扱っています。
見積の作成や受注処理そのものまで任せたい場合は、AIエージェントの領域になります。任せる範囲の決め方はAIエージェント比較で扱っています。
Dは新規開拓の件数が多い会社に向きますが、既存のSFAと別に管理する二重入力が発生しがちです。ここは比較の段階で必ず確認してください。
比較する前に決める3つ
1. 商談の前・中・後のどこを変えるか
3つ同時に手を付けると、営業のやることが一度に増えて元に戻ります。いま最も時間を取られている1か所を選んでください。判断の材料は次の問いです。
- 商談の準備に時間がかかっているのか
- 商談後の記録に時間がかかっているのか
- そもそも記録が残っていないのか
3つ目に当てはまるなら、迷わず商談後です。
2. 今のSFAやCRMをどうするか
すでに使っているシステムがあるなら、その中で完結させるのか、外部ツールとつなぐのかを先に決めます。決めずに比較すると、機能は気に入ったが二重入力になる製品を選ぶことになります。
3. 顧客の会話を録音してよいか
商談中を対象にするなら、ここが前提条件です。録音の同意をどう取るか、断られたときどうするかを決めてから比較に入ります。後述の章で扱います。
- □ 変えるのは商談の前・中・後のどれか
- □ 営業1人あたりの月間商談件数:◯件
- □ そのうち記録が残っている割合:◯%
- □ 記録1件にかかっている時間:◯分
- □ 現在のSFA・CRM:◯◯(製品名とプラン)
- □ 商談の録音について、社内で決めた方針があるか
商談前・中・後で見る軸
商談前に見る軸
候補リストの作成やメール文面の生成では、出力の質より、情報源が明示されるかを見てください。企業情報を調べさせたときに、いつの情報か、どこから取ったかが分からないと、商談で古い情報を口にすることになります。
商談中に見る軸
録音と文字起こしでは、次の3点で差が出ます。
- 複数人が同時に話したときの分離:先方が2名以上のときに崩れないか
- 専門用語や社名の認識:自社の商品名を辞書登録できるか
- オンラインと対面の両方に対応するか:対面の録音は環境音に弱い
商談後に見る軸
ここがいちばん重要です。見るべきは要約の上手さではなく、そのままSFAに入る形で出てくるかです。
きれいな要約文が出ても、SFAの項目に合わせて営業が書き直すなら、手間は減りません。「次アクション」「確度」「金額」「決裁者」といった項目に分けて出力できるかを確認してください。
SFA・CRMとの連携
営業AIの導入がうまくいかない原因の多くは、ここに集約されます。連携の方式は3段階です。
- SFAの中で完結:営業は普段の画面から出ない。最も定着しやすい
- 自動で書き込まれる:別ツールで記録し、SFAへ自動連携
- コピーして貼り付け:営業が手作業で移す
3番目を選ぶと、ほぼ確実に使われなくなります。営業から見ると作業が1つ増えるだけだからです。要約が上手でも関係ありません。
比較の場では「連携できます」という回答で止めず、次を確認してください。
- □ 現在使っているSFAの、現在のプランで連携できるか
- □ 連携は自動か、営業が押すボタンが要るか
- □ どの項目に、どう書き込まれるか(実演を見る)
- □ 自由記述だけでなく、選択項目にも入るか
- □ 連携が失敗したとき、どこで気づけるか
料金が決まる要素
営業AIツールの料金は、プランの条件が各社で揃っていないため、金額を並べても比較になりません。本記事では相場の数字を作らず、見積もりが何で変わるかを示します。
| 要素 | 見積もりを左右する点 | 確認すること |
|---|---|---|
| 利用人数 | 営業だけか、内勤も含むか | 閲覧のみの人にも課金されるか |
| 録音・処理の量 | 商談時間の合計で変わる製品がある | 月あたりの上限時間と超過単価 |
| 連携機能 | SFA連携が上位プラン限定のことがある | 必要な機能がどのプランからか |
| 保存期間 | 録音と文字起こしの保管期間 | 期間を延ばすと費用が上がるか |
| 初期設定 | SFAの項目に合わせる作業 | 自社でできる範囲はどこまでか |
3行目に注意してください。基本プランの金額で比較して契約したあと、連携が上位プランでしか使えないと分かるのはよくある落とし穴です。必要な機能を先に挙げて、それが含まれるプランで見積もりを取ります。AI導入全体の費用はAI導入費用の記事にまとめています。
顧客情報の扱いと同意
営業AIは、他の業務用AIと違って社外の個人の情報を扱います。ここは製品比較の前に社内で決めておく必要があります。
個人情報保護委員会は生成AIサービスの利用に関する注意喚起を出しており、事業者が個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、あらかじめ特定した利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認すること、また本人の同意を得ることなく個人データを含むプロンプトを入力することにも注意が必要であることを示しています。
実務での落とし込み
- □ 商談を録音する場合、いつ・どう同意を得るか(口頭か書面か)
- □ 同意が得られなかったときの進め方
- □ 顧客の氏名・連絡先を、どのツールまで入れてよいか
- □ 入力した内容が学習に使われない契約になっているか
- □ 録音と文字起こしの保管期間と、削除の手順
- □ 退職者が持っていた商談記録の扱い
実務上いちばん揉めるのは1つ目です。オンライン商談では冒頭に一言添えるだけで済みますが、対面では言い出しにくいという声が多くあります。方針を会社として決めておかないと、担当者ごとにばらついて後から問題になります。社内ルールへの落とし込み方は社内AIルールの作り方で扱っています。
AIに任せない線引き
| 領域 | AIに任せる | 人が行う |
|---|---|---|
| 商談記録 | 要約と次アクションの抽出 | 内容の確認と補正 |
| 提案書 | 構成と文章の下書き | 価格と条件の決定 |
| 顧客への連絡 | 返信文の案 | 送信の判断 |
| 見積 | 過去実績の参照と下書き | 金額の最終決定 |
| 確度の判断 | 参考値の提示 | 案件を進めるかの判断 |
| クレーム対応 | 経緯の整理 | 対応方針と謝罪の判断 |
とくに商談記録は、要約をそのまま信じないでください。AIは「言われなかったこと」を補って書くことがあります。先方が言っていない条件が記録に残ると、後の交渉で食い違いが起きます。営業本人が5分で目を通す運用を必ず入れてください。
使われない営業ツールの共通点
SFAが定着しなかった会社では、AIツールも同じ理由で使われなくなります。共通点は3つです。
1. 営業の手が増えている
録音ボタンを押す、要約を確認する、SFAに貼り付ける。1つ増えるごとに定着率が落ちます。比較のときは機能ではなく、営業が触る回数を数えてください。
2. 記録した人に返ってこない
入力しても上長が見るだけなら、営業にとっては報告作業です。過去の商談を自分で検索して使える状態になって初めて、記録が自分のためのものになります。検索性は比較の重要な軸です。
3. 導入の目的が「見える化」になっている
管理のために入れたツールは、管理される側から見ると監視です。「営業の時間を商談に戻すために入れる」という説明ができないなら、導入の設計を見直したほうが早く進みます。
無料で試せる範囲と限界
タイプAの汎用生成AIであれば、追加費用なしで今日から試せます。効果を測るなら次の手順です。
- 直近の商談5件について、営業本人にメモを書いてもらう
- 同じ5件を、録音または口述からAIに要約させる
- 次アクションが正しく抽出されているかだけを見る
要約の読みやすさではなく、次アクションの精度で判断してください。営業活動で使えるかどうかは、そこで決まります。
ただし、顧客の氏名や連絡先を入力する場合は、前述の同意と利用目的の確認が先です。試す段階でも、社名を伏せるなどの配慮が要ります。
無料では届かないこと
- SFAへの自動連携
- 録音データの安全な保管と、保管期間の管理
- 複数人が同時に話す商談の話者分離
- 過去の商談記録を横断して検索する仕組み
導入から定着までの手順
営業全員に一斉に配ると、使う人と使わない人に分かれたまま固定します。1名・30日で始めるのが確実です。
| 時期 | やること | 判断すること |
|---|---|---|
| 事前 | 記録1件の所要時間と、記録率を数える | 今の水準はどのくらいか |
| 1週目 | 営業1名が全商談で使う | 営業が触る回数は何回か |
| 2週目 | 要約の誤りを記録する | 言っていないことを書いていないか |
| 3週目 | SFAの項目に合わせて設定を直す | 貼り付け作業が消えたか |
| 4週目 | 記録1件の時間と記録率を再計測 | 他の営業へ広げるか |
最初に選ぶ1名は、ツールに詳しい人ではなく、記録をいちばん面倒がっている人にしてください。その人が続けられるなら、他の営業も続きます。
モデルケース|営業5名の会社
以下はモデルケース(試算)です。実在する企業の数値ではありません。
- 従業員40名、営業5名
- 商談件数:1人1日3件、月20営業日で計300件
- 導入前に記録が残っている割合:60%(180件)
- 記録1件の所要時間:12分
- 導入後の確認と補正:1件4分
- 提案書の下書き:月20件、1件45分 → 導入後20分
- 時間単価2,500円で換算
| 項目 | 計算 | 月あたり |
|---|---|---|
| 導入前の記録時間 | 180件 × 12分 | 36.0時間 |
| 導入後の記録時間 | 180件 × 4分 | 12.0時間 |
| 記録工程で空く時間 | 36.0 − 12.0 | 24.0時間 |
| 導入前の提案書作成 | 20件 × 45分 | 15.0時間 |
| 導入後の提案書作成 | 20件 × 20分 | 6.7時間 |
| 提案書で空く時間 | 15.0 − 6.7 | 8.3時間 |
| 合計 | — | 32.3時間 |
| 時間単価での換算 | 32.3時間 × 2,500円 | 80,750円相当 |
時間より大きい変化
この試算に出てこない変化のほうが、実務では効きます。記録されていなかった120件が記録に残ることです。
1件4分なら、これまで飛ばしていた商談も記録できます。記録率が60%から90%に上がると、270件が残る計算になります。担当が急に休んだときの引き継ぎ、失注理由の振り返り、同じ業種への提案の使い回しは、すべて記録があって初めて成り立ちます。
比較の段階では、「1件何分になるか」と同時に「記録率が上がるか」を見てください。営業が押すボタンが多い製品は、時間が減っても記録率は上がりません。
自社の営業のどこから手をつけるべきか、記録率の数え方から判断に迷う段階でしたら、お問い合わせからご相談ください。初期費用0円・月額5万円からご支援しています。
比較でやってはいけないこと
1. 要約の読みやすさで選ぶ
デモで見せられる要約は読みやすく作られています。実務で効くのは次アクションの抽出精度と、SFAの項目に入る形かです。自社の商談5件で試して比べてください。
2. 連携を確認せずに契約する
連携が上位プラン限定だったり、自動ではなくボタン操作が要ることがあります。実演を見せてもらうのが唯一の確認方法です。
3. 営業に相談せず決める
管理側だけで選ぶと、営業から見て手間が増える製品になります。選定の段階で、記録を面倒がっている営業を1名入れてください。その人が「これなら」と言う製品でなければ定着しません。
4. 録音の方針を決めずに始める
同意の取り方を決めないまま運用を始めると、担当者ごとにばらつきます。会社としての方針を文書にしてから配布してください。
5. 導入前の数字を測っていない
記録1件の時間と記録率を導入前に数えていないと、効果があったのか分かりません。2週間ぶんでよいので、先に測ってください。
よくある質問
SFAを入れていなくても使えますか
使えます。むしろSFAが定着していない会社ほど、商談後の記録を軽くすることから始める意味があります。記録が溜まってから、SFAの導入を検討する順序でも遅くありません。
商談の録音は必ず同意が要りますか
相手に断りなく録音することは、法律上ただちに違法とは限りませんが、信頼関係の観点から事前に伝えるのが実務の基本です。あわせて、録音した内容をAIに処理させる場合は、利用目的の範囲内かの確認が必要になります。具体的な判断は顧問弁護士にご確認ください。
営業5名でも効果はありますか
あります。判断の目安は人数ではなく「1人あたりの月間商談件数」です。1人月40件以上あれば、記録の自動化だけで時間が動きます。件数が少なく、1件が大型案件という営業では、提案書の下書きのほうが効きます。
確度の予測は当たりますか
過去の案件データが十分にある場合に限られます。数十件程度では、営業担当の判断のほうが正確です。まず記録を溜めることが先で、予測はその後の話になります。
顧客の名前をAIに入れてよいですか
利用目的の範囲内かの確認と、契約上の学習利用の有無を確かめたうえでの判断になります。判断がつかない段階では、社名を伏せて試すのが安全です。社内ルールとして線引きを文書化しておくと、担当者が迷わなくなります。
導入までどのくらいかかりますか
汎用の生成AIで試すだけなら即日です。SFA連携まで含めると、項目の対応づけに2週間から1か月が目安になります。時間がかかるのは製品の設定ではなく、どの項目に何を入れるかを社内で決めることです。
まとめ
営業AIツールの比較は、機能の多さではなく営業が触る回数の少なさで決まります。
- 商談の前・中・後で分ける。5〜10名規模でいちばん効くのは商談後
- 見るべきは要約の上手さではなく、そのままSFAに入る形か
- 連携は「できます」で信じない。実演と、必要な機能が入るプランを確認する
- 顧客情報を扱うため、録音の同意と利用目的の確認が製品比較より先
- 使われなくなる原因は機能不足ではなく、営業の手が増えること
- 1名・30日で試し、記録1件の時間と記録率の両方で判定する
まずは、記録1件に何分かかっていて、何割の商談が記録されているかを2週間だけ数えてみてください。記録率が6割を切っているなら、製品選びより先に効果が見込めます。
どのツールが自社の営業に合うか、SFAとの連携も含めてご一緒することが可能です。お問い合わせからお気軽にご相談ください。初期費用0円・月額5万円から、業務の切り分けと定着まで伴走します。
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