農業のAI活用|営農記録と補助金書類を軽くする方法
業務効率化支援を行う「Ai-Raku(アイラク)」代表。国立大学でAIの研究を行い、ITコンサル・ウェブコンサルを経て独立。官公庁向けの業務効率化や上場企業の支援等を経て、中小企業の現場に定着するAI活用を企画から運用まで一気通貫で支援している。

「スマート農業と言われても、トラクターもドローンも何百万円の世界。うちには手が出ない」。農家や農業法人の方から、最初にいただくのはたいていこの言葉です。そして少し話を伺うと、次にこう続きます。「それより、補助金の書類と、たまった作業記録をなんとかしたい」と。
この2つは、実はまったく別の話です。前者は設備投資の話で、農業機械メーカーや農業支援サービス事業者の領域。後者は事務作業の話で、パソコンとスマートフォンさえあれば今日から手を付けられます。そして生成AIが効くのは、圧倒的に後者です。
本記事では、農業のAI活用を「経営と事務を軽くする」という一点に絞って解説します。営農記録の整理、補助金申請書の下書き、出荷先へのお知らせ文、雇用と労務の書類、販路開拓の文章づくり。この5つを、そのまま使えるプロンプト例と、水稲18ヘクタールの農業法人のモデルケース試算まで落とし込みます。
当社はAI導入支援を行う事業者で、本業は生成AIによる事務作業の効率化です。センサーや収穫ロボットは扱っていません。だからこそ、設備の話は正直に「そちらは別の会社の領域です」と申し上げたうえで、事務の話を深く書きます。
- 農業のAI活用を「設備」と「事務」に分けて考えるべき理由
- 農林水産省が示す基幹的農業従事者の減少見通しと、事務負担が重くなる構造
- AIで軽くできる5つの事務作業(営農記録・補助金書類・出荷先連絡・労務・販路開拓)
- 農家がそのままコピーして使えるプロンプト例3つ
- 水稲18ヘクタールの農業法人が月29時間を減らすまでのモデルケース試算
- パソコンが得意な人がいない経営でも進められる1か月の手順
- 栽培ノウハウや補助金要件を扱うときの、やってはいけないこと
結論:農業のAI活用は事務から
先に結論を書きます。農家・農業法人が生成AIを使い始めるなら、最初に手を付けるべきは「ほ場の外の仕事」です。具体的には、営農記録の整理、補助金や計画書の作成、出荷先とのやりとり、雇用と労務の書類、販路開拓の文章づくり。この5つです。
理由は3つあります。
- 初期費用がほぼゼロで始められる。生成AIは月額数千円、無料で試せる範囲もあります。トラクターや収穫ロボットのような数百万円の意思決定を伴いません
- 失敗しても損害が小さい。文章の下書きが気に入らなければ、書き直すか手作業に戻すだけです。ほ場に何も影響しません
- 効果が数字で見える。「今まで2時間かかっていた書類が30分になった」は、その日のうちに分かります
この考え方は、当社が勝手に言っているわけではありません。農林水産省はスマート農業の効果を3つに整理しており、そのうちの2つ目に「情報共有の簡易化」を挙げています。位置情報と連動した経営管理アプリの活用により、作業の記録をデジタル化・自動化し、熟練者でなくても生産活動の主体になることが可能になる、という整理です(出典:農林水産省「スマート農業をめぐる情勢について(2026年7月版)」)。
注目したいのは、この2つ目が「熟練者でなくても」という言葉で締められている点です。農業の現場で最も引き継ぎにくいのは、機械の操作ではなく、頭の中にある判断の理由です。「なぜこの日に水を落としたのか」「なぜこの区画だけ追肥を変えたのか」。この理由が記録として残っていなければ、次の世代は同じ判断ができません。記録を残す作業を軽くすることは、そのまま経営の継承に直結します。
「事務から始める」という順番は、農業に限った話でもありません。総務省の調査では、何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合は日本で55.2パーセント、そのうち「メールや議事録、資料作成等の補助」に使っていると回答した割合は47.3パーセントでした。つまり、すでに使われている用途の中心は文章と記録です。一方で、企業規模別に見ると中小企業では「方針を明確に定めていない」との回答が多く、約半数を占めるとされています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書 企業におけるAI利用の現状」)。
同白書では、生成AIの活用推進による自社への影響について、日本では「業務効率化や人員不足の解消につながる」が最も多く挙げられた、とも記されています。人員不足の解消を期待して、文章と記録の仕事から使い始める。農業経営で起きていることも、方向としては同じです。
そして生成AIは、この「情報共有の簡易化」を、専用システムを導入せずに始められる唯一の手段です。スマートフォンに話しかけた3分のメモを、日付・ほ場・作業内容・使用資材・気づきの形に整えてもらう。それだけで、紙のノートに殴り書きしていた情報が、検索できて振り返れる形に変わります。
農業を取り巻く数字の現在地
「事務から始める」という結論の背景には、農業の人手を巡る構造的な事情があります。感覚ではなく数字で確認しておきます。
基幹的農業従事者は98.7万人
ふだん仕事として主に自営農業に従事している人を、統計上は基幹的農業従事者と呼びます。この人数は、令和2年(2020年)の136.3万人から、令和8年(2026年)には98.7万人になっています。うち65歳以上は69.3万人で、平均年齢は67.7歳です(出典:農林水産省「農林水産基本データ集 農業労働力に関する統計」)。
なお同資料には、令和2年と令和7年は全数調査である農林業センサスの結果、令和8年は標本調査である農業構造動態調査の結果であり推定値のため、直接比較して利用する場合には留意が必要である、という注記が付されています。数字を引用するときは、この前提も一緒に伝えるのが誠実です。
20年で4分の1という見通し
より重いのは将来の見通しです。農林水産省は、今後20年間で基幹的農業従事者が現在の約4分の1にまで減少することが見込まれる、としています。具体的には、2023年時点の116万人が30万人にまで減るという試算です(出典:農林水産省「スマート農業に関する調査」)。
この数字が意味するのは、単に人が減るということではありません。減った人数で、同じ量の書類と手続きをこなさなければならないということです。補助金の申請も、経営改善計画も、雇用の手続きも、人が4分の1になったからといって4分の1にはなりません。むしろ、規模拡大で農地を引き受けるほど、管理するほ場が増え、記録も申請も増えます。
経営体が減り1戸あたりが重くなる
経営体の数も見ておきます。農業経営体は、平成27年の137.7万経営体から令和7年に83.6万経営体、令和8年には80.0万経営体(推定値)となっています。総農家戸数も令和2年の174.7万戸から令和7年に139.4万戸へと減少しています(出典:農林水産省「農林水産基本データ集 経営体に関する統計」)。
経営体が減るとき、農地はなくなりません。残った経営体が引き受けます。つまり1経営体あたりの面積は増え、それに伴って事務も増えるという構造です。実際、規模拡大した農業法人ほど「作業そのものより、記録と申請と人の管理に時間を取られている」という声を聞きます。
人は減り、1経営体あたりの面積と事務は増える。この構造の中で、設備投資は資金と時期の制約を受けますが、事務作業の効率化は今日から着手できます。順番として、まず事務、という判断には合理性があります。
設備型スマート農業との線引き
ここで、当社の立場をはっきりさせておきます。ロボットトラクター、農薬散布ドローン、収穫ロボット、ハウスの環境制御システム、水管理システム。これらは当社の領域ではありません。
どこから先が別の会社の領域か
農林水産省が示すスマート農業技術は、自動運転、遠隔操作、センシング、環境制御、経営データ管理、生産データ管理といった幅を持ちます。このうち、当社が支援できるのは最後の2つ、それも「システムを入れる前の、文章と記録の部分」に限られます。次の表のように整理してください。
| 領域 | 具体例 | 相談先 |
|---|---|---|
| 作業の自動化 | ロボットトラクター、自動操舵、ドローン散布、収穫ロボット | 農機メーカー、農業支援サービス事業者、JA、普及指導センター |
| ほ場のセンシング | 水管理システム、環境制御、衛星画像分析、収量センサ | 設備メーカー、ICTベンダー |
| 専用の営農管理システム | ほ場管理アプリ、栽培計画システム | 各サービス提供事業者 |
| 文章・記録・書類の作成 | 営農記録の整理、補助金書類の下書き、連絡文、求人票、販売文 | 当社のような生成AIの導入支援 |
この線引きを最初に示すのは、期待のズレを避けるためです。「AIを入れれば収量が上がりますか」と聞かれることがありますが、文章を整えるAIに収量を上げる力はありません。収量に効くのは栽培技術と設備であり、それは別の専門家の仕事です。
設備を持たずに使う選択肢
とはいえ、設備型スマート農業に手が届かないと決めつける必要もありません。農林水産省は、農業者に対して提供されるサービスを農業支援サービスとして位置づけ、専門作業受注型(農作業の受託)、機械設備供給型(リース・レンタル・シェアリング)、人材供給型(人材派遣)、データ分析型(データ分析と提案)の4類型に整理しています(出典:農林水産省「スマート農業」)。
同資料では、ドローンを個別に所有する場合は購入費と維持費、操作方法の習得が必要で、稼働面積や時間が限定されると費用対効果が低くなる、という指摘もされています。つまり「買う」以外に「頼む」「借りる」という選択肢が制度的に用意されているということです。設備の相談は、まずこの4類型のどれに当たるかを整理してから、該当する事業者に持ち込むのが早道です。
制度上の支援措置もある
設備側の制度も簡単に触れておきます。「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律」(スマート農業技術活用促進法)が令和6年10月1日に施行され、生産と開発に関する2つの計画認定制度が設けられました。認定を受けた農業者やサービス事業者は、税制や金融等の支援措置を受けることができます。生産方式革新実施計画は217件(令和8年7月23日時点)、開発供給実施計画は66件(令和8年6月30日時点)が認定されています(出典:農林水産省「スマート農業をめぐる情勢について(2026年7月版)」)。
この制度の詳細は、当社ではなく都道府県の農政部局や地方農政局が窓口です。ただし、計画認定の申請書そのものは文章です。だから、そこにはAIが効きます。制度の理解と要件の判断は人と専門家、文章の骨組み作りはAI、という分担になります。
AIで軽くなる5つの事務作業
ここからが本題です。農家・農業法人の「ほ場の外の仕事」のうち、生成AIで実際に軽くなるものを5つに絞って説明します。
営農記録の整理と振り返り
最も効果が分かりやすいのが営農記録です。多くの経営で、記録は次のいずれかの状態にあります。紙のノートに走り書き、スマートフォンのメモアプリに断片的、あるいは「記録していない」。そして共通しているのは、書いてはいるが、振り返っていないことです。
生成AIの使い方はシンプルです。1日の終わりに、スマートフォンの音声入力で3分ほど話します。「今日は3号田の水を落とした。天気は晴れ、風が強い。1号ハウスのトマトに尻腐れが2株。追肥は明後日に回す」。この乱れた話し言葉を、日付・ほ場・作業・使用資材・所要時間・気づき、という決まった形に整えてもらいます。
これだけで3つのことが起きます。第一に、書く負担が「話すだけ」になるので記録が続きます。第二に、形が揃うので後から検索できます。第三に、1か月分をまとめて読ませれば、「今月は防除に何時間使ったか」「同じ症状が何回出たか」という振り返りができるようになります。日々の記録を整える具体的な進め方は日報をAIで作成する方法でも扱っており、業種は違っても手順は共通です。
なお、記録がデータとして貯まってくると、表計算での集計に移りたくなります。その段階に来たらExcelをAIで自動化する方法が参考になります。関数の書き方をAIに聞けるようになると、集計の心理的な壁がかなり下がります。
補助金と計画書の下書き
次に重いのが、補助金・交付金の申請書と、各種計画書です。農業経営改善計画、経営所得安定対策の書類、産地の事業計画、そして前述の生産方式革新実施計画。いずれも「求められている項目に、自分の経営の話を当てはめて文章にする」という作業です。
ここでAIが担えるのは、次の3つです。
- 骨組みを作る:公募要領の記載項目を渡し、各項目に何を書くべきかを箇条書きに分解してもらう
- 話し言葉を文章にする:「うちは息子が戻ってきて面積を増やしたい。でも田植えの時期に人が足りない」という話を、計画書の文体に整えてもらう
- 抜けを指摘させる:書き上げた原稿を読ませ、「記載項目のうち触れられていないものはどれか」を出させる
逆に、AIに絶対に任せてはいけないのが要件の判断です。「この経費は対象になるか」「この規模で申請できるか」は、必ず公募要領の原文と、市町村や県の窓口で確認してください。生成AIは実在しない要件をもっともらしく作ることがあります。この点は後述の注意点で改めて扱います。
申請に関連して、手続きのオンライン化も進んでいます。農林水産省は、農林漁業者等が自分のスマートフォンやタブレット、パソコンから補助金等の申請をオンラインで行える農林水産省共通申請サービス(eMAFF申請)を構築しており、新しいeMAFF申請(eMAFF申請2.0)は令和8年10月に運用開始予定で、約400件の農地・補助金・共済に関する各種手続きがオンラインで完結するとされています(出典:農林水産省「農林水産省共通申請サービス(eMAFF申請)」)。
この流れは、AIとの相性が良い方向です。オンライン申請の入力欄に貼り付ける文章を、AIで下書きしておけるからです。利用にはGビズIDという法人共通認証基盤のアカウントが必要になるため、まだ取得していない経営は先に手続きを済ませておくとよいでしょう(出典:デジタル庁ほか運営「GビズID」)。
出荷先と取引先への連絡
3つ目は、出荷先・取引先とのやりとりです。市場、JA、直売所、飲食店、通販の顧客。相手ごとに文体も伝える情報も変わります。
実際に多いのは次のような場面です。天候不良で出荷量が読めないときの一報。規格外品が多く出たときの相談。新しい取引先への初回の挨拶と条件提示。値上げのお願い。どれも書きにくく、後回しにしやすく、後回しにすると事態が悪化する種類の連絡です。
AIに任せられるのは、事実と意図を伝えれば、それを角の立たない文章にする部分です。「7月の長雨で出荷量が3割減りそう。来週中に確定する。相手は10年取引のある青果卸」と伝えれば、状況説明と見通しと次の連絡時期を含んだ文面が返ってきます。あとは、自分の言い回しに直して送るだけです。
ここでも線引きは同じです。送る判断と、価格や数量の約束は人がします。AIが作るのはあくまで下書きです。
雇用と労務の書類づくり
4つ目は、人を雇うようになった経営で急に増える仕事です。求人票、作業手順の説明、雇用契約書のたたき台、シフト表の案内、外国人技能実習生向けのやさしい日本語への言い換え、労働時間の管理表。
農林水産省も、農業経営向けに「やさしい労務管理の手引き」「労務管理のススメ」といったパンフレットを公開しています(出典:農林水産省「担い手育成」)。まずこうした公的資料で「何を整備すべきか」を把握し、実際の文書化をAIで進めるのが効率的です。
特に効くのが作業手順の言語化です。ベテランに「この作業をどうやっているか」を10分話してもらい、その録音を文字にしてAIに整理させると、新人向けの手順書の原型ができます。「見て覚えろ」で回してきた経営ほど、この効果は大きくなります。
ただし、雇用契約や就業規則、労働時間の扱いは法令が絡みます。たたき台までがAI、最終判断は社会保険労務士などの専門家という分担を守ってください。
販路開拓の文章づくり
5つ目は、直販や6次産業化に取り組む経営で必要になる文章です。通販サイトの商品説明、直売所のPOP、SNSの投稿、ふるさと納税の返礼品説明、プレスリリース。
この領域は、農家が最も苦手意識を持ちやすい一方で、AIの下書きが最も役に立つ領域でもあります。理由は、素材が手元にあるからです。品種の特徴、栽培のこだわり、収穫の時期、食べ方。これらを箇条書きでAIに渡せば、媒体に合わせた長さと文体に整えてくれます。
コツは、自分にしか書けない一次情報を必ず入れることです。「甘くて美味しい」はAIがいくらでも書けますが、「標高400メートルの畑で、朝晩の寒暖差が10度あるので糖度が乗る」は、その畑を知っている人しか書けません。前者だけの文章は他の産地と区別がつかず、結果として売れません。素材を出すのが人、整えるのがAI、という順番です。
効率化の切り口をもっと広く探したい方は、業種を問わない業務効率化のアイデア集も参考になります。農業以外の業種の事例が、意外なヒントになることがあります。
農家がそのまま使えるプロンプト例
ここからは実物です。生成AIに入力する指示文をプロンプトと呼びます。以下の3つは、コピーして自分の経営の言葉に差し替えれば、そのまま使えます。
営農記録を整理するプロンプト
1日の終わりに、音声入力で話した内容を貼り付けて使います。
あなたは農業経営の事務を手伝う担当者です。 以下は、私が今日の作業をそのまま口で話した内容です。 これを、あとから検索・振り返りができる営農記録の形に整えてください。 【出力の形】 ・日付 ・天候(記載がなければ「記載なし」) ・ほ場/ハウス名 ・作業内容(箇条書き) ・使用した資材(肥料・農薬・種苗。数量や希釈倍率があれば記載) ・作業時間と人数 ・気づき、次にやること ・判断の理由(なぜその作業をこの日にやったか。話の中から読み取れる範囲で) 【守ること】 ・話していないことは絶対に補わない。分からない項目は「記載なし」と書く ・数量や日付を推測で埋めない ・農薬名や倍率が曖昧なときは、末尾に「要確認」として列挙する 【今日の話】 (ここに音声入力した文章を貼り付ける)
このプロンプトの肝は「話していないことは補わない」という指示です。これを入れないと、AIは体裁を整えようとして、言っていない天候や数量を勝手に書き足します。農薬の記録は法令上も重要なので、曖昧なものは「要確認」として明示させるのが安全です。
補助金申請書を下書きするプロンプト
公募要領を手元に開いた状態で使います。
あなたは補助金申請書の下書きを手伝う担当者です。 私は農業経営者です。以下の条件で、申請書の各項目の下書きを作ってください。 【私の経営】 ・経営形態(例:農業法人/個人経営) ・主な品目と面積(例:水稲18ヘクタール、大豆3ヘクタール) ・働いている人数(例:家族3名、パート2名、繁忙期の臨時5名) ・現在の課題(例:田植期の労働ピークで人が足りない、記録が紙で振り返れない) ・今回やりたいこと(例:作業記録のデジタル化と、事務作業の時間削減) 【申請書の記載項目】 (公募要領に書かれている項目名を、そのまま貼り付ける) 【作り方】 1. まず各記載項目について「ここで審査側が知りたいことは何か」を1行で示す 2. そのうえで、私の経営の情報を当てはめた下書きを、項目ごとに書く 3. 私が追加で用意すべき数字や資料を、最後にリストで示す 【守ること】 ・私が伝えていない実績・数値・年号を作らない。必要な箇所は「(要記入:〇〇)」と空欄にする ・補助対象になるかどうかの判断はしない。判断が必要な箇所は「要確認」と明記する ・専門用語は使わず、審査担当者が読んで分かる平易な日本語で書く
ここでも要点は同じで、数字を作らせないことです。「(要記入)」で空欄にさせておけば、後から自分の帳簿の数字を入れるだけになります。逆に、AIが埋めた数字をそのまま提出するのは、書類の信頼性を根本から損ないます。
出荷先へのお知らせ文プロンプト
天候や生育の影響を取引先に伝えるときの文面づくりです。
あなたは農業法人の代表に代わって、取引先への連絡文を下書きする担当者です。 以下の状況をもとに、送付用の文面を3案作ってください。 【状況】 ・伝えたい事実(例:長雨の影響で、7月下旬の出荷量が平年比7割程度になる見込み) ・確定する時期(例:来週水曜日に見通しが立つ) ・相手(例:10年取引のある青果卸。担当者は課長職) ・こちらの姿勢(例:代替品目の提案は可能。値上げの相談はしない) ・送る手段(例:メール) 【3案の書き分け】 ・案1:事実を先に伝える簡潔な文(10行以内) ・案2:経緯と今後の見通しを丁寧に説明する文 ・案3:電話で一報を入れる際の話す順番のメモ 【守ること】 ・お詫びだけで終わらせず、次にこちらから連絡する期日を必ず入れる ・確定していない数量を断定しない。「見込み」「現時点で」を必ず付ける ・値引きや補償の約束は書かない
3案を作らせるのは、自分の言葉に近いものを選べるようにするためです。1案だけ出させると、AIの文体をそのまま使ってしまい、相手に違和感を与えます。3つ並べて選び、自分の言い回しに直すのが、最も早く自然な文になります。
プロンプトを自分用に直すコツ
上の3つを使ってみて、思った通りにならないときは、次の3点を足してください。
- 役割を与える:「あなたは〇〇の担当者です」で始めると、文体と語彙が安定します
- 出力の形を指定する:項目名を並べて書くと、毎回同じ形で返ってきます。形が揃うから後で検索できます
- やってほしくないことを書く:「推測で埋めない」「数字を作らない」は、農業の記録と申請では特に重要です
それでもうまくいかない場合は、AIの問題ではなく指示の問題であることがほとんどです。原因の切り分け方はAIが使えないと感じたときの対処法にまとめています。
「自分の経営だと、どの書類から手を付けるべきか」を一緒に整理したい方は、無料相談をご利用ください。プロンプトの作り込みまでその場でお手伝いします。
【モデルケース】水稲18haの農業法人
以下は実在の経営の実績ではなく、当社が想定する典型的な状況にもとづくモデルケース(試算)です。実際の効果は、経営規模、品目、現在の事務のやり方、担当者の習熟度によって大きく変わります。効果を保証するものではありません。
想定する状況
水稲18ヘクタールと大豆3ヘクタールを経営する農業法人B。構成は代表(60代)、代表の息子(30代)、代表の配偶者、パート2名。繁忙期には臨時で5名ほど雇っています。周囲の離農で農地を引き受け、5年で面積が1.4倍になりました。
困っているのは次の点です。作業記録は代表が手帳に書いているが、他の人が読めない。補助金や交付金の書類は代表が全部やっており、申請時期は夜な夜な作業している。取引先への連絡は電話が中心で、言った言わないが起きる。パートの求人票を毎年作り直すのが面倒。パソコンが得意な人は誰もいない。
この「パソコンが得意な人がいない」という状態は珍しくありません。ただし全員がスマートフォンを使っており、音声入力も日常的に使っています。ここが出発点になります。
月間の削減時間の試算
事務作業を5つに分解し、AI導入前後の月間時間を試算しました。前提は、時間当たりの人件費を2,000円と仮定し、補助金関連など季節変動のある作業は年間の合計を12で割った月平均としています。
| 事務作業 | 導入前 (時間/月) |
導入後 (時間/月) |
削減時間 (時間/月) |
金額換算 (円/月) |
|---|---|---|---|---|
| 営農記録の整理・清書 | 14 | 4 | 10 | 20,000 |
| 補助金・計画書の作成 | 10 | 4 | 6 | 12,000 |
| 出荷先・取引先への連絡文 | 8 | 3 | 5 | 10,000 |
| 雇用・労務の書類 | 6 | 3 | 3 | 6,000 |
| 販路開拓・SNS・POPの文章 | 7 | 2 | 5 | 10,000 |
| 合計 | 45 | 16 | 29 | 58,000 |
月29時間、年間にすると348時間。これは代表が夜と冬期に使っていた時間にほぼ相当します。なお、この29時間は「なくなる」のではなく「別の用途に移せる」時間です。B法人の場合、代表は農地の引き受け交渉と、息子への経営の引き継ぎに使う予定を立てました。
つまずいた点と直し方
正直に書きますが、B法人も最初からうまくいったわけではありません。実際に起きやすいつまずきを3つ挙げます。
1つ目は、記録の形が毎回変わったこと。最初は「今日の作業をまとめて」とだけ指示していたため、日によって項目が違い、後から検索できませんでした。前掲のプロンプトのように出力の形を固定したことで解決しています。
2つ目は、AIが言っていない数量を書いたこと。「肥料をまいた」としか話していないのに、それらしい施用量が書かれていました。農薬・肥料の記録でこれは致命的です。「推測で埋めない」「曖昧なものは要確認と書く」という指示を追加し、さらに週に1度は代表が原本と突き合わせる運用にしました。
3つ目は、代表以外が使わなかったこと。導入したのは代表だけで、息子もパートも従来通りでした。ここは、使う場面を1つに絞って教えることで動き出しています。息子には「作業が終わったらスマートフォンに3分話す」だけを頼み、それ以外は求めませんでした。
費用の考え方
当社の支援を利用する場合、初期費用0円、月額5万円が標準です。この中で、業務の棚卸し、プロンプトの作成と調整、記録の形の設計、現場での使い方の説明、運用が回るまでの伴走を行います。
これとは別に、生成AIサービス自体の利用料がかかります。1人あたり月額数千円程度が目安ですが、サービスとプランによって変わります。無料の範囲で試してから決めても構いません。
ここで正直にお伝えしておきます。上の試算では、削減時間の金額換算(月58,000円)と、当社の顧問料(月50,000円)はほとんど同じ額です。金額の差だけで判断すると、割に合うようには見えないはずです。
それでも導入する意味があるとすれば、それは金額ではなく「その29時間を何に使うか」にあります。B法人の場合は、農地の引き受け交渉と経営の引き継ぎでした。ここに使える時間がなければ、5年後の経営そのものが立ち行かなくなる、という判断です。逆に、空いた時間の使い道が決まっていないなら、導入を急ぐ必要はありません。当社としては、そう申し上げます。
パソコンが苦手でも進める手順
「うちにはパソコンが得意な人がいない」。これは農業に限らず、中小規模の経営で最もよく聞く言葉です。結論から言えば、パソコンの習熟度は、始められるかどうかにほとんど関係しません。
スマホの音声入力から始める
最初の1歩は、キーボードを使わない方法にしてください。手順は3つです。
- スマートフォンに生成AIのアプリを入れる(無料の範囲で構いません)
- 入力欄のマイクのアイコンを押して、今日の作業を3分話す
- 前掲の「営農記録を整理するプロンプト」を、あらかじめメモアプリに保存しておき、話した内容の前に貼り付ける
この3ステップなら、文字を打つ場面がほとんどありません。実際、当社が支援した経営でも、最も定着が早かったのはふだんスマートフォンで長文のメッセージを送っている人でした。パソコンのスキルではなく、話すことに抵抗がないかどうかが分かれ目になります。
AIとの付き合い方そのものに不安がある場合は、AIリテラシーとは何かを先に読んでおくと、判断の軸ができます。
最初の1か月の進め方
いきなり5つ全部に手を付けると、間違いなく続きません。1か月の目安を示します。
| 時期 | やること | 目安の負担 |
|---|---|---|
| 1週目 | 1人だけがアプリを入れ、営農記録の音声入力を毎日試す | 1日5分 |
| 2週目 | 出力の形が毎回同じか確認し、プロンプトの項目を自分の経営に合わせて直す | 1回30分 |
| 3週目 | 取引先への連絡文を1回だけAIで下書きしてみる | 1回20分 |
| 4週目 | 1か月分の記録をまとめて読ませ、振り返りができるか確かめる | 1回1時間 |
4週目の「1か月分をまとめて読ませる」が、実は最大の山場です。ここで「紙のノートではできなかったことができた」という体験があるかどうかで、その後続くかが決まります。逆にここで何も出てこないなら、記録の項目が足りていないサインなので、プロンプトを見直してください。
家族と従業員への広げ方
1人で回り始めたら、次は人を増やします。ここでの原則は「頼むことを1つに絞る」です。
よくある失敗が、全員に一気に説明会をして、全機能を教えてしまうことです。農業の現場は日中に時間が取れません。覚えることが多いほど、翌週には忘れられます。
代わりに、次のように分けてください。息子や後継者には「作業後に3分話す」だけ。事務担当がいるなら「連絡文の下書き」だけ。代表は「補助金書類の骨組み作り」だけ。1人1機能から始めて、慣れてから広げます。
また、会社として使ってよいツールと、入力してよい情報の範囲は、最初に1枚にまとめておくことをお勧めします。書き方は社内AIルールの作り方で解説しています。経営の規模にかかわらず、A4で1枚あるだけで、後の事故がかなり減ります。
農業でAIを使うときの注意点
ここまで良い面を書いてきましたが、農業ならではの注意点があります。4つに整理します。
栽培ノウハウの扱いを決める
1つ目が、農業で最も繊細な論点です。栽培のノウハウは、産地や個人の競争力そのものであり、外に出せば取り返しがつきません。
農林水産省もこの点を明確に認識しています。「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」の解説では、熟練農業者等は栽培ノウハウなどの流出に非常に敏感になることが多く、流出をおそれるあまり、当該ノウハウ又はそのノウハウを構成するデータや画像を第三者に提供することに対して慎重となるのが一般的である、と述べられています。また、データが法的に保護されることは限定的であり、契約等により適切に保護しなければ営業秘密やノウハウが外部に流出するおそれがある、とも記されています(出典:農林水産省「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」)。
実務としては、次の線引きをお勧めします。
- 入れてよい:作業の日付・時間・面積など事実の記録、一般的な文章の下書き依頼、公開前提の販促文
- 慎重に:独自の栽培方法、品種選定の理由、施肥設計の考え方など、競争力の源になる判断
- 入れない:取引先との契約条件、取引価格、従業員の個人情報
なお、法人向けプランでは入力内容を学習に使わない設定が用意されていることが一般的です。契約前に、利用規約とプライバシーポリシーで必ず確認してください。
補助金の要件は原文で確認
2つ目は、最も事故が起きやすい点です。生成AIは、実在しない補助金の名称や、間違った補助率、存在しない締切をもっともらしく出すことがあります。
したがって、要件・補助率・締切・対象経費は、必ず公募要領の原文と窓口で確認してください。AIに任せてよいのは、要領を読んだうえでの「文章化」だけです。「この経費は対象になりますか」とAIに聞いて、その答えを根拠に申請するのは絶対に避けてください。
ちなみに、農業経営が使える可能性のある制度は、農林水産省のものだけではありません。中小企業・小規模事業者向けの制度も、要件を満たせば対象になる場合があります。当サイトでは省力化投資補助金の解説とAI導入に使える補助金で扱っていますが、こちらも最終的な適用可否は必ず公募要領でご確認ください。
数字と日付は人が確認する
3つ目は、記録そのものの信頼性に関わります。前述のモデルケースでも起きた通り、AIは体裁を整えるために数量を補うことがあります。
農薬の使用記録は、食品としての安全性と、出荷先への説明責任に直結します。数量・希釈倍率・使用日・対象ほ場の4点は、必ず人が原本と突き合わせる運用にしてください。週1回まとめて確認するだけでも、精度は大きく変わります。
この「どこまでAI、どこから人」の線引きを決めておくことが、農業に限らずAI活用の成否を分けます。判断の枠組みは中小企業のDX推進の進め方でも整理しています。
個人情報を入れる前の確認
4つ目は、従業員や顧客の情報を扱うときの話です。個人情報保護委員会は、令和5年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表しており、個人情報取扱事業者に対して、生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること、また、あらかじめ本人の同意を得ることなく個人データを含むプロンプトを入力する場合には、当該サービスを提供する事業者がその個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること、を求めています(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。
農業経営で該当しやすいのは、パートや技能実習生の氏名・住所・在留資格、直販顧客の名簿、地権者の連絡先です。求人票の作成や連絡文の下書きなら、氏名を伏せて「パート従業員1名」と書けば済むことがほとんどです。入れなくても済む情報は入れない、が基本になります。
補助金と支援制度の使い分け
制度の話は複雑になりやすいので、「設備」と「事務」に分けて整理します。
設備は農林水産省の制度
ロボット農機、ドローン、環境制御、自動水管理といった設備は、農林水産省の制度が中心になります。前述のスマート農業技術活用促進法にもとづく計画認定を受けると、投資促進税制や日本政策金融公庫からの長期低利融資といった支援措置を受けられる仕組みがあります(出典:農林水産省「スマート農業をめぐる情勢について(2026年7月版)」)。
この分野の窓口は、都道府県の農政部局、地方農政局、農業改良普及センター、JAです。当社ではなく、そちらにご相談ください。制度の中身は年度ごとに変わるため、必ず最新の公表資料を確認する必要があります。
事務のAI化で見る制度
一方、事務作業のデジタル化については、中小企業・小規模事業者向けの制度が視野に入ります。IT導入補助金や中小企業省力化投資補助金がその代表です(参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構ほか運営「IT導入補助金」、「中小企業省力化投資補助金」)。
ただし、農業経営が対象になるかどうか、生成AIの利用料が対象経費になるかどうかは、年度と公募回によって異なります。ここは必ず、その回の公募要領で確認してください。当社としては「使えます」と断言できる立場にありません。
現実的な話をすると、生成AIの事務利用は、そもそも補助金を待つ必要がないほど初期費用が小さい領域です。制度の申請と審査に数か月かけるより、月数千円で先に試してしまうほうが早い、という判断も十分に合理的です。
なお、行政手続そのもののデジタル化も並行して進んでいます。農林水産省は、農業者や地方公共団体職員等の事務負担を軽減し、農業者等が生産や経営に注力できる環境づくりを行う必要があるとして、デジタル化による行政手続の効率化を進めるとしています(出典:農林水産省「農林水産業・食関連産業のデジタルトランスフォーメーション」)。手続の側がオンライン化される流れの中で、自分の側の下書きをAIで用意しておく。この組み合わせが、これから数年でいちばん効いてきます。
よくある失敗3つと防ぎ方
当社が見てきた範囲で、農業経営がAI導入でつまずくパターンを3つ挙げます。
設備の話と混ぜてしまう
最も多いのがこれです。「AIを導入しよう」と考えた瞬間に、ロボットトラクターや収穫ロボットの話になり、金額の大きさに驚いて、全体が止まります。
防ぎ方は、最初に紙を2枚に分けることです。1枚目に「設備でやりたいこと」、2枚目に「事務でやりたいこと」を書き出します。そして2枚目から着手します。1枚目は資金計画と補助金のタイミングで動く話なので、時間軸がまったく違います。
繁忙期に始めてしまう
2つ目は、時期の問題です。田植えや収穫の最中に新しい道具を覚えるのは、現実的ではありません。導入したものの誰も触らないまま、1年が過ぎます。
防ぎ方は、農閑期に始めることです。作型にもよりますが、書類仕事が集中する時期の少し前に立ち上げると、最初の成功体験を作りやすくなります。逆に、繁忙期に「これで楽になるから」と押し込むのは、ほぼ確実に失敗します。
誰も触らないまま契約が続く
3つ目は、契約はしたが使われていない状態です。月額の支払いだけが続き、半年後に「結局使わなかった」となります。
防ぎ方は、1か月目に「使う場面」と「使う人」を1つずつ決めることです。「作業後の3分の音声入力を、後継者が毎日やる」のように、人と場面と頻度をセットで決めます。決めないまま「便利だから使って」と配るのが、最も高くつくやり方です。
なお、うまくいかない原因の切り分けについてはAIが使えないと感じたときの対処法で詳しく扱っています。多くの場合、道具ではなく使い方の問題です。
よくある質問(FAQ)
Q. 農業のAI活用は何から始める?
営農記録の整理から始めるのが最も安全です。初期費用がほぼかからず、失敗してもほ場に影響せず、効果がその日のうちに分かるためです。スマートフォンの音声入力で1日3分話し、決まった形に整えてもらうところから始めてください。設備型のスマート農業は、資金計画と補助金のタイミングが絡むため、時間軸を分けて考えることをお勧めします。
Q. スマート農業と生成AIの違いは?
スマート農業は、ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業の総称で、自動走行トラクターやドローン、環境制御システムなど設備を伴うものが中心です。一方、本記事で扱う生成AIは、文章や記録を扱うソフトウェアで、パソコンとスマートフォンがあれば始められます。農林水産省はスマート農業の効果として作業の自動化、情報共有の簡易化、データの活用の3つを挙げており、生成AIが直接効くのは主に2つ目です(出典:農林水産省「スマート農業をめぐる情勢について(2026年7月版)」)。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
生成AIサービス自体は、1人あたり月額数千円程度が目安です(サービスとプランにより変わります)。当社の導入支援を利用する場合は、初期費用0円、月額5万円が標準で、業務の棚卸し、プロンプトの作成、現場での使い方の説明、運用が回るまでの伴走を含みます。まずは無料の範囲で試し、続きそうだと判断してから支援を検討する順番で構いません。
Q. パソコンが苦手でも使えますか?
使えます。スマートフォンの音声入力から始めれば、キーボードを打つ場面はほとんどありません。当社が支援した範囲でも、定着が早かったのはパソコンに詳しい人ではなく、ふだんスマートフォンで長めのメッセージを送っている人でした。まず1人、1機能から始めてください。
Q. 営農記録はAIに任せてよい?
整形は任せてよいですが、確認は人が行ってください。特に農薬・肥料の数量、希釈倍率、使用日、対象ほ場の4点は、AIが推測で補うと重大な問題になります。プロンプトに「推測で埋めない」「曖昧なものは要確認と書く」という指示を入れ、週に1度は原本と突き合わせる運用にしてください。
Q. 補助金の申請書もAIで作れますか?
下書きは作れますが、要件の判断はできません。補助率、対象経費、締切、申請資格は必ず公募要領の原文と窓口で確認してください。生成AIは実在しない要件をもっともらしく作ることがあります。AIに任せてよいのは、要領を読んだうえで自分の経営の情報を文章にする部分だけです。
Q. 栽培ノウハウは入力してよい?
慎重に扱ってください。農林水産省の「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」では、データが法的に保護されることは限定的であり、契約等により適切に保護しなければ営業秘密やノウハウが外部に流出するおそれがある、とされています(出典:農林水産省「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」)。作業日時や面積といった事実の記録は入れてよく、独自の栽培方法や施肥設計の考え方は慎重に、というのが現実的な線引きです。
Q. 農業のAI導入事例はある?
設備型スマート農業については、農林水産省が実証プロジェクトの成果や農業者の取組事例を公開しています(出典:農林水産省「スマート農業」)。一方、事務作業の生成AI活用については、公的にまとまった事例集はまだ整備されていません。本記事のモデルケースは、当社が想定する典型的な状況にもとづく試算であり、実在の経営の実績ではありません。この点は誤解のないようご確認ください。
Q. AIを入れれば収量は上がりますか?
文章や記録を扱う生成AIに、収量を上げる力はありません。収量に効くのは栽培技術と設備であり、それは農機メーカーや普及指導機関、研究機関の領域です。生成AIが効くのは、記録が残ることで振り返りができるようになる、事務の時間が空いて栽培の改善に回せる、という間接的な部分です。効果を断定できる性質のものではありません。
Q. 家族経営でも意味はありますか?
意味はあります。むしろ、事務を分担できる人がいない家族経営ほど、1人が抱えている書類仕事の比重が大きくなります。ただし「空いた時間を何に使うか」が決まっていない場合は、急いで導入する必要はありません。農地の引き受け、経営の引き継ぎ、新しい販路など、時間を回したい先があるかどうかで判断してください。
Q. 補助金でAIの費用は出ますか?
年度と公募回によって異なるため、断定できません。中小企業・小規模事業者向けのIT導入補助金や中小企業省力化投資補助金が候補になりますが、農業経営が対象になるか、生成AIの利用料が対象経費になるかは、その回の公募要領で必ず確認してください。なお生成AIの事務利用は初期費用が小さいため、制度の審査を待たずに先に試してしまうという判断も合理的です。
Q. 行政手続のオンライン化は?
農林水産省共通申請サービス(eMAFF申請)が運用されており、新しいeMAFF申請(eMAFF申請2.0)は令和8年10月に運用開始予定で、約400件の農地・補助金・共済に関する各種手続きがオンラインで完結するとされています。スマートフォン、タブレット、パソコンのいずれからも利用できます(出典:農林水産省「農林水産省共通申請サービス(eMAFF申請)」)。利用にはGビズIDのアカウントが必要になるため、早めに取得しておくとよいでしょう。
Q. AIに任せてよい範囲は?
下書きと整形まではAI、判断と確認は人、が原則です。具体的には、文章の作成、記録の整形、抜けの指摘まではAIに任せてよく、要件の判断、数量の確認、送付や提出の決定、価格や契約の約束は人が行います。この線引きを最初に1枚の紙にまとめておくと、後の事故がかなり減ります。書き方は社内AIルールの作り方をご覧ください。
まとめ:記録が残れば経営が見える
最後に要点を整理します。
- 農業のAI活用は「設備」と「事務」に分けて考える。事務は初期費用がほぼゼロで今日から着手できる
- 基幹的農業従事者は98.7万人(令和8年)、平均年齢67.7歳。今後20年で約4分の1になる見通しが示されている
- 経営体が減る一方で農地は残るため、1経営体あたりの事務は増える構造にある
- AIで軽くなるのは、営農記録・補助金書類・出荷先連絡・雇用労務・販路開拓の文章の5つ
- モデルケース試算では月29時間の削減。ただし金額換算と顧問料はほぼ同額で、判断軸は「空いた時間の使い道」にある
- 栽培ノウハウ、補助金の要件、農薬の数量は、AIに判断させない。下書きまでがAI、確認は人
- ロボット農機やドローンは当社の領域外。農政部局、普及センター、JA、農機メーカーにご相談を
農林水産省がスマート農業の効果として挙げた「情報共有の簡易化」は、突き詰めれば「記録が残れば、熟練者でなくても経営の主体になれる」ということです。頭の中にある判断が紙にも残らないまま次の世代に渡されるのが、いまの農業で最も静かに進んでいる損失だと、当社は考えています。
設備を入れなくても、記録を残すことはできます。そして記録が残れば、振り返りができ、引き継ぎができ、申請書も書けるようになります。順番として、そこから始めてみてください。
当社は、生成AIによる事務作業の効率化を専門とするAI導入支援の事業者です。営農記録の形の設計、補助金書類の下書きの仕組みづくり、現場で実際に使われる状態までの伴走をお手伝いしています。費用は初期費用0円、月額5万円が標準です。「パソコンが得意な人がいない」「何から手を付ければいいか分からない」という段階でも構いません。お問い合わせはこちらから、まずは無料相談でご相談ください。
本記事は一般的な情報提供であり、特定の経営に対する助言ではありません。補助金・交付金の要件、労務や契約に関する判断、栽培技術に関する判断については、公募要領の原文、都道府県の農政部局、社会保険労務士、農業改良普及センター等の専門機関にご確認ください。また、AIの導入によって収量や所得が向上することを保証するものではありません。