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助成金・補助金活用

システム開発の補助金|目的別4パターンと対象外経費

📅 公開日 2026.08.10 ⏱ 読了 約46分
前田 大輔
監修者
前田 大輔Ai-Raku(アイラク) 代表

業務効率化支援を行う「Ai-Raku(アイラク)」代表。国立大学でAIの研究を行い、ITコンサル・ウェブコンサルを経て独立。官公庁向けの業務効率化や上場企業の支援等を経て、中小企業の現場に定着するAI活用を企画から運用まで一気通貫で支援している。著書に『中小企業のAI定着の教科書 — 入れた後に、何をするか』(2026年)。

システム開発の補助金|目的別4パターンと対象外経費

「業務システムを作りたいのですが、補助金は使えますか」。この質問を、中小企業の経営者や現場の責任者から本当によく受けます。そして多くの場合、答えは期待されているものとは少しずれます。

先に正直に書きます。「システム開発そのもの」に出る補助金は限られています。国の制度の多くは、あらかじめ登録された既製のソフトウェアを導入する費用や、人手不足を解消するための設備投資を対象にしています。仕様を一から決めて作る自由なオーダーメイド開発は、制度によっては明確に対象外と書かれています。

ただし、これは「システム開発に補助金が一切使えない」という意味ではありません。何のために作るのかによって、見るべき制度は変わります。既製品を買うのか、既製品を自社向けに調整するのか、ゼロから作るのか、AIを組み込むのか。この4つで、使える可能性のある制度も、通らない理由もまったく違います。

この記事では、公募要領と登録要領の原文にあたって、目的から制度を逆引きする表と、対象外になりやすい経費の一覧を作りました。制度そのものの詳しい解説は既存の記事に譲り、本記事は「自分のやりたいことが、どの制度の土俵に乗るのか」を判断できる状態にすることに絞ります。

はじめにお読みください

本記事は2026年8月時点で公開されている公募要領・登録要領・公式サイトの記載にもとづく一般的な情報提供です。補助金の制度は改定と統廃合が頻繁で、2026年度も制度の名称変更や統合が実際に起きています。申請を検討する際は、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。個別の経費が補助対象になるかどうかの最終判断は、各補助金の事務局にご確認をお願いします。当社は補助金の申請代行を行っておらず、本記事は採択を保証するものではありません。

この記事でわかること

  • 「システム開発そのもの」に出る補助金が限られている理由と、制度が実際に見ているもの
  • やりたいこと別に、使える可能性のある制度を引ける逆引き表
  • スクラッチ開発と大幅なカスタマイズが、なぜ登録の対象外になるのか
  • ゼロから作る場合に土俵に乗る3つの制度と、それぞれの重さ
  • 自社の人件費、汎用パソコン、既に着手した経費など、対象外になりやすい経費の一覧
  • 実績報告で要件定義書の提出を求められるという、見落とされがちな条件
  • 従業員24名の工事会社を想定したモデルケースの試算表
  • 補助金ありきで発注すると失敗する3つの理由と、その避け方
  1. 結論|開発費そのものは出にくい
    1. 制度が見ているのは「製品」
    2. 目的から逆引きすると早い
    3. 2026年8月時点という前提
  2. やりたいこと別の逆引き表
    1. 4つのパターンに分かれる
    2. 目的別の早見表
    3. 表を使うときの注意
  3. 既製ソフトを買うときの制度
    1. デジタル化・AI導入補助金
    2. 登録ITツールからしか選べない
    3. 補助額は2つの帯に分かれる
  4. カスタマイズはどこまで通るか
    1. 大幅なカスタマイズは登録外
    2. スクラッチ開発は明確に対象外
    3. 設定作業と研修は対象になる
  5. ゼロから作るときの選択肢
    1. 省力化投資補助金の一般型
    2. 新事業進出とものづくりの統合
    3. 持続化補助金は上限30万円
  6. AIを組み込むときの線引き
    1. AI単体の契約は通らない
    2. AI搭載ソフトの探し方
    3. 制度に合わせて設計しない
  7. 対象外になりやすい経費
    1. 自社の人件費は出ない
    2. 汎用パソコンと事務用ソフト
    3. 交付決定前の発注は全滅
    4. 対象外になりやすい経費一覧
  8. 申請前に決めておく5つ
    1. 削る業務を1つに絞る
    2. 要件定義書は後から要る
    3. 見積の粒度をそろえる
    4. 開発会社の選び方3つ
  9. モデルケース(試算)|B社
    1. 想定する会社と困りごと
    2. 4つの選択肢を並べる
    3. 費用と補助額の試算表
    4. 工数削減の試算表
    5. 想定される3つの躓き
  10. 補助金ありきで失敗する理由
    1. 要らない機能に金を払う
    2. 予定が公募日程に縛られる
    3. 後払いで資金繰りが詰まる
  11. 補助金以外に使える手段
    1. 税制優遇という選択肢
    2. 自治体の制度の探し方
    3. 小さく作って確かめる
  12. 制度の最新情報の追い方
    1. 名称変更が続いている
    2. 公式サイトで見る3点
  13. よくある質問(FAQ)
    1. Q. システム開発に補助金は出ますか
    2. Q. 自社の情シスが作る場合は
    3. Q. カスタマイズは対象になりますか
    4. Q. ChatGPTの月額は対象ですか
    5. Q. パソコンは補助されますか
    6. Q. すでに開発を始めていますが
    7. Q. 既存システムの改修は対象ですか
    8. Q. 補助金はいつ振り込まれますか
    9. Q. 複数の補助金を同時に使えますか
    10. Q. 要件定義書は本当に必要ですか
    11. Q. 開発費の見積は一式でよいですか
    12. Q. 小規模事業者はいくらまで出ますか
    13. Q. 補助金が取れなかったらどうしますか
    14. Q. 申請代行を頼めますか
    15. Q. 何から始めればよいですか
  14. まとめ|順番を間違えない

結論|開発費そのものは出にくい

先に結論を書きます。システム開発の費用に直接ひもづく補助金は、想像されているよりずっと少ないです。そして、その理由は制度の設計そのものにあります。

制度が見ているのは「製品」

中小企業がIT投資で最初に思い浮かべる制度は、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)でしょう。この制度の補助対象経費は、公募要領に次のように書かれています。「補助対象経費は、IT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費用とする」(出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領」)。

つまり、対象になるのは登録済みの製品であって、これから作るシステムではありません。開発会社に「うちの業務に合わせて作ってください」と依頼した成果物は、事前に登録されているはずがないので、この時点で土俵に乗りません。

同じことは省力化投資補助金のカタログ注文型にも言えます。こちらは登録済みの製品カタログからしか選べない仕組みで、カタログにない製品は事業計画の巧拙に関係なく対象外です。詳しくはカタログ型補助金の記事で整理しています。

目的から逆引きすると早い

では手詰まりかというと、そうではありません。制度は「システム開発」という手段ではなく、「何を実現するのか」という目的で分かれています。人手不足の解消なのか、新しい製品やサービスの開発なのか、販路の開拓なのか。目的が制度の趣旨と一致していれば、その手段としてシステムを構築する費用が対象経費に入ってくる、という構造です。

実際、中小企業省力化投資補助金の一般型は、補助対象を「個別現場の設備や事業内容に合わせた設備導入・システム構築」と明記しています(出典:中小機構「中小企業省力化投資補助金(一般型)一般型とは」)。オーダーメイドのシステム構築が、正面から対象経費に入っている数少ない制度です。

だから、探し方は「システム開発 補助金」で制度を探すのではなく、やりたいことを言語化してから、その目的に合う制度を当てにいくのが正しい順番になります。

2026年8月時点という前提

もう一点、前提を共有しておきます。制度は動きます。2026年度は特に動きが大きい年で、実際に次のことが起きています。

本記事の数字と制度名は2026年8月時点のものです。読んでいる時点で名称や金額が変わっている可能性があるため、申請前には必ず各制度の公募要領で確認してください。

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やりたいこと別の逆引き表

ここが本記事の中心です。制度から入るのではなく、やりたいことから引ける形で整理しました。

4つのパターンに分かれる

システムやソフトウェアにお金をかけたい、という相談は、突き詰めると次の4パターンのどれかに落ちます。まず自分がどれなのかを決めてください。

  1. 既製品を買う。市販の業務ソフトやクラウドサービスを導入する
  2. 既製品をカスタマイズする。買ったソフトを自社の運用に合わせて調整する
  3. ゼロから作る。仕様を自社で決めて、開発会社にオーダーメイドで作ってもらう
  4. AIを組み込む。既存の業務や新しいシステムに生成AIなどの機能を持たせる

相談の場でよく起きるのは、本人は3番のつもりだったが、話を聞くと1番で足りていたというケースです。逆に、1番のつもりが要望を並べていくうちに3番になっていた、ということもあります。この見極めが先です。

目的別の早見表

やりたいこと別に、使える可能性のある制度をまとめました。「可能性がある」であって、必ず対象になるという意味ではありません。最終判断は各事務局です。

やりたいこと 具体例 使える可能性のある制度 最大の関門
既製の業務ソフトを導入 販売管理、会計、勤怠、工事管理のクラウド デジタル化・AI導入補助金(通常枠) 登録済みのITツールにあるかどうか
導入時の設定と研修を頼む マスタ設定、データ移行、操作研修 同上(役務のカテゴリー) 指定されたソフトと対で申請する必要
既製品を大きく作り替える 業務プロセスに影響する改修、アドオン開発 原則として上記は不可。省力化一般型を検討 登録の対象外になる規定に当たる
省力化のためにゼロから作る 工程管理、検査の自動化、現場の入力削減 中小企業省力化投資補助金(一般型) 単価50万円以上の設備投資が必須
新製品や新サービスとして作る 自社で売るサービスの開発、新市場への進出 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 単なる導入では対象事業に該当しない
小さく作って試す 顧客管理システム、簡易アプリ、ECサイト 小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠) ウェブサイト関連費は申請額30万円が上限
AIを業務に組み込む 生成AI搭載の業務ソフト、AIの初期学習設定 デジタル化・AI導入補助金(通常枠) 単体のAIサービス契約は対象にならない
既存システムを更新する バージョンアップ、保守更新、単なる置き換え 原則として補助対象外 更新料や単なる置き換えを除く規定がある
社内の人員で内製する 情シスや現場担当が自分たちで開発 補助金は不可。税制優遇を検討 自社の人件費は補助対象外
売るためのシステムを作る 自社商品としてのソフトウェア、レンタル用 販売目的の製作費は原則対象外 新事業進出枠など目的の合う枠を探す

表を使うときの注意

この表を使うときに、3つだけ気をつけてください。

1つ目は、複数の制度を同じ経費に重ねて使うことはできないという点です。デジタル化・AI導入補助金の申請要件には「国及び独立行政法人中小企業基盤整備機構その他の独立行政法人の他の補助金等と重複する事業については、補助事業の対象として含んでいないこと」とあります。

2つ目は、右にいくほど手続きが重いことです。既製品の導入なら支援事業者と組んで進められますが、ゼロから作る系の制度は事業計画書の作成、3年から5年の目標設定、賃上げの計画、複数年の報告が付いてきます。

3つ目は、この表は入口の絞り込みにすぎないことです。制度ごとの細かい要件は次章以降で見ていきます。制度全体の一覧はAI導入に使える補助金の記事で整理しているので、あわせてご覧ください。

既製ソフトを買うときの制度

まずは一番使われる道から見ていきます。既製の業務ソフトやクラウドを入れるなら、デジタル化・AI導入補助金の通常枠が第一候補です。

デジタル化・AI導入補助金

この補助金は、中小企業・小規模事業者が自社の課題に合ったITツールを導入する経費の一部を補助する制度です。通常枠の条件は次のとおりです(出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業「通常枠」)。

項目 内容
補助率 1/2以内(最低賃金近傍の従業員が一定割合いる場合は2/3以内)
補助額 5万円以上150万円未満(1プロセス以上)/150万円以上450万円以下(4プロセス以上)
ソフトウェア ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)
オプション 機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ(最大1年分)
役務 導入コンサルティング、導入設定・マニュアル作成・導入研修、保守サポート
役務の上限 役務の合計で200万円が補助対象経費の上限

制度の詳しい中身、採択の実数、加点項目などはデジタル化・AI導入補助金2026の記事で解説しているので、本記事では「システム開発の視点で何が違うか」に絞ります。

登録ITツールからしか選べない

この制度でもっとも重要なのは、ソフトウェアが事前に登録されていなければならないという一点です。登録要領には、登録要件として「『業種』『業務範囲』『業務機能』等の仕様を明確に定義して開発され、一般に販売が開始されていること」と書かれています(出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業「ITツール登録要領」)。

自社のためだけに作るシステムは、定義上「一般に販売が開始されている」ものではありません。だからこの制度の土俵に乗らないのです。逆に言えば、やりたいことが既製のパッケージやクラウドで満たせるなら、この制度がもっとも軽く、もっとも早いということでもあります。

候補になる製品があるかどうかは、公式のITツール検索で先に確かめられます。開発会社に相談する前に、まずここを10分見るだけで、判断の材料がかなり増えます。

補助額は2つの帯に分かれる

もう1つ、見落とされやすいのが補助額の帯です。5万円から150万円未満の帯は1プロセス以上、150万円から450万円以下の帯は4プロセス以上が必要です。プロセスとは、顧客対応・販売支援、決済・債権債務・資金回収、供給・在庫・物流、会計・財務・経営、総務・人事・給与などの業務区分を指します。

ここで起きがちな失敗が、450万円の枠を狙って、使わない機能を積み増してしまうことです。プロセス数を満たすためにモジュールを足せば、当然その分の自己負担も増えます。補助率が1/2なら、100万円積み増すと50万円は自社で払うことになります。使わない機能に50万円を払う判断が正しいかは、冷静に考えてください。

なお、汎用プロセスのみを持つソフトウェアは単独では申請できず、他の業務プロセスと組み合わせて初めて1プロセスとしてカウントされます。「業種・業務が限定されないが生産性向上への寄与が認められる専用のソフトウェア」がこれに当たります。

カスタマイズはどこまで通るか

ここが実務でもっとも混乱する論点です。「既製品を入れるが、自社向けに調整もしてもらう」というよくある形が、どこまで対象になるのか。登録要領には、かなり具体的な線が引かれています。

大幅なカスタマイズは登録外

ITツール登録要領には、登録要件を満たすソフトウェアであっても登録の対象外となるものが列挙されています。システム開発に関係する部分を抜き出すと次のとおりです(出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業「ITツール登録要領」)。

登録の対象外となるもの 実務での意味
業務プロセスに影響を与えるような大幅なカスタマイズが必要となるもの 入れるために作り替えが前提の製品は登録できない
製品が完成されておらず、スクラッチ開発を伴うソフトウェア これから作るシステムは対象にならない
過去に特定顧客向けに開発したコードを他の顧客に再利用し、その顧客の要件に合わせ追加スクラッチ開発を伴うもの 「実績のあるベースを流用して作ります」も対象外
特定の顧客向けに限定され、一般市場に販売されていないもの 自社専用に作られたものは登録できない
すでに導入済みのソフトウェアの機能を追加・拡張することを目的としたもの(追加モジュール、アドオン、プラグイン等) 今あるシステムの機能追加は対象外
ホームページ制作、WEBアプリ制作、スマートフォンアプリ制作等の制作ツールにおける、追加開発に掛かる費用が含まれているもの 制作ツール自体は可だが追加開発費は不可
ホームページ作成システム等で制作した簡易アプリケーション 情報の入力・保存・検索・表示だけの簡易なものは不可

スクラッチ開発は明確に対象外

上の表で注目してほしいのは、「スクラッチ開発」という言葉が要領に直接書かれていることです。しかも「過去に特定顧客向けに開発したコードを再利用し、追加スクラッチ開発を伴うもの」まで対象外と明記されています。

これは実務でよくある提案の形を、まさに名指しで排除しています。「似た業種の会社に納めた実績があるので、それをベースに御社向けに作ります」という提案は、開発の進め方としては合理的でも、この制度の登録では通りません。補助金を前提に開発会社と話を進める前に、この一文を共有しておくと事故が減ります。

設定作業と研修は対象になる

一方で、すべてのカスタマイズが不可というわけではありません。役務のカテゴリーには「導入設定・マニュアル作成・導入研修」があり、その中身として次の費用が挙げられています。

  • 導入設定費用、テーブル設定費用等
  • CSVデータのアップロード作業にかかる費用(既存データが対象)
  • カスタマイズ作業にかかる費用
  • 研修資料の作成、研修の実施費用
  • 運用マニュアルの作成費用
  • RPAのシナリオ制作費、AIの初期学習設定

つまり線引きはこうです。登録された製品を、その製品の範囲内で自社向けに設定・調整する作業は役務として対象になる。製品そのものを作り替えなければ使えない規模の要望は、そもそも製品が登録できない。この2つを分けて考えると、見積のどの行が対象になりそうかが読めるようになります。

ただし役務には制約があります。導入設定は導入開始から納品日までに発生する費用に限られ、交付決定前に発生した費用や、補助事業者の通常業務に対する代行作業費用は対象外です。また、指定したソフトウェア1つに対して登録できる導入設定は1つのみで、対になっているソフトを導入する場合に限り申請できます。

ゼロから作るときの選択肢

既製品では無理だと分かった場合、オーダーメイド開発の土俵に乗る制度は限られます。2026年8月時点で現実的に検討できるのは、次の3つです。

省力化投資補助金の一般型

もっとも素直に当てはまるのが、中小企業省力化投資補助金の一般型です。補助対象は「個別現場の設備や事業内容に合わせた設備導入・システム構築」と明記されており、補助対象経費には機械装置・システム構築費(必須)のほか、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費が並びます(出典:中小機構「中小企業省力化投資補助金(一般型)一般型とは」)。

従業員数 補助上限額 賃上げ特例適用時
5人以下 750万円 1,000万円
6人から20人 1,500万円 2,000万円
21人から50人 3,000万円 4,000万円
51人から100人 5,000万円 6,500万円
101人以上 8,000万円 1億円

補助率は中小企業が1/2、小規模企業者・小規模事業者と再生事業者が2/3です。ただし条件があります。公募要領には「必ず1つ以上、単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が必要」と書かれており、この機械装置等には「専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築」が含まれます(出典:中小機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領」)。

もう1つの制約は、「機械装置・システム構築費」以外の経費は総額500万円(税抜)までが上限という点です。外注費は補助対象経費総額の1/2、技術導入費と知的財産権等関連経費は1/3が上限と、経費区分ごとに天井があります。

そして基本要件が重いです。労働生産性の年平均成長率が4.0%以上、1人当たり給与支給総額の年平均成長率が3.5%以上、事業所内最低賃金が都道府県最低賃金より30円以上高い水準。これらを事業計画期間にわたって満たす必要があり、未達の場合は達成率に応じた返還が求められます。制度の全体像は省力化投資補助金の記事で解説しています。

公募は回制です。第7回の応募申請は2026年7月31日17時に締め切られ、第8回は8月中旬の公募開始が予定されています(出典:中小機構「中小企業省力化投資補助金(一般型)」)。

新事業進出とものづくりの統合

2026年度で大きく変わったのがここです。中小企業新事業進出補助金の公募は終了し、公式サイトには「新規の受付は『新事業進出・ものづくり商業サービス補助金』まで」と案内されています。ものづくり補助金のほうも、公表されているスケジュール上は23次締切(2026年5月8日締切、2026年8月7日採択発表)が最新で、それ以降の締切は本記事の執筆時点で掲載されていません(出典:全国中小企業団体中央会「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 スケジュール」)。

新しい「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は3つの枠に分かれています。

対象となる事業 補助上限額 補助率
革新的新製品・サービス枠 革新的な新製品・新サービス開発の取組 最大2,500万円(賃上げ特例で3,500万円) 中小1/2、小規模・再生2/3
新事業進出枠 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出 最大7,000万円(賃上げ特例で9,000万円) 中小1/2
グローバル枠 海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化 最大7,000万円(賃上げ特例で9,000万円) 中小2/3

いずれの枠も、補助対象経費に機械装置・システム構築費が入っています。革新的新製品・サービス枠ではこれが必須経費です(出典:中小機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」)。

ただし、社内の業務システムを作りたいだけの会社には向きません。公式サイトの説明には「単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象事業に該当しません」と明記されています。社内の効率化のためのシステム構築は、この枠の趣旨とは違います。

第1回公募の応募期間は令和8年9月30日から10月30日18時まで、補助金交付候補者の採択発表は令和9年1月頃の予定です(出典:中小機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回公募要領」)。

持続化補助金は上限30万円

小規模事業者なら、小規模事業者持続化補助金という選択肢もあります。この制度が面白いのは、対象経費の例にシステム開発が明示されていることです。

「ウェブサイト関連費」の対象となる経費例として、次のものが挙げられています。オフライン含むシステム開発、顧客管理システムの構築、アプリケーション開発、業務効率化のためのソフトウェア。逆に対象とならない経費例には、販売を目的としたシステムやソフトウェア開発、家庭および一般事務用ソフトウェア、既に導入しているソフトウェアの更新料が並びます(出典:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>「第20回公募要領(第8版)」)。

ただし、ここに大きな制約が2つあります。

  • ウェブサイト関連費のみによる申請はできない。必ず他の経費と一緒に申請する必要がある
  • この経費の補助金交付申請額の上限は30万円(税込)。補助上限50万円のうち、システム側に回せるのは30万円まで

つまり、この制度でシステム開発費を賄おうとしても、出るのは最大30万円です。100万円のシステムを作っても、補助率2/3の計算より先に30万円の天井が効きます。「小さく作って確かめる」段階の後押しにはなりますが、本格的な開発の資金源にはなりません。

第20回公募は、申請受付が2026年11月5日から12月15日17時まで、採択発表は2027年3月頃の予定です(出典:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>「持続化補助金とは」)。

AIを組み込むときの線引き

「せっかく作るならAIも入れたい」という相談も増えました。ここにも制度上の線があります。

AI単体の契約は通らない

まず押さえるべきは、生成AIサービスを直接契約した月額料金は、デジタル化・AI導入補助金の対象にならないということです。理由は単純で、補助対象は登録済みのITツールに限られ、その登録要件として業務プロセスを1つ以上保有するソフトウェアであることが求められるからです。

登録要領には、登録の対象外となるものとして「単なる情報提供サービスや、会員登録を行い、WEB上でサービスの提供を受ける仕組み等の業務機能を有さないもの」も挙げられています。汎用の対話型AIを個別に契約する形は、この規定に当たると考えるのが自然です。

省力化投資補助金のカタログ注文型でも、対象は機械装置と一体で使う専用ソフトウェアに限られ、ブラウザだけで完結するクラウドサービスは対象外です。AIツールの月額費用に補助金を当てにいく、という発想自体を捨てたほうが早いです。

AI搭載ソフトの探し方

一方で、AI機能を持つ業務ソフトを導入するなら話は別です。デジタル化・AI導入補助金の公募要領には「AIの搭載有無を含む機能概要については、ITツール検索を活用し確認できる」と書かれています(出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領」)。

また、役務のカテゴリーには「RPAのシナリオ制作費、AI初期学習設定」が明記されています。登録済みのソフトにAI機能があり、その初期学習の設定を支援事業者に依頼するのであれば、その費用は役務として対象になり得ます。

ここは意外と知られていない点です。「AIは対象外」と一括りにされがちですが、正確にはAI単体の契約が対象外なのであって、AI機能を含む登録ソフトとその設定作業は対象になり得るという構造です。

制度に合わせて設計しない

最後に、当社の立場として正直に書きます。AIを組み込むかどうかは、補助金の対象になるかどうかで決めるべきではありません。

実務で見ていると、AIが本当に効くのは「判断の前段の作業」です。文章を読んで要点を抜く、書式のばらつきを揃える、下書きを作る。逆に、金額の計算、在庫の引き当て、承認の記録といった間違いが許されない処理は、AIではなく普通のプログラムで書くべきです。ここを混ぜると、システムは複雑になるだけで信頼できなくなります。

「補助金の枠にAIという文字があるから入れておこう」で設計すると、使われない機能に費用を払うことになります。AIを入れる理由は、業務の側にあるべきです。

まず業務の棚卸しから始めませんか

どの制度を使うかを決める前に、「どの業務のどの工数を削るのか」を1つに絞る必要があります。ここが決まっていないと、既製品で足りるのか、作る必要があるのかも判断できません。当社(Ai-Raku)は、業務の棚卸しと課題整理の支援から伴走しています。費用は初期費用0円・月額5万円です。補助金の申請代行は行っていませんが、その手前の「何を削るか」を一緒に決めるところからご相談いただけます。

対象外になりやすい経費

ここからは、見積のどこが落ちるかの話です。制度が違っても、落ちる場所はかなり共通しています。

自社の人件費は出ない

もっとも多い誤解がこれです。社内の人員が開発に使った時間は、補助対象になりません。省力化投資補助金の一般型の公募要領には、対象外経費として次のように書かれています。

「事業にかかる自社の人件費・旅費・交際費」。そしてその注記に「社内システム・自社の基幹システム等の開発・改修を自社の人員で実施する場合の人件費を計上することは認められません」とあります(出典:中小機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領」)。ここまで具体的に書かれているのは、実際に計上しようとする事業者が多いからでしょう。

同様に「同一企業の部署間の支払(機械装置等の社内発注、社内製造についても、同一法人内における支払とみなして対象外)」という規定もあります。グループ会社にシステム子会社がある場合も、資本関係があると対象外になり得ます。

内製で進める判断そのものは、まったく悪いことではありません。ただ、内製に補助金は付かないという前提で計画を立てる必要があります。内製の考え方については在庫管理システムを自作する記事も参考にしてください。

汎用パソコンと事務用ソフト

2つ目は、システムを動かすための機器です。省力化投資補助金の一般型では、対象外経費として「汎用性があり、目的外使用になり得るものの購入費」が挙げられ、その例として事務用のパソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、スマートフォン、タブレット端末、カメラなどが並んでいます。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金でも同じ趣旨の規定があり、事務用のパソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン、デジタル複合機、カメラ、書籍、家具家電等が対象外です(出典:中小機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回公募要領」)。

デジタル化・AI導入補助金の通常枠も、補助対象はソフトウェア・オプション・役務の3つで、ハードウェアは含まれません。PCやタブレットは「会計」「受発注」「決済」のいずれかの機能を含むソフトと併せて導入する場合のインボイス枠の話であり、通常枠では対象外です。

システムは入ったが、それを使う端末は自腹だったという事態はよく起きます。見積を作るときは、端末代を最初から自己資金として分けておいてください。

交付決定前の発注は全滅

3つ目は、タイミングの問題です。交付決定を受ける前に発注・契約・支払いをしたものは、いかなる理由でも対象になりません。

省力化投資補助金の一般型の公募要領には、対象外経費の筆頭に「交付決定前に発生した経費 ※いかなる理由であっても事前着手は認められません」とあります。デジタル化・AI導入補助金の通常枠でも「交付決定前に購入したITツール」が補助対象外です。

そして注意すべきは、交付決定までに時間がかかることです。デジタル化・AI導入補助金の4次締切分を例にすると、締切日が2026年8月25日17時、交付決定日が2026年10月7日の予定です(出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業「事業スケジュール」)。締切から交付決定まで1か月半あります。この間に「早く始めたい」と契約してしまうと、補助金は消えます。

対象外になりやすい経費一覧

制度をまたいで、システム開発の見積に出てきやすい対象外経費をまとめました。

経費の内容 扱い 根拠となる規定の例
自社の人件費(社内の人員で開発・改修) 対象外 省力化一般型、新事業進出・ものづくり
同一法人内・部署間の支払い、社内発注 対象外 省力化一般型、新事業進出・ものづくり
資本関係のある事業者への支払い 対象外 省力化一般型、新事業進出・ものづくり
事務用パソコン、タブレット、文書作成ソフト 対象外 汎用性があり目的外使用になり得るもの
交付決定前に発注・契約・購入したもの 対象外 全制度に共通(事前着手は不可)
既存システムのバージョンアップ・更新料 原則対象外 省力化一般型、持続化、ITツール登録要領
既存システムの単なる置き換え 対象外 新事業進出・ものづくり
中古品の購入費 原則対象外 省力化一般型、デジタル化・AI導入補助金
リース・レンタル契約のITツール 対象外 デジタル化・AI導入補助金(通常枠)
申請代行費、報告書の作成費 対象外 全制度に共通
消費税および地方消費税 対象外 全制度に共通(公租公課)
自社が販売する商品としてのシステム製作費 対象外 省力化一般型、持続化
自社以外の他者が利用するシステムの開発費 対象外 省力化一般型
事務所の家賃、通信費、各種保険料、振込手数料 対象外 省力化一般型、新事業進出・ものづくり
内訳が不明な「諸経費」「一式」 対象外 新事業進出・ものづくり

最後の行は特に注意してください。開発の見積は「設計一式」「開発一式」で出てくることが少なくありませんが、内訳が確認できない経費は落ちます。次章で説明するとおり、実績報告では作業単価や工数まで求められることがあります。

申請前に決めておく5つ

制度を選ぶ前に、社内で決めておくべきことがあります。順番を守ると手戻りが減ります。

削る業務を1つに絞る

最初にやるのは、どの業務のどの工数を削るのかを1つに決めることです。「全体的に効率化したい」では、事業計画も書けませんし、開発会社も見積を出せません。

具体的には、対象の業務について「誰が」「月に何時間」「何をしているか」を1週間だけ実測してください。1週間分でも、月換算の根拠としては十分に使えます。導入前の数字を持っていないと、後の効果報告で「どれだけ減ったか」を示せません。

この棚卸しは、補助金を使わない場合でも必要な作業です。制度が変わっても無駄になりません。

要件定義書は後から要る

ここが見落とされがちな重要ポイントです。システム構築費を計上すると、実績報告時に要件定義書の提出を求められます。

省力化投資補助金の一般型の公募要領には、次のように書かれています。「システム構築費を計上する場合は、補助金交付候補者として採択後、見積書に加え仕様書等の価格妥当性を検証できる書類の提出を求めることがあります。また、実績報告時に、要件定義書(費用見積書を含む)または開発費用算出資料(作業単価、作業工数及び作業時間、固定費用、作業担当者、作業担当者勤務記録等)を提出する必要があります」。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金でも、100万円(税抜)以上のシステム構築費を計上する場合に同様の書類提出が求められます。

つまり、要件定義をきちんとやっていない開発は、そもそも報告で詰まります。これは補助金のための書類仕事ではなく、失敗しない開発のために本来必要なものです。要件定義の進め方は要件定義の記事で詳しく整理しています。

見積の粒度をそろえる

要件定義書が必要になるということは、見積の粒度も揃えておく必要があるということです。開発会社に見積を依頼するときは、次の形で出してもらってください。

  • 作業項目ごとの内訳(要件定義、設計、実装、テスト、データ移行、教育)
  • 作業単価と工数(何人日か)
  • ハードウェアやライセンスなど、システム構築費に当たらない費目の分離
  • 保守や運用にかかる継続費用の年額

「一式」の見積を受け取ったら、その場で内訳を求めてください。後から分解しようとすると、開発が始まってしまっていて手遅れになります。

開発会社の選び方3つ

最後に、発注先の選び方です。補助金を使う前提で見るなら、確認すべきは次の3点です。

1つ目は、補助金の実務経験です。要件定義書の提出、作業記録の保全、支払いのタイミング。これらに対応した経験があるかどうかで、報告時の負担がまったく違います。

2つ目は、契約形態です。準委任と請負では、成果物に対する責任の所在が変わります。補助事業では「成果物が補助事業者に帰属すること」が求められる場面があるため、契約の形は早めに詰めておくべきです。違いは準委任と請負の違いの記事で解説しています。

3つ目は、補助金が取れなかった場合の計画を一緒に考えてくれるかどうかです。「不採択なら白紙です」という前提で提案してくる会社は、その事業そのものを本気で必要だと思っていない可能性があります。

モデルケース(試算)|B社

ここまでの内容を、1社の具体例に落とします。以下は実在企業の実績ではなく、公表されている制度条件をもとにした試算モデルです。金額と時間はすべて仮定値であり、実際の補助額は審査と製品の内容によって変わります。

想定する会社と困りごと

B社は従業員24名の住宅設備工事会社です。水回りのリフォームと修繕が主力で、年商は約3億2,000万円。内訳は工事担当12名、営業4名、事務3名、管理部門5名という想定です。

困りごとは、案件ごとの情報が分散していることです。見積はExcel、発注はFAXと電話、工事写真はスマートフォンの中、請求は会計ソフトへの手入力。同じ情報を3回打ち直しています。繁忙期には事務3名では回らず、営業が夜に事務作業をしています。

社長の当初の希望は「うちの流れに合わせた工事管理システムを一から作りたい」でした。付き合いのある開発会社から、800万円という概算を受け取っています。

4つの選択肢を並べる

ここで、やりたいことを分解し直しました。B社が本当に欲しかったのは「同じ情報を3回打たない」ことであり、独自の業務フローそのものではありませんでした。そこで4つの選択肢を並べます。

やること 費用(税抜) 使える可能性のある制度 補助額の目安 手続きの重さ
A 既製の工事管理クラウドを導入 200万円 デジタル化・AI導入補助金(通常枠) 100万円
B 既製品を大きく作り替える 450万円 登録の対象外になる可能性が高い 期待できない
C フルスクラッチで開発 800万円 省力化投資補助金(一般型) 400万円
D まず紙とExcelの運用を整理 0円 制度は使わない

B社が選んだのはA案です。理由は3つあります。既製の工事管理クラウドで要望の8割が満たせると分かったこと、C案は補助額が大きい代わりに労働生産性の年平均成長率4.0%以上という要件を24名の会社で背負うのが重いこと、そしてC案の自己負担400万円がA案の100万円より大きいことです。

補助額の絶対値ではなく、自己負担と手続きの重さで比べたのがポイントです。「400万円もらえる」ではなく「400万円払う」で考えると、判断が変わります。

費用と補助額の試算表

A案を選んだ場合の内訳です。

費目 区分 金額(税抜) 制度上の扱い
工事管理クラウド 2年分 ソフトウェア 1,200,000円 クラウド利用料は最大2年分まで
導入設定・マニュアル作成・導入研修 役務 400,000円 指定ソフトと対で申請
保守サポート 2年分 役務 400,000円 ソフトの利用範囲内で最大2年分
補助対象経費 合計 2,000,000円 役務の合計は200万円が上限
補助額(補助率1/2) 1,000,000円 5万円から150万円未満の帯に収まる
自己負担(税抜) 1,000,000円 補助金は後払い
消費税(10%相当) 200,000円 公租公課のため全額自己負担
タブレット端末 6台 420,000円 通常枠では対象外。全額自己負担
着手時に必要な資金 2,620,000円 補助金の入金前に全額を支払う

この表で見てほしいのは最後の2行です。補助額100万円に目を奪われると、着手時に262万円を用意する必要があることを見落とします。タブレット端末は現場で使うのに必須ですが、通常枠の補助対象はソフトウェア・オプション・役務の3つだけなので、全額が自己負担です。

工数削減の試算表

効果の側も試算します。前提は時給2,500円(社会保険料等を含む人件費ベース)、月20営業日です。

業務 導入前(月) 導入後(月) 削減時間 月間の人件費換算
見積の作成と再見積 44時間 18時間 26時間 65,000円
発注と仕入の手配 26時間 12時間 14時間 35,000円
工事写真の整理と報告 34時間 12時間 22時間 55,000円
請求と入金の消込 22時間 10時間 12時間 30,000円
合計 126時間 52時間 74時間 185,000円

ここで大事なのは、この74時間を何に使うかを事業計画に書く必要があることです。デジタル化・AI導入補助金では、交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画を策定し、労働生産性を1年後に3%以上、年平均成長率で3%以上向上させることが求められます(過去に交付決定を受けた事業者は4%以上)。

労働生産性の計算式は「(営業利益+人件費+減価償却費)÷年間の事業者当たり総労働時間」と定められています。残業が減るだけでは分母が減るだけで、分子が増える説明ができていないと計画として弱くなります。B社の場合は、浮いた時間を訪問見積の件数増に充てる、という組み立てになります。

想定される3つの躓き

試算モデルであっても、想定される躓きを書いておきます。

1つ目は、交付決定前に契約しそうになることです。繁忙期を前に「9月から使いたい」という現場の声が出ますが、締切から交付決定まで1か月半あります。ここで先に契約すると補助金は消えます。B社の場合、導入時期を交付決定の後ろに置き直す調整が必要になります。

2つ目は、150万円以上の帯を狙って機能を足す誘惑です。4プロセス以上あれば450万円まで申請できますが、B社が実際に使うのは工事管理と請求まわりだけです。プロセス数を満たすために人事系のモジュールを足すと、その半額は自社負担になり、しかも使われません。

3つ目は、現場の呼び方と製品の機能名が違うことです。B社が「工程表」と呼んでいるものが、製品側では「スケジュール管理」という別機能だった、というずれが起きます。デモの段階で、自社の帳票と実際の画面を1枚ずつ突き合わせる作業を挟むと、この事故は防げます。

補助金ありきで失敗する理由

当社はAI導入支援を行う会社ですが、補助金ありきでシステムを発注するのは勧めません。理由を3つ挙げます。

要らない機能に金を払う

1つ目は、すでに触れたとおりです。補助額の上限に届かせるために機能を積み増すと、補助率が1/2なら積み増した分の半額は必ず自社の持ち出しになります。補助金は割引券ではなく、半額の自己負担がセットになった投資です。

さらに、機能が増えると導入の難度が上がります。使わない画面が並んでいるシステムは、現場から「難しい」と言われて使われなくなります。基幹システムの刷新でこの失敗が起きやすい理由は基幹システム刷新の記事で整理しています。

予定が公募日程に縛られる

2つ目は、時間軸の問題です。制度によって公募のリズムはまったく違います。

制度 公募の形 直近の日程(2026年8月時点)
デジタル化・AI導入補助金 締切回制 4次締切 2026年8月25日17時、交付決定 10月7日予定
省力化投資補助金(一般型) 公募回制 第7回は7月31日締切。第8回は8月中旬公募開始予定
新事業進出・ものづくり商業サービス 公募回制 第1回 応募締切 令和8年10月30日18時、採択発表 令和9年1月頃
小規模事業者持続化補助金 公募回制 第20回 申請受付 2026年11月5日から12月15日17時

この表を見て分かるとおり、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、採択発表が令和9年1月頃です。そこから交付申請と交付決定を経て発注できるようになるので、実際に開発が始まるのは相当先になります。今すぐ止血が必要な業務課題を、この日程に合わせて待つのは合理的ではありません。

後払いで資金繰りが詰まる

3つ目は資金繰りです。補助金はすべて後払いです。交付決定を受けてから発注し、支払いを済ませ、実績報告を出して補助額が確定し、そこから請求して初めて振り込まれます。

B社のモデルケースでは、着手時に262万円を用意する必要がありました。補助金の100万円が戻ってくるのは、事業実績報告の期限である2027年3月31日以降になります。実質的には1年近く、全額を立て替えることになります。

さらに、実績報告の内容によっては補助額が減額されることもあります。「交付決定を受けた補助額の全額が必ず支払われるわけではない」という点は、資金計画に織り込んでおくべきです。

補助金以外に使える手段

補助金が使えない、あるいは待てないという結論になっても、打つ手はあります。

税制優遇という選択肢

ソフトウェアへの投資は、税制の側でも優遇があります。代表的なのが中小企業投資促進税制です。

青色申告書を提出する中小企業者等が、指定期間内に新品のソフトウェアを取得して指定事業の用に供した場合、取得価額の30%の特別償却、または7%の税額控除が受けられます。対象になるソフトウェアは「一のソフトウエアの取得価額が70万円以上のもの(その事業年度において事業の用に供したソフトウエアの取得価額の合計額が70万円以上のものを含む)」で、指定期間は令和9年3月31日までです(出典:国税庁「No.5433 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除(中小企業投資促進税制)」)。なお税額控除が使えるのは資本金3,000万円以下の法人等に限られます。

さらに、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた場合は、中小企業経営強化税制の対象になる可能性があります。こちらは一定のソフトウェアについて即時償却または7%(特定中小企業者等は10%)の税額控除が認められる制度で、指定期間は同じく令和9年3月31日までです(出典:国税庁「No.5434 中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」)。

税制は補助金と性格が違います。採択の審査がなく、要件を満たせば使えるのが利点です。ただし複写して販売するための原本や、開発研究用のものなど適用対象から除かれるものがあり、自社利用ソフトウェアの資産計上の考え方も絡みます。適用できるかどうかは必ず顧問税理士に確認してください。当社は税務の専門家ではありません。

自治体の制度の探し方

国の制度以外に、都道府県や市区町村が独自にDXやIT導入の補助制度を設けている場合があります。金額は国の制度より小さいことが多い一方、競合が少なく、要件が緩いことがあります。

探し方は2つです。1つは、国と自治体の補助金を横断で検索できるjGrants(Jグランツ)を使う方法。もう1つは、中小企業向けの支援情報をまとめたミラサポplusの補助金・給付金一覧から辿る方法です。

加えて、地元の商工会議所・商工会に直接聞くのが実は一番早いことがあります。持続化補助金の申請には商工会議所・商工会が発行する事業支援計画書が必要なので、どのみち接点を持つことになります。

小さく作って確かめる

最後に、当社が一番よく勧める道を書きます。補助金の日程を待つ間に、無料または低額の範囲で小さく作って確かめてください。

具体的には、次のような進め方です。

  1. 削りたい業務を1つに決め、1週間だけ工数を実測する
  2. その業務だけを、表計算やノーコードツール、生成AIで仮に回してみる
  3. 2週間続けて、実際に何時間減ったかを記録する
  4. 減った実績をもとに、本格導入するかどうかを判断する

この4ステップには、3つの効果があります。本当に必要な機能が分かる。要件定義の材料ができる。そして、補助金の事業計画に書く数字の根拠が手に入る。どれも、いきなり800万円の発注をした場合には手に入らないものです。

「小さく試したら、実は既製品で足りることが分かった」という結論になることもあります。それは失敗ではなく、800万円を使わずに済んだという成果です。

制度の最新情報の追い方

ここまで具体的な数字を書いてきましたが、繰り返します。制度は変わります。自分で最新情報を確認できる状態にしておくことが、最後の防御線です。

名称変更が続いている

2026年度に起きた変更を整理します。

旧称・旧制度 2026年8月時点の状況
IT導入補助金 デジタル化・AI導入補助金に名称変更
中小企業新事業進出補助金 公募終了。新規受付は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金へ
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公表されている締切は23次が最新
省力化投資補助金(カタログ注文型) 継続。2026年3月19日に制度改定

カタログ注文型の現行の条件は公式ページで確認できます(出典:中小機構「カタログ注文型とは」)。ソフトウェア単体は対象にならず、機械装置と一体で用いる専用ソフトウェアに限られる点は、システム開発の観点では重要な制約です。

検索エンジンで「IT導入補助金 2026」と調べると、旧名称のまま解説している記事が大量に出てきます。制度の名称が変わっているときは、古い記事ほど上位にいることがあるので注意してください。

どの制度が今どういう状態にあるかは、中小企業庁の公募情報ページを見るのが確実です。ここには公募要領の公開日と申請受付期間が制度横断で時系列に並んでおり、たとえばものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の第23次公募要領が2026年2月6日に公開され、申請受付期間が4月3日から5月8日だったことも確認できます(出典:中小企業庁「補助金公募情報」)。まずこのページで制度の存在と時期を押さえ、それから各制度の公式サイトに進むのが、遠回りに見えて一番早い順路です。

公式サイトで見る3点

公式サイトを見るときに、最低限確認すべきは次の3点です。

  1. 公募要領の更新日。第何版か、いつ改訂されたか。改訂で補助上限や要件が変わることがある
  2. スケジュールのページ。締切だけでなく交付決定日と事業実施期間の終わりを見る
  3. 補助対象外経費の一覧。自分の見積の行が並んでいないかを1行ずつ照らす

このうち3番目は、多くの人が読み飛ばします。しかし本記事で見てきたとおり、落ちるかどうかは対象外の規定に書いてあるので、ここを先に読むほうが早いです。

なお、システム開発の発注そのものの考え方については、IPA(情報処理推進機構)が公開している情報システム・モデル取引・契約書が参考になります。補助金の有無にかかわらず、発注側が何を決めておくべきかが整理されています。

よくある質問(FAQ)

Q. システム開発に補助金は出ますか

制度によります。デジタル化・AI導入補助金は事前に登録された既製ソフトが対象で、スクラッチ開発は登録要領で明確に対象外とされています。一方、中小企業省力化投資補助金の一般型は「個別現場の設備や事業内容に合わせた設備導入・システム構築」を対象としており、オーダーメイドのシステム構築費を計上できます。ただし人手不足の解消という目的と、労働生産性や賃上げの要件が付いてきます。

Q. 自社の情シスが作る場合は

自社の人件費は補助対象になりません。省力化投資補助金の一般型の公募要領には「社内システム・自社の基幹システム等の開発・改修を自社の人員で実施する場合の人件費を計上することは認められません」と明記されています。同一法人内の部署間の支払いや、資本関係のある事業者への支払いも対象外です。内製する場合は、税制優遇のほうを検討することになります。

Q. カスタマイズは対象になりますか

2つに分けて考えます。登録済みの製品を、その製品の範囲内で設定・調整する作業は、役務の「導入設定・マニュアル作成・導入研修」として対象になり得ます。この中には「カスタマイズ作業にかかる費用」も含まれています。一方、業務プロセスに影響を与えるような大幅なカスタマイズが必要な製品は、そもそもITツールとして登録できません。境目は事務局の判断になるため、支援事業者に早めに確認してください。

Q. ChatGPTの月額は対象ですか

単体で契約する生成AIサービスの月額料金は対象になりません。デジタル化・AI導入補助金の補助対象は事前登録されたITツールに限られ、業務プロセスを1つ以上保有するソフトウェアであることが登録要件だからです。AI機能を持つ業務ソフトを導入する場合は対象になり得ます。公式のITツール検索で、AIの搭載有無を含む機能概要を確認できます。

Q. パソコンは補助されますか

デジタル化・AI導入補助金の通常枠では対象外です。通常枠の補助対象はソフトウェア、オプション、役務の3つのみです。PCやタブレットは「会計」「受発注」「決済」のいずれかの機能を含むソフトと併せて導入する場合に限られる別枠の話です。省力化投資補助金の一般型や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金でも、事務用のパソコンやタブレットは「汎用性があり目的外使用になり得るもの」として対象外です。

Q. すでに開発を始めていますが

すでに発注・契約した分は対象になりません。交付決定前の事前着手は、いかなる理由でも認められないと公募要領に明記されています。ただし、事業を分割して、これから発注する部分だけを補助事業とする組み立てが可能な場合もあります。可否は事務局にご確認ください。

Q. 既存システムの改修は対象ですか

原則として対象外です。省力化投資補助金の一般型では「既に導入されている既存システムやソフトウェアのバージョンアップ・アップデートの費用・改修費用」が対象外とされています。ただし同じ要領に「補助事業にて新規に開発・導入するシステムと連携するための改修費用は対象となります」という例外も書かれています。新規導入があるかどうかが分かれ目です。

Q. 補助金はいつ振り込まれますか

後払いです。交付決定を受けてから発注・支払いを行い、実績報告を提出して補助額が確定した後に支払われます。デジタル化・AI導入補助金の4次締切分では、事業実績報告期限が2027年3月31日の予定です。着手から入金まで1年近くかかることを前提に、資金繰りを組んでください。

Q. 複数の補助金を同時に使えますか

同じ経費に複数の制度を重ねることはできません。デジタル化・AI導入補助金の申請要件には、国や中小機構その他の独立行政法人の他の補助金等と重複する事業を含まないこと、と定められています。経費や業務プロセスが明確に分かれていれば別事業として扱える場合もありますが、判断は各事務局に確認してください。

Q. 要件定義書は本当に必要ですか

システム構築費を計上する場合は必要になります。省力化投資補助金の一般型では、実績報告時に要件定義書(費用見積書を含む)または開発費用算出資料の提出が求められます。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金でも、100万円(税抜)以上のシステム構築費を計上する場合に同様の提出が必要です。補助金のためというより、開発を失敗させないために先に作るべき書類です。

Q. 開発費の見積は一式でよいですか

避けてください。内訳が確認できない「諸経費」「一式」は補助対象外と明記している制度があります。作業単価、作業工数、作業時間、担当者といった粒度で出してもらってください。実績報告で作業担当者の勤務記録まで求められることがあります。

Q. 小規模事業者はいくらまで出ますか

小規模事業者持続化補助金の一般型・通常枠は補助上限50万円で、インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円が上乗せされます。ただしシステム開発が該当する「ウェブサイト関連費」は、補助金交付申請額の上限が30万円(税込)です。またウェブサイト関連費のみでの申請はできず、他の経費と併せて申請する必要があります。

Q. 補助金が取れなかったらどうしますか

計画そのものを止めないことをお勧めします。次回公募に向けて事業計画を直す、規模を縮小して自費で始める、税制優遇を検討する、といった選択肢があります。不採択で1年待つ間に業務の負荷が変わらないなら、それは補助金より高くつく可能性があります。

Q. 申請代行を頼めますか

当社は補助金の申請代行を行っていません。また、補助金申請や報告にかかる申請代行費は、多くの制度で補助対象外です。デジタル化・AI導入補助金では、登録されたIT導入支援事業者とパートナーシップを組んで申請する仕組みになっているため、まずは導入する製品の支援事業者に相談するのが最短です。

Q. 何から始めればよいですか

削りたい業務を1つに決め、その工数を1週間実測することからです。次に、公式のITツール検索で既製品があるかを10分見てください。この2つを終えた時点で、既製品で足りるのか作る必要があるのかが、かなりはっきりします。制度を調べるのはその後で間に合います。

まとめ|順番を間違えない

要点を整理します。

  • 「システム開発そのもの」に出る補助金は限られる。デジタル化・AI導入補助金は事前登録された既製ソフトが対象で、スクラッチ開発は登録要領で明確に対象外
  • 目的から逆引きする。既製品を買う、カスタマイズする、ゼロから作る、AIを組み込む。この4つで見るべき制度が変わる
  • ゼロから作るなら、省力化投資補助金の一般型が「設備導入・システム構築」を正面から対象にしている。ただし単価50万円以上の設備投資と、労働生産性と賃上げの要件が付く
  • 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、単なる導入では対象事業に該当しない。新製品・新サービスの開発が前提
  • 小規模事業者持続化補助金でシステムに回せるのは、補助金交付申請額で最大30万円
  • 自社の人件費、社内発注、汎用パソコン、既存システムの更新、中古品、申請代行費、消費税は、制度をまたいで対象外になりやすい
  • システム構築費を計上すると、実績報告で要件定義書や開発費用算出資料の提出を求められる
  • 補助金は後払い。交付決定前の発注はいかなる理由でも対象外

最後にもう一度書きます。補助金の枠に合わせて作るものを決めると、使われないシステムができます。先に決めるべきは、どの業務のどの工数を削るのかです。それが決まっていれば、既製品で足りるかどうかも、どの制度の土俵に乗るかも自動的に決まります。決まっていなければ、どの制度を調べても答えは出ません。

もう一度お伝えします

本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづく一般的な情報提供であり、特定の企業への助言ではありません。補助金の制度は改定・統廃合されます。申請の可否や金額の判断は、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領を確認し、事務局および支援事業者にご相談ください。税制の適用可否は顧問税理士にご確認ください。

当社(Ai-Raku)は、中小企業のAI導入と業務効率化の支援を行っています。補助金の申請代行は行っていませんが、その手前の「どの業務を、どの手段で削るか」の整理から、ツールの選定、社内定着までを伴走しています。「システムを作るべきか、既製品で足りるのか判断がつかない」という段階でご相談いただくのが、いちばん無駄が少ないタイミングです。費用は初期費用0円・月額5万円です。まずは業務の棚卸しからご一緒します。お問い合わせはこちらからお気軽にご連絡ください。

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