居酒屋のAI活用7業務|仕入れ・シフト・口コミ返信の自動化
業務効率化支援を行う「Ai-Raku(アイラク)」代表。国立大学でAIの研究を行い、ITコンサル・ウェブコンサルを経て独立。官公庁向けの業務効率化や上場企業の支援等を経て、中小企業の現場に定着するAI活用を企画から運用まで一気通貫で支援している。著書に『中小企業のAI定着の教科書 — 入れた後に、何をするか』(2026年)。

- 居酒屋でAIは何から始める?
- 翌日の仕込み量と発注数量のたたき台を作るところからです。毎日発生し、外したときの損失がはっきりしている業務だからです。同時に「廃棄・売り切れ・断った組数」の3行の記録を始めてください。この記録がないと、AIの出す数量は一般論のままです。
- パソコンが苦手でも使える?
- 使えます。スマホのアプリかブラウザで完結する形にしてください。プロンプトはメモアプリに保存しておき、コピーして貼るだけで済みます。パソコンを開かないと使えない仕組みにすると、居酒屋の現場ではまず定着しません。
- 発注をAIに任せて大丈夫?
- たたき台までは任せてよいですが、最終数量は必ず人が決めてください。AIは近隣のイベント、常連の予定、仕入先の当日の状況を知りません。AIの出した数量に店長が加減を書き足して確定する運用にし、上書きした理由を1行残すと、翌月以降の精度が上がります。
- シフトは完全自動にできる?
- 原案の生成までは自動化できますが、確定は人が行ってください。深夜割増や18歳未満の深夜業の禁止といった法令上の制約に加え、人間関係や各人の力量はAIには見えません。確定前に「22時以降に入っている人の一覧」を目視で確認する手順を必ず残してください。
- 口コミ返信はバレない?
- AIの生成文をそのまま投稿すると、定型的な文章が並び、常連や地域の読者には気づかれます。返信に料理名など固有名詞を1つ入れ、店長が1文だけ手で書き足すだけで印象が変わります。なお、好意的な口コミを事業者が装って書くのは景品表示法違反になります。
- アルバイトに使わせて平気?
- 用途を限定すれば問題ありません。ただし、入力してよい情報とだめな情報を紙1枚にまとめて事務所に貼ってください。予約者の氏名・電話番号・クレジットカード情報などは、外部のAIサービスに入力しない方針にするのが安全です。
- 費用はいくらかかる?
- AIツール自体は無料版から試せます。導入支援を依頼する場合、Ai-Rakuでは初期費用0円・月額5万円〜で、業務の棚卸しからプロンプト作成、運用の定着までを伴走しています。まず無料の範囲で1か月試し、続けられそうだと分かってから外部の支援を検討する順番で構いません。
- POSレジがなくても使える?
- 使えます。本記事で紹介した手順は、すべて手書きのメモとスマホだけで成立します。POSレジの売上データがあれば集計が楽になりますが、必須ではありません。むしろ、システムの入れ替えを先に検討すると着手が遅れます。
- 宴会のドタキャンは防げる?
- 完全には防げませんが、連絡の設計で発生率は下げられます。予約確定時にキャンセル規定を文字で送り、3日前に人数の最終確認、前日に確認の一言を送る。この3通の文面をAIで型として作り、送り忘れない仕組みにしてください。人数変更が当日から3日前に前倒しされるだけでも、仕入れの損失は減ります。
- 効果が出るまでどのくらい?
- 発注のたたき台とシフト原案は、初月から作業時間が短くなります。ただし発注の精度そのものは、記録が1か月たまってからでないと上がりません。3か月を1つの区切りとして、1か月目は記録、2か月目はシフトと口コミ、3か月目は宴会と販促、という順で広げるのが現実的です。
- 個人経営の1店舗でも意味ある?
- あります。むしろ1店舗のほうが、店長が全部を1人で抱えているため効果が見えやすい傾向があります。本記事のモデルケースは2店舗ですが、手順は1店舗でもそのまま使えます。まずは発注メモのプロンプトを1週間試してみてください。
- HACCPの記録も任せられる?
- 記録そのものをAIに書かせてはいけません。HACCPに沿った衛生管理では、実施状況を記録し保存することが求められており、実測していない温度や作業を書くのは記録の意味を失わせます。AIに任せてよいのは、衛生管理計画や手順書の文書を整える作業までです。厚生労働省は業種別の手引書や衛生管理記録アプリも公開しているので、そちらを確認してください。(参考:厚生労働省「食品等事業者団体が作成した業種別手引書」/同「HACCP衛生管理記録アプリ」)
「明日の仕込み、何人分にすればいいのか毎晩迷う」「深夜まで営業して、閉店後にシフト表を作っている」「宴会予約が1本飛んだだけで、その日の仕入れが丸ごと余る」——居酒屋の店長・オーナーからよく聞く悩みです。
同じ飲食店でも、居酒屋はランチ主体の店やチェーンのファストフードとは事情がまったく違います。日替わりの品数が多く、売上のピークが夜に集中し、アルコールの在庫と歩留まりを別管理し、宴会という「まとめて動く売上」を抱えている。この4つが重なるため、他業態向けの効率化ノウハウがそのまま当てはまりません。
本記事では、中小企業のAI導入を支援するAi-Rakuの視点で、居酒屋という業態に固有の事情に合わせたAIの使いどころを、業務別に手順とプロンプト例つきで解説します。なお、飲食店全般に共通するAI活用(業種を問わない基本の考え方・ツール選び)は飲食店のAI活用|シフト作成・在庫発注・口コミ対応で扱っています。まずそちらで全体像をつかんでから、本記事で居酒屋固有の部分を詰めるのが効率的です。
- 居酒屋の売上が他業態より振れやすいことを示す、公的統計の実数値
- 仕入れ・発注、シフト、口コミ返信、宴会予約の一次対応をAIに任せる手順
- そのまま使えるプロンプト例(発注メモ・シフト・口コミ返信の3種)
- アルバイト比率が高い店でも定着させるための現場の工夫
- 【モデルケース試算】2店舗の居酒屋で月55時間を取り戻すまで
結論|居酒屋は仕込みと発注
結論から言います。居酒屋でAIを使うなら、最初に手を付けるべきは「翌日の仕込み量と発注数量を決める作業」です。接客でも販促でもありません。理由は、この作業が毎日発生し、外すと廃棄か欠品という金額の損失に直結し、しかも判断材料が店長の頭の中にしかないからです。
居酒屋の忙しさは3層ある
居酒屋の店長の忙しさは、性質の違う3つの層が重なってできています。この層を分けずに「忙しいからAIを入れる」と考えると、必ず失敗します。
| 層 | 中身 | 発生タイミング | AIとの相性 |
|---|---|---|---|
| 第1層:毎日の判断 | 仕込み量・発注数量・当日の人員配置 | 毎日(閉店後か開店前) | ◎ 最も効く |
| 第2層:週次・月次の事務 | シフト表作成、口コミ返信、SNS投稿、原価の集計 | 週1〜月1 | ○ 次に効く |
| 第3層:現場の手 | 調理、配膳、洗い場、レジ、片付け | 営業中ずっと | × AIでは減らない |
多くの店長が「忙しい」と感じているのは第3層ですが、AIで減らせるのは第1層と第2層だけです。ここを取り違えて「AIを入れたのに現場は忙しいままだ」と落胆する店を何度も見てきました。AIは営業中の手を減らす道具ではなく、営業前後にあなたが1人でやっている考える作業と書く作業を減らす道具だと理解してください。
先に着手すべき2業務
第1層と第2層のうち、着手順は次の基準で決めます。「毎日発生する」×「今は紙かエクセルか、店長の頭の中でやっている」の2条件を満たすものが最優先です。
- 発注・仕込み量の決定:毎日発生し、判断材料が属人的。外した日の損失が明確
- シフト表の作成:月1〜2回だが1回が長時間。制約条件が多く、頭を使う作業
逆に、口コミ返信やSNS投稿は効果が見えやすいので最初に手を付けたくなりますが、1件あたりの時間が短く、店の売上への効き方も間接的です。順番としては3番目以降で構いません。
数字で見る居酒屋の変動
「居酒屋は売上が読みにくい」というのは感覚ではなく、公的な業界統計で確認できます。日本フードサービス協会の外食産業市場動向調査では、業態別に「居酒屋」が単独で集計されています。2026年6月度の結果は次のとおりでした。
| 業態 | 売上高(前年同月比) | 客数(前年同月比) | 客単価(前年同月比) |
|---|---|---|---|
| 外食 全体 | 103.3% | 100.8% | 102.4% |
| 居酒屋(30社・1,852店) | 99.1% | 98.2% | 100.9% |
| パブ・ビアホール(13社・401店) | 101.7% | 103.4% | 98.4% |
| ディナーレストラン | 103.9% | 100.9% | 103.0% |
外食全体は客単価の上昇に支えられて103.3%だったのに対し、居酒屋は売上99.1%・客数98.2%と、客数側でマイナスになっています。同じ協会の月次レポートは、この月の飲酒業態について「台風などの天候要因で客数減少が大きく、加えてオフシーズンで元々少ない宴会予約がさらに減少した」と要因を挙げています。(出典:一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」/2026年6月度 結果報告(PDF))
さらに、直近13か月の売上高前年同月比を並べると、居酒屋の振れ幅の大きさが見えます。
| 月 | パブレストラン/居酒屋 | 外食 全体 |
|---|---|---|
| 2025年6月 | 102.3% | 106.0% |
| 2025年8月 | 109.1% | 108.4% |
| 2025年9月 | 100.9% | 104.8% |
| 2025年12月 | 106.3% | 106.0% |
| 2026年5月 | 105.3% | 109.8% |
| 2026年6月 | 99.9% | 103.3% |
この13か月で、パブレストラン/居酒屋は最小99.9%〜最大109.1%と約9.2ポイントの幅で動いています。同期間の外食全体は103.3%〜109.8%で約6.5ポイントの幅です。居酒屋のほうが月ごとの上下が大きいことが、統計上も裏づけられます。(出典:日本フードサービス協会 外食産業市場動向調査 2026年6月度 結果報告(PDF)より、売上高前年同月比の推移表から抜粋)
振れ幅が大きいということは、「先月と同じ発注」「去年と同じシフト」が通用しない月が定期的に来るということです。だからこそ、毎日の判断を早く・楽に回す仕組みが要ります。
居酒屋でAIに任せる7業務
居酒屋でAIに任せられる業務を7つに整理しました。いずれも「AIがたたき台を作り、人が最終判断する」という形が前提です。
7業務の一覧と効果
| # | 業務 | AIがやること | 人がやること |
|---|---|---|---|
| 1 | 仕入れ・発注のたたき台作成 | 予約人数・天気・曜日から数量案を出す | 最終数量の決定、仕入先への発注 |
| 2 | 仕込み量と廃棄記録の整理 | 記録の集計、傾向の言語化 | 実測値の記録、味と品質の判断 |
| 3 | シフト表の作成と調整 | 制約条件を満たす原案の生成 | 人間関係・力量を踏まえた確定 |
| 4 | 口コミ返信の下書き | 返信文の候補を複数出す | 事実確認、店の言葉への調整、投稿 |
| 5 | メニュー・POP・SNS投稿の作成 | 説明文・キャッチ・投稿文の作成 | 味の決定、価格の決定、表示の確認 |
| 6 | 宴会・団体予約の一次対応と見積 | 問い合わせへの一次返信、コース案 | 受諾判断、料金の確定、当日運営 |
| 7 | アルバイト教育の手順書作成 | 作業手順書・チェック表の文書化 | 実演、評価、クレーム対応 |
AIに任せない4つの判断
ここが本記事で最も重要な章です。次の4つは、どれだけAIが賢くなっても人が決めてください。責任の所在が曖昧になると、事故が起きたときに誰も止められません。
- 発注の最終数量:AIは過去の傾向しか知りません。近隣で花火大会がある、常連の会社が異動シーズンで来ない、といった情報は店長の頭にしかありません。AIの出した数量に、店長が「+2」「-1」を書き足して確定する運用にしてください
- 味と品質の決定:レシピの候補出しはAIに任せられますが、出す・出さないを決めるのは必ず人です。試作して食べずにメニューへ載せない
- クレーム対応:低評価の口コミへの「下書き」はAIで作れますが、実際に起きた事実の確認と、謝罪するかどうかの判断は人です。事実を確認せずAIの生成文を投稿すると、身に覚えのない謝罪をしてしまいます
- 衛生管理の記録:HACCPに沿った衛生管理では、実施状況を記録し保存することが求められます。実測していない温度や作業をAIに書かせるのは論外です。記録は必ず実際に測った人が残してください(参考:厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理の制度化について」)
この4つ以外は、まずAIに任せてみて構いません。「任せてよいか迷う」と感じたら、間違えたときに誰が責任を取るのかを口に出してみるのが判断の目安になります。答えられない業務は、まだ人が持つべき業務です。
着手順は「毎日×紙」から
7業務すべてを同時に始めないでください。おすすめの順番は1→3→4→5→6→2→7です。1(発注)と3(シフト)で店長の時間が空いてから、残りに広げるほうが定着します。
仕入れ・発注の精度を上げる
居酒屋の発注は、他業態と比べて難易度が高い作業です。理由は扱う品目が多く、生鮮とアルコールで在庫の性質がまったく違い、しかも日替わりの品数が多いことにあります。
発注が外れる3つの理由
発注が外れる原因を分解すると、ほぼ次の3つに収まります。
- 翌日の来店人数を、予約分しか把握していない:フリー客の見込みが「勘」のまま。曜日・天気・近隣イベントが数字になっていない
- 前回の廃棄と欠品が記録されていない:外した事実が翌週に引き継がれず、同じミスを繰り返す
- 生鮮とアルコールを同じ感覚で発注している:日持ちしない食材と、日持ちするが資金と冷蔵スペースを食う酒を、同じ判断軸で扱ってしまう
AIが効くのは主に1と2です。3は仕組みの問題なので、後述のとおり予測の対象を分けることで解決します。
前日夜10分の発注メモ
実際の運用はシンプルです。閉店後、スマホでAIチャットに次の情報を打ち込み、翌日の発注数量のたたき台を出させます。所要時間は慣れれば5〜10分です。
あなたは居酒屋の仕入れ担当です。以下の条件から、明日の 仕込み量と発注数量のたたき台を出してください。 【店の基本情報】 ・席数:42席(カウンター10、テーブル24、座敷8) ・営業時間:17時〜24時(L.O.23時) ・客単価の目安:3,500円前後 ・主力:刺身盛り、焼き鳥、揚げ物、日本酒 【明日の状況】 ・曜日:金曜 ・予約:8名×1組(19時)、4名×2組(18時半・20時) ・天気予報:雨、最高気温18度 ・近隣イベント:なし ・先週の同じ曜日の来店:合計52名 【直近の実績(外した記録)】 ・先週金曜:刺身用のブリが3人前廃棄 ・先週土曜:唐揚げが21時に売り切れ、5組断った 【出力してほしいもの】 1. 明日の想定来店人数(予約+フリーの内訳と根拠) 2. 主要10品目の仕込み量の目安(数量と単位) 3. 発注すべき食材と数量の案 4. 判断に迷った点と、店長に確認してほしい点 ※数量は必ず「根拠となった条件」を1行添えてください。 ※在庫を見ていないので、断定せず「案」として出してください。
ポイントは最後の2行です。「根拠を書かせる」ことで、店長がその根拠を見て上書きできるようになります。根拠のない数字が出てきたら、それは使ってはいけない数字です。
また、「直近の実績(外した記録)」の欄が、この仕組みの心臓部です。ここに先週の廃棄と欠品を1〜2行書くだけで、AIの出す数量が現実に寄っていきます。逆にここが空欄だと、AIは一般論しか返しません。
生鮮と酒で予測を分ける
居酒屋固有の論点がここです。生鮮食材とアルコールは、まったく別の考え方で在庫を持ちます。
| 観点 | 生鮮食材(魚・肉・野菜) | アルコール(ビール・日本酒・焼酎) |
|---|---|---|
| 外したときの損失 | 廃棄=そのまま損失 | 基本は在庫として残る(資金が寝る) |
| 予測すべき対象 | 翌日の来店人数と注文構成 | 週〜月単位の消費ペースと補充の間隔 |
| 欠品したとき | その日のメニューが成立しない | 代替の銘柄で凌げる場合がある |
| 注意点 | 日替わりの品数が多いほど読みにくい | 開栓後の日本酒・生ビールの歩留まり |
| AIの使いどころ | 毎日のたたき台生成 | 週次の消費ペース集計と発注間隔の提案 |
特に見落とされやすいのがアルコールの歩留まりです。生ビールの樽は注ぎ方や配管洗浄で実際に出せる杯数が変わり、開栓した日本酒は時間とともに品質が落ちます。「仕入れた量」と「売れた量」の差を毎週1回だけ数えて記録し、その差をAIに集計させると、どの銘柄でロスが出ているかが数字で見えます。なお、酒類の取り扱いには免許や年齢確認などの規制があります。制度面は国税庁の情報を確認してください。(参考:国税庁「酒類の販売業免許等」)
廃棄を減らす記録の型
発注精度を上げる近道は、AIの賢さではなく記録の型を決めることです。次の3項目だけを、閉店後に1分で書ける形にしてください。
- 廃棄したもの:品目と、おおよその人前数(例:ブリ刺身 3人前)
- 売り切れたもの:品目と、売り切れた時刻(例:唐揚げ 21時)
- 断った組数:品切れが理由で注文を断った組数
この3行を1か月分ためてAIに読ませ、「曜日ごとに廃棄と欠品が出やすい品目を挙げて」と指示すると、自分では気づかなかった偏りが出てきます。紙のノートで構いません。写真を撮ってAIに読ませれば集計できます。
なお、外食産業から出る食品ロスは、農林水産省の推計で年間70万トン(令和6年度推計値、事業系食品ロス237万トンの一部)とされています。(出典:農林水産省「食品ロスとは」)1店舗でできることは限られますが、廃棄の記録はコスト削減と食品ロス削減の両方に効く数少ない取り組みです。
シフト作成を自動化する
居酒屋のシフト作成が他業態より難しいのは、ピークが夜に集中し、深夜労働の法規制が絡み、学生アルバイトの比率が高いという3条件が同時に成立するからです。
居酒屋のシフトが難しい理由
ランチ主体の飲食店なら、11時〜14時に人を厚くすれば済みます。しかし居酒屋は、次のような制約が重なります。
- 19時〜21時に人手が集中的に必要だが、その前後は暇な時間帯がある
- 22時以降は深夜割増賃金が発生するため、人件費の意味が時間帯で変わる
- 18歳未満は深夜に働かせられないため、高校生アルバイトは22時前に上げる必要がある
- 締め作業が閉店後にあり、終電を考慮した配置が要る
- 宴会が入った日だけ、必要人数が急に変わる
これらは労働基準法で定められた制約です。深夜(原則22時〜5時)の割増賃金や、満18歳未満の深夜業の禁止は、店の都合で動かせません。(参考:e-Gov法令検索「労働基準法」(割増賃金は第37条、年少者の深夜業は第61条)/厚生労働省「労働時間・休日」)
法律の制約を先に入れる
ここが実務上の最大のコツです。AIにシフトを作らせるときは、法律上の制約を「絶対条件」として最初に書き、その後に希望を書きます。順序を逆にすると、希望を優先した結果、違法なシフトが出てきます。
あなたは居酒屋のシフト作成担当です。以下の【絶対条件】を
1つでも破る案は出さないでください。破りそうな場合は、
シフトを作らず「作れない理由」を報告してください。
【絶対条件】
1. 18歳未満のスタッフは22時以降のシフトに入れない
2. 6時間を超える勤務には45分以上、8時間超は60分以上の休憩を入れる
3. 各人の週の労働時間は、本人の申告上限を超えない
4. 各人の「入れない日」には絶対に入れない
【店の条件】
・営業:17時〜24時(L.O.23時)、締め作業は24時〜24時45分
・必要人数:ホール 17-19時=2名/19-22時=4名/22-24時=2名
キッチン 17-19時=2名/19-22時=3名/22-24時=2名
・締め作業は社員またはリーダー職1名+アルバイト1名
【スタッフ一覧】※年齢・区分・上限・入れない日
(ここに一覧を貼り付ける)
【今月の特記事項】
・第2金曜:20名の宴会予約あり(19時〜21時半)
・第4土曜:スタッフ研修のため17時開始を18時に変更
【出力】
1. 日付×時間帯×氏名のシフト原案
2. 22時以降に入っている人の一覧(年齢つき)
3. 人手が足りない日と、不足している時間帯・人数
4. 絶対条件との抵触が疑われる箇所
出力の2番と4番が安全装置です。AIに自分の作った案を検算させることで、見落としが減ります。ただしこれは補助にすぎません。確定前に、店長が「22時以降の一覧」を目視で1回だけ確認する手順を必ず残してください。
シフト作成プロンプト例の使い方
上のプロンプトは、毎月コピーして使う前提で作っています。運用のコツは3つです。
- スタッフ一覧は1つのテキストファイルに保存しておく:毎回入力し直すと続きません。人が入れ替わったときだけ書き換えます
- 氏名はイニシャルか呼び名にする:外部のAIサービスに従業員の氏名をそのまま入力するのは避けたほうが安全です。個人情報の取り扱いは事前に方針を決めてください(参考:個人情報保護委員会)
- 原案は「たたき台」と割り切る:AIには人間関係も力量も見えません。「この2人を同じ日に入れない」といった判断は人が上書きします
締めと翌日仕込みの引き継ぎ
居酒屋ならではの落とし穴が、締め作業と翌日の仕込みの引き継ぎです。閉店が深夜、翌日の仕込みが昼過ぎ。担当者が入れ替わるため、口頭では伝わりません。
ここは、前述の発注メモをそのまま引き継ぎメモに転用するのが現実的です。閉店担当がスマホでAIに「今日の廃棄・売り切れ・翌日の予約」を打ち込み、出てきた仕込みメモをそのままLINEなどのグループに貼る。翌日の仕込み担当はそれを見て動く。これだけで、朝の電話確認がほぼ不要になります。
口コミ返信をAIで回す
居酒屋は、飲食店の中でも口コミの件数が多く、内容の振れ幅も大きい業態です。宴会で来た大人数のうち1人が不満を書く、酔客とのトラブルが書かれる、といったことが起きます。
返信は当日中に型で返す
結論として、口コミ返信は「当日中に、型に沿って返す」のが最も効率的です。返信の有無や速さは店の姿勢として見られます。Googleビジネスプロフィールでは、オーナー確認済みのビジネスがクチコミに返信できます。(参考:Google ビジネス プロフィール ヘルプ「クチコミを読んで返信する」)
AIに任せるのは下書きの生成までです。投稿ボタンを押すのは必ず人にしてください。
居酒屋特有の低評価3類型
居酒屋の低評価は、他業態とパターンが違います。実務上、次の3類型に分けて返信の型を用意しておくと、判断が速くなります。
| 類型 | 典型的な内容 | 返信の方針 |
|---|---|---|
| ①ピーク帯の提供遅れ | 「注文して30分来なかった」 | 事実を確認し、混雑時の体制について具体的に書く。言い訳にしない |
| ②宴会・団体対応の不満 | 「コース料理が足りなかった」「席が狭い」 | 予約時の条件(人数・席・コース内容)を確認してから返信する |
| ③店の雰囲気・他客との摩擦 | 「隣の客がうるさかった」 | 店として何ができるかを1つだけ具体的に書く。他客の非難はしない |
特に②は、予約台帳を確認せずに返信すると事実誤認が起きます。「4名分のコースで予約されていたが当日6名で来店した」といったケースは珍しくありません。返信前に台帳を見る手順を挟んでください。
返信の下書きプロンプト
あなたは居酒屋の店長です。以下の口コミに対する返信の 下書きを3案作ってください。 【店の性格】 ・地元の常連が7割、宴会予約が売上の約3割 ・売りは、鮮魚と地酒。カウンターでの会話も特徴 【口コミの内容】 (ここに口コミ本文を貼る/星の数も書く) 【こちらで確認できた事実】 (例:当日は満席。20時台にキッチンが1名欠員。 予約は4名だが当日6名で来店。など) 【返信のルール】 ・150〜250字 ・冒頭で来店への感謝を述べる ・確認できた事実の範囲でだけ書く。推測で謝らない ・改善する内容を1つだけ、具体的に書く ・定型句だけで終わらせず、料理名など固有名詞を1つ入れる ・値引きやサービスの約束はしない 【出力】 案1:丁寧・低姿勢寄り 案2:事実説明を厚めに 案3:短く簡潔に それぞれについて「この案を選ぶべき状況」も一言添えてください。
やってはいけない返信
AIを使った口コミ運用で、絶対にやってはいけないことが3つあります。
- 好意的な口コミをAIに書かせて投稿する:事業者が第三者を装って口コミを書く行為は、景品表示法上の不当表示(いわゆるステルスマーケティング)に当たります。2023年10月1日から規制の対象です(出典:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります」)
- 事実確認をせずに謝罪文を投稿する:起きていないことを認めた形になり、後から訂正できません
- 返信文に来店者が特定できる情報を書く:予約者名、人数、会社名などを書くと、個人情報の不適切な取り扱いになります
「うちの店だと、どこから手を付けるべきか」を一緒に整理しませんか。
Ai-Rakuでは、飲食業向けのAI導入支援として、業務の棚卸しから運用の定着までを伴走しています。まずは無料相談で、現状の作業時間と着手順を洗い出してください。費用は初期費用0円・月額5万円〜です。
メニュー開発と写真の作成
居酒屋は品数が多く、日替わりや季節メニューの入れ替えが頻繁です。メニュー開発そのものより、その周辺作業(説明文・POP・写真・SNS投稿)に時間を取られているのが実態です。
原価と季節から候補を出す
新メニューの候補出しはAIが得意な領域です。ただし原価率や利益率の「相場」をAIに聞いても意味がありません。店の仕入れ値と客単価で決まるものだからです。
使い方としては、自店の仕入れ値と目標売価を先に提示して、その範囲で成立する組み合わせを出させるのが正しい手順です。「今週の仕入れで安く入った食材はこれ。売価680円で出したい。3案考えて」という聞き方をしてください。原価率そのものは、店が自分で決める数字です。
宴会コースの組み立て
居酒屋固有の作業がコース設計です。「3,500円コース・5品・飲み放題2時間」といった枠に、季節の食材を当てはめる作業は、毎シーズン発生します。
AIに任せるときは、次の条件を明示してください。
- コース料金と、そのうち料理に充てられる金額の上限
- 提供順(先付・刺身・焼き・揚げ・〆など)と、各皿の想定人前
- キッチンの同時処理能力:揚げ物が2品続くと、20名の宴会で回らなくなる
- 作り置きできる皿と、当日仕上げの皿の比率
3番目の「同時処理能力」は、AIが絶対に知らない情報です。ここを書かないと、紙の上では成立するが現場で回らないコースが出てきます。
写真とPOPの作り方
料理写真は、生成AIで作らないでください。実際に出す料理と違う画像を掲載すると、景品表示法上の問題になり得ます。写真はスマホで撮り、AIにはキャッチコピーと説明文を作らせるのが正しい分担です。
撮影のコツをAIに聞くのは有効です。「カウンターの照明が暖色で、料理が黄色くなる。スマホで改善する方法を5つ」といった相談には、実用的な答えが返ってきます。
アレルゲン表記の注意
アレルギー表示に関する制度上の義務は、容器包装された加工食品が対象です。店内で提供する料理そのものには表示義務がありませんが、だからこそ「聞かれたときに正確に答えられる状態」を店側で作っておく必要があります。消費者庁も外食・中食における食物アレルギーの情報提供を推進しています。(参考:消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」/同「外食・中食での食物アレルギーについて」)
ここで最も危険なのが、AIにメニューのアレルゲン一覧を作らせて、それを確認せずに掲示することです。AIは実際の調味料や揚げ油を知りません。「この店のこの料理に何が入っているか」を知っているのは、作っている人だけです。AIには一覧の「ひな形」を作らせ、中身は調理担当が1品ずつ埋めるという分担にしてください。
外国語メニューを作る場合も同様です。翻訳の作業自体はAIで大きく短縮できますが、料理名や食材の訳し方には確認が要ります。詳しい手順は飲食店の多言語・インバウンド接客をAIでで解説しています。
予約と問い合わせの自動応答
居酒屋で最も割に合わない作業が、仕込み中や営業中にかかってくる電話への対応です。手を止めて出て、宴会の条件を聞き取り、折り返すと言って忘れる。この繰り返しが店長の集中を削ります。
電話が鳴るのは仕込み中
問い合わせの電話は、多くが16時〜18時、つまり仕込みの終盤から開店直後に集中します。この時間帯は、店内で最も手が離せない時間でもあります。
ここを軽くする現実的な手は、次の3段構えです。
- よくある質問への回答をWeb・Googleビジネスプロフィール上に置く:営業時間、個室の有無、貸切の最少人数、駐車場、支払い方法。AIに「居酒屋の予約前によく聞かれることを20個挙げて」と出させ、自店の答えを埋める
- 予約フォームかLINEに一次受付を寄せる:電話でなくても予約できる導線を作る
- 文字で来た問い合わせの一次返信をAIで下書きする:条件の抜けを指摘させる
宴会予約の一次対応を任せる
宴会の問い合わせは、聞くべき項目が決まっています。この定型部分をAIに任せると、聞き漏らしがなくなります。
- 希望日時と、開始・終了の時刻(延長の可否も)
- 人数(確定人数と、変動しうる幅)
- 席の希望(座敷/テーブル/個室/貸切)
- コースの予算と、飲み放題の有無・時間
- 苦手な食材・アレルギー・ベジタリアン対応の要否
- 支払い方法(一括/個別/法人請求)
- キャンセル規定を伝えたか(いつから何%か)
- 連絡先(当日連絡がつく番号)
この項目表をAIに渡し、「お客様から来たメッセージを読んで、埋まっている項目と、まだ聞けていない項目を分けて出して」と指示します。返信文の下書きまで作らせれば、店長は確認して送るだけになります。
ドタキャンを減らす連絡
宴会のドタキャンは、居酒屋にとって最も痛い損失です。仕入れも人員も先に確定しているためです。完全には防げませんが、連絡の設計で発生率は下げられます。
- 予約確定時に、キャンセル規定を文字で送る:口頭だけにしない。「3日前から50%」など、いつから何%かを明示する
- 3日前に人数の最終確認を送る:この1通で、人数変更が「当日」から「3日前」に前倒しされます
- 前日に確認の一言を送る:来店の意思を再確認する効果があります
この3通の文面は、AIで型を作って使い回せます。「催促に聞こえず、事務的すぎない文面」を3案出させて、店に合うものを選ぶとよいでしょう。重要なのは、送る仕組みを決めることです。文面の巧拙より、送り忘れないことのほうが効きます。
現場が使えるようにする工夫
居酒屋でAI導入がうまくいかない最大の理由は、機能でも費用でもありません。アルバイト比率が高く、人の入れ替わりが早いため、覚えた人がいなくなると止まることです。
スマホ1台で完結させる
居酒屋の現場に、落ち着いてパソコンを開ける場所はほとんどありません。使う道具はスマホのアプリかブラウザに限定してください。パソコンを開かないと使えない仕組みは、まず定着しません。
具体的には、次の状態を目指します。
- プロンプトはメモアプリに保存し、コピーして貼るだけで使える
- 入力する情報はその場で見て分かるものだけ(予約人数、天気、廃棄した品目)
- 出力はそのままLINEなどのグループに貼れる形にする
週1回15分の振り返り
定着の分かれ目は、週に1回15分の振り返りを続けられるかです。内容は3つだけで構いません。
- 今週、AIの出した発注案と実際の数量はどれくらいずれたか
- ずれた原因は何か(1行でよい)
- 来週、プロンプトのどこを直すか
この15分をやる店とやらない店で、3か月後の差がはっきり出ます。AIは使うほど賢くなるのではなく、記録を足すほど自店に合っていくと考えてください。
よくある失敗3つと対策
| 失敗 | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| AIの発注数量をそのまま出す | 近隣イベントや常連の予定を織り込めず、廃棄か欠品が出る | AIの案に店長が「+2」「-1」を書き足して確定するルールにする。上書きした理由を1行残す |
| シフトを自動生成して確認しない | 18歳未満が22時以降に入る、休憩が足りないなど法令違反が発生する | 絶対条件をプロンプト冒頭に固定し、確定前に「22時以降の一覧」を目視で確認する手順を残す |
| 口コミ返信をAIに丸投げする | 定型文が並び、常連や地域の読者に見抜かれる。事実誤認の謝罪も起きる | 返信前に予約台帳を確認する。料理名など固有名詞を必ず1つ入れて店の言葉に直す |
| スタッフが顧客情報をAIに貼る | 予約者の氏名・電話番号が外部サービスに送られる | 入力してよい情報・だめな情報を紙1枚にして、事務所に貼る。氏名は呼び名かイニシャルに置き換える |
| 導入したが誰も使わない | 月額だけ払って何も変わらない | 使う人を1人決め、週1回15分の振り返りを固定の曜日に入れる |
導入費用と始める順番
費用の話をします。居酒屋でAI活用を始めるとき、かかるお金は大きく2つに分かれます。
費用の内訳と考え方
| 費目 | 内容 | 考え方 |
|---|---|---|
| AIツールの利用料 | ChatGPTやClaudeなどの月額 | 1アカウントから始められる。無料版で試してから有料に上げてよい |
| 導入支援・伴走の費用 | 業務の棚卸し、プロンプト作成、運用の定着 | Ai-Rakuの場合は初期費用0円・月額5万円〜 |
ここで注意したいのが、「いくら浮くか」を先に計算しようとしないことです。居酒屋の場合、AIで浮くのは主に店長の時間であり、その時間をどう使うかで意味が変わります。仕込みに回すのか、新メニューの開発に使うのか、単純に早く帰るのか。金額に換算する前に、空いた時間を何に使うかを決めておくほうが、続けやすくなります。
AIツールそのものの機能や制限は、提供元の公式ドキュメントで確認するのが確実です。(参考:Anthropic 公式ドキュメント)
90日で進める3段階
居酒屋で無理なく進める場合、3か月を3つの段階に分けます。
- 1か月目:記録を始める。廃棄・売り切れ・断った組数の3行を毎日書く。AIはまだ発注のたたき台生成にだけ使う
- 2か月目:シフトと口コミを乗せる。シフト原案の生成と、口コミ返信の下書きを追加する。1か月目の記録が効き始める
- 3か月目:宴会と販促に広げる。宴会問い合わせの一次対応、メニュー説明・POP・SNS投稿へ広げる
この順番にする理由は、1か月目の記録がないと、2か月目以降の精度が出ないからです。記録を飛ばして販促から始めると、見た目は進んだ気がしますが、発注も仕込みも変わりません。
補助金は後から考える
「補助金を使ってから始めたい」という相談をよく受けますが、順番が逆です。まず無料か低額で試し、続けられると分かってから制度の活用を検討してください。IT導入補助金などの制度は、対象となるツールや手続きの条件が年度ごとに変わります。(参考:IT導入補助金(独立行政法人中小企業基盤整備機構))
なお、業種を問わない中小企業のAI導入の進め方は中小企業のAI導入|何から始めるかにまとめています。社内の合意形成や、他業種の進め方を知りたい場合はあわせてご覧ください。
モデルケース|2店舗の居酒屋
ここまでの内容を、1つのモデルケースにまとめます。
※以下は実在の企業ではなく、居酒屋によくある状況をもとにしたモデルケース(試算)です。数値は下記の前提に基づく試算であり、実際の効果は店舗の規模・業態・運用方法により変動します。
前提条件と試算のルール
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| 業態 | 鮮魚と地酒が売りの居酒屋・2店舗 |
| 体制 | 社員4名(うち店長2名)、アルバイト18名(学生8名を含む) |
| 席数 | 1店舗あたり42席(座敷あり、宴会対応可) |
| 営業 | 17時〜24時(L.O.23時)、締め作業は24時45分まで |
| 営業日 | 月26日(週休1日相当。居酒屋の実態に合わせ、一般的な月20営業日の前提から変更) |
| 時間単価 | 2,500円(社員・店長の時間単価として設定) |
| 費用 | 初期費用0円・月額5万円(導入支援・伴走) |
| 集計範囲 | 2店舗合計。社員4名が担っている事務・判断の作業時間 |
この試算では、削減時間を金額に換算した表は作りません。時間単価は「その時間がどれだけ重いか」を測るための前提として置いています。居酒屋でAIを入れる目的は、店長の時間を仕込みと接客に戻すことだからです。お金の計算に置き換えると、時間が戻ったという実感が見えにくくなります。
業務別の削減時間
| 業務 | 導入前(時間/月) | 導入後(時間/月) | 削減(時間/月) |
|---|---|---|---|
| 仕入れ・発注のたたき台作成と数量決定 | 26 | 9 | 17 |
| シフト表の作成と調整 | 14 | 4 | 10 |
| 口コミ返信 | 8 | 2 | 6 |
| メニュー説明・POP・SNS投稿 | 16 | 5 | 11 |
| 宴会予約の一次対応・コース見積 | 20 | 9 | 11 |
| 合計 | 84 | 29 | 55 |
2店舗合計で月55時間の削減という試算になります。これは店長1人分の勤務にして、おおよそ1か月のうち1週間強に相当する時間です。この時間が、これまで閉店後や休みの日に消えていた分だと考えると、意味が分かりやすいと思います。
削減幅が最も大きいのは発注業務(17時間)です。毎日発生する作業を10分短くすると、月26営業日で4時間以上になるという単純な計算が効いています。派手さはありませんが、居酒屋で最も確実に効く場所です。
つまずいた点と直した点
このモデルケースでも、順調に進んだわけではないという想定で書いています。実際の導入現場でよく起きる詰まり方は次の3つです。
- 1か月目、記録が続かなかった:「廃棄・売り切れ・断った組数」を書く担当が決まっておらず、忙しい日に飛んだ。→ 締め作業のチェックリストに1行として組み込み、レジ締めと同じ扱いにしたことで続くようになった
- 2か月目、シフト原案に高校生が22時以降に入っていた:絶対条件をプロンプトの後半に書いていたため、優先されなかった。→ 冒頭に移動し、出力の2番目に「22時以降に入っている人の一覧(年齢つき)」を必ず出させる形に変更した
- 3か月目、口コミ返信が定型的だと指摘された:常連から「最近の返信、全部同じ感じですね」と言われた。→ 返信に必ず料理名か担当者の呼び名を1つ入れるルールを追加し、投稿前に店長が1文だけ手で書き足す運用にした
3つとも、AIの性能ではなく運用ルールの問題です。居酒屋でのAI導入は、ツール選びよりも「誰が・いつ・何を確認するか」を決めるほうが結果を左右します。
よくある質問
Q. 居酒屋でAIは何から始める?
A. 翌日の仕込み量と発注数量のたたき台を作るところからです。毎日発生し、外したときの損失がはっきりしている業務だからです。同時に「廃棄・売り切れ・断った組数」の3行の記録を始めてください。この記録がないと、AIの出す数量は一般論のままです。
Q. パソコンが苦手でも使える?
A. 使えます。スマホのアプリかブラウザで完結する形にしてください。プロンプトはメモアプリに保存しておき、コピーして貼るだけで済みます。パソコンを開かないと使えない仕組みにすると、居酒屋の現場ではまず定着しません。
Q. 発注をAIに任せて大丈夫?
A. たたき台までは任せてよいですが、最終数量は必ず人が決めてください。AIは近隣のイベント、常連の予定、仕入先の当日の状況を知りません。AIの出した数量に店長が加減を書き足して確定する運用にし、上書きした理由を1行残すと、翌月以降の精度が上がります。
Q. シフトは完全自動にできる?
A. 原案の生成までは自動化できますが、確定は人が行ってください。深夜割増や18歳未満の深夜業の禁止といった法令上の制約に加え、人間関係や各人の力量はAIには見えません。確定前に「22時以降に入っている人の一覧」を目視で確認する手順を必ず残してください。
Q. 口コミ返信はバレない?
A. AIの生成文をそのまま投稿すると、定型的な文章が並び、常連や地域の読者には気づかれます。返信に料理名など固有名詞を1つ入れ、店長が1文だけ手で書き足すだけで印象が変わります。なお、好意的な口コミを事業者が装って書くのは景品表示法違反になります。
Q. アルバイトに使わせて平気?
A. 用途を限定すれば問題ありません。ただし、入力してよい情報とだめな情報を紙1枚にまとめて事務所に貼ってください。予約者の氏名・電話番号・クレジットカード情報などは、外部のAIサービスに入力しない方針にするのが安全です。
Q. 費用はいくらかかる?
A. AIツール自体は無料版から試せます。導入支援を依頼する場合、Ai-Rakuでは初期費用0円・月額5万円〜で、業務の棚卸しからプロンプト作成、運用の定着までを伴走しています。まず無料の範囲で1か月試し、続けられそうだと分かってから外部の支援を検討する順番で構いません。
Q. POSレジがなくても使える?
A. 使えます。本記事で紹介した手順は、すべて手書きのメモとスマホだけで成立します。POSレジの売上データがあれば集計が楽になりますが、必須ではありません。むしろ、システムの入れ替えを先に検討すると着手が遅れます。
Q. 宴会のドタキャンは防げる?
A. 完全には防げませんが、連絡の設計で発生率は下げられます。予約確定時にキャンセル規定を文字で送り、3日前に人数の最終確認、前日に確認の一言を送る。この3通の文面をAIで型として作り、送り忘れない仕組みにしてください。人数変更が当日から3日前に前倒しされるだけでも、仕入れの損失は減ります。
Q. 効果が出るまでどのくらい?
A. 発注のたたき台とシフト原案は、初月から作業時間が短くなります。ただし発注の精度そのものは、記録が1か月たまってからでないと上がりません。3か月を1つの区切りとして、1か月目は記録、2か月目はシフトと口コミ、3か月目は宴会と販促、という順で広げるのが現実的です。
Q. 個人経営の1店舗でも意味ある?
A. あります。むしろ1店舗のほうが、店長が全部を1人で抱えているため効果が見えやすい傾向があります。本記事のモデルケースは2店舗ですが、手順は1店舗でもそのまま使えます。まずは発注メモのプロンプトを1週間試してみてください。
Q. HACCPの記録も任せられる?
A. 記録そのものをAIに書かせてはいけません。HACCPに沿った衛生管理では、実施状況を記録し保存することが求められており、実測していない温度や作業を書くのは記録の意味を失わせます。AIに任せてよいのは、衛生管理計画や手順書の文書を整える作業までです。厚生労働省は業種別の手引書や衛生管理記録アプリも公開しているので、そちらを確認してください。(参考:厚生労働省「食品等事業者団体が作成した業種別手引書」/同「HACCP衛生管理記録アプリ」)
まとめ
- 居酒屋は公的統計でも売上・客数の振れ幅が外食全体より大きい。だから毎日の判断を早く回す仕組みが要る
- 最初に手を付けるのは「翌日の仕込み量と発注数量のたたき台」。毎日発生し、外したときの損失が明確
- 生鮮とアルコールは予測の対象を分ける。生鮮は日次、酒は週次の消費ペースで見る
- シフトは法令上の制約をプロンプト冒頭に固定し、確定前に「22時以降の一覧」を目視で確認する
- 発注の最終数量・味の決定・クレーム対応・衛生管理の記録は、人が決める
- 【モデルケース試算】2店舗の居酒屋で月55時間。最も効くのは毎日の発注業務
「うちの店だと、どの業務から手を付けるべきか」「アルバイトが多くても定着させられるか」といったご相談は、飲食業向けのAI導入支援の無料相談で承っています。初期費用0円・月額5万円〜で、業務の棚卸しから運用の定着までを伴走します。
飲食店に共通するAI活用の全体像は飲食店のAI活用|シフト作成・在庫発注・口コミ対応、インバウンド対応は飲食店の多言語・インバウンド接客をAIで、業種を問わない進め方は中小企業のAI導入|何から始めるかもあわせてご覧ください。
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