Google広告をMCPで自動化する手順とリスク
業務効率化支援を行う「Ai-Raku(アイラク)」代表。国立大学でAIの研究を行い、ITコンサル・ウェブコンサルを経て独立。官公庁向けの業務効率化や上場企業の支援等を経て、中小企業の現場に定着するAI活用を企画から運用まで一気通貫で支援している。

「Google広告のキーワード調整・レポート作成に毎週何時間もかかっている」「AIで自動化できると聞くが、実際に何をどう設定すればいいのか分からない」——Google広告の運用担当者から、こうした声をよく聞きます。
結論から言うと、2026年時点でGoogle広告をAIエージェント(Claude Codeなど)から自動操作するにはMCP(Model Context Protocol)という仕組みを使います。ただし注意が必要なのは、Google公式のMCPサーバーは「読み取り専用」だという点です。分析やレポート作成は公式MCPで完結しますが、キーワードの停止・追加といった「実行」まで自動化するには、別の選択肢が必要になります。
本記事では、中小企業のAI導入を支援するAi-Rakuの視点で、Google広告のMCP自動化でできること・開発者トークンの取得手順・安全に自動実行を広げる進め方を、公式ドキュメントと実運用事例に基づいて解説します。全体設計の考え方は広告・SNS・SEOをMCP/APIで自動化する方法もあわせてご覧ください。
- Google公式MCP(読取専用)と非公式MCP(読み書き対応)の違い
- 開発者トークンの取得手順と、Test/Basic/Standardのアクセスレベルの違い
- つまずきやすい設定ミス(login_customer_idの落とし穴など)と対処法
- 安全に自動実行の範囲を広げる4週間ステップ
- 【モデルケース試算】キーワード運用の自動化でどれだけ削減できるか
結論:公式MCPは読取専用、実行には非公式MCPが必要
Google広告チームは2025年10月、Google Ads API MCP Serverをオープンソースで公開しました。しかし公式ドキュメントには「このMCPサーバーは厳密に読み取り専用であり、入札の変更・キャンペーンの一時停止・新規アセットの作成はできない」と明記されています。(参考:Google Ads Developer Blog)
つまり公式MCPだけでは、「AIに分析させてレポートを作らせる」ことはできても、「AIにキーワードを止めさせる」ことはできません。実行まで自動化したい場合は、Google Ads APIの書き込み機能に対応した非公式(サードパーティ)のMCPサーバーを使うのが現実的な選択肢です。この記事では、実際に多くの運用者が使っている非公式MCPでの構築手順を解説します。
Google広告MCPの2つの選択肢
| 種類 | できること | 向いている用途 |
|---|---|---|
| Google公式MCP | 検索語句の取得、GAQLによるデータ照会、アカウント一覧の取得(すべて読み取りのみ) | 分析・レポート作成だけを自動化したい場合 |
非公式MCP(例:maxghenis/google-ads-mcp) |
検索語句取得・低CTRキーワード抽出に加え、キーワードの追加・停止・入札調整も実行可能 | 実行まで自動化したい場合。ただし自己責任での導入になる |
非公式MCPは開発コミュニティが公開しているツールのため、Google公式のサポートはありません。信頼できる公開元か、更新が続いているかを確認したうえで導入することをおすすめします。
【手順】開発者トークンの取得
どちらのMCPを使う場合も、まずGoogle Ads APIの開発者トークンが必要です。
Manager Account(MCC)でのみ取得できる
開発者トークンの発行メニューは、通常のGoogle広告アカウントには表示されません。Manager Account(MCC)でログインし、「ツールと設定」→「APIセンター」→「開発者トークン」の順に進む必要があります。ここでつまずく担当者が多いため、最初に自社がMCCを持っているか確認してください。
アクセスレベルの3段階
Google公式ドキュメントによると、開発者トークンには次の3つのアクセスレベルがあります。(参考:Google Ads API 公式:Access levels)
| レベル | 操作上限 | 用途 |
|---|---|---|
| Test | テストアカウントのみ | 動作確認・検証専用 |
| Basic | 1日15,000操作まで | 小規模〜中規模の運用 |
| Standard | 無制限 | 本格運用・複数アカウント管理 |
Basic・Standardへの昇格申請には数日〜数週間かかることがあるため、着手を決めたら早めに申請することが重要です。
【手順】OAuth2認証とMCPサーバーの起動
開発者トークンを取得したら、次にOAuth2認証とMCPサーバーの設定を行います。実際の運用者の設定手順を参考に整理すると、次の流れになります。
- Google Cloud Consoleでプロジェクトを作成し、「Google Ads API」を有効化する
- OAuth同意画面でデスクトップアプリを設定し、必要なスコープ(
https://www.googleapis.com/auth/adwords)を指定する - Refresh Tokenを取得する(認証用スクリプトを実行し、ブラウザでアカウントを選択・許可する)
- 設定ファイルに、developer_token・client_id・client_secret・refresh_token・login_customer_idを記入する
- MCPサーバーを起動し、AIエージェント(Claude Codeなど)と接続する
つまずきやすい設定ミスと対処
実際の導入事例で最も多く報告されているのが、次の設定ミスです。
login_customer_idの省略
Manager Account配下でアカウントを操作する場合、login_customer_id(MCCのID)の指定が必須です。ここが空欄、または子アカウントのIDを誤って入力すると、後述する「CustomerNotFound」エラーが発生します。設定ファイルを保存する前に、必ずMCCのID(xxx-xxx-xxxx形式)であることを再確認してください。
よくあるエラーと原因
| エラー | 主な原因 | 対処 |
|---|---|---|
| PermissionDenied | 開発者トークンのアクセスレベルがStandard未満 | Basic以上への昇格申請を行う |
| InvalidRefreshToken | トークンの有効期限切れ | OAuth認証をやり直し、新しいトークンを取得する |
| CustomerNotFound | login_customer_idの入力間違い | MCCのIDを再確認する(子アカウントIDとの混同に注意) |
| MCP接続失敗 | ポート番号の競合 | 既存プロセスを確認し、必要なら終了させてから再起動する |
安全に自動化する4週間ステップ
「自動化ツールは試行回数を増やすブースターにすぎず、間違った自動化はそのまま広告費の損失に直結する」——これは実際に導入した運用者の言葉です。いきなりフル自動運用に踏み切らず、段階を踏むことが何より重要です。
| 週 | 自動化の範囲 | ポイント |
|---|---|---|
| 1週目 | 分析・提案のみ。実行は必ず人が承認 | AIが出す提案の精度を見極める期間 |
| 2週目 | dry-run(実行シミュレーション)モード | 実際には実行せず、「実行したら何が起きるか」だけ確認する |
| 3週目 | 小規模な自動実行(例:1日5キーワードまで) | 上限を設定し、影響範囲を限定する |
| 4週目〜 | フル自動運用 | 3週間の実績を踏まえ、対象範囲を段階的に拡大 |
安全ガードの設定例として、1日あたりの操作件数上限(daily_keyword_limit)や予算上限(budget_cap)、実行前の通知(Slack等への自動通知)を組み込む運用が実践されています。dry-runモードは最低2週間は入れっぱなしにすることをおすすめします。
自動化してよい業務/人が承認すべき業務
| 業務 | 自動化の可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 検索語句レポートの取得 | ◎ 自動化推奨 | 読み取りのみでリスクがない |
| 低CTRキーワードの抽出 | ◎ 自動化推奨 | 提案止まりで実害がない |
| 明らかに無関係なキーワードの停止 | ○ 条件付きで自動化可 | 「止める」判断は損失を防ぐ方向 |
| 新規キーワードの追加 | △ 人の承認を挟む | 意図しないキーワードで配信されるリスク |
| 予算の増額・新規キャンペーン作成 | ✕ 自動化しない | 誤操作が直接的な金銭損失につながる |
「自社のアカウント構成でどこまで自動化できるか診断してほしい」という方は、無料相談でご相談ください。
【モデルケース】キーワード運用を自動化した場合の試算
従業員18名の広告代理店R社を例に、Google広告の検索語句レポート作成とキーワード調整を自動化した場合の試算です。
※R社は実在の企業ではなく、中小企業によくある状況をもとにしたモデルケース(試算)です。数値は「時給換算2,600円・月20営業日」を前提とした試算で、実際の効果は業務内容や運用方法により変動します。誤操作による損失リスクは別途考慮が必要です。
| 業務 | 導入前(時間/月) | 導入後(時間/月) | 削減時間(時間/月) | 削減額(円/月) |
|---|---|---|---|---|
| 検索語句レポートの確認・抽出 | 12 | 2 | 10 | 26,000 |
| 低CTRキーワードの洗い出し | 8 | 1 | 7 | 18,200 |
| キーワード停止・入札調整の実作業 | 10 | 4 | 6 | 15,600 |
| 合計 | 30 | 7 | 23 | 59,800 |
合計で月23時間・約6万円分の作業が削減される計算です。R社では最初の2週間をdry-runで運用し、AIの提案と自社の判断がどの程度一致するかを確認してから、段階的に自動実行の範囲を広げました。
導入前チェックリスト
| チェック項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| Manager Account(MCC)を持っているか | 持っていない場合は先に取得が必要 |
| 開発者トークンの申請を出したか | Basic/Standardへの昇格には数日〜数週間かかる |
| 安全設計(dry-run・上限設定)を組み込んだか | いきなりフル自動運用にしない |
| 予算増額・新規キャンペーンの承認フローを決めたか | 金銭に関わる操作は必ず人が最終確認する |
よくある質問(FAQ)
Q. 公式MCPだけでキーワードの停止まで自動化できますか?
A. できません。Google公式のMCPサーバーは読み取り専用と明記されており、実行機能を使うには非公式MCPまたは独自のAPI実装が必要です。
Q. 開発者トークンはどれくらいで取得できますか?
A. Test・Basicレベルの申請自体はすぐ完了しますが、Standardへの昇格審査は数日〜数週間かかることがあります。着手を決めたら早めに申請することをおすすめします。
Q. 非公式MCPを使うのは安全ですか?
A. Googleの公式サポートはないため、公開元の信頼性や更新頻度を確認したうえで利用する必要があります。導入初期は必ずdry-runモードで動作を確認してから実行に移してください。
Q. login_customer_idが分かりません。
A. Manager Account(MCC)のIDです。子アカウントのIDと混同しやすいため、Google広告の管理画面でMCCのアカウントIDを再確認してください。
Q. 自動化で広告費が想定以上に使われることはありませんか?
A. 安全設計を組み込まなければ起こり得ます。1日あたりの操作件数上限・予算上限を設定し、新規キャンペーン作成や予算増額は必ず人が承認する運用にしてください。
まとめ|次にやること
- Google公式MCPは読み取り専用。実行まで自動化するには非公式MCPが必要
- 開発者トークンはMCC限定で取得可能。Standardへの昇格は数日〜数週間かかる
- login_customer_idの設定ミスが最も多いつまずきポイント
- 分析→dry-run→小規模実行→フル自動化の4週間ステップで安全に広げる
- 予算に関わる操作は必ず人の承認を挟む
「自社のGoogle広告運用をどこまで自動化できるか相談したい」という方は、Claude導入支援の無料相談をご利用ください。全体設計の考え方は広告・SNS・SEOをMCP/APIで自動化する方法、レポート自動化・クリエイティブ内製化は広告運用のAI活用もあわせてご覧ください。


